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第六章 お出かけしよう
35.大人の話
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休憩室を出て、社務所の玄関で靴をはく。
「あ」
いきなりのどかが声をあげた。
「忘れてた。制服のこと、みちるさんに言ってない」
「まだ注文してなかったの? 今からだとけっこうギリギリかも」
と、ニオが心配そうに言う。
「始業式には間に合わせたいな。街まで来ることもあんまりないし、今日注文してもらったほうがいいね」
「わたし、みちるさんにお願いしていくる」
「僕も行くよ。ニオ、待ってて」
のどかと二人、いったん靴を脱いで休憩室のほうに戻る。
と、ふすまごしに声が聞こえた。
「――伊吹とは相変わらずか」
「はい」
「そう意地を張るな」
「意地を張っているのは向こうです」
「まったく。伊吹の大刀自もいよいよだというのに。話すなら今のうちだぞ」
「……わかってはいます。それでも――」
さっきまでとは打って変わって真剣なトーンだ。
廊下に立ったまま、のどかと視線で会話する。
伊吹って、たしかうちの親戚のだよね?
そうだね。いよいよって何がだろう?
いい話じゃなさそう。ところで大刀自って何?
と、いきなりふすまが開いた。
ふすまの向こうには、みちるさんが立っていた。
わたしたちがいるとは思わなかったらしく、みちるさんは目を大きくさせている。
「あんたたち今の話、」
「みちるさん、こないだニオの家で聞いたんだけど、僕らの行く淡海小って制服なんだよね」
みちるさんの言葉をさえぎって、のどかが話す。
「……そういえば、そうね。あんたたちも買わないとね。ちょうど常装のために採寸はしたばかりだし、今日ついでに注文しとくわ」
「よし」
と、おじいちゃんが立ち上がる。
「よし、じゃない! お金は浩次さんからもらいますから!」
「そんな勝手は許さんぞ。はなせ、制服はわしが買うのだ」
「財布をしまいなさい!」
大人たちがもみ合いを始めるのをよそに、のどかは「じゃあ、僕らは行ってきます」と言い残し、わたしの手を引いて歩きだした。
「ちょっと、のどか。気にならないの?」
「気にはなるけど、みちるさんは話してくれないよ」
「……ま、そうね。わたしたちを追い出してから話してたし」
ということで、わたしたちは大人の話を忘れて出かけることにした。
「あ」
いきなりのどかが声をあげた。
「忘れてた。制服のこと、みちるさんに言ってない」
「まだ注文してなかったの? 今からだとけっこうギリギリかも」
と、ニオが心配そうに言う。
「始業式には間に合わせたいな。街まで来ることもあんまりないし、今日注文してもらったほうがいいね」
「わたし、みちるさんにお願いしていくる」
「僕も行くよ。ニオ、待ってて」
のどかと二人、いったん靴を脱いで休憩室のほうに戻る。
と、ふすまごしに声が聞こえた。
「――伊吹とは相変わらずか」
「はい」
「そう意地を張るな」
「意地を張っているのは向こうです」
「まったく。伊吹の大刀自もいよいよだというのに。話すなら今のうちだぞ」
「……わかってはいます。それでも――」
さっきまでとは打って変わって真剣なトーンだ。
廊下に立ったまま、のどかと視線で会話する。
伊吹って、たしかうちの親戚のだよね?
そうだね。いよいよって何がだろう?
いい話じゃなさそう。ところで大刀自って何?
と、いきなりふすまが開いた。
ふすまの向こうには、みちるさんが立っていた。
わたしたちがいるとは思わなかったらしく、みちるさんは目を大きくさせている。
「あんたたち今の話、」
「みちるさん、こないだニオの家で聞いたんだけど、僕らの行く淡海小って制服なんだよね」
みちるさんの言葉をさえぎって、のどかが話す。
「……そういえば、そうね。あんたたちも買わないとね。ちょうど常装のために採寸はしたばかりだし、今日ついでに注文しとくわ」
「よし」
と、おじいちゃんが立ち上がる。
「よし、じゃない! お金は浩次さんからもらいますから!」
「そんな勝手は許さんぞ。はなせ、制服はわしが買うのだ」
「財布をしまいなさい!」
大人たちがもみ合いを始めるのをよそに、のどかは「じゃあ、僕らは行ってきます」と言い残し、わたしの手を引いて歩きだした。
「ちょっと、のどか。気にならないの?」
「気にはなるけど、みちるさんは話してくれないよ」
「……ま、そうね。わたしたちを追い出してから話してたし」
ということで、わたしたちは大人の話を忘れて出かけることにした。
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