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第六章 お出かけしよう
34.おじいちゃん
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緑の山を左手に走っていくと、ずっと田んぼばかりだった景色に建物が増えてくる。
神社を出てから二十分くらいで、車は辺津宮神社に着いた。
辺津宮神社は、姫神神社よりいろいろとひと回り大きかった。
境内も広いし、社殿も大きくて何だか立派だ。
本殿と拝殿はうちと同じ入母屋造りだけど、二つの社殿は別々になっている。
年季の入り方なら負けないけれど他の点ではちょっと勝ち目がない。
って、いつの間にかわたしも神社の様式なんか気にするようになってしまった。のどかに毒されてるね。
「ごめんください」
社務所の通用口から入り、みちるさんが声をあげる。
「はーい。どちらさまでしょうか」
奥から出てきた巫女さんに、みちるさんは両手を脇に揃えてお辞儀をした。
「姫神神社の息長みちるです」
巫女さんも丁寧に頭を下げて「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」と奥へ案内してくれた。
社務所の休憩所に入る。中には背が高く細いおじいさんが立っていた。白髪をオールバックにしていて、厳格な雰囲気をただよわせている。
「ごぶさたしています、おじさま」
みちるさんが頭を下げると。おじいさんは「うむ」と重々しくうなずいた。
辺津宮神社の宮司は、わたしたちのお祖母ちゃんの弟らしい。
みちるさんの叔父で、わたしとのどかにとっては大叔父にあたると、来るとちゅう車の中でそう聞いた。
「かけなさい」
おじいさんにうながされ、わたしたちは用意されていたざぶとんに腰をおろした。
「のどか、しずか。よく来たな」
「はい。おじゃまします」
のどかと二人、座ったまま礼をする。
「今日はこのあたりを観光すると聞いている。これをつかいなさい」
と、おじいさんは、一万円札を三枚も差しだした。
「おじさま!」と、そこにみちるさんが割り込む。
「孫にこづかいをやるくらい、いいだろう」
おじいさんが不満げに顔をしかめる。
「額が多いと言ってるんです。おばさまがいつも言ってますよ。『あの人は孫を甘やかしすぎる』って」
「わしは孫にこづかいをやるために生きているのだ」
「御役目のために生きてください! というかこの子たち孫じゃありませんから!」
「そうやって細かいことを気にするからおまえは嫁にいけないのだ」
「言ったわね、このクソジジイ!」
さすが大きな神社の宮司さま。すごい貫禄だ。
いかめしい顔つきで眉ひとつ動かさずに孫(ではない)を甘やかし、姪に胸ぐらをつかまれている。
「ありがとう、おじいちゃん!」
思いっきりの笑顔をつくり、差し出されていたお札をありがたく受けとる。
「足りなくなったらすぐに言いなさい」
おじいちゃんは満足気に胸をはった。
「し・ず・か?」
頭にいつもの手の感触。
しかし、握力がやってこない。
恐る恐る見上げると、みちるさんの目はこう言っていた。
帰ったら修行三倍コースね。
「あの、わたし、孫どころか親戚でもなくて、その」
と、ニオが遠慮がちに言う。
「孫の友人ならば、わしにとっては孫のようなものだ。もらっておきなさい」
「いいのよ、ニオちゃん。孫じゃないけど。さて、わたしたちはとーっても大事なお話があるから、あんたたちは遊びに行ってなさい」
みちるさんはおじいちゃんをしめあげたまま、わたしたちに笑みを向けた。
わたしたちは「行ってきます!」と元気に告げて休憩室を出た。
おじいちゃん、ありがとう。
そして、もしかしたらさようなら。
神社を出てから二十分くらいで、車は辺津宮神社に着いた。
辺津宮神社は、姫神神社よりいろいろとひと回り大きかった。
境内も広いし、社殿も大きくて何だか立派だ。
本殿と拝殿はうちと同じ入母屋造りだけど、二つの社殿は別々になっている。
年季の入り方なら負けないけれど他の点ではちょっと勝ち目がない。
って、いつの間にかわたしも神社の様式なんか気にするようになってしまった。のどかに毒されてるね。
「ごめんください」
社務所の通用口から入り、みちるさんが声をあげる。
「はーい。どちらさまでしょうか」
奥から出てきた巫女さんに、みちるさんは両手を脇に揃えてお辞儀をした。
「姫神神社の息長みちるです」
巫女さんも丁寧に頭を下げて「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」と奥へ案内してくれた。
社務所の休憩所に入る。中には背が高く細いおじいさんが立っていた。白髪をオールバックにしていて、厳格な雰囲気をただよわせている。
「ごぶさたしています、おじさま」
みちるさんが頭を下げると。おじいさんは「うむ」と重々しくうなずいた。
辺津宮神社の宮司は、わたしたちのお祖母ちゃんの弟らしい。
みちるさんの叔父で、わたしとのどかにとっては大叔父にあたると、来るとちゅう車の中でそう聞いた。
「かけなさい」
おじいさんにうながされ、わたしたちは用意されていたざぶとんに腰をおろした。
「のどか、しずか。よく来たな」
「はい。おじゃまします」
のどかと二人、座ったまま礼をする。
「今日はこのあたりを観光すると聞いている。これをつかいなさい」
と、おじいさんは、一万円札を三枚も差しだした。
「おじさま!」と、そこにみちるさんが割り込む。
「孫にこづかいをやるくらい、いいだろう」
おじいさんが不満げに顔をしかめる。
「額が多いと言ってるんです。おばさまがいつも言ってますよ。『あの人は孫を甘やかしすぎる』って」
「わしは孫にこづかいをやるために生きているのだ」
「御役目のために生きてください! というかこの子たち孫じゃありませんから!」
「そうやって細かいことを気にするからおまえは嫁にいけないのだ」
「言ったわね、このクソジジイ!」
さすが大きな神社の宮司さま。すごい貫禄だ。
いかめしい顔つきで眉ひとつ動かさずに孫(ではない)を甘やかし、姪に胸ぐらをつかまれている。
「ありがとう、おじいちゃん!」
思いっきりの笑顔をつくり、差し出されていたお札をありがたく受けとる。
「足りなくなったらすぐに言いなさい」
おじいちゃんは満足気に胸をはった。
「し・ず・か?」
頭にいつもの手の感触。
しかし、握力がやってこない。
恐る恐る見上げると、みちるさんの目はこう言っていた。
帰ったら修行三倍コースね。
「あの、わたし、孫どころか親戚でもなくて、その」
と、ニオが遠慮がちに言う。
「孫の友人ならば、わしにとっては孫のようなものだ。もらっておきなさい」
「いいのよ、ニオちゃん。孫じゃないけど。さて、わたしたちはとーっても大事なお話があるから、あんたたちは遊びに行ってなさい」
みちるさんはおじいちゃんをしめあげたまま、わたしたちに笑みを向けた。
わたしたちは「行ってきます!」と元気に告げて休憩室を出た。
おじいちゃん、ありがとう。
そして、もしかしたらさようなら。
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