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八章 統一祭
38話:ディーレ姫の演説
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統一祭当日の朝、城門の前に多くの国民が集まっていた。
ディーレが新たに戸籍を作成することに決めたのだ。
そのため祭りの前に城に来てもらい、戸籍を作るために書類を提出することにしていた。
そのついでに魔族かどうかをラメッタの魔道具で判断するという作戦だ。
バシュルスを逃してしまった以上、ラメッタが魔族か人間かを区別する魔道具を持っていることが知られてしまっている状態だ。
それでもこの作戦で進めるのは、魔族を見つけるためではなく、人間と確信できるものの戸籍を作ることにあった。あとは戸籍を持っていない者を調べ上げれば良いという考えである。
ちなみに、ラメッタと城の従者、執事が魔道具を使って検査している。
ラメッタの護衛としてはクレーエンが付く。
詳しい作戦や計画については、どこまでなり替わられているか、どこで情報が洩れるのか判断ができなかったために、城の従者、執事でさえも知らない。
「ディーレ姫大丈夫じゃろうか」
「人前で話す経験が少ないのか?」
「国がずっと荒れておったし機会に恵まれておらぬからな」
「心配か?」
「上手く演説してくれると思っておるが。もしかしたらってな」
「お母さんかよ」
「わしに子供がいたらこういう気持ちになることも少なくないかも」
「一体何才のつもりなんだよ」
「そうじゃな。わしはきっと自分でも分からぬ。どういう考えをしたら子供か、大人か、貫禄がある女性か。わしは一体何者じゃろか」
「知るか、難しい」
「じゃな」
ラメッタは門の上に白い花を半円状に編んだものを設置した。
色が変われば魔族が通ったことになる。
一斉に何人も見ることができるが誰で色が変わったかは分からない。
「クレーエン当たりじゃ」
「分かった」
深い青色に変色した。
クレーエンが剣を抜いて近づくと、魔族は咄嗟に近くの女性を盾にする。
クレーエンは地面を蹴って魔族に迫り一気に距離を詰める。
魔族は手から魔法を放とうとするが間に合わずにクレーエンに剣の刃を寝かせて殴られる。
痛みで手を離すと次に蹴りを食らって地面に倒れた。
人質がいないとなれば拘束して終わりだ。
「眠り薬をくれ」
「ほれ」
手足を押さえつけて魔族に錠剤を飲ませる。
気絶して脱力した。
「一人目じゃな。トゥーゲント連合の者に運ばせよう」
「ああ。門に戻ろう」
クレーエンたちは四体拘束した。
受付時間を終えると城門を閉めてクレーエンたちは誘導した国民の元へ向かう。
ディーレの護衛も兼ねてである。
国民は城のバルコニーを眺めてじっと待つ。
ディーレはドレスアップされて宝石で装飾された冠を被った状態で現れる。
硬い表情が威厳を感じさせるが、関係者からすれば、
「緊張しておるな」
「ドレスが膨らんでいて分からないが足が震えてそうだな」
「じゃな」
ラメッタが作った筒状の拡声器を掲げる。
ディーレの傍では従者が頭を下げて佇む。
拡声器の調子を確認すると口から何度も息を漏らして。
カッと目を見開いて国民を見る。
「私はバオム国の姫にして国王代理のディーレでしゅ」
即刻舌を噛む。
ラメッタからは遠くて見えないが、ディーレはひりひりした舌に悔しさを滲ませながら、失敗で緊張を加速させて手を震わせ、高まって熱い汗を流して、目尻に涙を溜めている。
「あ、やった。どうしよ?」
「ラメッタ、俺たちは何もできない。だがディーレ姫は立派だ、きっと挽回する」
「クレーエンはディーレ姫を認めるのじゃな」
「実力があるなら当然だろ」
「じゃな。頑張れ、ディーレ姫」
朝日にラメッタの頬が黄色っぽく、栽培される小麦のように照らされて輝く。
祈るように手を合わせていた。
「頑張れ」
相棒の必死に祈る様子を見てしまえばクレーエンも祈るしかない。
ただラメッタに合わせて手を合わせるのは視線が気になる。
「私はみなさんの協力を得ることでバオム国の統一を実現しました。オシュテン派のオシュテンさん、トゥーゲント連合のシュヴァルツさんの協力も大きなきっかけです。一度乱れてしまって王族して大変申し訳ないと思っています」
ディーレは深く頭を下げた。
騒がしくなる。
だが、あまりに長く頭を下げるものだから誰もが姫をじっと見ることにした。
その誠意から目が離せなくなったのだ。
ディーレは頭を上げて続ける。
「改めてみなさんをバオムの民として、バオム国のために働き、バオム国からの恵みを享受できるようにしていきたいと思っています。戸籍を新たに作り直します。バオム国はここから大きく発展して豊かになっていきます。もう一度王族を信じてくれませんか?」
ディーレが声を大にして言う。
「ふえええええッ! 良かった、良かったのじゃああっ」
ラメッタは鼻水を垂らして号泣していた。
うるさく泣くものだから注目を浴びてしまっている。
バルコニーにいるディーレにも気づかれた。
ディーレは片目を器用に閉じてラメッタに合図を送る。
「良かったのじゃ」
パチパチと拍手を送る。
「ラメッタ様?」
「おお」
トゥーゲント連合としてラメッタが開発したものを栽培している青年だった。
青年の周りにはトゥーゲント連合に所属している人々が集まっている。
ラメッタの拍手に答えて手を叩く。
それが伝わって拍手が大きくなっていく。
大地が唸るような盛大な拍手に、ディーレは少し照れくさそうにするのだった。
ディーレが新たに戸籍を作成することに決めたのだ。
そのため祭りの前に城に来てもらい、戸籍を作るために書類を提出することにしていた。
そのついでに魔族かどうかをラメッタの魔道具で判断するという作戦だ。
バシュルスを逃してしまった以上、ラメッタが魔族か人間かを区別する魔道具を持っていることが知られてしまっている状態だ。
それでもこの作戦で進めるのは、魔族を見つけるためではなく、人間と確信できるものの戸籍を作ることにあった。あとは戸籍を持っていない者を調べ上げれば良いという考えである。
ちなみに、ラメッタと城の従者、執事が魔道具を使って検査している。
ラメッタの護衛としてはクレーエンが付く。
詳しい作戦や計画については、どこまでなり替わられているか、どこで情報が洩れるのか判断ができなかったために、城の従者、執事でさえも知らない。
「ディーレ姫大丈夫じゃろうか」
「人前で話す経験が少ないのか?」
「国がずっと荒れておったし機会に恵まれておらぬからな」
「心配か?」
「上手く演説してくれると思っておるが。もしかしたらってな」
「お母さんかよ」
「わしに子供がいたらこういう気持ちになることも少なくないかも」
「一体何才のつもりなんだよ」
「そうじゃな。わしはきっと自分でも分からぬ。どういう考えをしたら子供か、大人か、貫禄がある女性か。わしは一体何者じゃろか」
「知るか、難しい」
「じゃな」
ラメッタは門の上に白い花を半円状に編んだものを設置した。
色が変われば魔族が通ったことになる。
一斉に何人も見ることができるが誰で色が変わったかは分からない。
「クレーエン当たりじゃ」
「分かった」
深い青色に変色した。
クレーエンが剣を抜いて近づくと、魔族は咄嗟に近くの女性を盾にする。
クレーエンは地面を蹴って魔族に迫り一気に距離を詰める。
魔族は手から魔法を放とうとするが間に合わずにクレーエンに剣の刃を寝かせて殴られる。
痛みで手を離すと次に蹴りを食らって地面に倒れた。
人質がいないとなれば拘束して終わりだ。
「眠り薬をくれ」
「ほれ」
手足を押さえつけて魔族に錠剤を飲ませる。
気絶して脱力した。
「一人目じゃな。トゥーゲント連合の者に運ばせよう」
「ああ。門に戻ろう」
クレーエンたちは四体拘束した。
受付時間を終えると城門を閉めてクレーエンたちは誘導した国民の元へ向かう。
ディーレの護衛も兼ねてである。
国民は城のバルコニーを眺めてじっと待つ。
ディーレはドレスアップされて宝石で装飾された冠を被った状態で現れる。
硬い表情が威厳を感じさせるが、関係者からすれば、
「緊張しておるな」
「ドレスが膨らんでいて分からないが足が震えてそうだな」
「じゃな」
ラメッタが作った筒状の拡声器を掲げる。
ディーレの傍では従者が頭を下げて佇む。
拡声器の調子を確認すると口から何度も息を漏らして。
カッと目を見開いて国民を見る。
「私はバオム国の姫にして国王代理のディーレでしゅ」
即刻舌を噛む。
ラメッタからは遠くて見えないが、ディーレはひりひりした舌に悔しさを滲ませながら、失敗で緊張を加速させて手を震わせ、高まって熱い汗を流して、目尻に涙を溜めている。
「あ、やった。どうしよ?」
「ラメッタ、俺たちは何もできない。だがディーレ姫は立派だ、きっと挽回する」
「クレーエンはディーレ姫を認めるのじゃな」
「実力があるなら当然だろ」
「じゃな。頑張れ、ディーレ姫」
朝日にラメッタの頬が黄色っぽく、栽培される小麦のように照らされて輝く。
祈るように手を合わせていた。
「頑張れ」
相棒の必死に祈る様子を見てしまえばクレーエンも祈るしかない。
ただラメッタに合わせて手を合わせるのは視線が気になる。
「私はみなさんの協力を得ることでバオム国の統一を実現しました。オシュテン派のオシュテンさん、トゥーゲント連合のシュヴァルツさんの協力も大きなきっかけです。一度乱れてしまって王族して大変申し訳ないと思っています」
ディーレは深く頭を下げた。
騒がしくなる。
だが、あまりに長く頭を下げるものだから誰もが姫をじっと見ることにした。
その誠意から目が離せなくなったのだ。
ディーレは頭を上げて続ける。
「改めてみなさんをバオムの民として、バオム国のために働き、バオム国からの恵みを享受できるようにしていきたいと思っています。戸籍を新たに作り直します。バオム国はここから大きく発展して豊かになっていきます。もう一度王族を信じてくれませんか?」
ディーレが声を大にして言う。
「ふえええええッ! 良かった、良かったのじゃああっ」
ラメッタは鼻水を垂らして号泣していた。
うるさく泣くものだから注目を浴びてしまっている。
バルコニーにいるディーレにも気づかれた。
ディーレは片目を器用に閉じてラメッタに合図を送る。
「良かったのじゃ」
パチパチと拍手を送る。
「ラメッタ様?」
「おお」
トゥーゲント連合としてラメッタが開発したものを栽培している青年だった。
青年の周りにはトゥーゲント連合に所属している人々が集まっている。
ラメッタの拍手に答えて手を叩く。
それが伝わって拍手が大きくなっていく。
大地が唸るような盛大な拍手に、ディーレは少し照れくさそうにするのだった。
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