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三章 バオムの姫
11話:これからの話(1)
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ラメッタはゆっくりとディーレに近づく。
間に入ってきた執事がじっとラメッタを睨んだ。
「いくらラメッタ様とはいえ、これ以上の無礼は許しません」
執事は短刀を構えて言う。
その様子を見ていたクレーエンは特に気にすることもなく焼き菓子を口にする。
「無礼ではない。のう、ディーレ姫。わしの案に乗らないか? 国をもう一度治め、権力を王族貴族に戻す最後のチャンスじゃ。今や、テロ組織は二個までまとまった。一方はわしを崇拝しておる。わしと組まないか?」
「でも私はテロ組織と組むなんて」
「元は一般国民。おぬしがすべきことをせよ」
「これ以上悪化したら本当に」
「既に国として破綻しておる。どうする? 案に乗る条件はわしと握手することじゃ。その物騒な執事が邪魔じゃな」
「私は、この国のためなら何でもできます。誰かの嫁として差し出されることにも耐えられます。約束してください。ラメッタ様の案はこの国と国民のためであると」
「もちろん」
「なら」
ディーレは執事を制して前に出る。
そしてラメッタと握手をした。
ラメッタは跳んでラメッタの懐へ。
「え? あ、温かい」
ディーレの背中を優しく撫でる、小さな手。
「頑張ったな、姫よ。おぬしを尊敬しよう。わしが参上した、この国はきっと良くなる」
「どうしてここまで」
「努力は報われるものじゃから。わしは七十八、もっと早く気づいておればバオムは崩壊寸前までいくことはなかった。長生きした者としての責任もある。じゃあ焼き菓子食べるぞ」
「はい、ラメッタ様」
二人は席に戻った。
一時間ほど焼き菓子を食べると先にラメッタがテーブルに伏せる。
ディーレは嬉しそうに食べ続けた。
「私の勝ちです」
「そ、そうじゃな」
ラメッタはお腹を押さえて震えていた。
クレーエンは呆れたままだ。だが、一瞬子供っぽく笑う。
「本当に馬鹿だな」
その声を聞いていたのは、意識が朧げな末っ子チルカだけだった。
「今日は城に泊まればいいのか?」
「他にどこに泊まるんだよ」
「テロ組織」
「バオムとしてもエアデ王国の人間を外で一泊させるのはまずいだろうが」
「それもそうじゃな。わくわくするな、クレーエン」
「どうして?」
「この国がどんどん良くなるぞ」
「魔法を使えなくした大罪人とは思えないな」
「あれは実験が失敗に限りなく近い成功だったからじゃ」
「変な奴だ」
「変じゃないもん。美少女で優秀な魔道具職人じゃもん!」
「『世界樹』荒らしてどこが優秀(笑)なんだか?」
クレーエンは鼻に曲げた人差し指を当てて微笑む。
ラメッタは眉に力を入れてクレーエンを睨むが、クレーエンは気にする様子もない。
解散して。
「ラメッタ様、寝室はこっちです」
「おお」
ラメッタはディーレに引かれて部屋まで。
四人ほど寝られるようなベッドに一人分の枕が置いてある。
ラメッタはディーレを見る。
花畑にいるような穏やかな表情だった。
「ふわふわの服に着替えましょう!」
「お、おう」
「ラメッタ様、実年齢は七十八でしたっけ?」
「そうじゃが?」
ディーレの豊満なそれが姿を現す。
それが果実であれば相当甘そうである。
が、それは波を打つようにして揺れる。
「ひいいいい」
「ラメッタ様、どうしましたか? 一体何に怯えて」
「ガキ」
「?」
ディーレは寝る用の服を持ったまま固まる。
ラメッタの小言が聞こえなかったらしい。
「ラメッタ様?」
「このガキ、わしの前でぽよぽよと、ぽよぽよと。ふわふわしよって。こうしてやる!」
ラメッタはディーレのたわわなそれに襲い掛かると両手を広げて跳んだ。
しかし躓いて。
それに目掛けて倒れた。
一大事にならなかったのは柔らかいそれのおかげであるため、ラメッタは大人しくなった。
着替えを終える。
「昔は窓のある部屋を寝室にしていたんですけどね」
「そうじゃったか」
「夜空が気持ちよくて。私、バオム国を愛しているんです。魔王軍が侵攻を止めて、ちゃんと経済力を付けて、国民のみんなが幸せだって思える国にしたい」
「いつまで弱音を吐いておるんじゃ。最強のわしが手伝うと言っておろ。強い指導者を目指すべきじゃからの、おぬしは」
「精進します」
「ふ。久しぶりのふかふかベッドじゃ」
「そうなんですね。貴族や王族がこんなにも良質なベッドで眠っていると知ったら、今の貧しいバオムでは不満が募って当然ですよね」
「知るか。じゃがの」
「はい」
「今悩んでいるすべては国の王としては重要じゃな。王の資質がある」
「そうですね!」
ディーレは子供らしくベッドに飛び込む。
ラメッタも勢いよく飛ぶと、ディーレの身体が少しだけ浮いた。
「私、友達初めてです」
「わし友達?」
「はい!」
「友達じゃな」
ラメッタとディーレは向かい合うように向きを変えた。
「「えへへ」」
二人は手を握り合って。
ディーレの不安な夜はのんびりと過ぎていくのだった。
朝。
「おい、クソガキ」
「なんじゃ。幼気な乙女の園に! わし、美少女やぞ。それに、ディーレちゃんも美少女やもん」
「ふわあ……。ラメッタ様、朝ですか」
ディーレは手を口に添えて大きく欠伸をした。
起き上がると髪がボサボサなクレーエンの姿が。
「ふぁっ。どうして殿方が秘密の園に」
「ディーレ様もラメッタも起きろ。昼だぞ」
「嘘つけ。わしはこれでも早起きの達人じゃ」
「そうですわ。私は一国の姫、睡魔に負けるわけが」
「なら来いよ。高い高いしてるお天道様を見せてやるよ」
「何を言っておるんじゃ。わしの方が年上、朝と言えば朝じゃ」
クレーエンは背中に準備していた大剣を抜く。
「ショートカットヘアのつもりだったがさらに短くするか」
「わー、わー。わしのお団子ツインテール切ったくせに、さらにわしの髪を切ろうなんて流石魔剣じゃ」
ラメッタは慌てて距離を取る。
立ち上がって自身の鼻を摘まむと、
「まあ? わしが調整した剣じゃし切れ味は最高じゃろうな。じゃが、そう易々と切らせるわけにはいかないのじゃ」
「じゃあどうするんだ?」
「ご、ごめんなさいします。隣の美少女が温かくていい匂いで寝すぎたのじゃ」
「はあ?」
「私も連日の疲れがあって、ラメッタ様の話を聞いていたら安心してしまって」
「じゃあディーレ様は無罪だな。おい死刑囚(笑)、お前は罰だ」
「痛いの嫌じゃが」
「簡単な話、これからする会談の準備をする。テロ組織と話をつけに行くぞ。日程決める。姫様は留守番な」
「そんなあ」
ディーレはその場でぺたんと膝を着けてしまった。
「分かった。もし危険だったらクレーエンが助ける?」
「そういうことになっている」
「そういうことになっている? ……怖いのじゃけど。知っておるか、あの組織私を誘拐してるんじゃぞ?」
「ああ」
クレーエンはラメッタをお姫様だっこして部屋を出る。
つまりラメッタは逃げられない。
「この鬼ガキッ!」
ラメッタの叫びが天高く響く。
しかしクレーエンはお構いなしだ。
間に入ってきた執事がじっとラメッタを睨んだ。
「いくらラメッタ様とはいえ、これ以上の無礼は許しません」
執事は短刀を構えて言う。
その様子を見ていたクレーエンは特に気にすることもなく焼き菓子を口にする。
「無礼ではない。のう、ディーレ姫。わしの案に乗らないか? 国をもう一度治め、権力を王族貴族に戻す最後のチャンスじゃ。今や、テロ組織は二個までまとまった。一方はわしを崇拝しておる。わしと組まないか?」
「でも私はテロ組織と組むなんて」
「元は一般国民。おぬしがすべきことをせよ」
「これ以上悪化したら本当に」
「既に国として破綻しておる。どうする? 案に乗る条件はわしと握手することじゃ。その物騒な執事が邪魔じゃな」
「私は、この国のためなら何でもできます。誰かの嫁として差し出されることにも耐えられます。約束してください。ラメッタ様の案はこの国と国民のためであると」
「もちろん」
「なら」
ディーレは執事を制して前に出る。
そしてラメッタと握手をした。
ラメッタは跳んでラメッタの懐へ。
「え? あ、温かい」
ディーレの背中を優しく撫でる、小さな手。
「頑張ったな、姫よ。おぬしを尊敬しよう。わしが参上した、この国はきっと良くなる」
「どうしてここまで」
「努力は報われるものじゃから。わしは七十八、もっと早く気づいておればバオムは崩壊寸前までいくことはなかった。長生きした者としての責任もある。じゃあ焼き菓子食べるぞ」
「はい、ラメッタ様」
二人は席に戻った。
一時間ほど焼き菓子を食べると先にラメッタがテーブルに伏せる。
ディーレは嬉しそうに食べ続けた。
「私の勝ちです」
「そ、そうじゃな」
ラメッタはお腹を押さえて震えていた。
クレーエンは呆れたままだ。だが、一瞬子供っぽく笑う。
「本当に馬鹿だな」
その声を聞いていたのは、意識が朧げな末っ子チルカだけだった。
「今日は城に泊まればいいのか?」
「他にどこに泊まるんだよ」
「テロ組織」
「バオムとしてもエアデ王国の人間を外で一泊させるのはまずいだろうが」
「それもそうじゃな。わくわくするな、クレーエン」
「どうして?」
「この国がどんどん良くなるぞ」
「魔法を使えなくした大罪人とは思えないな」
「あれは実験が失敗に限りなく近い成功だったからじゃ」
「変な奴だ」
「変じゃないもん。美少女で優秀な魔道具職人じゃもん!」
「『世界樹』荒らしてどこが優秀(笑)なんだか?」
クレーエンは鼻に曲げた人差し指を当てて微笑む。
ラメッタは眉に力を入れてクレーエンを睨むが、クレーエンは気にする様子もない。
解散して。
「ラメッタ様、寝室はこっちです」
「おお」
ラメッタはディーレに引かれて部屋まで。
四人ほど寝られるようなベッドに一人分の枕が置いてある。
ラメッタはディーレを見る。
花畑にいるような穏やかな表情だった。
「ふわふわの服に着替えましょう!」
「お、おう」
「ラメッタ様、実年齢は七十八でしたっけ?」
「そうじゃが?」
ディーレの豊満なそれが姿を現す。
それが果実であれば相当甘そうである。
が、それは波を打つようにして揺れる。
「ひいいいい」
「ラメッタ様、どうしましたか? 一体何に怯えて」
「ガキ」
「?」
ディーレは寝る用の服を持ったまま固まる。
ラメッタの小言が聞こえなかったらしい。
「ラメッタ様?」
「このガキ、わしの前でぽよぽよと、ぽよぽよと。ふわふわしよって。こうしてやる!」
ラメッタはディーレのたわわなそれに襲い掛かると両手を広げて跳んだ。
しかし躓いて。
それに目掛けて倒れた。
一大事にならなかったのは柔らかいそれのおかげであるため、ラメッタは大人しくなった。
着替えを終える。
「昔は窓のある部屋を寝室にしていたんですけどね」
「そうじゃったか」
「夜空が気持ちよくて。私、バオム国を愛しているんです。魔王軍が侵攻を止めて、ちゃんと経済力を付けて、国民のみんなが幸せだって思える国にしたい」
「いつまで弱音を吐いておるんじゃ。最強のわしが手伝うと言っておろ。強い指導者を目指すべきじゃからの、おぬしは」
「精進します」
「ふ。久しぶりのふかふかベッドじゃ」
「そうなんですね。貴族や王族がこんなにも良質なベッドで眠っていると知ったら、今の貧しいバオムでは不満が募って当然ですよね」
「知るか。じゃがの」
「はい」
「今悩んでいるすべては国の王としては重要じゃな。王の資質がある」
「そうですね!」
ディーレは子供らしくベッドに飛び込む。
ラメッタも勢いよく飛ぶと、ディーレの身体が少しだけ浮いた。
「私、友達初めてです」
「わし友達?」
「はい!」
「友達じゃな」
ラメッタとディーレは向かい合うように向きを変えた。
「「えへへ」」
二人は手を握り合って。
ディーレの不安な夜はのんびりと過ぎていくのだった。
朝。
「おい、クソガキ」
「なんじゃ。幼気な乙女の園に! わし、美少女やぞ。それに、ディーレちゃんも美少女やもん」
「ふわあ……。ラメッタ様、朝ですか」
ディーレは手を口に添えて大きく欠伸をした。
起き上がると髪がボサボサなクレーエンの姿が。
「ふぁっ。どうして殿方が秘密の園に」
「ディーレ様もラメッタも起きろ。昼だぞ」
「嘘つけ。わしはこれでも早起きの達人じゃ」
「そうですわ。私は一国の姫、睡魔に負けるわけが」
「なら来いよ。高い高いしてるお天道様を見せてやるよ」
「何を言っておるんじゃ。わしの方が年上、朝と言えば朝じゃ」
クレーエンは背中に準備していた大剣を抜く。
「ショートカットヘアのつもりだったがさらに短くするか」
「わー、わー。わしのお団子ツインテール切ったくせに、さらにわしの髪を切ろうなんて流石魔剣じゃ」
ラメッタは慌てて距離を取る。
立ち上がって自身の鼻を摘まむと、
「まあ? わしが調整した剣じゃし切れ味は最高じゃろうな。じゃが、そう易々と切らせるわけにはいかないのじゃ」
「じゃあどうするんだ?」
「ご、ごめんなさいします。隣の美少女が温かくていい匂いで寝すぎたのじゃ」
「はあ?」
「私も連日の疲れがあって、ラメッタ様の話を聞いていたら安心してしまって」
「じゃあディーレ様は無罪だな。おい死刑囚(笑)、お前は罰だ」
「痛いの嫌じゃが」
「簡単な話、これからする会談の準備をする。テロ組織と話をつけに行くぞ。日程決める。姫様は留守番な」
「そんなあ」
ディーレはその場でぺたんと膝を着けてしまった。
「分かった。もし危険だったらクレーエンが助ける?」
「そういうことになっている」
「そういうことになっている? ……怖いのじゃけど。知っておるか、あの組織私を誘拐してるんじゃぞ?」
「ああ」
クレーエンはラメッタをお姫様だっこして部屋を出る。
つまりラメッタは逃げられない。
「この鬼ガキッ!」
ラメッタの叫びが天高く響く。
しかしクレーエンはお構いなしだ。
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