世界樹を暴走させたマッドサイエンティスト、死刑だけは嫌だとごねる!

アメノヒセカイ

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二章 いざ、バオム国へ

4話:従属国バオム

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「ぬわーっ! 忘れ物じゃ」
「騒ぐな、クソガキ」
「クレーエン、十七のくせ。ガキはお前じゃあ!」
「何を忘れたんだ? もう半分は進んだ。バオム国でも買えるだろ?」
「それは無理じゃ、無理じゃ。わしは大人になるんじゃ」
「なんだそれ」
「一日だけ呪いを無視する薬じゃ。毎日飲めば美少女から美女になれるんじゃ! また飲み忘れた」
「それ、三日間いたけど飲んでるの見たことないぞ」
「な、なああ。どうして気づかせてくれなかったんじゃ」
「それ見たことないぞ」
「ぬううう。このままではいつまで経っても美少女じゃ」
「不老なんだろ。これから飲めばいつかは成長できるってことだ」
「みょ、みょ、みょーん」
「おい、苦いものを食べたような顔をするな。反応に困る」
「でもー、でもなのじゃ」
「前線の魔王軍を殲滅する。それから老いる薬を取りに行けばいい」
「老いる薬とはなんじゃ。一日だけ呪いを無視する薬じゃ」
「老いる薬(笑)、だろ?」
「クソガキめ。じゃが、早く倒すってのは同意じゃな」

 馬車に乗って移動する。
 クレーエンは剣と魔道具、ラメッタは魔法薬と魔道具を作るための工具などを袋に詰めている。それぞれの袋は大人が一人入れるほど大きい。
 馬車は全部で三台ある。
 真ん中の馬車にラメッタとクレーエン、バオムから来た従者が二人乗っている。
 前後の馬車には傭兵が二人ずついるらしい。

「バオムは王国の従属国で、魔王軍との前線を管理する国でもある。だが、近年治安が悪化していると聞いた」
「はい。クレーエン様の言う通りです。元々は森林資源や薬草、果実を輸出していましたが中途半端な開発によって森林を失い、金となるものがなくなりました。今では兵を出すことで王国から支援金を受け取って成り立っています。強さがすべての国になってしまいました。犯罪率も上昇を続け、今では国が犯罪を管理することも不可能になっております」
「申し訳ありません」

 従者の二人が頭を下げる。

「強さがすべてか悪くない」
「クレーエンは戦闘狂じゃの。か弱い少女からすると恐怖しかないわい。わしのような美少女が暮らすのは厳しそうじゃの。守れよ、クレーエン」
「死刑囚(笑)のくせに生意気な」
「なんじゃ、その(笑)は。クソガキのくせに! クソガキのくせに」
「治安は本当に悪いので、クレーエン様もお気を付けください。そして、ラメッタさんの年頃が一番危険かもしれません」
「どうしてわしがさん付けなのじゃ」
「罪人には様を付けるわけにはいかず」
「まあ良い。それにしてもバオムは不思議じゃの、七十八才が一番狙われるって」

 クレーエンがラメッタの額に向けた指を弾く。
 ラメッタは前髪を上げて赤くなった額に手を当てた。

「ひりひりするのじゃ!」
「十三才くらいの見た目なんだろ。そっちに決まっている」
「もう、痛いのじゃ。怖いところは嫌なのじゃ」
「逃げたら処刑だぞ」
「わしはもう終わり」
「世界樹に手を出すからだろ」
「仕方ないじゃろ!」
「はいはい。で、その治安の悪さで対抗できてるのか?」
「力ある者にとっては無法地帯。一応魔王軍を食い止めることはできているものの、国家転覆が囁かれています。それに、現在もバオムが彼らに払う代償は大きく、姫君の一人を彼らのリーダーに差し出せとのこと」
「最低な輩じゃな。わしらの仕事は魔王軍と戦うことと聞いておる。じゃが、どうするクレーエン」
「何をだ?」
「ガキなら英雄となるシチュエーションは好物じゃろ?」
「分かった。強いやつが偉いんだろ? 俺に任せろ」
「それでいいのじゃ」

 四日ほど走らせ続けてようやく辿り着いた。
 巨大な門をくぐると中心にある城が見える。

「まるで砂漠じゃの。それに砂埃がすごいのじゃ」
「ああ。……馬車を止めろ」
「クレーエン? どうした」
「気づかないのか?」
 
 爆音。
 馬車は吹き飛んで台は砕けていった。
 クレーエンは咄嗟に体勢を変えて建物の屋根に着地する。
 視界が悪い。
 ……。
 どうなった?
 呼吸を整えて跳ぶ。
 馬の亡骸に近づく。
 従者は一人重傷、もう一人は動ける。
 傭兵は軽症のみ。
 だが。

「おい、ラメッタはどこへ行った?」
「持ってかれた」
「はあ?」
「テロ組織に誘拐された」

 クレーエンは馬車に乗っていた袋を探す。
 クレーエンの荷物もラメッタの荷物も無事らしい。

「大剣もあるな。強いやつがルールだよな?」

 従者は鋭い目つきのクレーエンから一瞬目を反らす。
 その後、クレーエンは頭を掻いた。

「クレーエン様、まずは城へ行くべきです」
「怪我人もいるからな。だがその前にだ。隠れているやつらを斬らせろ」

 クレーエンは大剣を鞘から抜いて天高く上げる。

「出てこい。強いやつがルールなんだろ?」

 すると剣を持った男たちがぞろぞろと現れた。
 クレーエンを見て、ひひひと笑い声を上げる。
 一斉に飛び掛かった。
 クレーエンは一振りで男たちを後方へ。
 男たちから笑みが消えた。
 連携を取るようにして一人ずつ向かってくる。
 クレーエンは容赦なく斬り捨てた。
 
「こいつ!」

 男の一人が向きを変えて逃げ出す。
 クレーエンは大剣を投げた。
 横腹を貫いて男は倒れる。

「クレーエン様、一人くらいは捕まえてラメッタさんの場所を聞くべきでは」
「……。そうだな」
「隠れている者は」
「やってしまった。全員斬ったな」

 こうして、傭兵四人、従者二人、クレーエンで歩いて城へ向かうことになった。
 傭兵たちがクレーエンを見て話しをしている。
 いつものことだ、クレーエンは思う。

「お前、すげえな」

 傭兵の一人が言う。
 クレーエンは予想外の発言に照れてしまった。

「これくらいは」

 なんて格好つけた発言をしてしまう。
 それから城に着いた。
 執事の男の指示で応接間へ案内された。

「どんな厄介ごとであれ、ラメッタの捜索が先だ」
「そうですね」
「死んでいたら俺の役目は終わりだ。あいつの監視が俺の仕事だからな。生きているなら合流する。これも監視のためだ」

 バオムに入って速攻爆破攻撃、誘拐に遭うとは思わなかった。
 相当治安が悪い国らしい。


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