規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

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最終章 規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる! 149~

その9 ヒウタと贖罪

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 例のスイーツパーティを行った会場にて。
 二日後に行う『バレンタインイベント』の最終調整や物の配置決めを行っていた。
 ショーケースもいくつも並んでいて、どうやらカワクロがプロデュースしているチョコレートケーキの店もあるらしい。

「というわけで、スピードチャットは好評ですね。私がほぼ一人でシステム開発したので大幅な黒字です。言うことはありませんか、シュイロさん」
「……。怒っているか?」
「私にはブラックですよね。本当は断ろうと思っていましたが、来年度からヒウタさんを社長にすると言っていたので嫌々やりましたよ。人質を取るなんて卑怯です!」

 人の顔程度の球体が某お掃除ロボットのような車輪を付けて滑るように移動している。
 その直上には、美少女キャラが映し出されていた。
 最強人工知能『ふぉーている』、最近はシステム開発でも使っているらしい。
 そのため、トアオの仕事は、少しは減っているが、『ふぉーている』を開発したのはトアオであるため、結局はトアオ一人でやっているようなものだ。

「賑やかじゃないか? ボクはまだまだ仕事が残っているというのに」

 高身長ボクっ娘のシフユである。

「スピードチャットが流行っている話ですよ。シフユさん、そういえばまた男性になりすましてスピードチャット使っていましたよね?」
「ボクのトーク力を使えば、隙間時間にたくさん出会えるからかな」
「無法すぎます。規約違反ですよ」
「悪い悪い。気を付けるかな」
「気を付けるも何もないのに。ところで、シフユさんがここにいるなら、カワクロさんはどこにいますか?」

 ……。

 シフユは後ろの柱を指差す。
 小さい丸テーブルとソファが置いてある自販機スペースである。

「ヒウタさん、ちょっと意識を失ってもらえますか?」
「え? どうしたの、トアオさん」
「ヒウタさんの世界にはカワクロさんはいないことにしておく必要がありますが、今から少しカワクロさんと話したいので。というわけで意識を削いでいいですか?」
「え?」
「はい。『ふぉーている』くんに頑張ってもらって、ヒウタさんの意識のみを削ぐ信号を出します。ついでに、シフユさんのスマホに電磁波を飛ばしてぶっ壊します。規約違反をした以上、その覚悟があるはずですから」

 と物騒なことを言っていると、柱に隠れていた小柄な少女がひょいと姿を現した。
 ワンピース姿で、普段よりも明るい印象である。
 トアオはカワクロの姿を見て冷や汗をかき、

「どうしておしゃれをしているんですか!」
「しっかりした服で仕事をしているだけなの。うちのチョコレートケーキを参加者特典にしている以上、私は重要なポジションになるから」
「ヒウタさん、何を見惚れているんですか」
「いや、そうじゃなくて。……。えっと、久しぶりです。期末テスト無事にすべての単位を取ることができました。ありがとうございました」
「うん。私はヒウタの先輩、またいつでも助けてあげるの」

 カワクロが言うと、トアオが袖を噛みながら、

「きいいい。ヒウタさんはもうカワクロさんの助けなんて必要ないですよ。一秒たりともヒウタさんを渡しませんよ。べー、だ」

 舌を出して挑発する。

「ヒウタ、一言だけ言わせて」

 カワクロは振り返って持ち場へ一歩ずつ戻る。
 しばらくして。
 ここなら、恥ずかしくても、この距離なら。

「私にとってもヒウタは魅力的だったよ」
「カワクロさん、僕は。あなたに会えて良かった。僕も、カワクロさんの幸せを願っています」
「ふふ。琴春川九呂の人生がいつまでも暗いものではない。大丈夫、ちゃんと幸せになるの。恋愛とか人付き合いとかまだまだ難しいけど、まだ怖いけど、私に合う人はいる」

 さらに進んで。

「トアオちゃん、私もスピードチャット少しずつ使っているけど、とても良かったの。課金もしている。ありがと」
「全く。そんな優しいこと言われたら、私が大人げないみたいじゃないですか!」
「そんなことない。シフユ、戻るの」
「我が儘なお姫様だな」

 シフユも楽しそうにカワクロの隣を行く。
 シュイロはそれを見て、微笑み。

「ヒウタ。私は感謝してもしきれないな」

 飾りつけ。
 当日の進行についての確認。

「ヒウタ、当日はカズサちゃんも来るんだぞ。それと、このポスターはな、タケシロくんに頼んだ」

 チョコレートケーキ配布場所に、ポスターを掲げる。
 竹白刀矢、マッチングアプリを使ったら異常なほどモテてしまい、たくさんの人を傷ついて、自身も傷ついた人だ。マッチングアプリを退会してからもシュイロは時々話を聞いていたらしい。

「むむ。私が知らない話ですか?」
「そうなるな」
「私が目を離した隙に、すぐヒウタさんとくっ付くので。もうシュイロさんはめちゃくちゃですよ」
「申し訳ない。トアオちゃん、当日は二人ともトラブル対応をしてもらうつもりだが、二人で見て回れる時間を作っている。楽しめよ」
「シュイロさん、ありがとうございます。シュイロさんは当日いますよね?」
「初日と最終日だけは絶対いるが、それ以外は用事が」
「一番面倒なこと押し付けようとしているところ悪いですが。私は極度の人見知りですよ、トラブル解決って。ひどくないですか?」
「分かった。時間があればできる限り来ることにする」
「本当ですよ、この赤字帝王」






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