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最終章 規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる! 149~
その8 ヒウタとバレンタイン
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ヒウタとトアオ、アキトヨ、チャコはシュイロの家に来ていた。
地下室が改装されており、円卓には等間隔で椅子が置いてある。
シュイロは「これぞ円卓会議だ!」とはしゃいでいたが、シュイロを崇拝するアキトヨだけが円卓会議に反応してテーブルと椅子と室内灯をべた褒めしていた。
「なあ、ヒウタ。今日も大変だった。婚活の帰りに数人にしつこく言い寄られたり、ストーキングされたりで。結局倒してしまったが」
ヒウタは聞き間違いかと思ってしまった。
「え? 倒したんですか。シュイロさんは強いって聞いていましたけど」
「そうよ。私と同じく喧嘩が強くて、トアオちゃんのように機械にも強くて、シフユさんのように美的センスもあって、カワクロさんのように舌や嗅覚が敏感で、ちなみに、『嫉妬』少女であるメリアさんのように洗脳もできるわ。はあ、洗脳されたい! どうして彼氏を作るんだ? って羨ましそうに言われたい、そのためなら彼氏を何人でも作れるわ!」
兵器級に強い人間が、シュイロが絡むと変態で、ちょっとおかしな思想の持ち主であることはヒウタにとって恐怖以外のなにものでもなかった。
「話はさておき。今日来てもらったのは今年度最後のイベント、恋の祭典『バレンタイン』だぞ!」
「恋の採点? あなたは百点中三十点です。不合格、みたいな感じ?」
シュイロがお題を提示すると、チャコが面倒そうにボケたことを言う。
チャコは一部闇医者をしていたが本物の医師も目指している。
人体好きの大変態であっても、医師国家試験が近づけば猛勉強をするのだ。
疲れていたが、議論の場に人が欲しいとのことでシュイロに呼ばれた。
「祭りだぞ」
「ふーん。チョコとチャコって似ているね。それはさておき、スイーツを出すってことはカワクロちゃんの協力が不可欠だし、おしゃれに行くならシフユさんにも手伝ってもらうことになるか。で、いつやるの、赤字帝王」
「ん? 赤字帝王? 今回は黒字だぞ」
「会場使ってやる企画の話だと?」
チャコはシュイロの扱いに慣れている。
どうやらアプリ上で、有料で参加できるイベントで黒字を目指し、会場を使って行うイベントはいつも通り赤字で行うらしい。
アキトヨは愉快そうにそれでこそシュイロさん! とはしゃいでいる。
トアオもチャコも呆れていた。
「僕らはどこまで判断すればいいですか?」
「カワクロちゃんとシフユちゃんの協力は私が要請する。だから案を出し合うところをやりたいんだ」
「つまりですね、ヒウタさん。これから社長になるとしてその引継ぎも兼ねてですよ」
「え?」
トアオが言うとヒウタは驚いていた。
「そういう意味でもある」
シュイロは遠慮した様子で言う。
ホワイトボードに『愛の祭典』と書いて目的を掲げてみる。
議論としては目的をひとまず上げて、そこから利用者とのニーズと照らし合わせながら考えていくことになった。
「ここで、超絶有能なトアオ様の提案ですね! 最強人工知能『ふぉーている』を用いたマッチングアプリの新機能『スピードチャット』のデモをしたいです」
「それは何ですか?」
トアオの提案にヒウタが質問をすると、トアオは嬉しそうにプロジェクターを取り出し、パソコンを接続する。
発表資料を表示した。
スピードチャットとは時間があるときに利用できる機能で、自動で男女のチャットルームを作成し、好きに話せるというものだ。一回当たり十分から十五分で、もっと話したい場合は片方がもう一方に簡易的なマッチングを提案することができる。チャットルーム上ではもっと話したい旨を投稿することができず、時間が過ぎたあとに個別で提案を了承するか決めることができる。
その後、提案を受け入れると簡易マッチング成立となり、ファイルの添付や写真の投稿などが大幅に制限されるものの、お話を時間制限なしにすることができるらしい。
「開発が早いな。これをバレンタインと組み合わせることで話題性を作るわけだな。何かギフトのようなものを送る機能があればいいな。有料機能にすれば利用者は減ってしまうし、スピードチャットの利用回数に制限をつけ、課金すると使用回数が増えるみたいな」
「実は案があって。バレンタインチョコのポイントが自動で送られるようになっていて、一言メッセージを最後に書くことになっています。そのチョコのポイントで通常のマッチングも表示されやすくなる機能や商品購入など、有料機能を使うことができ、スピードチャットの有料版を使っても有料機能に課金するよりは安くなります」
「簡単なお試しだな、やろう。他には、」
アキトヨが手を挙げる。
「期間中に最も課金した人が一日シュイロさんを自由にできる!」
「私目当てで他の人とマッチングしていいのか?」
「ごめんなさい、駄目ですね。お菓子の家、みたいなのやってみたい!」
「それなら楽しいだろうな。それと、」
チャコが立ち上がる。
「もちろん惚れ薬。チャコレートにも多少は惚れるような成分が入っているそうだけど、私はこの国がたくさん恋をする素敵な国になってほしいもの」
「本当は?」
「イベントと言えば人が集まる、人が集まるといえば実験できる」
「チャコ、出禁だ」
「シュイロさんが試験勉強から連れ出して、どんな意見でもいいから聞かせてほしいとい言ったから。もう」
惚れ薬を拒否されるとチャコはテーブルに顔を伏せて寝たふりをする。
が、ちらちらと窺いながら瞼を開けたり閉じたりしている。
シュイロは気にせずに話を続けてしまうが。
「ヒウタは何かあるか?」
「そうですね。僕は、新たな恋を始めるきっかけになるのはもちろん。それまで続いた恋を祝えるイベントにしたいです」
「その通りだな。私はバレンタインに向けて自分の婚活も進めないとな」
恋の祭典の案について出し合う。
今から既に楽しそうだ、ヒウタは思う。
地下室が改装されており、円卓には等間隔で椅子が置いてある。
シュイロは「これぞ円卓会議だ!」とはしゃいでいたが、シュイロを崇拝するアキトヨだけが円卓会議に反応してテーブルと椅子と室内灯をべた褒めしていた。
「なあ、ヒウタ。今日も大変だった。婚活の帰りに数人にしつこく言い寄られたり、ストーキングされたりで。結局倒してしまったが」
ヒウタは聞き間違いかと思ってしまった。
「え? 倒したんですか。シュイロさんは強いって聞いていましたけど」
「そうよ。私と同じく喧嘩が強くて、トアオちゃんのように機械にも強くて、シフユさんのように美的センスもあって、カワクロさんのように舌や嗅覚が敏感で、ちなみに、『嫉妬』少女であるメリアさんのように洗脳もできるわ。はあ、洗脳されたい! どうして彼氏を作るんだ? って羨ましそうに言われたい、そのためなら彼氏を何人でも作れるわ!」
兵器級に強い人間が、シュイロが絡むと変態で、ちょっとおかしな思想の持ち主であることはヒウタにとって恐怖以外のなにものでもなかった。
「話はさておき。今日来てもらったのは今年度最後のイベント、恋の祭典『バレンタイン』だぞ!」
「恋の採点? あなたは百点中三十点です。不合格、みたいな感じ?」
シュイロがお題を提示すると、チャコが面倒そうにボケたことを言う。
チャコは一部闇医者をしていたが本物の医師も目指している。
人体好きの大変態であっても、医師国家試験が近づけば猛勉強をするのだ。
疲れていたが、議論の場に人が欲しいとのことでシュイロに呼ばれた。
「祭りだぞ」
「ふーん。チョコとチャコって似ているね。それはさておき、スイーツを出すってことはカワクロちゃんの協力が不可欠だし、おしゃれに行くならシフユさんにも手伝ってもらうことになるか。で、いつやるの、赤字帝王」
「ん? 赤字帝王? 今回は黒字だぞ」
「会場使ってやる企画の話だと?」
チャコはシュイロの扱いに慣れている。
どうやらアプリ上で、有料で参加できるイベントで黒字を目指し、会場を使って行うイベントはいつも通り赤字で行うらしい。
アキトヨは愉快そうにそれでこそシュイロさん! とはしゃいでいる。
トアオもチャコも呆れていた。
「僕らはどこまで判断すればいいですか?」
「カワクロちゃんとシフユちゃんの協力は私が要請する。だから案を出し合うところをやりたいんだ」
「つまりですね、ヒウタさん。これから社長になるとしてその引継ぎも兼ねてですよ」
「え?」
トアオが言うとヒウタは驚いていた。
「そういう意味でもある」
シュイロは遠慮した様子で言う。
ホワイトボードに『愛の祭典』と書いて目的を掲げてみる。
議論としては目的をひとまず上げて、そこから利用者とのニーズと照らし合わせながら考えていくことになった。
「ここで、超絶有能なトアオ様の提案ですね! 最強人工知能『ふぉーている』を用いたマッチングアプリの新機能『スピードチャット』のデモをしたいです」
「それは何ですか?」
トアオの提案にヒウタが質問をすると、トアオは嬉しそうにプロジェクターを取り出し、パソコンを接続する。
発表資料を表示した。
スピードチャットとは時間があるときに利用できる機能で、自動で男女のチャットルームを作成し、好きに話せるというものだ。一回当たり十分から十五分で、もっと話したい場合は片方がもう一方に簡易的なマッチングを提案することができる。チャットルーム上ではもっと話したい旨を投稿することができず、時間が過ぎたあとに個別で提案を了承するか決めることができる。
その後、提案を受け入れると簡易マッチング成立となり、ファイルの添付や写真の投稿などが大幅に制限されるものの、お話を時間制限なしにすることができるらしい。
「開発が早いな。これをバレンタインと組み合わせることで話題性を作るわけだな。何かギフトのようなものを送る機能があればいいな。有料機能にすれば利用者は減ってしまうし、スピードチャットの利用回数に制限をつけ、課金すると使用回数が増えるみたいな」
「実は案があって。バレンタインチョコのポイントが自動で送られるようになっていて、一言メッセージを最後に書くことになっています。そのチョコのポイントで通常のマッチングも表示されやすくなる機能や商品購入など、有料機能を使うことができ、スピードチャットの有料版を使っても有料機能に課金するよりは安くなります」
「簡単なお試しだな、やろう。他には、」
アキトヨが手を挙げる。
「期間中に最も課金した人が一日シュイロさんを自由にできる!」
「私目当てで他の人とマッチングしていいのか?」
「ごめんなさい、駄目ですね。お菓子の家、みたいなのやってみたい!」
「それなら楽しいだろうな。それと、」
チャコが立ち上がる。
「もちろん惚れ薬。チャコレートにも多少は惚れるような成分が入っているそうだけど、私はこの国がたくさん恋をする素敵な国になってほしいもの」
「本当は?」
「イベントと言えば人が集まる、人が集まるといえば実験できる」
「チャコ、出禁だ」
「シュイロさんが試験勉強から連れ出して、どんな意見でもいいから聞かせてほしいとい言ったから。もう」
惚れ薬を拒否されるとチャコはテーブルに顔を伏せて寝たふりをする。
が、ちらちらと窺いながら瞼を開けたり閉じたりしている。
シュイロは気にせずに話を続けてしまうが。
「ヒウタは何かあるか?」
「そうですね。僕は、新たな恋を始めるきっかけになるのはもちろん。それまで続いた恋を祝えるイベントにしたいです」
「その通りだな。私はバレンタインに向けて自分の婚活も進めないとな」
恋の祭典の案について出し合う。
今から既に楽しそうだ、ヒウタは思う。
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