規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

文字の大きさ
上 下
154 / 162
最終章 規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる! 149~

その3 ヒウタと報告

しおりを挟む
 ヒウタがシュイロに仕事を続けることを報告すると、焼肉屋で祝うことになった。
 なお、チャコも付いてきた。
 経過観察も兼ねて、とのことだ。
 治療をした者としてシュイロがはしゃぎすぎないように観察しているのでは、とヒウタは思ったが。

「見て。私が思うに、シュイロちゃんとヒウタの肉は同じ個体からなのに私は違うよ。お揃いが良かったのに。もうこうしてやる!」

 ジュージュー。
 チャコは熱くなった網の上に赤身肉を投入した。
 肉に対しての着眼点は一般的なものと大きく異なるようだが、焼肉は楽しんでいそうだ。

「アメユキちゃんの説得といっても、ほぼ妹のデートの口実でしたよ」
「ヒウタ、未成年はアルコール禁止だぞ?」
「本当、顔が赤いな。シスコンが治療対象なら私しか治せないんじゃないか?」

 もちろんヒウタはお酒を飲んでいないが、顔が赤く淡い室内灯で酔っているようにも見える。
 ヒウタのシスコン具合に呆れたチャコが言う。
 ヒウタは頬に手を置く。
 熱くなっていることに気づく。
 トングを持ったまま固まった。

「ヒウタ、家族を愛することはとてもいいことだ。キヌイちゃんに刺されてもなお、そう思う。というか、ヒウタはアメユキちゃんが本気でやめてほしいと言っていたらやめていたと思うんだ。いや、その場合にとやかく言うつもりはもちろんないが」
「ふーん。シュイロちゃん妹ちゃんに嫉妬しているわけ?」
「してないが?」
「シュイロちゃん怖い」

 と言いつつ。
 チャコは流れるような所作でシュイロの肉を食べる。
 シュイロはトングを閉じたり開いたりして、カチカチと音を鳴らす。
 チャコは飼い主の怒りを気にしない猫のように、勝手気ままに肉を焼き、ご飯を貪る。

「キヌイちゃんは強制退会したあとどうしているの?」
「電子メールで世間話をしてみてはいるが、対面では当分会えなさそうだな」
「当分は修復不可ってことね」
「そうだな。仕方ないことだ、互いに人間なのだから」
「シュイロちゃんはもう恋しないの?」
「どうだろうな」
「マッチングアプリを作って、ここまで頑張ってきて。人に恋はいいものだと言っておきながらいい思い出があると思えないわ」

 チャコはシュイロの肉を食べる。
 遠慮もなく当然のように。
 シュイロは店員を呼んで追加の肉を頼んだ。

「肉を盗っても怒らないつもり?」
「怒ってほしいのか」
「手術をした身としては心配だから。無免許だし、法律破るつもりはなかったけど。シュイロさんを縫うのは、それはそれで楽しかった」
「これがチャコちゃんだ。人体好きで、ちゃんと『七つの大罪』に相応しいだろ?」

 ヒウタは反応に困る。
 シュイロがそういえば、と真剣な眼差しになって大皿の肉をトングで移す。
 肉を盗り続けたチャコは腹が膨れたのか、息を荒くしている。
 嫌がらせのためだろうが限界そうだ。

「トアオちゃんと連絡が取れないが、ヒウタはどうだ?」
「僕もです」
「私が思うに、シュイロちゃんとヒウタがやらかしたね。距離が近すぎた」
「そんなことありますか?」

 ヒウタは否定する。
 シュイロは考え込むと顔を青くした。

「確かに傷つけたかもしれない。ヒウタの体温って縋りたくなるだろ?」
「シュイロちゃん何言っているの? やっぱりヒウタが大好きってこと? 親友のトアオちゃんと同じ人を好きになって取り合うって世の中は残酷だねえ」
「違うぞ。ヒウタは優しくて頼りたくなることは確かにあるが」
「うんうん。トアオちゃんよりもシュイロちゃんの方がスタイル良いし、男の人だったら特にそうでしょ? シュイロちゃん、二十八才? 二十七才? まだまだ旬が続くしお金も力もあるし、妻よりも優秀じゃないととか、絶対年上年下とかそういう人じゃない限りはみんな好きになっちゃうタイプだろうし」
「うむ。私はそこまでモテるか?」
「偏った人にばかり会っているのでその影響とは思うけどね」

 シュイロは仕事柄いろんな人に協力を頼むことも多いが、女性が多かったり、異常にシュイロを崇拝している人だったり、恋愛対象と見られることが少ない。
 頼む人も偏りが生じてくるため、アプローチされることも多くはない。

「シュイロちゃんって感覚がずれてきているよね。綺麗な人なのにね。で、話は変わるけどトアオちゃんに関してはどうするつもり? まあ、ヒウタがトアオ邸に行って説得するしかないだろうけど。シュイロちゃんのことは好きじゃないし恋愛関係でもない。僕が好きなのは君だけだって」

 チャコはぷぷっと吹き出して笑っていた。
 他人事だな、とヒウタは不満そうだ。

「僕は、」
「今言えることは決めるべきってことだよ。もう受け入れるか振るかで、時間もほとんどない。下手なことすれば生きては帰れないでしょ? シュイロちゃんとアキトヨちゃん、キヌイちゃん辺りがセットになって戦わないと死ぬよね。怖い怖い。仲間のときは頼もしいけど。相手はトアオちゃんだよ。最高傑作って言われるほどの。だからシュイロちゃんが愛蓮家から独立するときに真っ先に引き抜いたわけでしょ?」
「そうだな。大体の『七つの大罪』少女は私に畏怖か尊敬かまたその両方の感情を抱いている」
「トアオちゃんだけが例外だねえ。私は恋活を手伝ってもらった恩があるから尊敬しているし。他の人たちに比べればまだシュイロちゃんとは対等な気はしているけどねえ。だからシュイロちゃんと友達って言い切っているのはトアオちゃんだけってこと」
「始めはシュイロさんとトアオさんが友人ってのはよく分かっていませんでした。けど、今では分かります。それと、トアオさんが危険かどうかじゃなくて」

 ヒウタは俯く。
 ヒウタにとってトアオは仲間だ。
 一緒にオーパーツ探しをした。その後はシフユのために一緒に大学祭に来てもらった。キヌイを捕まえてもらった。
 むしろ手伝ってもらったことも多い。

「説明しに行きます。僕はトアオさんと仲良くしたいです」
「振るか受け入れるしかない。それでも、なんてこれ以上言う必要はない」
「チャコちゃん?」
「ヒウタのありのままを伝えるべき。私は妹ちゃんの代わりを探す変態シスコン野郎と思っていたが、そうでないなら大丈夫だね」
「それ、酷くないですか?」

 ヒウタが拗ねると、シュイロが肉を置く。
 さらに、チャコの皿にも置いた。

「奢りだぞ、食え」
「私がカワクロちゃんくらい食べられると思っている? 胃袋ブラックホールではないんだけど?」

 この後、チャコは店の外の公園のベンチで一時間ほど倒れていた。
 シュイロとヒウタは水を飲みながらチャコの回復を待ち、それから解散する。

「シュイロさん、トアオさんと話します」
「ああ。報告するように」
「仕事じゃないんですけど」
「ついな」

 シュイロはヒウタが仕事を復帰すると喜んでいた。
 が、ヒウタはトアオと話すことを仕事とは思っていないため訂正する。

 ヒウタはトアオに会いに行く覚悟をしたのだ。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...