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最終章 規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる! 149~
その2 ヒウタとアメユキデート
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アメユキがほしがった文庫本を二冊購入し、そろそろ大丈夫かとフードコートに戻る。
ハンバーガーを食べて、次に服屋へ。
「ねえ、どっちが似合う?」
服のサイズが合わなくなってきたそうだ。
といってもヒウタは服の値段を舐めていた。
値札を見ると顔を真っ青にして、どっちが似合うか聞かれていても、値札を手際よく覗いて、いかに安い方を選ぶか考える。
最終的にアメユキに見つかって。
「にい、嘘でしょ? 高いのは言ってくれたら私の小遣いから出したのに」
と呆れながら溜息を吐かれて。
ヒウタも明確に失敗したと気づいた。
「むう。服はやめておく。情けない」
「……ごめんなさい」
ただただ頭を下げた。
それはそれで小物感を与えるが、ここで強がるよりはましである。
「映画見る。来て」
「今からか?」
「うん。実はあと十分なので。二人分のチケットです」
「分かった」
「キャラメルと塩が半分ずつ入ったポップコーン食べてみたい」
「払うよ、大きいやつだろ?」
「うん。にい、アクション映画」
「ああ。いいぞ」
やったあ、とアメユキはヒウタに見えないようにガッツポーズをする。
アメユキの望み通りポップコーンを買って、二人の席の間に置いて映画を見ながら食べた。
途中、白熱したシーンでは手が止まって。
エンドロールで慌てて食べる。
「ゴホゴホ」
アメユキはむせて咳を繰り返していた。
ヒウタは心配そうに見て、アメユキの背中を撫でる。
明るくなる。
「まじか、慌てなくても外で残りを食べたらいいんだぞ」
「はい、はしゃぎすぎでした」
「この妹様は」
「久しぶりの兄妹デートだったから」
「まじでごめん」
「それと、シュイロさんたちともし危ないことになっても突っ込んでいい許可を出したら、また忙しくなってあまり構ってもらえないようになる。本当に危ない目に遭って、二度とお出掛けできないかもしれない」
「大事な妹様の頼みだ、だからこれからも構うつもりだし、困っていたら兄として飛んでくるつもりだ。何があっても死んでたまるか。健気に待つ妹様がいて、諦めてくたばる兄なんていないからな」
「うん。信じている」
スクリーンの外で残りのポップコーンを食べて、大きなカップを捨てた。
ヒウタはアメユキと手を繋ぐ。
アメユキは嬉しそうに笑って、何度もヒウタの顔を見ていた。
正式にヒウタがシュイロたちと関わる許可を出してくれるそうだ。
「帰る」
「ああ」
「一緒に帰るけど、明日からはシュイロさんが借りたマンションの一室に戻っていいよ」
「ありがとな。引き続き高い給料で雇ってもらうつもりだ。美味い物食べさせてやる」
「にい、これから彼女さんを作ってデートしてって時期に、散財するつもりなの?」
「怒っている?」
「私が言わないと気づかない、哀れな豚なのに」
「アメユキ、怒っている?」
「少しです。普段仲良くしている友人の真似ですから」
「アメユキ、大丈夫なのか? その友達」
「少なくともにいに言われたくない」
……確かに。
トアオとのオーパーツ探しではよく分からない組織と戦って命の危機を感じた。
キヌイのときもピンチだった。
関わる人について、大丈夫か? とはどの口が言っているんだと言われてしまう。
アメユキは賢い。
「ごめん」
「謝ってばかり」
「情けなくてごめん」
「ほら、また」
電車に乗って、最寄りの駅まで進んで、そこから自転車で帰る。
母が台所に立って夕食を作っていた。
アメユキが駆けていって手伝う。
ヒウタも手伝おうとするが、母に断られた。
台所をちらちら見ながら、ヒウタはテレビを見た。
「ヒウタ、今日は父さん早いぞ!」
と父が帰ってきた。
スーツ服のジャケットを脱ぎ捨てた瞬間、振り返った母の目が光った気がした。
父は急いでジャケットを拾って更衣室に消える。
しばらくすると私服姿で戻ってきた。
「ヒウタ、ちょっといいか?」
「うん」
ヒウタの部屋へ。
入った途端、父はヒウタに縋りついた。
「ヒウタ、アメユキちゃんとママが反抗期になったよう。最近ちょっと冷たいというか、汚物を見るような目で、……」
ヒウタがドン引きしていることに気づく。
「もしかしてヒウタも?」
「そのようですね」
「うわああん」
「たぶん、子供すぎるからでは」
「アメユキちゃん? まだ大人になってたまるか!」
「父さんがだよ」
「そうかもしれないな。ところで話が変わるが、これはできたのか? 彼女」
「恋活は奮闘中だよ」
「見舞いのときに綺麗な人ばかりだったからさ」
「もしかしてずっと見てた?」
「ん? 綺麗な人だなあって目に焼き付けようと見てたぞ。ハハハ、うちのママやアメユキちゃんには敵わないな。フハハハハハ」
「怖いし、気持ち悪い反応」
「アメユキちゃんにもママにも言われたよお」
父は気づいていないらしい。
娘や妻に冷たくされる理由しかない。
この鈍感さこそ父らしさだと、ヒウタは呆れながら思う。
「恋人を選ぶコツは一番納得できる人を選ぶことだ。話したかったのは、大事な息子が悩んでいそうだったからな。アメユキちゃんが関わることを許してくれたそうだ。だから続けるだろ?」
「はい」
「納得できる人を選べ。絶対二股とか浮気、不倫をしないと言える人を選べ。そして、悔いのないようにな、ヒウタ」
「はい。分かっています」
「それと、女の子は丁寧に扱えよ」
「雑にしませんけど?」
「ならいいが、それでも意識しておけ」
珍しく父が真面目な表情で言う。
ヒウタは心に留めておくことにした。
それからシュイロに続ける許可をもらったことを伝えるため、メッセージを送る。
すぐに返信が帰ってきて、明日会うことになった。
ハンバーガーを食べて、次に服屋へ。
「ねえ、どっちが似合う?」
服のサイズが合わなくなってきたそうだ。
といってもヒウタは服の値段を舐めていた。
値札を見ると顔を真っ青にして、どっちが似合うか聞かれていても、値札を手際よく覗いて、いかに安い方を選ぶか考える。
最終的にアメユキに見つかって。
「にい、嘘でしょ? 高いのは言ってくれたら私の小遣いから出したのに」
と呆れながら溜息を吐かれて。
ヒウタも明確に失敗したと気づいた。
「むう。服はやめておく。情けない」
「……ごめんなさい」
ただただ頭を下げた。
それはそれで小物感を与えるが、ここで強がるよりはましである。
「映画見る。来て」
「今からか?」
「うん。実はあと十分なので。二人分のチケットです」
「分かった」
「キャラメルと塩が半分ずつ入ったポップコーン食べてみたい」
「払うよ、大きいやつだろ?」
「うん。にい、アクション映画」
「ああ。いいぞ」
やったあ、とアメユキはヒウタに見えないようにガッツポーズをする。
アメユキの望み通りポップコーンを買って、二人の席の間に置いて映画を見ながら食べた。
途中、白熱したシーンでは手が止まって。
エンドロールで慌てて食べる。
「ゴホゴホ」
アメユキはむせて咳を繰り返していた。
ヒウタは心配そうに見て、アメユキの背中を撫でる。
明るくなる。
「まじか、慌てなくても外で残りを食べたらいいんだぞ」
「はい、はしゃぎすぎでした」
「この妹様は」
「久しぶりの兄妹デートだったから」
「まじでごめん」
「それと、シュイロさんたちともし危ないことになっても突っ込んでいい許可を出したら、また忙しくなってあまり構ってもらえないようになる。本当に危ない目に遭って、二度とお出掛けできないかもしれない」
「大事な妹様の頼みだ、だからこれからも構うつもりだし、困っていたら兄として飛んでくるつもりだ。何があっても死んでたまるか。健気に待つ妹様がいて、諦めてくたばる兄なんていないからな」
「うん。信じている」
スクリーンの外で残りのポップコーンを食べて、大きなカップを捨てた。
ヒウタはアメユキと手を繋ぐ。
アメユキは嬉しそうに笑って、何度もヒウタの顔を見ていた。
正式にヒウタがシュイロたちと関わる許可を出してくれるそうだ。
「帰る」
「ああ」
「一緒に帰るけど、明日からはシュイロさんが借りたマンションの一室に戻っていいよ」
「ありがとな。引き続き高い給料で雇ってもらうつもりだ。美味い物食べさせてやる」
「にい、これから彼女さんを作ってデートしてって時期に、散財するつもりなの?」
「怒っている?」
「私が言わないと気づかない、哀れな豚なのに」
「アメユキ、怒っている?」
「少しです。普段仲良くしている友人の真似ですから」
「アメユキ、大丈夫なのか? その友達」
「少なくともにいに言われたくない」
……確かに。
トアオとのオーパーツ探しではよく分からない組織と戦って命の危機を感じた。
キヌイのときもピンチだった。
関わる人について、大丈夫か? とはどの口が言っているんだと言われてしまう。
アメユキは賢い。
「ごめん」
「謝ってばかり」
「情けなくてごめん」
「ほら、また」
電車に乗って、最寄りの駅まで進んで、そこから自転車で帰る。
母が台所に立って夕食を作っていた。
アメユキが駆けていって手伝う。
ヒウタも手伝おうとするが、母に断られた。
台所をちらちら見ながら、ヒウタはテレビを見た。
「ヒウタ、今日は父さん早いぞ!」
と父が帰ってきた。
スーツ服のジャケットを脱ぎ捨てた瞬間、振り返った母の目が光った気がした。
父は急いでジャケットを拾って更衣室に消える。
しばらくすると私服姿で戻ってきた。
「ヒウタ、ちょっといいか?」
「うん」
ヒウタの部屋へ。
入った途端、父はヒウタに縋りついた。
「ヒウタ、アメユキちゃんとママが反抗期になったよう。最近ちょっと冷たいというか、汚物を見るような目で、……」
ヒウタがドン引きしていることに気づく。
「もしかしてヒウタも?」
「そのようですね」
「うわああん」
「たぶん、子供すぎるからでは」
「アメユキちゃん? まだ大人になってたまるか!」
「父さんがだよ」
「そうかもしれないな。ところで話が変わるが、これはできたのか? 彼女」
「恋活は奮闘中だよ」
「見舞いのときに綺麗な人ばかりだったからさ」
「もしかしてずっと見てた?」
「ん? 綺麗な人だなあって目に焼き付けようと見てたぞ。ハハハ、うちのママやアメユキちゃんには敵わないな。フハハハハハ」
「怖いし、気持ち悪い反応」
「アメユキちゃんにもママにも言われたよお」
父は気づいていないらしい。
娘や妻に冷たくされる理由しかない。
この鈍感さこそ父らしさだと、ヒウタは呆れながら思う。
「恋人を選ぶコツは一番納得できる人を選ぶことだ。話したかったのは、大事な息子が悩んでいそうだったからな。アメユキちゃんが関わることを許してくれたそうだ。だから続けるだろ?」
「はい」
「納得できる人を選べ。絶対二股とか浮気、不倫をしないと言える人を選べ。そして、悔いのないようにな、ヒウタ」
「はい。分かっています」
「それと、女の子は丁寧に扱えよ」
「雑にしませんけど?」
「ならいいが、それでも意識しておけ」
珍しく父が真面目な表情で言う。
ヒウタは心に留めておくことにした。
それからシュイロに続ける許可をもらったことを伝えるため、メッセージを送る。
すぐに返信が帰ってきて、明日会うことになった。
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