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9章 驕り少女が我儘すぎる!123~
懐古3 堕落少女
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麦科都青は、異端の天才であった。元々優秀な両親ではあったが、トアオは次元が違っていた。
すぐに数学に目覚め、物理に目覚め、好奇心のまま開発をするようになった。幼少期は比較的電子工作の域をでないが、だんだんプログラムコードも得意とし、一人で利益を生むだけの開発をするようになった。
両親はそれを喜んでいたが、いつからか開発されたものが想像できる域を超えてしまって、危険なものだと思うようになり、家に残して消えてしまった。
始めは両親が消えたことに気づかぬまま開発を続ける。当たり前のようにカップ麺を食べて繋いでいた。
開発物を売れば一人でも生きることができた。そして、愛蓮朱色の親にその腕を変われて一時期一緒に暮らすことになる。
起きる時間が決まっている、食事の時間が決まっている、学校へ行く時間も開発する時間も決まっている。
その決まりきったことが、一人で生きてきた日々を異常なものと認識させた。
「トアオちゃん、私の手伝いをしてほしい」
「いいけど。何を開発すればいい?」
だが、シュイロという女だけは容赦がなかった。人が家事をして開発する時間が増えたものの、シュイロに任されたもので時間を使い切ってしまう。
「何を開発するの?」
「今度はね、私も一緒にいいかな?」
シュイロはトアオに及ばないがそれでも天才であった。トアオは心地よかった。だから、
「トアオちゃん、もっと仲良くなりたい」
「友達? 年齢差あるのに」
「関係ないぞ。私はそれでいい」
賢い、仲良くすることにした。
義務に近いものだったが、シュイロという人間は心地が良い。
開発の早さで仕事が早く終わるようになって、だんだん暇をもて余すようになった。トアオは、それから堕落していく。
あまりに暇になるものだから、トアオはシュイロから離れて家に戻った。
それからもシュイロとは交流が続く。暇なのか? と思うことも少なくなかったが、
「トアオちゃん! これ美味しいだろ?」
「うん。だからどうしたの?」
「え? 冷たいぞ!」
シュイロという人は人望がある人が寄ってくる、たくさんの仕事を任される。トアオも仕事を任されるが本人からすればすぐに終わるようなものだけだった。相手もそれを分かっている。
だがシュイロというものは儲かろうともせず、潰れそうなほどの仕事を抱える。
天才だ、他の人がやるよりも素早く高い精度で仕事をこなす。
周りはそれを知っていて任せているわけだが。
「馬鹿なの? 疲れが見える」
「疲れて上手くいくならなんでもいいんだ」
「やっぱり馬鹿だ」
この人間は一人一人ができないことの皺寄せを受けて終わってしまうのかもしれない。
頼るのが下手だ。
人に厳しくするのも下手だ。
だから甘えた考えになってしまう、シュイロの夢が遠ざかっていく。
元夫が困っていると聞けばもう繋がりなど必要ないにも関わらず飛んでいってしまう。
他人に恐喝、脅迫をしている人間でさえも助けてしまう。
それではシュイロが作ったマッチングアプリの価値も下がってしまう。
「自分にだけは甘くなれないくせに」
トアオは怒りのままキヌイを捕縛してシュイロの目の前に置いた。キヌイの考えも、やってきた罪もシュイロには説明したはずだ。
でも結局キヌイへの罰はマッチングアプリからの退会のみにするらしい。シュイロからすれば一世一代の判断だろうが、やはり甘いとしか言えない。
一方で元夫とは一切関わらないことにしたようだ。今抱えている元夫からの仕事は元の場所に戻すのか?
シュイロの周りで経営ができる人間といえば、最近友人になったアキトヨしかいない。彼女は優秀だ、でもシュイロは頼るのだろうか?
「トアオちゃん、どうするの?」
シュイロとキヌイ、ヒウタは懇親会か何か分からないが三人で出掛けてしまった。
運ちゃんと二人でどこへ夕食を食べに行くのか考えていた。
炬燵に足を入れているとこのまま眠ってしまえばいい気もしていた。
「シュイロさんを許さないって言ってたけど具体的にどうするつもり?」
「私はもうどうにもできませんよ。ヒウタさんもシュイロさんの判断を認めてしまったようですし」
「そっか」
「もう自棄食いでもします。焼きにくしましょう、運ちゃん」
「全く仕方ないな。ねえ、シュイロさんは他人に甘すぎると思う?」
「甘いを通り越して大馬鹿者です。キヌイさんは本当に反省しているのですか? というか反省していなかったとしても、普通に悪い人ですし。庇っているような者です。バチが当たっても知りませんよ?」
「当たってほしいの?」
「そういうことではありませんが」
「トアオちゃんはシュイロさんが好きだよね。あたしも好きではあるけど」
運ちゃんはからかうように笑う。トアオは面白くなくて顔を反らす。
「一応友達なので。いつ絶交するかは分かりませんが」
「ええ?」
「可能性の話です」
「あたしは悲しいよ、それは」
「私も望んではいません。シュイロさん次第ですよ」
トアオが席を立つ。
運ちゃんは焼肉屋を探し始めた。
すぐに数学に目覚め、物理に目覚め、好奇心のまま開発をするようになった。幼少期は比較的電子工作の域をでないが、だんだんプログラムコードも得意とし、一人で利益を生むだけの開発をするようになった。
両親はそれを喜んでいたが、いつからか開発されたものが想像できる域を超えてしまって、危険なものだと思うようになり、家に残して消えてしまった。
始めは両親が消えたことに気づかぬまま開発を続ける。当たり前のようにカップ麺を食べて繋いでいた。
開発物を売れば一人でも生きることができた。そして、愛蓮朱色の親にその腕を変われて一時期一緒に暮らすことになる。
起きる時間が決まっている、食事の時間が決まっている、学校へ行く時間も開発する時間も決まっている。
その決まりきったことが、一人で生きてきた日々を異常なものと認識させた。
「トアオちゃん、私の手伝いをしてほしい」
「いいけど。何を開発すればいい?」
だが、シュイロという女だけは容赦がなかった。人が家事をして開発する時間が増えたものの、シュイロに任されたもので時間を使い切ってしまう。
「何を開発するの?」
「今度はね、私も一緒にいいかな?」
シュイロはトアオに及ばないがそれでも天才であった。トアオは心地よかった。だから、
「トアオちゃん、もっと仲良くなりたい」
「友達? 年齢差あるのに」
「関係ないぞ。私はそれでいい」
賢い、仲良くすることにした。
義務に近いものだったが、シュイロという人間は心地が良い。
開発の早さで仕事が早く終わるようになって、だんだん暇をもて余すようになった。トアオは、それから堕落していく。
あまりに暇になるものだから、トアオはシュイロから離れて家に戻った。
それからもシュイロとは交流が続く。暇なのか? と思うことも少なくなかったが、
「トアオちゃん! これ美味しいだろ?」
「うん。だからどうしたの?」
「え? 冷たいぞ!」
シュイロという人は人望がある人が寄ってくる、たくさんの仕事を任される。トアオも仕事を任されるが本人からすればすぐに終わるようなものだけだった。相手もそれを分かっている。
だがシュイロというものは儲かろうともせず、潰れそうなほどの仕事を抱える。
天才だ、他の人がやるよりも素早く高い精度で仕事をこなす。
周りはそれを知っていて任せているわけだが。
「馬鹿なの? 疲れが見える」
「疲れて上手くいくならなんでもいいんだ」
「やっぱり馬鹿だ」
この人間は一人一人ができないことの皺寄せを受けて終わってしまうのかもしれない。
頼るのが下手だ。
人に厳しくするのも下手だ。
だから甘えた考えになってしまう、シュイロの夢が遠ざかっていく。
元夫が困っていると聞けばもう繋がりなど必要ないにも関わらず飛んでいってしまう。
他人に恐喝、脅迫をしている人間でさえも助けてしまう。
それではシュイロが作ったマッチングアプリの価値も下がってしまう。
「自分にだけは甘くなれないくせに」
トアオは怒りのままキヌイを捕縛してシュイロの目の前に置いた。キヌイの考えも、やってきた罪もシュイロには説明したはずだ。
でも結局キヌイへの罰はマッチングアプリからの退会のみにするらしい。シュイロからすれば一世一代の判断だろうが、やはり甘いとしか言えない。
一方で元夫とは一切関わらないことにしたようだ。今抱えている元夫からの仕事は元の場所に戻すのか?
シュイロの周りで経営ができる人間といえば、最近友人になったアキトヨしかいない。彼女は優秀だ、でもシュイロは頼るのだろうか?
「トアオちゃん、どうするの?」
シュイロとキヌイ、ヒウタは懇親会か何か分からないが三人で出掛けてしまった。
運ちゃんと二人でどこへ夕食を食べに行くのか考えていた。
炬燵に足を入れているとこのまま眠ってしまえばいい気もしていた。
「シュイロさんを許さないって言ってたけど具体的にどうするつもり?」
「私はもうどうにもできませんよ。ヒウタさんもシュイロさんの判断を認めてしまったようですし」
「そっか」
「もう自棄食いでもします。焼きにくしましょう、運ちゃん」
「全く仕方ないな。ねえ、シュイロさんは他人に甘すぎると思う?」
「甘いを通り越して大馬鹿者です。キヌイさんは本当に反省しているのですか? というか反省していなかったとしても、普通に悪い人ですし。庇っているような者です。バチが当たっても知りませんよ?」
「当たってほしいの?」
「そういうことではありませんが」
「トアオちゃんはシュイロさんが好きだよね。あたしも好きではあるけど」
運ちゃんはからかうように笑う。トアオは面白くなくて顔を反らす。
「一応友達なので。いつ絶交するかは分かりませんが」
「ええ?」
「可能性の話です」
「あたしは悲しいよ、それは」
「私も望んではいません。シュイロさん次第ですよ」
トアオが席を立つ。
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