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9章 驕り少女が我儘すぎる!123~
懐古1 運命少女
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私と卯夏黄縫の年齢は七才ほど異なる。
元夫の家は厳しくて仲良しな私でも家に入ったことは一度もなかった。
だからキヌイちゃんと初めて出会ったのは高校生の頃だ。
知っての通り、私は高校二年の途中で学校をやめている。
高校一年生で、私は生徒会の補佐をしていた。
元夫も忙しくなると手伝う。
正式な生徒会の人間ではなかったが、生徒も先生も私たちを一員だと扱ってくれた。
申し訳ない、脱線した。
思い出したら懐かしくて。
ま、待て。
トアオちゃん、除夜の鐘には必ず間に合わせるから寝ようとしないでくれ。
うん。
キヌイちゃんと会う機会があったのは、人間トラブルで学校内に派閥ができて、何度も暴動に近い事態が発生したり、怪我を負う喧嘩が繰り返し発生したりしたときだった。
私と元夫でどうにか解決策を探る。
解決策といっても、本格的な解決は生徒会に任せるつもりだった。
その日は話し合いが長引いて外で夕食を食べることになったのだが、親がキヌイちゃんを送ってきて。三人で鉄板ハンバーグを食べることにしたんだ。
「私はキヌイ。綺麗なお姉さん、もしかしてシュイロさん?」
円らな瞳で言ってきて。
世の中にはこんなにもかわいい生き物がいるんだって思った。
私にとってキヌイちゃんは妹でもあるんだ。
そんなことアキトヨちゃんの前では言えないけども。
「そうだが」
「ねえ、お姉ちゃんになってくれるの? 私、お姉ちゃんほしい」
「おい、キヌイ。悪いな、変なこと言って」
「んにゃ。私はな、キヌイちゃんにメロメロだ。かわいい」
「そっか。でも性格悪いぞ?」
「お兄様ひどいです。小学生が性格悪いわけがないです。善悪の分別もついてないのに」
「そうか?」
「そうですよ。性格が悪いってお兄様ではないんですから」
「俺が何かしたか?」
「してますよ。私は怖いって思いますから」
「どこが?」
「先生を味方に付けていじめっ子が学校を休んだ日にあらゆる教科のテスト対策プリントを配らせたり。お兄様は卑怯で陰湿です」
「キヌイ、表立って何かするやつは無謀って言うんだ」
「ほら兄様の方が性格悪いです」
キヌイは今よりも元気だったと思う。
そして、シュイロ姉っていって私のことを認めてくれていた。
元夫と結婚したときも自分のことのように喜んでくれたんだ。
でも。
子供ができない身体ということが発覚してからは異様に冷たかった。
キヌイちゃんも元夫もまるで私を邪魔者みたいに言ってきた。
特にキヌイちゃんは口も聞いてくれなかった。
マッチングアプリを作ったときにはすぐに登録してくれた。
でもマッチング相手を脅して情報を聞き出したり、代わりに誰かに危害を加えさせたりした。何度も退会措置を取ったがいつも誰かのアカウントを脅し取って戻ってくる。
私が憎いんだ。
私と元夫が離婚して再婚したときはアプリの使用を控えていた。
卯夏家は政府の要請を受けながら社会で必要になるであろう事業を次々と立ち上げ、不要なものはどんどん潰すような人間だった。
企業が増えると一部を元夫に託してさらに事業を拡大していく。
結果、元夫とその父では手に負えなくなって私に面倒を見てほしいと言ってきた。
そのことで元夫とは何度も会っていたのだが。
ヒウタが察していた通り、アプリには面倒見ている企業の一部と連携しているものもある。イベントの運営にも使っている。それによって、アプリも黒字化させていたんだが。
キヌイちゃんは妻子持ちの兄が私と、元妻と関わっているのが気に入らないらしい。
また恨みを増大させてきた。
私が元夫に関わっているから嫌だと思う。
最近は元夫が私に愛人契約を結ぼうと提案してきたのも関係しているだろう。
私は愛人契約については酒に溺れるほど強くショックを受けたのだが。
私に未練があって、キヌイちゃんの兄の家庭を壊そうとしていると警戒もしているはずだ。
キヌイちゃんの兄だって私を愛人にして傍に置くことで事業を見るようにしたいのだろう。好きな男といられる代わりに仕事を手伝えと。
私を一人にしたくないって言われた。
でもこのまま仕事を増やせば、せっかくヒウタにバイトしてもらってまで時間を作っているのに、私は通信制高校をやめることになる。あいつと結婚する条件としてあいつの父に言われて高校をやめたんだ。
せっかくやり直すつもりだったのに、このままではマッチングアプリもやめることになる。私は元夫に縛られてしまうのだろうか?
私はどうしたらいい?
「そんなの逆恨みなの。キヌイちゃんを捕まえてでも黙らせるべきなの」
いざというときは優しいカワクロちゃんが言う。
一方でトアオちゃんは不機嫌だった。
「私はヒウタさんに意見も聞きますが。結局未練あるだけです。キヌイさんもシュイロさんも過去に縛られて未練があるだけです。さっさと解決してください、私は面倒です」
トアオちゃんらしいと思った。
私が回り道のような解決を模索しているのがトアオちゃんにとっては嫌だろう。
分かっている。
「そうなんですね。僕は、救いたいって思いました」
私が見つけたお人好しは話を終えた時点で涙を流していて。
「シュイロさんもキヌイさんも救われてほしいって思いました。だから話し合ってほしいです。キヌイさんは何も聞いてくれない人ではないです。善人とは決して思いませんが」
「そっか。私は、救いたいな。救われたいな」
ヒウタがはっきり言うものだから。
私は嬉しくなってヒウタの涙が伝播してしまうのだ。
「分かりました。最強人工知能『ふぉーている』を駆使してキヌイさんを連れてくるので話してください」
「トアオちゃん冷たいな」
「シュイロさんにだけではなくて。苛立つことがあまりにも多いだけですよ」
トアオちゃんはヒウタが好きで、ヒウタはカワクロちゃんが好きだ。
キヌイちゃんの件でカワクロちゃんの安全を考えて呼び出している。
好きな人の好きな人がいるんだ、トアオちゃんが冷たいのは仕方ない。
元夫の家は厳しくて仲良しな私でも家に入ったことは一度もなかった。
だからキヌイちゃんと初めて出会ったのは高校生の頃だ。
知っての通り、私は高校二年の途中で学校をやめている。
高校一年生で、私は生徒会の補佐をしていた。
元夫も忙しくなると手伝う。
正式な生徒会の人間ではなかったが、生徒も先生も私たちを一員だと扱ってくれた。
申し訳ない、脱線した。
思い出したら懐かしくて。
ま、待て。
トアオちゃん、除夜の鐘には必ず間に合わせるから寝ようとしないでくれ。
うん。
キヌイちゃんと会う機会があったのは、人間トラブルで学校内に派閥ができて、何度も暴動に近い事態が発生したり、怪我を負う喧嘩が繰り返し発生したりしたときだった。
私と元夫でどうにか解決策を探る。
解決策といっても、本格的な解決は生徒会に任せるつもりだった。
その日は話し合いが長引いて外で夕食を食べることになったのだが、親がキヌイちゃんを送ってきて。三人で鉄板ハンバーグを食べることにしたんだ。
「私はキヌイ。綺麗なお姉さん、もしかしてシュイロさん?」
円らな瞳で言ってきて。
世の中にはこんなにもかわいい生き物がいるんだって思った。
私にとってキヌイちゃんは妹でもあるんだ。
そんなことアキトヨちゃんの前では言えないけども。
「そうだが」
「ねえ、お姉ちゃんになってくれるの? 私、お姉ちゃんほしい」
「おい、キヌイ。悪いな、変なこと言って」
「んにゃ。私はな、キヌイちゃんにメロメロだ。かわいい」
「そっか。でも性格悪いぞ?」
「お兄様ひどいです。小学生が性格悪いわけがないです。善悪の分別もついてないのに」
「そうか?」
「そうですよ。性格が悪いってお兄様ではないんですから」
「俺が何かしたか?」
「してますよ。私は怖いって思いますから」
「どこが?」
「先生を味方に付けていじめっ子が学校を休んだ日にあらゆる教科のテスト対策プリントを配らせたり。お兄様は卑怯で陰湿です」
「キヌイ、表立って何かするやつは無謀って言うんだ」
「ほら兄様の方が性格悪いです」
キヌイは今よりも元気だったと思う。
そして、シュイロ姉っていって私のことを認めてくれていた。
元夫と結婚したときも自分のことのように喜んでくれたんだ。
でも。
子供ができない身体ということが発覚してからは異様に冷たかった。
キヌイちゃんも元夫もまるで私を邪魔者みたいに言ってきた。
特にキヌイちゃんは口も聞いてくれなかった。
マッチングアプリを作ったときにはすぐに登録してくれた。
でもマッチング相手を脅して情報を聞き出したり、代わりに誰かに危害を加えさせたりした。何度も退会措置を取ったがいつも誰かのアカウントを脅し取って戻ってくる。
私が憎いんだ。
私と元夫が離婚して再婚したときはアプリの使用を控えていた。
卯夏家は政府の要請を受けながら社会で必要になるであろう事業を次々と立ち上げ、不要なものはどんどん潰すような人間だった。
企業が増えると一部を元夫に託してさらに事業を拡大していく。
結果、元夫とその父では手に負えなくなって私に面倒を見てほしいと言ってきた。
そのことで元夫とは何度も会っていたのだが。
ヒウタが察していた通り、アプリには面倒見ている企業の一部と連携しているものもある。イベントの運営にも使っている。それによって、アプリも黒字化させていたんだが。
キヌイちゃんは妻子持ちの兄が私と、元妻と関わっているのが気に入らないらしい。
また恨みを増大させてきた。
私が元夫に関わっているから嫌だと思う。
最近は元夫が私に愛人契約を結ぼうと提案してきたのも関係しているだろう。
私は愛人契約については酒に溺れるほど強くショックを受けたのだが。
私に未練があって、キヌイちゃんの兄の家庭を壊そうとしていると警戒もしているはずだ。
キヌイちゃんの兄だって私を愛人にして傍に置くことで事業を見るようにしたいのだろう。好きな男といられる代わりに仕事を手伝えと。
私を一人にしたくないって言われた。
でもこのまま仕事を増やせば、せっかくヒウタにバイトしてもらってまで時間を作っているのに、私は通信制高校をやめることになる。あいつと結婚する条件としてあいつの父に言われて高校をやめたんだ。
せっかくやり直すつもりだったのに、このままではマッチングアプリもやめることになる。私は元夫に縛られてしまうのだろうか?
私はどうしたらいい?
「そんなの逆恨みなの。キヌイちゃんを捕まえてでも黙らせるべきなの」
いざというときは優しいカワクロちゃんが言う。
一方でトアオちゃんは不機嫌だった。
「私はヒウタさんに意見も聞きますが。結局未練あるだけです。キヌイさんもシュイロさんも過去に縛られて未練があるだけです。さっさと解決してください、私は面倒です」
トアオちゃんらしいと思った。
私が回り道のような解決を模索しているのがトアオちゃんにとっては嫌だろう。
分かっている。
「そうなんですね。僕は、救いたいって思いました」
私が見つけたお人好しは話を終えた時点で涙を流していて。
「シュイロさんもキヌイさんも救われてほしいって思いました。だから話し合ってほしいです。キヌイさんは何も聞いてくれない人ではないです。善人とは決して思いませんが」
「そっか。私は、救いたいな。救われたいな」
ヒウタがはっきり言うものだから。
私は嬉しくなってヒウタの涙が伝播してしまうのだ。
「分かりました。最強人工知能『ふぉーている』を駆使してキヌイさんを連れてくるので話してください」
「トアオちゃん冷たいな」
「シュイロさんにだけではなくて。苛立つことがあまりにも多いだけですよ」
トアオちゃんはヒウタが好きで、ヒウタはカワクロちゃんが好きだ。
キヌイちゃんの件でカワクロちゃんの安全を考えて呼び出している。
好きな人の好きな人がいるんだ、トアオちゃんが冷たいのは仕方ない。
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