規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

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9章 驕り少女が我儘すぎる!123~

その4 ヒウタと運命少女Ⅱ

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 ヒウタが部屋に戻る。
 玄関に靴を見つけた。
 布団を確認する。
 それから見回りをしていた。
 ……。
 お湯の音。
 風呂場かよ。
「ヒウタさん、バスタオルお願いします」
「おい」
 ヒウタは呆れながらもバスタオルを持っていく。
「あ、ヒウタさん。着替え忘れたので用意お願いしますね!」
「はいはい。僕をどう思っているんだ」
「キープ最低男です」
「絶妙に言い返しにくいことを」
「大丈夫ですよ。ヒウタさんが彼女か彼氏ができればこういうことはしないので」
「いなくても勝手に入ってシャワー浴びるなよ?」
 つい声が裏返った。
「お湯張ってますよ。美少女が入った後はいかが?」
 トアオの得意げな表情が脳裏に浮かぶ。
 ヒウタは眉がぴくりと動いた。
「分かりました。美少女の出汁が出てそうで楽しみですね!」
 あ、気持ち悪いな。
 しかし、先に始めたのはトアオだ。
「ええ、え……」
 トアオの声が弱々しくなる。
 勝った。
 それからトアオのバッグを探す。
 シャツとパジャマとパンティ。
 パンティ?
 くそ、はめられた。
「トアオさん、僕が下着準備してていいんですか」
「はい。一番大事なものはないので」
「大事なもの?」
「ブラですよ!」
「おい」
「だからシュイロさんが買いに行ってます」
「シュイロさんの合鍵で入ったわけか」
「そろそろ出るのでお願いします」
「分かりました」
「不法侵入まがいのことしてるのにちゃんと分かってくれるところも素敵です」
「まがいかは議論の余地がありますよね」
「ぎく」
「ぎくって言った?」
「人生で少なくとも一度は言ってますよ。当然」
 玄関が開いた。
 冷たい風が入り込む。
 シュイロは買い物袋を抱えていた。
「ヒウタ、ただいま」
「おかえりなさい。じゃなくて、一体どうしているんですか?」
「駄目か?」
 シュイロは袋を床に置くと膝から崩れた。瞳に涙が浮かび、じっとヒウタに上目遣いをする。
「駄目じゃないです……」
 ヒウタは言い返せずに折れた。
 今にも泣き出しそうな脆い様子の女性を突き放すことができない。
「急いでください、シュイロさん」
「この時間になるとなかなか入手難易度が上がってな。はい、これ」
「ありがとうございます」
 ヒウタの頭から湯気が出る。
 カッと目を開いて、右手をトアオの肩に、左手をシュイロの肩に置く。
「お、お前ら!」
「ヒウタさん?」「ヒウタ」
「僕の前で下着のやり取りしないでください」
「ノーブラってこと?」
「違いますが」
「ヒウタさん、ケチです」
 トアオは控えめに舌を出すと、ブラジャーの入った袋を持ってトイレへ消えた。
「今日も着て申し訳ない」
「いいですけど」
「優しいな」
「それに今日はどうしても話したいことがあって」
「そういうお年頃か。落ち着くんだ」
 シュイロは優しい表情でヒウタの頭を撫でる。
「何を想像してるんですか?」
「私たちを襲いたくなったかと」
「そうなんですか!」
 いつの間にかトアオもいた。
「違いますよ。そうじゃなくて、今日キヌイさんに会って。シュイロさんもトアオさんも知ってて、『傲慢少女』って言っていたのでシュイロさんに、……」
 ヒウタは言い切り前に気づいた。
 シュイロが真っ青な顔をして、トアオは腕を組んでいる。
「どこで会いましたか?」
「駅のパン屋かな」
「話しかけてきたと。シュイロさん、どうしますか?」
「あ、ああ」
 トアオはシュイロの両肩を軽く叩く。
 シュイロはハッと気づいたようにして口を開ける。
「シュイロさんのせいですよね」
「そうなるな」
「ヒウタさんが無事で良かったです」
「ああ」
 シュイロは急いでパソコンを開く。
 それから無言の時間が続いた。
「どうしよ」
「どうもしないと思います。私がキヌイさんの横でお腹を出して眠っていなければ」
 シュイロとヒウタは一瞬考えたが、トアオが何を例えたのか分からなかった。
「つまり、私を警戒して何もしてこないと思います。目の前で私を無力化できるとなれば話は別ですが。ということで、キヌイさんが何者なのかちゃんと説明してあげてください」
「そうだな」
 シュイロはちょこんと正座をした。
ヒウタもシュイロが改まったのを見て正座をする。
 なお、トアオはヒウタの布団に巻かれてさなぎのような状態で寝転がっている。
「キヌイちゃんは私の元夫の実の妹だ。私のことが嫌いらしい。私が元夫に愛人契約を提案されたのが気に入らないのだろう。昔から嫌われていた気がする」
「そうなんですね」
「キヌイちゃんは一体どこまで知っているんだろうな。洞察と情報収集が彼女の特技だ。それを超えるのは唯一、トアオちゃんが作り出した『ふぉーている』を筆頭とした人工知能のみ。私を嫌っていて、トアオちゃんに固執している。ヒウタ、迷惑をかけた。きっとこれからも接触してくるだろう」
「そういうことです。もう私たちは一緒に住み続けるしかないですね!」
「なんで嬉しそうなんだよ」
「冗談ですよ。じゅるり」
「じゅるりって言った?」
「言ってないですが」
「そっか」
「そうです。……」
 ヒウタはトアオをじっと見る。
 トアオの額から汗が走っていく様子が見えた。
「ごめんなさい」
「分かれば良しです。キヌイさんなかなか危険そうですね。けど、その」
 ヒウタはトアオとシュイロを交互に見る。
「女性の方に守ってもらうのは情けないというか」
「ぼったくりのときはアキトヨちゃんに守ってもらっただろ?」
「ですけど。そんなに危険な人ならシュイロさんにもトアオさんにも近づけるわけにはいきませんけど」
「格好いいこと言ってくれるな。でも助け合うって思えばいいんじゃないか?」
「けど、狭くないですか?」
「安全を考えたら、そうだな。トアオちゃんの家はどうだ?」
「シュイロさん天才です。さて」
 トアオは口角を上げた。
「あの女、今度こそボコボコにしようか」
 物騒なことが聞こえた。
 これから大丈夫だろうか?

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