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8章 魅了少女が不安すぎる!『後期』109~122話
その17 ヒウタと学祭カフェ
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ペットボトル研究会ではペットボトルで作った服の写真を展示していたり、漫画・アニメ研究会では部誌を配布していたりスクリーンにパラパラ漫画を展示していたり、文芸部では本を紹介していたり部誌をしていたり会話劇を流していたりした。
オーケストラ部では人気アニメの演奏が聞こえた。
軽音部では派手な演出が見える。
それからアメユキが目指すコンセプトカフェに辿り着く。
ファンタジーカフェと呼ぶらしい。
「飾りすごいですね! 転移門となる魔法陣が必要で、その料金が一人五百円でワンドリンク、追加で飲み物や食べ物、グッズを頼むときはお金が必要だそうです」
「ボクも完成度が高そうで驚いたかな。行こうか」
ヒウタとチカフミは意見できずに付いていくだけである。
受付に料金を渡すと、四人は入り口で待つ。
スタッフに呼ばれると教室に入って魔法陣が描かれた紙に乗る。
コールが終わると、獣耳や魔物の角を模したカチューシャを付けられる。
ヒウタとチカフミはケンタロスを模したカチューシャを、アメユキとシフユは猫を模したカチューシャを付けていた。アメユキとシフユは獣人ということらしいが、ヒウタとチカフミは確かにケンタロスに見えるがファンタジー世界でいえば魔王にも見える。
「ぷっ、モブ男だけ片方の角折れてるね」
シフユの言うモブ男とはヒウタのことである。
シフユは鼻に手を当てて笑う。
ヒウタは気にしない。
「あ、本当だ。にいにも猫耳にしてもらお、すっごいかわいいよ」
「それはアメユキだからでは?」
「ええ、でもにいに合うと思う。元々素材がいいから」
あらやだ、アメユキは口が上手いのか。
ヒウタは気分が上がって店員に話して猫耳に変わった。
「まあ、これくらいはね。あー、ケーキいくつでもいいぞ、素材がいいお兄ちゃんが全部出してやる!」
「あ、心配になるくらいチョロいよ。この二つは食べるけど」
アメユキはメニュー表を指差す。チーズケーキとショートケーキ。
「流石妹のアメユキちゃん。これがヒウ君の正しい扱い方、勉強になる」
「この厄介、お節介モブ男の手綱を握るなんて、これがアメユちゃん!」
「でしょ?」
アメユキはシフユに微笑む。
店員がやって来た。
店員はエルフやドワーフのコスプレをしていた。
ヒウタ、チカフミ、シフユはドリンク一杯とケーキ一品、アメユキは追加でケーキを一品多く頼んでいる。
それからケーキと飲み物が運ばれてくる。
ケーキの上に載っている白いチョコプレートにはドラゴンのイラストが描かれていた。また、コップの下にあるコースターには魔物のイラスト。
「これすごいね」
シフユは店員と話していた。
どうやら、毎年ファンタジーカフェを開催していて継ぎ足すように準備をしていた結果、今の形になったらしい。料理系のサークルと共同で行うことで、ケーキを作るための道具や保存用の冷蔵庫を準備できるようだ。
シフユは店員との話しを終える。
「美味しい! 大盛況も納得です!」
アメユキは楽しそうにケーキを頬張る。
アメユキもシフユも大満足のようだ。
ファンタジーカフェを出る。
「じゃあ帰ろうか」
シフユが言うとアメユキはシフユの手を取る。
「また遊びたいです!」
「時間があったら遊ぼうか」
シフユは答える。
シフユが考えた賭けに勝つためであればシフユが満足したのかは関係ないだろう。
しかしせっかく大学祭を回る以上、楽しい方がいい。
大学の最寄りのバス停で、帰りのバスを待つ。
あと十分ほどあるそうだ。
「ねえ、ヒウ君」
「どうした?」
チカフミはバス用の小銭を作るために、自動販売機で温かいココアを購入する。
缶のタブを鳴らして開けていた。
「アメユキちゃんとシフユさんって仲良しだね」
「一応一回あってるけど、二回目でこれはすごいよな」
「うん。姉妹みたいな?」
チカフミは缶を口に付ける。
飲む姿が画になる。
「な、何言ってるんだよ、アメユキの兄妹は俺だけだよ!」
「急に大声出して驚くよ」
チカフミは両耳を手で押さえる。
「でもアメユキはさ、姉がほしいって思ってたらしい。妹がほしいのであれば親にもうひと頑張りしてもらうしかないけど姉は無理だろ?」
「もうひと頑張りって。まあそうだけどさ」
「兄妹だと異性同士だから分かってあげられないところとか距離感の絶妙な違いとかあるって思うから。兄には頼れないところも少なくないんだろうなって。シフユさんが姉みたいになれるかはさておき、姉がほしいって気持ちは本心だって思った」
「妹思いだよね。姉がほしいって思ってるのを見て寂しいみたいなのある?」
「少しはある。まあ少しだけだ」
「ヒウ君らしいかも」
「笑うなよ」
「さてどうだろうね」
「ところで恋活プロデューサーさんよ」
「急に改まってどうしたのさ」
チカフミは空っぽになった缶を捨てる。
ヒウタが話しを始めようとすると、バスの扉が開いて空気が抜けるような音がする。
「恋って難しいな」
「そうだね。何かあった?」
座席に着く。
「俺、恋してる」
「そっか。どこまで聞いていいの?」
ヒウタは小さな声で言う。
窓を眺めながら。
チカフミはスマホを開いて操作をする。
「いや、あまり話せないかな。このままじゃ駄目だろうなって愚痴だから」
「攻められないってことかな?」
「そうじゃないんだ。気になっている人が恋を馬鹿にしてるんだ。どうしたらいいかな?」
声に出した途端涙が溢れる。
チカフミは慌ててティッシュをヒウタへ。
「何かあったってことだろうね。それを知らないと、もっとその人を知ろうとしないと後悔するよ」
「そっか。それと俺のことを好きって言ってくれてる人がいて傷つけたくないんだ」
「上手く生きるならその子はキープしておくべきだね。けど良い人でいたいならこっぴどく振るべきだよ。ヒウ君はさ、どんな恋がしたい? 恋の形に選択肢が増えて恋にわがままでいられるなら、自分の理想の恋を考えてもいいかもね」
「大人だな、俺よりも背が低いくせに」
「急に毒づくよね。びっくりしちゃうよ」
「分かった。理想の恋、考えてみるよ」
「それがいいよ」
バスが駅に着く。
シフユは満足そうに帰っていった。
一回目の大学祭は上手く終わっただろう。
「ヒウ君、僕は彼女にプレゼント買ってくるから。じゃあね」
「ああ」
チカフミとも駅で分かれた。
「ねえ、シフユさんと遊べて良かった」
アメユキが笑う。
ヒウタはアメユキの頭を優しく撫でた。
「そっか」
ヒウタが改札に向けて歩き出そうとしたときだった。
アメユキがヒウタの腕を掴む。
「にい、平気?」
その言葉を聞いてヒウタの表情に力が入った。
表情がぴくりと動いてしまう。
「どうした?」
「うーん、今日一日妙に元気がないっていうか。無理しないでね!」
どうやら妹様はヒウタのことをよく見てくれているらしい。
心配してくれる人がいる、それは大事なことなのだ。
「大丈夫、大丈夫だ」
今はまだ、ヒウタは自分に言い続ける。
この痛みは誰もが越えるような平凡な痛みに違いないのだ。
「帰ろう、アメユキ」
「うん」
ヒウタは大学近くの部屋へ、アメユキは実家へ帰った。
オーケストラ部では人気アニメの演奏が聞こえた。
軽音部では派手な演出が見える。
それからアメユキが目指すコンセプトカフェに辿り着く。
ファンタジーカフェと呼ぶらしい。
「飾りすごいですね! 転移門となる魔法陣が必要で、その料金が一人五百円でワンドリンク、追加で飲み物や食べ物、グッズを頼むときはお金が必要だそうです」
「ボクも完成度が高そうで驚いたかな。行こうか」
ヒウタとチカフミは意見できずに付いていくだけである。
受付に料金を渡すと、四人は入り口で待つ。
スタッフに呼ばれると教室に入って魔法陣が描かれた紙に乗る。
コールが終わると、獣耳や魔物の角を模したカチューシャを付けられる。
ヒウタとチカフミはケンタロスを模したカチューシャを、アメユキとシフユは猫を模したカチューシャを付けていた。アメユキとシフユは獣人ということらしいが、ヒウタとチカフミは確かにケンタロスに見えるがファンタジー世界でいえば魔王にも見える。
「ぷっ、モブ男だけ片方の角折れてるね」
シフユの言うモブ男とはヒウタのことである。
シフユは鼻に手を当てて笑う。
ヒウタは気にしない。
「あ、本当だ。にいにも猫耳にしてもらお、すっごいかわいいよ」
「それはアメユキだからでは?」
「ええ、でもにいに合うと思う。元々素材がいいから」
あらやだ、アメユキは口が上手いのか。
ヒウタは気分が上がって店員に話して猫耳に変わった。
「まあ、これくらいはね。あー、ケーキいくつでもいいぞ、素材がいいお兄ちゃんが全部出してやる!」
「あ、心配になるくらいチョロいよ。この二つは食べるけど」
アメユキはメニュー表を指差す。チーズケーキとショートケーキ。
「流石妹のアメユキちゃん。これがヒウ君の正しい扱い方、勉強になる」
「この厄介、お節介モブ男の手綱を握るなんて、これがアメユちゃん!」
「でしょ?」
アメユキはシフユに微笑む。
店員がやって来た。
店員はエルフやドワーフのコスプレをしていた。
ヒウタ、チカフミ、シフユはドリンク一杯とケーキ一品、アメユキは追加でケーキを一品多く頼んでいる。
それからケーキと飲み物が運ばれてくる。
ケーキの上に載っている白いチョコプレートにはドラゴンのイラストが描かれていた。また、コップの下にあるコースターには魔物のイラスト。
「これすごいね」
シフユは店員と話していた。
どうやら、毎年ファンタジーカフェを開催していて継ぎ足すように準備をしていた結果、今の形になったらしい。料理系のサークルと共同で行うことで、ケーキを作るための道具や保存用の冷蔵庫を準備できるようだ。
シフユは店員との話しを終える。
「美味しい! 大盛況も納得です!」
アメユキは楽しそうにケーキを頬張る。
アメユキもシフユも大満足のようだ。
ファンタジーカフェを出る。
「じゃあ帰ろうか」
シフユが言うとアメユキはシフユの手を取る。
「また遊びたいです!」
「時間があったら遊ぼうか」
シフユは答える。
シフユが考えた賭けに勝つためであればシフユが満足したのかは関係ないだろう。
しかしせっかく大学祭を回る以上、楽しい方がいい。
大学の最寄りのバス停で、帰りのバスを待つ。
あと十分ほどあるそうだ。
「ねえ、ヒウ君」
「どうした?」
チカフミはバス用の小銭を作るために、自動販売機で温かいココアを購入する。
缶のタブを鳴らして開けていた。
「アメユキちゃんとシフユさんって仲良しだね」
「一応一回あってるけど、二回目でこれはすごいよな」
「うん。姉妹みたいな?」
チカフミは缶を口に付ける。
飲む姿が画になる。
「な、何言ってるんだよ、アメユキの兄妹は俺だけだよ!」
「急に大声出して驚くよ」
チカフミは両耳を手で押さえる。
「でもアメユキはさ、姉がほしいって思ってたらしい。妹がほしいのであれば親にもうひと頑張りしてもらうしかないけど姉は無理だろ?」
「もうひと頑張りって。まあそうだけどさ」
「兄妹だと異性同士だから分かってあげられないところとか距離感の絶妙な違いとかあるって思うから。兄には頼れないところも少なくないんだろうなって。シフユさんが姉みたいになれるかはさておき、姉がほしいって気持ちは本心だって思った」
「妹思いだよね。姉がほしいって思ってるのを見て寂しいみたいなのある?」
「少しはある。まあ少しだけだ」
「ヒウ君らしいかも」
「笑うなよ」
「さてどうだろうね」
「ところで恋活プロデューサーさんよ」
「急に改まってどうしたのさ」
チカフミは空っぽになった缶を捨てる。
ヒウタが話しを始めようとすると、バスの扉が開いて空気が抜けるような音がする。
「恋って難しいな」
「そうだね。何かあった?」
座席に着く。
「俺、恋してる」
「そっか。どこまで聞いていいの?」
ヒウタは小さな声で言う。
窓を眺めながら。
チカフミはスマホを開いて操作をする。
「いや、あまり話せないかな。このままじゃ駄目だろうなって愚痴だから」
「攻められないってことかな?」
「そうじゃないんだ。気になっている人が恋を馬鹿にしてるんだ。どうしたらいいかな?」
声に出した途端涙が溢れる。
チカフミは慌ててティッシュをヒウタへ。
「何かあったってことだろうね。それを知らないと、もっとその人を知ろうとしないと後悔するよ」
「そっか。それと俺のことを好きって言ってくれてる人がいて傷つけたくないんだ」
「上手く生きるならその子はキープしておくべきだね。けど良い人でいたいならこっぴどく振るべきだよ。ヒウ君はさ、どんな恋がしたい? 恋の形に選択肢が増えて恋にわがままでいられるなら、自分の理想の恋を考えてもいいかもね」
「大人だな、俺よりも背が低いくせに」
「急に毒づくよね。びっくりしちゃうよ」
「分かった。理想の恋、考えてみるよ」
「それがいいよ」
バスが駅に着く。
シフユは満足そうに帰っていった。
一回目の大学祭は上手く終わっただろう。
「ヒウ君、僕は彼女にプレゼント買ってくるから。じゃあね」
「ああ」
チカフミとも駅で分かれた。
「ねえ、シフユさんと遊べて良かった」
アメユキが笑う。
ヒウタはアメユキの頭を優しく撫でた。
「そっか」
ヒウタが改札に向けて歩き出そうとしたときだった。
アメユキがヒウタの腕を掴む。
「にい、平気?」
その言葉を聞いてヒウタの表情に力が入った。
表情がぴくりと動いてしまう。
「どうした?」
「うーん、今日一日妙に元気がないっていうか。無理しないでね!」
どうやら妹様はヒウタのことをよく見てくれているらしい。
心配してくれる人がいる、それは大事なことなのだ。
「大丈夫、大丈夫だ」
今はまだ、ヒウタは自分に言い続ける。
この痛みは誰もが越えるような平凡な痛みに違いないのだ。
「帰ろう、アメユキ」
「うん」
ヒウタは大学近くの部屋へ、アメユキは実家へ帰った。
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