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7章 のんびり少女が悠長すぎる!67~89話
覚醒3 屋根付きランタン
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「『ふぉーている』、アニメキャラみたいになって。私があがっちゃうから」
「ご主人様に従います。どうでしょう?」
一変して『ふぉーている』はイラストのキャラの姿になった。とはいえ、青色の目やピンク色の髪、白いワンピースは変わっていない。
「で、敵の状況は?」
「ご主人様、私は最強人工知能です。既に特殊な光と音を用いて意識を削いで制圧しました。あとは専門の人が片付けてくれますよ。失礼なんだから。あ、ヒウタ。生きてるなんて想像もしてなかった! この最強人工知能、一生の不覚」
『ふぉーている』は頭を抱えた素振りを見せる。宙に浮いて膝を立てるように座っていることからも、この姿はデータで空間上に映し出されたものだろう。
どこから光が出てきているかは謎であるが。
「びっくりした。敵がみんな倒れてる!」
運ちゃんが戻ってきた。
怪我をしているが問題は無さそうだ。
丸い球体を抱えていた。
「トアオさん、あれが本体ですか?」
「その通り。余程運ちゃんの腕の中が好きらしい」
「これ重いよ?」
「そっか。飛べるよね?」
トアオが言うと、球体は運ちゃんの頭よりも高く浮かぶ。
「ええ、重かったのに」
「申し訳ございません。いい香りがしたので」
『ふぉーている』は運ちゃんの目をじっと見る。運ちゃんは顔を赤くした。
「恥ずかしいな、もう」
「チョロい。エネルギーを温存したかっただけ」
「こいつ!」
運ちゃんは浮かぶ球体を追いかけた。
結局捕まえることができずに運ちゃんは息を切らす。
「これは無報酬じゃないですよね?」
サスケさんはボロボロの服で現れた。
トアオは笑う。
「もちろん、いい働き」
こうしてヒウタたちの旅は終わった。
帰りはホテルで泊まりながら帰る。
『ふぉーている』、ヒウタ、トアオ、運ちゃんでババ抜きをしたが、毎回トアオ、『ふぉーている』、運ちゃん、ヒウタの順位になるので飽きた。
どうやら最強人工知能というだけあって、あらゆる考えを見抜いているらしい。ご主人様を一位にしているあたり忠誠心の強い人工知能である。
それから例の県立図書館でサスケと分かれる。
「この子は家まで充電して、帰ったらメンテナンス。家まで寝ててもらう」
とトアオが言うので、人工知能『ふぉーている』の電源は切られた。一応緊急時には起動するようになっていたが、平和な世界に戻ってきたのか一度も起動することはなく家に着いた。
家にて。
三人で協力して片づけをした。
運ちゃんがパーティ! と言ったのでピザやフライドポテトを買ってきて。
好きな曲を交代で流す。
「ぷはっ」
ヒウタはメロンソーダを呷った。
トアオはコーラ、運ちゃんはウーロン茶を準備している。
「よし、トアオちゃんよろしく」
「その通り!」
ヒウタは目をキョロキョロと。
「うん、なんで先に飲んでるのって」
トアオの視線がヒウタに刺さった。
それから仕切り直して言う。
「私たちの大勝利に!」
「「乾杯!」」
トアオが旅までに何を準備してきたか。どうして自ら誘拐されたのか。どうやってサスケに手伝ってもらったのか。ヒウタと運ちゃんがピンチだった話。パラシュートが開いて助かった話。
パーティは盛り上がった。
あがり症だったトアオも円滑に会話できている。それだけ心から許せる関係になったのだろう。
「ねえヒウタさん。私ひどいことしたから、旅に連れて行ったことも、寿司屋で雰囲気を壊したことも。だから良かったら、またデートしたい。私、本気だから」
ヒウタを見つめる。
円らな瞳。ヒウタは目を離せないでいた。
ヒウタは落ち着いて目を反らす。
「本気とは?」
「本気で恋するってこと。私、ヒウタさんが良いから。恋してるから、ヒウタさんに」
トアオの耳や頬は赤くなっている。
ヒウタは湯気が出そうなほど熱くて思考が定まらない。
「……。ヒウタくん」
消えるような弱い声が聞こえてしまって、その声の主の目を見てしまう。
ヒウタは融けていなくなってしまいそうな表情を捉えて失敗したと思った。
胸の亀裂が広がって裂ける痛み。
ヒウタは床を見て、もう一度トアオを見た。
心配する表情、もうヒウタには逃げ道がなかった。
窮屈で堪らなく怖かった。
「分かった、またデートしよう。って今回のはデートと呼べるのか分からないけど」
「トアオちゃんの方が一緒にいた時間短いからあたしのデートかもね! あはははは」
「からかわないで運ちゃん。私、本気だから」
トアオは怒る。
運ちゃんは笑っていた、でもその向こう側の心を知っているヒウタは難しい顔をして。
それに気づいた運ちゃんは頭を掻いた。
「その前にトアオちゃん」
「どうしたの、畏まって」
トアオは運ちゃんの言葉を待つ。
「あたし、家を出るから。この旅で喧嘩して、あたしもトアオちゃんも分かってなかった。だからね、家を出るよ」
涙を浮かべるトアオを見て、運ちゃんは焦ったように言う。
「もちろんあたしたちは親友だから。でもずっと一緒にいすぎた。家事とかできるようになるまでは面倒見るわ。それから、あたしの運とトアオちゃんの技術でどっちが幸せになれるか勝負しましょ?」
得意げに言う運ちゃん。
トアオはヒウタの腕を掴んでにっこりと。
「分かった。けど私、ヒウタさんにするから」
ヒウタの腕に柔らかい部分が当たる。ヒウタは必死に意識を変える。
当の本人は気づいているかいないのか、ヒウタには分からない。
「分かった。あたしも本気を見せる。こう見えてもあたしはモテるからね!」
運ちゃんはトアオを撫でた。トアオも運ちゃんも笑う。
それは外から見れば微笑ましい光景であるが。
二人の思いを知った恋愛素人からすれば、あまりに難しい問題であった。
「ご主人様に従います。どうでしょう?」
一変して『ふぉーている』はイラストのキャラの姿になった。とはいえ、青色の目やピンク色の髪、白いワンピースは変わっていない。
「で、敵の状況は?」
「ご主人様、私は最強人工知能です。既に特殊な光と音を用いて意識を削いで制圧しました。あとは専門の人が片付けてくれますよ。失礼なんだから。あ、ヒウタ。生きてるなんて想像もしてなかった! この最強人工知能、一生の不覚」
『ふぉーている』は頭を抱えた素振りを見せる。宙に浮いて膝を立てるように座っていることからも、この姿はデータで空間上に映し出されたものだろう。
どこから光が出てきているかは謎であるが。
「びっくりした。敵がみんな倒れてる!」
運ちゃんが戻ってきた。
怪我をしているが問題は無さそうだ。
丸い球体を抱えていた。
「トアオさん、あれが本体ですか?」
「その通り。余程運ちゃんの腕の中が好きらしい」
「これ重いよ?」
「そっか。飛べるよね?」
トアオが言うと、球体は運ちゃんの頭よりも高く浮かぶ。
「ええ、重かったのに」
「申し訳ございません。いい香りがしたので」
『ふぉーている』は運ちゃんの目をじっと見る。運ちゃんは顔を赤くした。
「恥ずかしいな、もう」
「チョロい。エネルギーを温存したかっただけ」
「こいつ!」
運ちゃんは浮かぶ球体を追いかけた。
結局捕まえることができずに運ちゃんは息を切らす。
「これは無報酬じゃないですよね?」
サスケさんはボロボロの服で現れた。
トアオは笑う。
「もちろん、いい働き」
こうしてヒウタたちの旅は終わった。
帰りはホテルで泊まりながら帰る。
『ふぉーている』、ヒウタ、トアオ、運ちゃんでババ抜きをしたが、毎回トアオ、『ふぉーている』、運ちゃん、ヒウタの順位になるので飽きた。
どうやら最強人工知能というだけあって、あらゆる考えを見抜いているらしい。ご主人様を一位にしているあたり忠誠心の強い人工知能である。
それから例の県立図書館でサスケと分かれる。
「この子は家まで充電して、帰ったらメンテナンス。家まで寝ててもらう」
とトアオが言うので、人工知能『ふぉーている』の電源は切られた。一応緊急時には起動するようになっていたが、平和な世界に戻ってきたのか一度も起動することはなく家に着いた。
家にて。
三人で協力して片づけをした。
運ちゃんがパーティ! と言ったのでピザやフライドポテトを買ってきて。
好きな曲を交代で流す。
「ぷはっ」
ヒウタはメロンソーダを呷った。
トアオはコーラ、運ちゃんはウーロン茶を準備している。
「よし、トアオちゃんよろしく」
「その通り!」
ヒウタは目をキョロキョロと。
「うん、なんで先に飲んでるのって」
トアオの視線がヒウタに刺さった。
それから仕切り直して言う。
「私たちの大勝利に!」
「「乾杯!」」
トアオが旅までに何を準備してきたか。どうして自ら誘拐されたのか。どうやってサスケに手伝ってもらったのか。ヒウタと運ちゃんがピンチだった話。パラシュートが開いて助かった話。
パーティは盛り上がった。
あがり症だったトアオも円滑に会話できている。それだけ心から許せる関係になったのだろう。
「ねえヒウタさん。私ひどいことしたから、旅に連れて行ったことも、寿司屋で雰囲気を壊したことも。だから良かったら、またデートしたい。私、本気だから」
ヒウタを見つめる。
円らな瞳。ヒウタは目を離せないでいた。
ヒウタは落ち着いて目を反らす。
「本気とは?」
「本気で恋するってこと。私、ヒウタさんが良いから。恋してるから、ヒウタさんに」
トアオの耳や頬は赤くなっている。
ヒウタは湯気が出そうなほど熱くて思考が定まらない。
「……。ヒウタくん」
消えるような弱い声が聞こえてしまって、その声の主の目を見てしまう。
ヒウタは融けていなくなってしまいそうな表情を捉えて失敗したと思った。
胸の亀裂が広がって裂ける痛み。
ヒウタは床を見て、もう一度トアオを見た。
心配する表情、もうヒウタには逃げ道がなかった。
窮屈で堪らなく怖かった。
「分かった、またデートしよう。って今回のはデートと呼べるのか分からないけど」
「トアオちゃんの方が一緒にいた時間短いからあたしのデートかもね! あはははは」
「からかわないで運ちゃん。私、本気だから」
トアオは怒る。
運ちゃんは笑っていた、でもその向こう側の心を知っているヒウタは難しい顔をして。
それに気づいた運ちゃんは頭を掻いた。
「その前にトアオちゃん」
「どうしたの、畏まって」
トアオは運ちゃんの言葉を待つ。
「あたし、家を出るから。この旅で喧嘩して、あたしもトアオちゃんも分かってなかった。だからね、家を出るよ」
涙を浮かべるトアオを見て、運ちゃんは焦ったように言う。
「もちろんあたしたちは親友だから。でもずっと一緒にいすぎた。家事とかできるようになるまでは面倒見るわ。それから、あたしの運とトアオちゃんの技術でどっちが幸せになれるか勝負しましょ?」
得意げに言う運ちゃん。
トアオはヒウタの腕を掴んでにっこりと。
「分かった。けど私、ヒウタさんにするから」
ヒウタの腕に柔らかい部分が当たる。ヒウタは必死に意識を変える。
当の本人は気づいているかいないのか、ヒウタには分からない。
「分かった。あたしも本気を見せる。こう見えてもあたしはモテるからね!」
運ちゃんはトアオを撫でた。トアオも運ちゃんも笑う。
それは外から見れば微笑ましい光景であるが。
二人の思いを知った恋愛素人からすれば、あまりに難しい問題であった。
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