規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

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7章 のんびり少女が悠長すぎる!67~89話

その11 ヒウタと信じる人

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 一度山を抜けたはずがまた山が現れて。
「で、こいつに会って次のオーパーツの場所を聞きに行くために時間を潰しながらの移動だったってわけ。トアオちゃんが贔屓している情報屋。名前は」
 煌星きらほし茶助さすけ。タレ目で、ツバが長い中折れ帽子を被っている。全身はスーツを着ているがサイズが合わずに垂れている。情報屋といわれればこそこそと動き回るねずみのように小さい人間を想像する。しかし目の前の男はなんと二メートルは超えそうなほどの大男であった。
 オーダーメイドだと思われるが、わざわざ大きめの誰もサイズが合わなさそうなスーツを着ているのはなぜか? ヒウタには分からない。
「相変わらず埃まみれ」
 トアオは咳をする。
「勝手にうちに入ってきて、俺ちゃんに文句はないでしょう?」
 ここは山の隅の小屋。
 人が住んでいるとは考えにくい。
 ヒウタ、トアオ、運ちゃんは山の麓で車を降りて草木を掻き分けてやって来た。
「そう。なんでもいいわ。オーパーツの位置を、教えてほしい。いい? サスケさんは次のオーパーツである『棺を模した金色のライター』の位置を唯一知っている」
 トアオが言うと、サスケは屈んで小屋の奥へ消えた。
 小屋には書物やファイルが転がっている。
 電子類は見当たらない。
「サスケさんが唯一知っているとは言っても、トアオちゃんが金色のライターを渡して隠させた。奪われにくい場所に。もし本土決戦が行われたときに最強の防塞であり反撃の兵器を隠すための倉庫としても使う予定だった機械仕掛けの館。まああたしもどこにあるかは知らないけどね、サスケさんに聞くしかないから」
 サスケがファイルを持って出てくる。
 綴じられた書類には地図やいろんな機械の説明が書いてあるらしい。
 サスケを連れて車に戻った。
「ここからは四人体制だね、あはは。豪華豪華」
「うるさい。ところで俺ちゃんの報酬を先にいただきたい」
「お金ならない」
「またですか」
「何がほしい?」
「俺ちゃんは命を狙われるような情報はほしくないので」
「武器なら」
「あと防犯グッズですね。最近物騒なので熊とか即死させるくらいの」
「無理」
「無理ですか、無報酬になりますが」
「ツケで」
「そろそろお金でいいので払ってください」
「ない」
 ヒウタは会話には混ざることができなかった。
 でもトアオもサスケも楽しそうだしいいか。
「ヒウタくんもう着いたって」
 運ちゃんが言う。
「美術館?」
 白い柱、壁。自動扉を抜けるとシャンデリアの光が施設内を鮮やかに魅せる。
 目の前に噴水があった。
 奥には絵画や彫刻が見える。
「煌びやかに星、茶道に助ける。キラホシサスケ。支配人に電話してくれ。例の鍵を持ってくるように」
 受付けは困惑していた。
「この子は麦科都青。そう言ってくれればすぐ来てくれるよね」
「う……。うん」
 トアオの頭から湯気が出ていて、瞳がぐるぐると回っていた。
 あがり症が出たらしい。
「分かりました」
 受付けはよく分からないといった様子で電話を。受付けはみるみるうちに焦ったような早口に変わっていく。電話を終えると戻ってきた。
「急いで向かうそうです」
「そっか、悪いね。じゃあ待とうか。俺ちゃんを無報酬なんてあり得ないから早急に報酬を決めてほしいけどね」
 噴水の前のソファに腰を下ろす。
 運ちゃんはバッグから菓子パンを取り出す。
「防犯グッズと渡す。何かあったとか?」
「俺ちゃんの親戚が訪問買取に根こそぎ取られてしまってね。復讐はそれなりにしたけどさ。防犯グッズ渡そうかなと。君の技術なら不審者の亡骸を残さずに抹消するような防犯グッズも作れるでしょうから」
「過激ではないけど、比較的防犯性が高いものなら」
「妥協する」
 サスケはヒウタの肩に手を置く。
 重くて力強く感じたが、本人は無表情にも見える。
「君は機械仕掛けの館の防犯システムを知らないでしょうから。一つ、人を殺す仕掛けがあります。まあ、トアオさんがいれば問題ないでしょう。だから絶対に乗り切るべき試練だけを気を付ければ」
「試練?」
「人の記憶を覗いて、他の人に見せる。複数人での侵入を防ぐための嫌がらせでしょう。昏睡状態になるわけではありませんが、他人に知らせたくないことを教えてしまう。仲間割れをどうしても引き起こしたいのでしょうから。俺ちゃんは機械仕掛けの館の扉まで行きますし、支配人は鍵を開けて終わり。そろそろ準備してください。武器はもちろん、気持ちも。どうせオーパーツが手に入らなければみんな死ぬ予定なんでしょう?」
「あははは、サスケさんは全部お見通しだねえ」
 運ちゃんは微笑む。
「その通り。でも危険分子はこの晩夏までに終わらせたい、私にも生活がある」
「トアオさん? やっぱり死ぬんですか」
 トアオはヒウタの手を取る。
「私の恋活のために何でもするって言ってなかった?」
 トアオの瞳に涙が溜まっていて、ヒウタの腕を掴む手は震えている。
 ……、絶対演技だろとヒウタは気づく。
 鈍感系キャラではないが、それでも頷いてしまうのは。
「ヒウタさん、チョロい」
 こいつ!
 トアオは笑う。
「ありがとね!」
 ヒウタに向けられたトアオの全力の笑顔。
 ヒウタはそれ以上責めることができなかった。
「分かった、死なないように頑張る」
「ヒウタくんチャレンジャーだね、死ぬ確率の方が高いのに」
「運ちゃんさんやめてください!」
 ヒウタは怒った。
 こうして、三人は金色のライターを目指すことになった。

 
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