規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

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7章 のんびり少女が悠長すぎる!67~89話

その6 ヒウタと危険

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 それぞれ背負いバッグに荷物を詰める。ヒウタはトアオから武器や便利なものが入った箱と水の入ったペットボトル、非常食を渡されていた。
 運ちゃんはL字の棒を二本用意する。
車から降りて森の奥へ進む。
「ううううう、うおおおおおお!」
 運ちゃんは棒を強く握る。
 苦しそうに唸った後、ぱあっと明るく笑ってさらに奥を指差す。
 トアオは頷くと、ヒウタの腕を掴んで引いた。
「行く、から。ぼうっと、しない」
「本当にダウジング、……、もっといい方法はないの?」
「あはは、あたしの運が良いから利用する。ヒウタくんには分からないだろうけど、トアオちゃんにとっては一番合理的なんだよね!」
 運ちゃんは頭を掻く。
「その、通り。科学は、上手く事を運ぶためのものでしかない」
 トアオは深呼吸をする。
 深い森だからか、空気は澄んでいてよく湿気を含んでおり気持ちが良い。
 土のえぐいような匂いもしてしまうが大自然であるから仕方ないだろう。
 ヒウタはトアオの手の温もりと柔らかさから必死に意識を反らそうとする。しかしむしろ気になってしまうのだから仕方ない。
「さあどこだろうね、そうだ!」
 運ちゃんが立ち止まる。トアオが驚いたように急に止まるからヒウタは一瞬前のめりになった。
「これは?」
「超高電圧を発生させるもの。見た目はマジックペンでね。ゼロ距離で直接皮膚に当てれば大男でさえも簡単に失神させることができるから」
 運ちゃんはマジックペンのようなものを何本かヒウタに渡す。
 そして手にあるペンのキャップを外して、親指でもう一方のキャップを押した。
 電気が走る。バチっと鋭い音がした。黄色と青色が混ざったような線が一瞬現れた。
 当たった木の葉に穴が開く。穴の回りは黒くなっていて焦げ臭い。
「どうして急にその話を」
「つまりつけられている、ってこと。ヒウタさん、巻くよ」
 トアオは再びヒウタの腕を掴む。
 ヒウタは後ろを気にするが分からない。
「あたしはここで向かう討とうかな。たぶん一組じゃないよ?」
「僕らのために危険なことはしないって」
「死にたくはないだけ。けど勝てるなら早めに潰すからさ。ヒウタくんも見学しない?」
「ええ、いや。本当に戦いになるんですか?」
「信じられないだろうから。ドローンとかマジックハンドとか用意しててトアオちゃん。ヒウタくんに現実を見せておこう、これからもっと危ないからね。アップしとこう」
 運ちゃんは革製のような手袋を着ける。
 トアオの指示でヒウタは木に隠れた。
 草同士の擦れる音。落ち葉が踏まれて割れる音。金属の光沢!
 目の前に現れたのはピエロの仮面をした黒服の男二人だった。
 手にはナイフを持っている。
「本当に小娘を殺してもいいんですかね」
「上の命令だ。オーパーツを手に入れる」
 男たちはナイフを運ちゃんに向ける。
 鋭い刀身が銀色に光る。
 男たちが足を前に出すと、運ちゃんも前に出る。
「あはは、ナイフ? それが武器だって?」
「さあ、それだけじゃないぞ」
 男は運ちゃんの目を見て察したのかナイフをしまう。続くようにもう一人も。
 代わりに出てきたのは銃身が飛行船のような楕円体の銃。それはまるでおもちゃのようだった。
「やはり」
 トアオは落ち着いた様子で言う。
トアオは目が据わっていて、淡々と言葉を紡いでいた。普段人と話すときはあがり症で何度も息を吸っている。
「やはり?」
「私は大抵誰かにつけられているから。ストーカーが多くて嫌気が差すけどね」
「それって」
 ヒウタは一度男を見る。トアオは頷く。
「私を誘拐するか脅して技術を盗むか殺して技術が出てこないようにするか。私はかわいいけど、かわいいって理由でストーカーする人ばかりじゃない」
 ヒウタは緊急事態でツッコんでいいのか分からなかった。
 気にするべきは目の前の状況だ。
「発砲音も硝煙もないから気をつけてほしいかな」
「それってどういう、……」
 ヒウタが言いかけたときだった。
 ピュッと音がすると、大木に穴が開いた。それは指よりも小さいもので、もう少し左だったらヒウタに命中していた。
 ヒウタの真横を銃弾が抜けたのだ。開いた穴から塵が舞う。
 ヒウタは無意識のうちに息を止めていた。
 銃を撃った後ではあるが。
「はあー、……、はあ。はあ、……っ」
 ヒウタは木にもたれながら座り込んだ。
 息が苦しい、胸が痛い、耳鳴りがして頭が痛む。
 これが現実、これはちゃんと死んでしまう。
「ヒウタさん? まずはヘラクレスオオカブトムシのラジコンを手に入れたい。それから教えて。それまでは途中リタイアする方法がない」
「ああ、それもそうか。はあー、はあ、……」
 ヒウタは必死に息を整えようとする。
 しかし意識するほど呼吸が乱れてしまう。
「あ、見て。もう終わったわ」
 ヒウタは起き上がって木の向こう側を見る。
 男たちは重なるように倒れていて、その上に運ちゃんが座っていた。
「楽勝、楽勝! そうそう、トアオちゃんが言ってた組織だと思うよ。無線、たぶん前見たのと同じだし。みんなトアオちゃん大好きだねえ、私には勝てないだろうけど」
「また誘拐目的ね。運ちゃんとヒウタくんは殺しておく予定だろうけど。むふ、ヒウタくんのことはまだバレていないだろうけどね!」
「間違いない。うちのエースだよ、ヒウタくんは。それよりトアオちゃん興奮してる? 饒舌になってるし」
「いや、その、あまりからか、かう駄目」
 継ぎ接ぎながら言う。
「今上手く喋れてたのにー、どうしてまたあがってるの?」
「意識、させる、……、から」
「了解しました。さあ、もうワンチャンス」
 運ちゃんはL字の金属棒を持って笑う。
 顔には血が付いていたが返り血だろうし聞かないことにした。
「ダウジングタイムといきますか? いっえーい!」


 
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