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6章 恋の価値が重大すぎる!48~66話
その9 ヒウタと約束
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エアホッケー、カーレース、ゾンビゲーム。
ゲームセンターを堪能した二人。
アメユキはメダルゲームをしたいと言っていたが時間の都合上辞めた。
昼ご飯を食べていないことに気づいて近くのサンドイッチ屋に寄る。
アメユキはサンドイッチを楽しそうに食べる。
それから。
映画館に行こうとした。
アメユキの門限が早くて道の途中で引き返すことに。
結局どこに何があるかを話しながら駅周辺を歩くだけだった。
「歩き疲れてないか?」
ヒウタは失敗に気づく。
店に寄らなければ必然的に歩く時間が増える。
アメユキの負担は大きくなっていただろう。
元々のデートプランならもう少し店の滞在時間が長かった。
「こう見えても運動得意!」
本当はどこか痛めてないか?
考えても分からない。
じっと見るヒウタの視線に気づいて、アメユキはヒウタの腕を取る。
そしてぎゅっと腕を巻き込むように手を。
「ねえ、寂しいよ」
「アメユキ?」
「変なこといってごめんね」
アメユキはまだ青い空を眺める。
薄い雲が残り滓のように平たく長く広がっている。
「うん」
「私ヒウタが好き。もっと一緒に居られると思ってたのにいなくなって、結構寂しいよ」
ヒウタはアメユキの表情を見ないで。
「ごめん」
「謝ってほしくないけど。せめてもっと会えるようにしたい。もっとにいがいっぱいがいい」
声が明るい。
アメユキは楽しい表情をしているに違いない。
けど。
「分かった。どうしたらいい? アメユキが言うなら恋活もマッチングアプリもすぐに辞めれる。実家にも帰ることだって」
急に目が熱くなる。
恋活をやめる?
マッチングアプリをやめる?
アキトヨ、メリア、シュイロとの繋がりはどうなるのか?
アメユキのためならきっとできる、でも辞めてヒウタ自身は無事だろうか?
「無理しないで。どうして泣きそうなの? 私はにいに幸せになってほしいから、恋活は応援したいけど。もっとにいに甘えたい」
「分かった」
「ぎゅっとして」
ようやくアメユキの表情が見える。
なんだ思ったより平気そうで。
笑顔にも悲しそうにも見える表情で。
アメユキが腕を広げる。
ヒウタはアメユキの側に飛び込んで優しく力強く抱き締める。
「恋頑張って、にいに」
「ヒウタ呼びは?」
「もう必要ない。合格だよ、にいに。今日はありがとね」
その意味はつまり。
デートごっこはここまで。
「帰るから」
二人は方向を変えて。
アメユキとヒウタは何も言葉を紡げない。
隣にいるのは兄で、妹で。
それも自信を持って仲が良いと言える。
しかし無言のまま帰路へ。
改札について。
アメユキは改札でヒウタと離れようとする。
「それが母さんから家まで送れと言われてさ」
「え?」
振り向いたアメユキは瞳に涙を溜めていて。
振り返った衝撃で涙が頬を伝る。
「アメユキ、大丈夫?」
ヒウタは分からなかった。
大事な人が泣いている、それだけ。
一体どうして?
少なくとも緊急事態だろう。
「私いい子じゃないもん、大丈夫じゃないもん。せめて強がるから許して」
「アメユキはいい子だろ、勉強も頑張ってるし」
ヒウタは応える。
アメユキを励ます?
どうする?
内心ヒウタは焦っていた。
「私とにいって血が繋がってないの、だから結婚しようね」
アメユキはヒウタの首に手を回す。
ヒウタは体勢を崩して前屈みになった。
その瞬間、頬に温もり。
アメユキが頬にキスした?
「血が繋がってないって」
煩わしい鼓動、緊張で血管が凍ってしまいそうだ。
「嘘だよ、にいは私の大事なにいなんだから」
「アメユキどうした?」
アメユキはおかしい。
いつもと異なって、らしくないのだろう。
「にいといっぱい遊んだ。そういうこと」
その言葉を聞いてヒウタはホッとした。
だからデートをしたかったのか。
デートがちゃんとできているか見たいというアメユキは。
結局は兄であるヒウタにもっと遊んでほしかったのか。
そう思うと、目の前のかわいい人間が余計愛しく思う。
「そうか。また来いよ、それともう少し頻度を増やして実家に戻る。ったく、わがままで世界一かわいい妹を持つと苦労するな」
「私のにいなんて、私がいないと女性と出会えない哀れで最高の豚なのに」
「それ結局豚だが?」
「気づいちゃった?」
アメユキは笑う。
釣られてヒウタも笑ってしまった。
電車に乗る。
最寄り駅に行くと父が車で待っていた。
「約束しよ」
「どんな約束?」
「一か月に四日間は実家に来て」
「分かった。遊んでやる」
アメユキはヒウタの胸に飛び込む。
顔を埋めるようにヒウタを抱き締める。
「にいが遊ばれる側かもね」
「さあ」
「約束破ったら怒りモードでにいの家に行くから」
「母さんや父さんに心配かけないようにな」
「私、いい子?」
「もちろん」
「ぶー、残念でした!」
アメユキはヒウタから離れて車まで駆ける。
その様子を見てヒウタは踵を返して。
頭を掻きながら。
心が満たされて、でも欠けているような感覚。
妹と離れて寂しいのか。
「兄ちゃん頑張るか」
手を組んで腕を天に伸ばす。
辺りは薄暗くなっていた。
ゲームセンターを堪能した二人。
アメユキはメダルゲームをしたいと言っていたが時間の都合上辞めた。
昼ご飯を食べていないことに気づいて近くのサンドイッチ屋に寄る。
アメユキはサンドイッチを楽しそうに食べる。
それから。
映画館に行こうとした。
アメユキの門限が早くて道の途中で引き返すことに。
結局どこに何があるかを話しながら駅周辺を歩くだけだった。
「歩き疲れてないか?」
ヒウタは失敗に気づく。
店に寄らなければ必然的に歩く時間が増える。
アメユキの負担は大きくなっていただろう。
元々のデートプランならもう少し店の滞在時間が長かった。
「こう見えても運動得意!」
本当はどこか痛めてないか?
考えても分からない。
じっと見るヒウタの視線に気づいて、アメユキはヒウタの腕を取る。
そしてぎゅっと腕を巻き込むように手を。
「ねえ、寂しいよ」
「アメユキ?」
「変なこといってごめんね」
アメユキはまだ青い空を眺める。
薄い雲が残り滓のように平たく長く広がっている。
「うん」
「私ヒウタが好き。もっと一緒に居られると思ってたのにいなくなって、結構寂しいよ」
ヒウタはアメユキの表情を見ないで。
「ごめん」
「謝ってほしくないけど。せめてもっと会えるようにしたい。もっとにいがいっぱいがいい」
声が明るい。
アメユキは楽しい表情をしているに違いない。
けど。
「分かった。どうしたらいい? アメユキが言うなら恋活もマッチングアプリもすぐに辞めれる。実家にも帰ることだって」
急に目が熱くなる。
恋活をやめる?
マッチングアプリをやめる?
アキトヨ、メリア、シュイロとの繋がりはどうなるのか?
アメユキのためならきっとできる、でも辞めてヒウタ自身は無事だろうか?
「無理しないで。どうして泣きそうなの? 私はにいに幸せになってほしいから、恋活は応援したいけど。もっとにいに甘えたい」
「分かった」
「ぎゅっとして」
ようやくアメユキの表情が見える。
なんだ思ったより平気そうで。
笑顔にも悲しそうにも見える表情で。
アメユキが腕を広げる。
ヒウタはアメユキの側に飛び込んで優しく力強く抱き締める。
「恋頑張って、にいに」
「ヒウタ呼びは?」
「もう必要ない。合格だよ、にいに。今日はありがとね」
その意味はつまり。
デートごっこはここまで。
「帰るから」
二人は方向を変えて。
アメユキとヒウタは何も言葉を紡げない。
隣にいるのは兄で、妹で。
それも自信を持って仲が良いと言える。
しかし無言のまま帰路へ。
改札について。
アメユキは改札でヒウタと離れようとする。
「それが母さんから家まで送れと言われてさ」
「え?」
振り向いたアメユキは瞳に涙を溜めていて。
振り返った衝撃で涙が頬を伝る。
「アメユキ、大丈夫?」
ヒウタは分からなかった。
大事な人が泣いている、それだけ。
一体どうして?
少なくとも緊急事態だろう。
「私いい子じゃないもん、大丈夫じゃないもん。せめて強がるから許して」
「アメユキはいい子だろ、勉強も頑張ってるし」
ヒウタは応える。
アメユキを励ます?
どうする?
内心ヒウタは焦っていた。
「私とにいって血が繋がってないの、だから結婚しようね」
アメユキはヒウタの首に手を回す。
ヒウタは体勢を崩して前屈みになった。
その瞬間、頬に温もり。
アメユキが頬にキスした?
「血が繋がってないって」
煩わしい鼓動、緊張で血管が凍ってしまいそうだ。
「嘘だよ、にいは私の大事なにいなんだから」
「アメユキどうした?」
アメユキはおかしい。
いつもと異なって、らしくないのだろう。
「にいといっぱい遊んだ。そういうこと」
その言葉を聞いてヒウタはホッとした。
だからデートをしたかったのか。
デートがちゃんとできているか見たいというアメユキは。
結局は兄であるヒウタにもっと遊んでほしかったのか。
そう思うと、目の前のかわいい人間が余計愛しく思う。
「そうか。また来いよ、それともう少し頻度を増やして実家に戻る。ったく、わがままで世界一かわいい妹を持つと苦労するな」
「私のにいなんて、私がいないと女性と出会えない哀れで最高の豚なのに」
「それ結局豚だが?」
「気づいちゃった?」
アメユキは笑う。
釣られてヒウタも笑ってしまった。
電車に乗る。
最寄り駅に行くと父が車で待っていた。
「約束しよ」
「どんな約束?」
「一か月に四日間は実家に来て」
「分かった。遊んでやる」
アメユキはヒウタの胸に飛び込む。
顔を埋めるようにヒウタを抱き締める。
「にいが遊ばれる側かもね」
「さあ」
「約束破ったら怒りモードでにいの家に行くから」
「母さんや父さんに心配かけないようにな」
「私、いい子?」
「もちろん」
「ぶー、残念でした!」
アメユキはヒウタから離れて車まで駆ける。
その様子を見てヒウタは踵を返して。
頭を掻きながら。
心が満たされて、でも欠けているような感覚。
妹と離れて寂しいのか。
「兄ちゃん頑張るか」
手を組んで腕を天に伸ばす。
辺りは薄暗くなっていた。
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