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6章 恋の価値が重大すぎる!48~66話
その5 ヒウタと恋の大きさ
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トウヤ、シュイロとの焼き肉を終えたヒウタは、自分の部屋に帰って。
すぐに風呂を沸かす準備を。
一人暮らしをしてから、浴槽に湯を張ることが減った。
のんびり体を浸けて休むのは心地いいが、風呂掃除の手間やシュイロに払ってもらっているガス・水道代を思うとあまり湯船に浸かることはない。
それでも焼き肉の香ばしい香りが残ってしまうし、疲れたし、今日くらいは。
風呂に備え付けの給湯器リモコンを操作し、自動で湯を溜める設定をした。
それを待つ間、テーブルでパソコンを開く。
アプリ利用者の意見やお問い合わせ内容をまとめる。
トウヤと会った女性がマッチングアプリを退会して。
その数は無視できない。
それでもアプリの代表を務めるシュイロは、トウヤを強制退会させない。
アプリの規約には強制退会の表記がある。
シュイロが決めればいつでも退会させられる。
だからこそ真意が分からない。
「マッチングしたのに会えないとか、あまり減らないんだな。それに、どうしてもセクハラなどの問題、しつこく迫ることやストーカー紛いの問題は少なくない。俺がシュイロさんにできること、もっとないのか」
報告書にまとめる。
ようやく風呂が完成したようで。
「恋って分からないな」
ヒウタは服を脱いで浴室へ。
息を吐く。
トウヤは本当に恋について悩んでいるらしい、それは分かる。
ただ想い人を忘れるためにマッチングアプリを使おうとしたカズサとは異なって、トウヤの場合は傷ついている人たちがいる。
カズサがアプリを使用するとき、シュイロは保留にしてアプリの使用許可を出さなかった。
結局、スイーツパーティを開くことで出会いの場を作って、アプリのお試しのようにした。
その結果カズサは相性の良い人を見つけて恋をしている。
トウヤの状況の方が深刻だろう。
「シュイロさんは何を考えて。あの人は優しいから世話焼きだからトウヤのためって行動しているかもしれない。それだったら傷ついた人たちは誰が助けるんだ」
シャワーを浴びる。
泡立ったボディソープとシャンプー。
シャワーヘッドからの噴出の音、床を打つ水の音が淡々と聞こえる。
泡が流れていく。
生え際を掻き分けるようにしてシャンプーを落とす。
シャワーと止めると、右足から湯に。
全身で浸かると、ホッと息が出て。
じんと体全体に熱が広がって、強張った筋肉がゆっくりと解れていく。
つい頬が緩む感覚。
足を伸ばして。
「トウヤさんに会ってほしい、そう言われた。けどシュイロさんが話して、あの人は肝心なところを教えてくれない。俺に、恋愛素人で、シュイロさんと違って凡人で、一体何を期待してるんだ」
髪を引っ張ってしまう。
少し痛みを感じて手を離す。
苛立ってしまう。
分からないものは分からない。
ヒウタが浴室を出るとスマホが鳴っていた。
電話?
ヒウタはバスタオルで体を一瞬拭く。
急いでスマホを開いて耳に当てる。
『あー、邪魔みたいな?』
「風呂出てすぐですけど?」
『そっか。タイミングが悪かったな。話したいことがあるし、また準備ができたら』
シュイロの声が遠くなる。
もうすぐ通話を切るだろう。
だから動くべきだ。
「シュイロさん、このまま話したいです」
『え? ちゃんとしないと風邪引くぞ?』
「結構夜も暑いので。それよりも」
『どうした?』
「シュイロさんはトウヤさんみたいなだらしない系クールイケメンがタイプなんですか?」
意味の分からないことを言ってしまった、ヒウタは言ってから気づく。
シュイロは黙ってしまった様子。
困らせてしまった。
『そう思うか? どうして?』
「トウヤさんへの態度が思っていたのと違っていて」
『タケシロの悩み方も傷つけてしまうことももちろん恋の一つ。タケシロの言葉に期待して傷つくのも恋だからな』
「それでも、らしくないって言うか、シュイロさんがマッチングアプリのために、一人でも多くの人に優しくって思ったら強制退会が妥当だって僕は思って」
『ヒウタらしいな、ただあいつは元々悪いやつでもなければクズでもない。分からなかっただけだ。もう人を傷つけないと思うし、ちゃんと恋をしたいって思ってるだろうからな』
ヒウタは落ち着く。
トウヤは悪い人ではない、それは分かる。
傷つけてしまったことを知って気を付けながら恋をするなら、シュイロとしては強制退会の必要がないだろう。
だからヒウタが抱くこの気持ちは、きっと。
「僕はトウヤさんに罰を受けてほしいと思います。傷つけて辛い思いをしてアプリを退会してた人がいて、でもトウヤさんが上手くいくなんて」
『アプリを退会した人はタケシロが罰を受けてもそれを知る方法がほとんどない。意味ないと思うが、それともヒウタの気持ちの問題でタケシロを退会にしろと? 次に似たようなことが起きるか、タケシロの言動に悪意を感じたら早めに退会させる。それでも許せないか?』
シュイロの言葉に重みを感じた。
雇い主でありアプリの代表をしているシュイロが言うならば、ヒウタが反論することはない。
「分かりました」
『恋は生きる上で重大な問題だ。だが全てでもない。私たちが干渉できるのも限界がある。信じるしかない、それでも罰を与えるべきか?』
「僕はきっと退会した人たちも救いたかったし、僕はシュイロさんに救ってほしかったのかもしれないです。それができないならせめて罰を、なんて嫌な考えをしてしまって」
『ヒウタ、その純粋な考えを決して見失ってはいけない。それでも今は託そう』
「そうですね」
ヒウタは通話を切ろうとして。
そういえばと。
「話ってなんですか?」
『いや、なんと言えばいいのか、なんて』
「何をですか?」
『いい恋してる? みたいな』
「マッチングしてデートしてますけど、それが何か」
シュイロの様子がおかしい。
まさかお酒は飲んでいないだろうが。
『なあ、ヒウタ。ヒウタは純粋すぎるだろ、いろいろ心配みたいな?』
「よく分かりませんが」
ヒウタはパジャマ姿に。
シュイロは言葉に詰まっているらしい。
通話を続ける理由がヒウタには分からない。
「もう切りますね、報告書はそろそろ出すので」
ヒウタがスマホを耳から離して画面に触れようとしたときだった。
『けど大丈夫そうか』
シュイロの言葉が聞こえて。
それ以上は聞けないまま通話を切ってしまう。
「何を言ってるんだ?」
やはり最近のシュイロは分からない。
ただ電話して分かったのは、トウヤはもう人を傷つけることを避けるだろうこと。
傷つけるのも傷つけられるのも恋だと思っていること。
酔ってはいないと思うが様子がおかしいこと。
ヒウタは再びパソコンを開いて報告書をまとめる。
シュイロに報告書を送ると、寝る準備をして布団へ。
ヒウタは疲れていたからか、引き摺られるように一気に眠った。
すぐに風呂を沸かす準備を。
一人暮らしをしてから、浴槽に湯を張ることが減った。
のんびり体を浸けて休むのは心地いいが、風呂掃除の手間やシュイロに払ってもらっているガス・水道代を思うとあまり湯船に浸かることはない。
それでも焼き肉の香ばしい香りが残ってしまうし、疲れたし、今日くらいは。
風呂に備え付けの給湯器リモコンを操作し、自動で湯を溜める設定をした。
それを待つ間、テーブルでパソコンを開く。
アプリ利用者の意見やお問い合わせ内容をまとめる。
トウヤと会った女性がマッチングアプリを退会して。
その数は無視できない。
それでもアプリの代表を務めるシュイロは、トウヤを強制退会させない。
アプリの規約には強制退会の表記がある。
シュイロが決めればいつでも退会させられる。
だからこそ真意が分からない。
「マッチングしたのに会えないとか、あまり減らないんだな。それに、どうしてもセクハラなどの問題、しつこく迫ることやストーカー紛いの問題は少なくない。俺がシュイロさんにできること、もっとないのか」
報告書にまとめる。
ようやく風呂が完成したようで。
「恋って分からないな」
ヒウタは服を脱いで浴室へ。
息を吐く。
トウヤは本当に恋について悩んでいるらしい、それは分かる。
ただ想い人を忘れるためにマッチングアプリを使おうとしたカズサとは異なって、トウヤの場合は傷ついている人たちがいる。
カズサがアプリを使用するとき、シュイロは保留にしてアプリの使用許可を出さなかった。
結局、スイーツパーティを開くことで出会いの場を作って、アプリのお試しのようにした。
その結果カズサは相性の良い人を見つけて恋をしている。
トウヤの状況の方が深刻だろう。
「シュイロさんは何を考えて。あの人は優しいから世話焼きだからトウヤのためって行動しているかもしれない。それだったら傷ついた人たちは誰が助けるんだ」
シャワーを浴びる。
泡立ったボディソープとシャンプー。
シャワーヘッドからの噴出の音、床を打つ水の音が淡々と聞こえる。
泡が流れていく。
生え際を掻き分けるようにしてシャンプーを落とす。
シャワーと止めると、右足から湯に。
全身で浸かると、ホッと息が出て。
じんと体全体に熱が広がって、強張った筋肉がゆっくりと解れていく。
つい頬が緩む感覚。
足を伸ばして。
「トウヤさんに会ってほしい、そう言われた。けどシュイロさんが話して、あの人は肝心なところを教えてくれない。俺に、恋愛素人で、シュイロさんと違って凡人で、一体何を期待してるんだ」
髪を引っ張ってしまう。
少し痛みを感じて手を離す。
苛立ってしまう。
分からないものは分からない。
ヒウタが浴室を出るとスマホが鳴っていた。
電話?
ヒウタはバスタオルで体を一瞬拭く。
急いでスマホを開いて耳に当てる。
『あー、邪魔みたいな?』
「風呂出てすぐですけど?」
『そっか。タイミングが悪かったな。話したいことがあるし、また準備ができたら』
シュイロの声が遠くなる。
もうすぐ通話を切るだろう。
だから動くべきだ。
「シュイロさん、このまま話したいです」
『え? ちゃんとしないと風邪引くぞ?』
「結構夜も暑いので。それよりも」
『どうした?』
「シュイロさんはトウヤさんみたいなだらしない系クールイケメンがタイプなんですか?」
意味の分からないことを言ってしまった、ヒウタは言ってから気づく。
シュイロは黙ってしまった様子。
困らせてしまった。
『そう思うか? どうして?』
「トウヤさんへの態度が思っていたのと違っていて」
『タケシロの悩み方も傷つけてしまうことももちろん恋の一つ。タケシロの言葉に期待して傷つくのも恋だからな』
「それでも、らしくないって言うか、シュイロさんがマッチングアプリのために、一人でも多くの人に優しくって思ったら強制退会が妥当だって僕は思って」
『ヒウタらしいな、ただあいつは元々悪いやつでもなければクズでもない。分からなかっただけだ。もう人を傷つけないと思うし、ちゃんと恋をしたいって思ってるだろうからな』
ヒウタは落ち着く。
トウヤは悪い人ではない、それは分かる。
傷つけてしまったことを知って気を付けながら恋をするなら、シュイロとしては強制退会の必要がないだろう。
だからヒウタが抱くこの気持ちは、きっと。
「僕はトウヤさんに罰を受けてほしいと思います。傷つけて辛い思いをしてアプリを退会してた人がいて、でもトウヤさんが上手くいくなんて」
『アプリを退会した人はタケシロが罰を受けてもそれを知る方法がほとんどない。意味ないと思うが、それともヒウタの気持ちの問題でタケシロを退会にしろと? 次に似たようなことが起きるか、タケシロの言動に悪意を感じたら早めに退会させる。それでも許せないか?』
シュイロの言葉に重みを感じた。
雇い主でありアプリの代表をしているシュイロが言うならば、ヒウタが反論することはない。
「分かりました」
『恋は生きる上で重大な問題だ。だが全てでもない。私たちが干渉できるのも限界がある。信じるしかない、それでも罰を与えるべきか?』
「僕はきっと退会した人たちも救いたかったし、僕はシュイロさんに救ってほしかったのかもしれないです。それができないならせめて罰を、なんて嫌な考えをしてしまって」
『ヒウタ、その純粋な考えを決して見失ってはいけない。それでも今は託そう』
「そうですね」
ヒウタは通話を切ろうとして。
そういえばと。
「話ってなんですか?」
『いや、なんと言えばいいのか、なんて』
「何をですか?」
『いい恋してる? みたいな』
「マッチングしてデートしてますけど、それが何か」
シュイロの様子がおかしい。
まさかお酒は飲んでいないだろうが。
『なあ、ヒウタ。ヒウタは純粋すぎるだろ、いろいろ心配みたいな?』
「よく分かりませんが」
ヒウタはパジャマ姿に。
シュイロは言葉に詰まっているらしい。
通話を続ける理由がヒウタには分からない。
「もう切りますね、報告書はそろそろ出すので」
ヒウタがスマホを耳から離して画面に触れようとしたときだった。
『けど大丈夫そうか』
シュイロの言葉が聞こえて。
それ以上は聞けないまま通話を切ってしまう。
「何を言ってるんだ?」
やはり最近のシュイロは分からない。
ただ電話して分かったのは、トウヤはもう人を傷つけることを避けるだろうこと。
傷つけるのも傷つけられるのも恋だと思っていること。
酔ってはいないと思うが様子がおかしいこと。
ヒウタは再びパソコンを開いて報告書をまとめる。
シュイロに報告書を送ると、寝る準備をして布団へ。
ヒウタは疲れていたからか、引き摺られるように一気に眠った。
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