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6章 恋の価値が重大すぎる!48~66話
その7 ヒウタとハク
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「よし、ゲームするぞ!」
と突然インターホンを押して。
寝ぼけ眼のヒウタはその友人を入れる。
山吹刃玖。大きな紙袋にはゲーム本体やソフト、ゲームリモコンが入っているらしい。
「ああ、分かった分かった」
断る理由がなかったヒウタは、ハクを部屋に招く。
「女性の香りが!」
「なんでだよ」
「いや、微かに甘い香りがした気がして。女の子を入れてしまったのか、非モテ協会はどうした!」
「入るなんて言ってないだろ」
「そのことなんだが」
「どのことなんだよ?」
「非モテ協会は解散した。守れなくてごめんな」
「守らなくていい。うちの学科の女性陣にどれだけ嫌がられてると思ってるんだ、非モテ協会」
「皆まで言うな。ただメンバーに彼女ができてしまって、他のメンバーは躍起になって彼女探しを始めてしまった。解散なんだよ、そろそろ俺も彼女を作るしか」
「悩んでるってことか? 俺も彼女はいないけどさ」
「彼女はいない? まるで彼女じゃない関係ならいるような言い方を」
ヒウタは女性の友人ができた。
それに、マッチングアプリの管理バイトをすることで、アプリの代表であるシュイロとも関わっている。
女性との関わりがないとは言えなかった。
「そうか、ヒウタは美人上司のヒモだったな!」
ハクが言う美人上司とはシュイロのことで、確かにその姿を見れば目に焼き付いてしまうような、むしろ忘れたくないような綺麗さではある。
前に、ヒウタの部屋で勉強会を開いたときにたまたまシュイロが訪問したため、バイト先の上司だとヒウタは説明した。
ただ部屋をシュイロが借りているため、並みのバイトの処遇ではない。
したがって、ヒモという位置付けになっているのだ。
「彼女ほしい。ヒモのヒウタには分からないだろうが」
「いや、俺だって彼女ほしくてさ」
ふわふわした空気がじっと落ち着いて。
ハクはヒウタをじっと見る。
室内灯の光がヒウタの瞳を照らす。
その強気な視線に、ハクは続く言葉を待つ。
「俺はマッチングアプリやってるから。それなりにマッチングして、それなりに会って。いつかは彼女作りたいって、うまく行ってない気もするけど」
「え、あ、先輩!」
ハクはヒウタの手を取る。
ヒウタは息を飲み込む。
ようやく言えたのだ。
「先輩?」
「俺も連れていけ」
「どこへ? え?」
「マッチングアプリ。一緒に彼女を作ろう! だから使い方教えてくれ」
ヒウタはハクの反応に驚く。
からかわれるか嫌われるか。
そのどちらでもない。
ハクという友人を見誤っていたようだ。
「分かった。けどもう一つ言わなきゃいけないことがある」
「あの女性のこと?」
「大方予想してる人だと思う。シュイロさんはマッチングアプリの代表で、俺はそこでバイトしててお問い合わせ内容とか意見とかを報告書にまとめたり、困ってる人の相談を聞く」
「そうなんだ。楽しい?」
「大変だけど楽しい。だからヒモではない」
「そうか。よし、ヒウタ。君が運営してるという最強のマッチングアプリ、俺に教えろ!」
ハクは持ってきた紙袋からゲーム機を取り出す。
「任せろ、運営側の人間でもあるからな」
「面食らったような、意識がはっきりしてないような感じで。もっと何か言われると思った?」
「そうかも」
「変なこというな。さあゲームやるぞ! ボコボコにしてやる!」
「急にどうした?」
「ヒウタには負けるわけにはいかない。ゲームは圧勝するし先に彼女を作る」
「同学科の女性陣の評価も何とかしてくれ」
「それもそうだな。ヒウタ、頼んだ」
「頼まないでくれ。非モテ協会は解散したとはいえ、責任は総帥だろ?」
「それを言われると弱いが、俺になんとかできると思うか?」
「思えないし少しは手伝うが責任の問題が発生したら全部負ってくれ」
「そんな無茶な」
ソフトを本体に差し込む。
格闘ゲームを立ち上げて。
ヒウタとハクは血眼で画面を見る。
用意スタート。
始めはハクが優勢だった。
それもそのはず、ヒウタはゲームをする機会が減っていた。
マッチングして、報告書を書いて。
シュイロに会い、チカフミに会う。
アキトヨ、メリアと出掛けて。
暇なときはダラダラと過ごし。
しかし、何度も勝負するうちに、ヒウタは勘を取り戻して。
いつの間にかヒウタが勝つ。
結局ハクはゲームリモコンを置いた。
「ヒウタは強いな」
「いやいや勝ち負けでいったら同じくらいだろ?」
「慣れの問題。もう勝てる気はしないな」
「そっか」
「お腹空いた。どうする?」
「チャーハンでも作る。台湾チャーハン、唐辛子は得意か?」
「くそ、料理男子か。監視せねば、すぐモテてしまう」
「料理アピールする余裕ないからな。家に入れてるだけで結構勝ちだし、シュイロさんが借りてくれてる部屋に連れ込めるか?」
「無理だな」
「分かってくれて何より」
ヒウタはキッチンに立つ。
それからしばらくして。
テーブルに置かれたチャーハンをハクはありがたそうに食べる。
「うまいな、やはり危険だ」
とハクは息を吐いて。
ヒウタは嬉しそうにハクを見ていた。
ただ料理ができるようになったのは、シュイロの指導の賜物だが。
と突然インターホンを押して。
寝ぼけ眼のヒウタはその友人を入れる。
山吹刃玖。大きな紙袋にはゲーム本体やソフト、ゲームリモコンが入っているらしい。
「ああ、分かった分かった」
断る理由がなかったヒウタは、ハクを部屋に招く。
「女性の香りが!」
「なんでだよ」
「いや、微かに甘い香りがした気がして。女の子を入れてしまったのか、非モテ協会はどうした!」
「入るなんて言ってないだろ」
「そのことなんだが」
「どのことなんだよ?」
「非モテ協会は解散した。守れなくてごめんな」
「守らなくていい。うちの学科の女性陣にどれだけ嫌がられてると思ってるんだ、非モテ協会」
「皆まで言うな。ただメンバーに彼女ができてしまって、他のメンバーは躍起になって彼女探しを始めてしまった。解散なんだよ、そろそろ俺も彼女を作るしか」
「悩んでるってことか? 俺も彼女はいないけどさ」
「彼女はいない? まるで彼女じゃない関係ならいるような言い方を」
ヒウタは女性の友人ができた。
それに、マッチングアプリの管理バイトをすることで、アプリの代表であるシュイロとも関わっている。
女性との関わりがないとは言えなかった。
「そうか、ヒウタは美人上司のヒモだったな!」
ハクが言う美人上司とはシュイロのことで、確かにその姿を見れば目に焼き付いてしまうような、むしろ忘れたくないような綺麗さではある。
前に、ヒウタの部屋で勉強会を開いたときにたまたまシュイロが訪問したため、バイト先の上司だとヒウタは説明した。
ただ部屋をシュイロが借りているため、並みのバイトの処遇ではない。
したがって、ヒモという位置付けになっているのだ。
「彼女ほしい。ヒモのヒウタには分からないだろうが」
「いや、俺だって彼女ほしくてさ」
ふわふわした空気がじっと落ち着いて。
ハクはヒウタをじっと見る。
室内灯の光がヒウタの瞳を照らす。
その強気な視線に、ハクは続く言葉を待つ。
「俺はマッチングアプリやってるから。それなりにマッチングして、それなりに会って。いつかは彼女作りたいって、うまく行ってない気もするけど」
「え、あ、先輩!」
ハクはヒウタの手を取る。
ヒウタは息を飲み込む。
ようやく言えたのだ。
「先輩?」
「俺も連れていけ」
「どこへ? え?」
「マッチングアプリ。一緒に彼女を作ろう! だから使い方教えてくれ」
ヒウタはハクの反応に驚く。
からかわれるか嫌われるか。
そのどちらでもない。
ハクという友人を見誤っていたようだ。
「分かった。けどもう一つ言わなきゃいけないことがある」
「あの女性のこと?」
「大方予想してる人だと思う。シュイロさんはマッチングアプリの代表で、俺はそこでバイトしててお問い合わせ内容とか意見とかを報告書にまとめたり、困ってる人の相談を聞く」
「そうなんだ。楽しい?」
「大変だけど楽しい。だからヒモではない」
「そうか。よし、ヒウタ。君が運営してるという最強のマッチングアプリ、俺に教えろ!」
ハクは持ってきた紙袋からゲーム機を取り出す。
「任せろ、運営側の人間でもあるからな」
「面食らったような、意識がはっきりしてないような感じで。もっと何か言われると思った?」
「そうかも」
「変なこというな。さあゲームやるぞ! ボコボコにしてやる!」
「急にどうした?」
「ヒウタには負けるわけにはいかない。ゲームは圧勝するし先に彼女を作る」
「同学科の女性陣の評価も何とかしてくれ」
「それもそうだな。ヒウタ、頼んだ」
「頼まないでくれ。非モテ協会は解散したとはいえ、責任は総帥だろ?」
「それを言われると弱いが、俺になんとかできると思うか?」
「思えないし少しは手伝うが責任の問題が発生したら全部負ってくれ」
「そんな無茶な」
ソフトを本体に差し込む。
格闘ゲームを立ち上げて。
ヒウタとハクは血眼で画面を見る。
用意スタート。
始めはハクが優勢だった。
それもそのはず、ヒウタはゲームをする機会が減っていた。
マッチングして、報告書を書いて。
シュイロに会い、チカフミに会う。
アキトヨ、メリアと出掛けて。
暇なときはダラダラと過ごし。
しかし、何度も勝負するうちに、ヒウタは勘を取り戻して。
いつの間にかヒウタが勝つ。
結局ハクはゲームリモコンを置いた。
「ヒウタは強いな」
「いやいや勝ち負けでいったら同じくらいだろ?」
「慣れの問題。もう勝てる気はしないな」
「そっか」
「お腹空いた。どうする?」
「チャーハンでも作る。台湾チャーハン、唐辛子は得意か?」
「くそ、料理男子か。監視せねば、すぐモテてしまう」
「料理アピールする余裕ないからな。家に入れてるだけで結構勝ちだし、シュイロさんが借りてくれてる部屋に連れ込めるか?」
「無理だな」
「分かってくれて何より」
ヒウタはキッチンに立つ。
それからしばらくして。
テーブルに置かれたチャーハンをハクはありがたそうに食べる。
「うまいな、やはり危険だ」
とハクは息を吐いて。
ヒウタは嬉しそうにハクを見ていた。
ただ料理ができるようになったのは、シュイロの指導の賜物だが。
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