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5章 期末テスト大戦が絶望すぎる!33~47話
エピソード1 独りぼっち少女
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大抵の景色は真っ白。
家でも病院でも保健室でも仰向けになって。
天井と対面して、自分の弱さが悔しくなる。
中学までの琴春小海はいわゆる病弱体質だった。
自分はまるで呪われている。
「頑張らないと、私」
それから、何とか治療が進んで、ようやく普通の人のように学校に行けるようになった。
勉強は家庭教師を雇っていたからそれなりにできた。
学ぶ時間だけが唯一普通の人と共通した時間。
コウミは賢かった。
高校に入った小海には保健室は居場所にならない。
気づけば独りぼっち。
部活には入っていたが、他の部員のやる気がなく誰も集まらない。
コウミにとって部活は居場所にならなかった。
唯一居場所があるとすれば家だけだ。
孤独感にひたすら耐える教室。
天井を見上げることしかできなかった病弱少女が望んだ未来はこれではなかったし、この未来が待っていたなら頑張るはずがなかった。
「コウミたん今日ね、美味しそうなラーメン見つけたの。一緒に行く?」
「行きたい。けど」
姉の言葉さえ素直に受け取れない。
独りぼっちで生きる哀れな妹。
無理して誘ってる気がした。
「学校、忙しい」
「予習とか手伝う?」
帰宅部のコウミには時間はあった。
忙しい、はずはない。
コウミはだんだん学校を休むようになった。
身体はどこも大丈夫。
そして、出席日数が足りなくなって高校を辞めた。
コウミが高校二年生になってすぐだった。
それから引きこもった。
「コウミたん、バームクーヘン食べるの?」
コウミの部屋に姉が来て。
「食べない」
「食べたいものは?」
「ない」
「ずっと何も食べてないけど」
「それでいい」
「死んじゃうよ! 空腹がしんどいの知ってる。それでもいいくらいきついって分かってる。私、生きててほしいの」
コウミは観念した。
部屋を解放。
その部屋に入っていいのは姉だけだった。
「行かないで、ねえねえ。学校ではずっと独り。もう平気になったと思ってた。でもねえねえがいないと寂しい」
「コウミたん。私と大学行くなの?」
「ええ、学校」
「一緒の学校。そしたら友達を作る必勝法がある」
「必勝法?」
「大学は情報戦。私が先輩として情報を集めてコウミたんに渡すの。それに、一緒の大学で、コウミたんの姿見たら頑張れるの!」
コウミの姉は重度のシスコンだった。
それでも友達を作るという必勝法に挑戦したかった。
コウミは誰かに助けてほしかったのだ。
それから、行動は早かった。
家庭教師を雇って高卒認定試験と大学入学試験対策を始めた。
それはすぐに大学入試試験対策だけになった。
さらに模試の点数はどんどん上がっていく。
「私、順調」
壁という壁を感じずに高卒認定試験、大学入学試験を合格した。
今までの闘病と孤独との戦いを経験してしまえば、それ以上の試練という試練は存在しないのだろう。
入学式後、家にて。
「コウミたん、ピザパーティ」
「すごい! どうしたの」
「今まで頑張って来たからなの」
「嬉しい! 私いっぱい食べる」
テーブルいっぱいのピザやフライドポテト、フライドチキン。
二リットルペットボトルのジュース。
コウミは嬉しさのあまり涙を流して。
幸せそうにピザを頬張る。
「見て。チーズがこんなにも伸びて」
「うわあ、楽しい。美味しい」
「来年度からよろしくね」
「うん」
「ところで、コウミたんよ」
「?」
姉はコーラを一気飲みして。
フライドポテトを口へ放る。
「友達作りにはさらなる必勝法が存在するのだ!」
「ねえねえすごい! その必勝法って」
「取り敢えず話しかける。入学直後はみんな不安だから。話しかけられたら仲良くなれるはず。実際、始めの方に話した人たちは仲良いなの」
「流石、私も見習うね」
「おうおう。コウミたんは素直でかわいいなの!」
姉はコウミの頭を撫でる。
「話しかけるの難しいよ」
「その通り。そこで更なる裏技がある」
「裏技?」
「大人になってきてプライドがあるの、大学生は。だから勝負を申し込んでしまえ」
「勝負?」
コウミは心を躍らせて姉を見る。
「勝負内容はなんでもいい。勝っても負けても話のネタになる。勝ったら嬉しいなの。それと情報戦を組み合わせれば、友達たくさん!」
「おお!」
そうして、コウミは勝負を申し込み続けて勝ち続けた。
だがどうしてか友達ができない。
それでも勝負を続けるのはコウミにとって楽しい日々だった。
家でも病院でも保健室でも仰向けになって。
天井と対面して、自分の弱さが悔しくなる。
中学までの琴春小海はいわゆる病弱体質だった。
自分はまるで呪われている。
「頑張らないと、私」
それから、何とか治療が進んで、ようやく普通の人のように学校に行けるようになった。
勉強は家庭教師を雇っていたからそれなりにできた。
学ぶ時間だけが唯一普通の人と共通した時間。
コウミは賢かった。
高校に入った小海には保健室は居場所にならない。
気づけば独りぼっち。
部活には入っていたが、他の部員のやる気がなく誰も集まらない。
コウミにとって部活は居場所にならなかった。
唯一居場所があるとすれば家だけだ。
孤独感にひたすら耐える教室。
天井を見上げることしかできなかった病弱少女が望んだ未来はこれではなかったし、この未来が待っていたなら頑張るはずがなかった。
「コウミたん今日ね、美味しそうなラーメン見つけたの。一緒に行く?」
「行きたい。けど」
姉の言葉さえ素直に受け取れない。
独りぼっちで生きる哀れな妹。
無理して誘ってる気がした。
「学校、忙しい」
「予習とか手伝う?」
帰宅部のコウミには時間はあった。
忙しい、はずはない。
コウミはだんだん学校を休むようになった。
身体はどこも大丈夫。
そして、出席日数が足りなくなって高校を辞めた。
コウミが高校二年生になってすぐだった。
それから引きこもった。
「コウミたん、バームクーヘン食べるの?」
コウミの部屋に姉が来て。
「食べない」
「食べたいものは?」
「ない」
「ずっと何も食べてないけど」
「それでいい」
「死んじゃうよ! 空腹がしんどいの知ってる。それでもいいくらいきついって分かってる。私、生きててほしいの」
コウミは観念した。
部屋を解放。
その部屋に入っていいのは姉だけだった。
「行かないで、ねえねえ。学校ではずっと独り。もう平気になったと思ってた。でもねえねえがいないと寂しい」
「コウミたん。私と大学行くなの?」
「ええ、学校」
「一緒の学校。そしたら友達を作る必勝法がある」
「必勝法?」
「大学は情報戦。私が先輩として情報を集めてコウミたんに渡すの。それに、一緒の大学で、コウミたんの姿見たら頑張れるの!」
コウミの姉は重度のシスコンだった。
それでも友達を作るという必勝法に挑戦したかった。
コウミは誰かに助けてほしかったのだ。
それから、行動は早かった。
家庭教師を雇って高卒認定試験と大学入学試験対策を始めた。
それはすぐに大学入試試験対策だけになった。
さらに模試の点数はどんどん上がっていく。
「私、順調」
壁という壁を感じずに高卒認定試験、大学入学試験を合格した。
今までの闘病と孤独との戦いを経験してしまえば、それ以上の試練という試練は存在しないのだろう。
入学式後、家にて。
「コウミたん、ピザパーティ」
「すごい! どうしたの」
「今まで頑張って来たからなの」
「嬉しい! 私いっぱい食べる」
テーブルいっぱいのピザやフライドポテト、フライドチキン。
二リットルペットボトルのジュース。
コウミは嬉しさのあまり涙を流して。
幸せそうにピザを頬張る。
「見て。チーズがこんなにも伸びて」
「うわあ、楽しい。美味しい」
「来年度からよろしくね」
「うん」
「ところで、コウミたんよ」
「?」
姉はコーラを一気飲みして。
フライドポテトを口へ放る。
「友達作りにはさらなる必勝法が存在するのだ!」
「ねえねえすごい! その必勝法って」
「取り敢えず話しかける。入学直後はみんな不安だから。話しかけられたら仲良くなれるはず。実際、始めの方に話した人たちは仲良いなの」
「流石、私も見習うね」
「おうおう。コウミたんは素直でかわいいなの!」
姉はコウミの頭を撫でる。
「話しかけるの難しいよ」
「その通り。そこで更なる裏技がある」
「裏技?」
「大人になってきてプライドがあるの、大学生は。だから勝負を申し込んでしまえ」
「勝負?」
コウミは心を躍らせて姉を見る。
「勝負内容はなんでもいい。勝っても負けても話のネタになる。勝ったら嬉しいなの。それと情報戦を組み合わせれば、友達たくさん!」
「おお!」
そうして、コウミは勝負を申し込み続けて勝ち続けた。
だがどうしてか友達ができない。
それでも勝負を続けるのはコウミにとって楽しい日々だった。
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