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5章 期末テスト大戦が絶望すぎる!33~47話
その8 ヒウタとリベンジデート
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夏って強くね?
蜃気楼を見るとより思う。
まさに燃えているという感じ。
「水族館に着いたらましになるかな」
電車で水族館最寄りの駅へ。
それもそこまで近くないが、水族館行きのバスがある。
ヒウタは改札でアキトヨを待った。
とはいえ、集合時間三十分前。
アキトヨを待たせないためとはいえ、これは。
「流石に楽しみにしてるのがバレる! いや、アキトヨさんが時間通りに来たらずっと待ってることを隠せばいいだけだ。もっと遅く来た方が良かったか、緊張するし緊張で疲れるし」
学校帰りではない分、準備万端。
緊張の存在が明瞭である。
何にも紛れない焦りにも華やかな期待にも似た感覚。
踏んだ地面が揺れているような、熱で膨張した空気が器用に吸えないような。
「ヒウ君? 私まだ朝食食べてないけど。駅着いたら朝食食べて集合場所に戻るつもりだったから。そんなに楽しみだった?」
アキトヨがヒウタを見つけると、手を振りながら改札を抜けた。
その様子を見てドキッとしたことは何とか隠さねばならない。
「楽しみではないとは言わないけど、僕も朝食まだだもんね。これからだもんね」
朝食を食べる時間はあったが、緊張で食欲が出ず。
結局お茶と家にあったチョコのお菓子を一個だけ食べていた。
「その話し方気持ち悪い」
ヒウタは膝から崩れた。
「まあいいわ」
アキトヨは右手を差し出した。
ヒウタは応えるために右手で。
「痛いっ」
激痛が走る。
どうやら手の甲が折れたらしい、そんな痛みである。
もちろん加減されていて折れてはいないが。
「どうして握手だと?」
「え? 違うのか」
「左手を出していたらいいのに」
ヒウタはアキトヨの言った意味が分からなかったが、ムスッとした様子がかわいらしい。
なんて本人に言う勇気はない。
「私、前は雑に髪を千切ってしまったから。行きつけの美容院で整えてきた。どう?」
どうって言われても。
髪の光沢がキラキラしてて美しいとか、いい香りがするとか、自然な雰囲気と気持ちのいい整った雰囲気が両立していて神々しいとか。
思うところはいろいろあったがどれが正解か分からない。
「無敵級に美しいですぅ」
と言うと、白い目で見られた。
どうやら気持ち悪かったらしい。
恋愛こそ学校で教えるべきである。
「コンビニでサンドイッチ買うつもりだったけど、どこかでモーニング食べる?」
「はい」
「どこか知ってる?」
「あ、有名なとこが!」
ヒウタは前に見たテレビの特集で紹介していた喫茶店を思い浮かべる。
最近流行りのおしゃれな店にして、こだわりのハンバーガーが存在。
「何を食べるの?」
「ジューシーなパティ、小麦香るパンズ、シャキシャキ野菜。ぜひ、アキトヨさんと」
「つまりはハンバーガーの店ね。ヒウ君らしい」
ヒウタとアキトヨは喫茶店に行くことにした。
暑さに耐えてようやく着いた。
「美味しそうなデザート、シュークリームも」
ショーケースを眺めるアキトヨ。
たまに微笑んで。
「心臓が止まるっ!? これが尊い」
アキトヨに聞こえないように呟く。
綺麗でかわいらしくて。
「ヒウ君、よく知ってたね」
「テレビでやってるの見て。アキトヨさん、あれ」
視線の先にはロボット掃除機のように移動するロボットがあった。
棚のようなところがあり、食べ物や飲み物を置くらしい。
「ロボット?」
それからハンバーガーを頼んだ。
デザートはヒウタもアキトヨもシュークリーム。
「水族館で正解ね。今日もなかなか暑いから」
「夏休みのイベントでクラゲのイルミネーションやるみたいで」
「ヒウ君はさ、私が怖い?」
ヒウタは固まった。
なんだその答えにくい質問。
助けて恋活プロデューサーのチカフミ。
どうしよう、アメユキよ。兄貴はゲームオーバーになるかも。
「答えにくいってことはそうね、私もそう思う。恐怖で人を支配してしまう感覚がある。私、短気で強いから。それでも恋したいんだけどなあ」
弱い部分を覗いてしまった、とヒウタ。
アキトヨはスマホを出した。
スマホを見て操作をしているようだが、心在らず。
視線は一応スマホに向いているという感じで。
気まずい話をしているという感覚からか。
本心までは分からない。
「僕は怖い、それだけではないです」
「ん?」
「怖いだけなら僕はデートしません。でも魅力的だったから。助けてくれたことも、恋愛に対する思いも、魅力的だって思ったから」
「気持ち悪い」
「ええ」
ハンバーガーとドリンクが運ばれてきた。
配膳ロボットのタブレットを操作すると、ロボットはキッチンの方へ。
「というか、マッチングアプリ歴は私の方が長いから呼び方はアキトヨ先輩にしてもらおうかな」
「アキトヨ先輩!」
「なんか違う。元に戻して」
「そんなあ」
アキトヨはハンバーガーを齧った。
広がる肉汁。
噛み応えある肉と爽やかなカット野菜が合う。
気づけば濃厚な旨味を飲み込んでいる。
「これは美味しい、まさかこれもぼったくり?」
ヒウタは恐怖を思い出して顔を真っ青にした。
必死に克服しようとしたし忘れようとした。
しかし、気にしてしまえば蘇ってしまう。
「ヒウ君、思い出してしまった? 私がいるから万が一でも安心して」
いやイケメンなんだが。
もしヒウタが女性でアキトヨが男性だったら、ヒウタはコロッとしてる。
「せっかくのデートで聞きたいけど。好きな物とか」
「折れた骨と大量の出血」
「ひいいい」
アキトヨはヒウタの額を指で弾く。
「変な反応。私がそんな野蛮に見える?」
「見えないです、淑女です」
「よろしい。って強制しているみたいな。私を怒らせるな」
アキトヨはヒウタのハンバーガーを千切って頬張った。
「僕の朝食がー」
「ヒウ君?」
「どうしました?」
「いや、呼んだだけ」
こうして、デザートを食べて、会計は割り勘。
ヒウタは奢るつもりだったが、アキトヨもヒウタの分を奢ろうとしていて。
割り勘に落ち着いたのである。
バス停に戻って。
時間になると水族館の生物とマスコットのキャラがプリントされたバスが来た。
百円で乗れるらしい。
水族館しか停まらないし悪用はできないだろう。
「楽しみだね」
バスに乗る。
隣には綺麗な人がいて。
これから二十分もこの至近距離だと思うと、心臓が割れる気がした。
ヒウタは景色を見ることで間を持たせるが。
外を眺めるアキトヨは楽しそうだった。
蜃気楼を見るとより思う。
まさに燃えているという感じ。
「水族館に着いたらましになるかな」
電車で水族館最寄りの駅へ。
それもそこまで近くないが、水族館行きのバスがある。
ヒウタは改札でアキトヨを待った。
とはいえ、集合時間三十分前。
アキトヨを待たせないためとはいえ、これは。
「流石に楽しみにしてるのがバレる! いや、アキトヨさんが時間通りに来たらずっと待ってることを隠せばいいだけだ。もっと遅く来た方が良かったか、緊張するし緊張で疲れるし」
学校帰りではない分、準備万端。
緊張の存在が明瞭である。
何にも紛れない焦りにも華やかな期待にも似た感覚。
踏んだ地面が揺れているような、熱で膨張した空気が器用に吸えないような。
「ヒウ君? 私まだ朝食食べてないけど。駅着いたら朝食食べて集合場所に戻るつもりだったから。そんなに楽しみだった?」
アキトヨがヒウタを見つけると、手を振りながら改札を抜けた。
その様子を見てドキッとしたことは何とか隠さねばならない。
「楽しみではないとは言わないけど、僕も朝食まだだもんね。これからだもんね」
朝食を食べる時間はあったが、緊張で食欲が出ず。
結局お茶と家にあったチョコのお菓子を一個だけ食べていた。
「その話し方気持ち悪い」
ヒウタは膝から崩れた。
「まあいいわ」
アキトヨは右手を差し出した。
ヒウタは応えるために右手で。
「痛いっ」
激痛が走る。
どうやら手の甲が折れたらしい、そんな痛みである。
もちろん加減されていて折れてはいないが。
「どうして握手だと?」
「え? 違うのか」
「左手を出していたらいいのに」
ヒウタはアキトヨの言った意味が分からなかったが、ムスッとした様子がかわいらしい。
なんて本人に言う勇気はない。
「私、前は雑に髪を千切ってしまったから。行きつけの美容院で整えてきた。どう?」
どうって言われても。
髪の光沢がキラキラしてて美しいとか、いい香りがするとか、自然な雰囲気と気持ちのいい整った雰囲気が両立していて神々しいとか。
思うところはいろいろあったがどれが正解か分からない。
「無敵級に美しいですぅ」
と言うと、白い目で見られた。
どうやら気持ち悪かったらしい。
恋愛こそ学校で教えるべきである。
「コンビニでサンドイッチ買うつもりだったけど、どこかでモーニング食べる?」
「はい」
「どこか知ってる?」
「あ、有名なとこが!」
ヒウタは前に見たテレビの特集で紹介していた喫茶店を思い浮かべる。
最近流行りのおしゃれな店にして、こだわりのハンバーガーが存在。
「何を食べるの?」
「ジューシーなパティ、小麦香るパンズ、シャキシャキ野菜。ぜひ、アキトヨさんと」
「つまりはハンバーガーの店ね。ヒウ君らしい」
ヒウタとアキトヨは喫茶店に行くことにした。
暑さに耐えてようやく着いた。
「美味しそうなデザート、シュークリームも」
ショーケースを眺めるアキトヨ。
たまに微笑んで。
「心臓が止まるっ!? これが尊い」
アキトヨに聞こえないように呟く。
綺麗でかわいらしくて。
「ヒウ君、よく知ってたね」
「テレビでやってるの見て。アキトヨさん、あれ」
視線の先にはロボット掃除機のように移動するロボットがあった。
棚のようなところがあり、食べ物や飲み物を置くらしい。
「ロボット?」
それからハンバーガーを頼んだ。
デザートはヒウタもアキトヨもシュークリーム。
「水族館で正解ね。今日もなかなか暑いから」
「夏休みのイベントでクラゲのイルミネーションやるみたいで」
「ヒウ君はさ、私が怖い?」
ヒウタは固まった。
なんだその答えにくい質問。
助けて恋活プロデューサーのチカフミ。
どうしよう、アメユキよ。兄貴はゲームオーバーになるかも。
「答えにくいってことはそうね、私もそう思う。恐怖で人を支配してしまう感覚がある。私、短気で強いから。それでも恋したいんだけどなあ」
弱い部分を覗いてしまった、とヒウタ。
アキトヨはスマホを出した。
スマホを見て操作をしているようだが、心在らず。
視線は一応スマホに向いているという感じで。
気まずい話をしているという感覚からか。
本心までは分からない。
「僕は怖い、それだけではないです」
「ん?」
「怖いだけなら僕はデートしません。でも魅力的だったから。助けてくれたことも、恋愛に対する思いも、魅力的だって思ったから」
「気持ち悪い」
「ええ」
ハンバーガーとドリンクが運ばれてきた。
配膳ロボットのタブレットを操作すると、ロボットはキッチンの方へ。
「というか、マッチングアプリ歴は私の方が長いから呼び方はアキトヨ先輩にしてもらおうかな」
「アキトヨ先輩!」
「なんか違う。元に戻して」
「そんなあ」
アキトヨはハンバーガーを齧った。
広がる肉汁。
噛み応えある肉と爽やかなカット野菜が合う。
気づけば濃厚な旨味を飲み込んでいる。
「これは美味しい、まさかこれもぼったくり?」
ヒウタは恐怖を思い出して顔を真っ青にした。
必死に克服しようとしたし忘れようとした。
しかし、気にしてしまえば蘇ってしまう。
「ヒウ君、思い出してしまった? 私がいるから万が一でも安心して」
いやイケメンなんだが。
もしヒウタが女性でアキトヨが男性だったら、ヒウタはコロッとしてる。
「せっかくのデートで聞きたいけど。好きな物とか」
「折れた骨と大量の出血」
「ひいいい」
アキトヨはヒウタの額を指で弾く。
「変な反応。私がそんな野蛮に見える?」
「見えないです、淑女です」
「よろしい。って強制しているみたいな。私を怒らせるな」
アキトヨはヒウタのハンバーガーを千切って頬張った。
「僕の朝食がー」
「ヒウ君?」
「どうしました?」
「いや、呼んだだけ」
こうして、デザートを食べて、会計は割り勘。
ヒウタは奢るつもりだったが、アキトヨもヒウタの分を奢ろうとしていて。
割り勘に落ち着いたのである。
バス停に戻って。
時間になると水族館の生物とマスコットのキャラがプリントされたバスが来た。
百円で乗れるらしい。
水族館しか停まらないし悪用はできないだろう。
「楽しみだね」
バスに乗る。
隣には綺麗な人がいて。
これから二十分もこの至近距離だと思うと、心臓が割れる気がした。
ヒウタは景色を見ることで間を持たせるが。
外を眺めるアキトヨは楽しそうだった。
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