規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

文字の大きさ
上 下
39 / 162
5章 期末テスト大戦が絶望すぎる!33~47話

その7 ヒウタと夏休み

しおりを挟む
 もう三日も何もしていない。
 これが理想郷か? 
 ヒウタは一人暮らしだからか、誰の目もない状況で堕落した生活を満喫していた。
 朝起きたらまずは二度寝。起きたらアニメを見てまた寝る。
 それから夕方になったらテレビを見て、やかんでお茶を沸かしてからもう一寝入り。
 起きると辺りは真っ暗で近くのスーパーまで自転車。
 半額になった惣菜や百円程度値引きされた弁当を買い漁る。
 ただ未成年なために酒は買えない。代わりにメロンソーダを一本。
 四日目の昼だった。
「結局さ、アキトヨさんとはどうなったの?」
 チカフミが部屋にあがって。
「あ、そうか。ヒウ君呼びってチカフミと一緒か」
「どういうこと?」
「アキトヨさんがヒウ君って呼ぶから。親近感って」
「そりゃどうも」
「今宵はどんな用事で?」
「恋活プロデュースだよ」
「恋? 今の俺には圧倒的に足りないものがある。それはラーメンだ」
「ラーメン? 食べに行こうか」
 三日ぶりに人と話した気がする。
 最近のスーパーはセルフレジが増えたらしい。
「彼女どう、フラれたか?」
「それいつも聞いてるっ!?」
「気になるじゃない?」
「どうして拗れてるのさ。アキトヨさんはどうした?」
「そうだった! ものすごいデートプランを考えてほしいって。けど、アキトヨさんに満足してもらえないと終わりなんだよ。ボコボコにされるぼったくり、味方なら頼もしいがあの狂気が俺を向いたらそのときはもう。俺はまだ生きていたい、救ってくれチカフミ」
「うーん、圧が強いよ」
 ぼったくりの件は恋活プロデューサーであるチカフミも聞いている。
 しかし、ここまで恐ろしいとは。
「仕方ない」
「ヒウ君?」
「俺とデートしてくれ、最高のデートをプロデュースしてくれ」
 ヒウタはチカフミの手を取った。
 ヒウタの手は熱い。
「ふぁっ。びっくりした」
「頼むよー」
「デートはしないけど、デートプランは考えるから」
「ありがとチカフミ」
 ヒウタは涙を流す。
 が、急に真顔になって。
「ラーメン行くか」
 表情を動かさずにラーメン屋に行くのだった。
 そして。
「豚骨。大盛り。チャーシュー丼をドォーン、なんちゃって」
 ヒウタの目の前には溢れんばかりのラーメンと、炙って香りがするチャーシュー丼がある。
 対して、チカフミのところにはラーメンだけがあった。
「メンマ、チャーシュー、ネギ。まさに人間のすべてが詰まっている!」
 と言うと、ヒウタはレンゲでスープを掬う。
「この旨味の香り。これぞ豚骨」
「なんか量多くない?」
「つまりソウルフードに相応しいということだな、チカフミよ」
「食べ切れるかなって心配だけど」
「魂で味わうのがラーメンだ。安心しろ」
「滅茶苦茶だ!?」
 チカフミが食べ終わって苦しそうにしていると、ヒウタはスープを飲み干しチャーシュー丼を嬉しそうにかきこむ。
 食べ終えるとお茶を一杯呷った。
「行こうか」
「調子狂うな」
 ラーメン屋を出る。
 次に向かうのはショッピングモール。
 地元の、そこまで大きくはない建物だが。
「さあ、デートを教えてくれ」
 期待の眼差しをチカフミに向ける。
「抽象的過ぎるよ。アキトヨさんとは会ったことないから好みとか教えてほしくて」
「はい、浮気です破局です。彼女いるのに他の女性の名前を口にしました!」
「その絡み怖いよ」
「はい、もし俺が女体化したら浮気ですけど?」
「それで浮気になったら彼女も浮気してることになっちゃうよ」
「確かに。これがリア充の実力か」
「いや悔しそうにされても困るけど。アキトヨさんってファッションとか好きかな。予算とか分からないけど。マッチングアプリだし、奢れるなら奢った方が印象いいよ。女性っていろいろとお金かかるし、かわいいねって言ってお金出してくれる方が好感度合ったりする。逆に、奢られたくない人もいるけど」
「アキトヨさん、実質上グループ会社の社長なんだが。前にも言ったけど」
 一瞬固まるチカフミ。
「イレギュラー過ぎて僕にも分からないけど、逆に庶民的とか体験型とかいいかもね」
「絵本の読み聞かせとか?」
 チカフミは思考回路がどうにも上手く繋がらない。
 ショートしそう、もしくはそもそも断線しているような。
「どゆこと?」
「体験型みたいな」
 マッチングアプリの代表であるシュイロと初めて会ったデート。
 体験型と冗談っぽく笑うシュイロのデートプランには、個人経営の本屋の手伝いがあって。
 慈善活動の人手をデートに来たヒウタで埋めたということだが、ヒウタにとっては貴重な体験だった。
 チカフミは知らない。
 混乱したまま。チカフミはなかったことにした。
「体験型は当たり外れ多いから。博物館とか水族館とかどう?」
「そうするか。またメッセージ送って反応で決めるけどさ」
 少し歩いて、ヒウタはクレープ専門店でイチゴクレープを買った。
 チカフミはチョコクレープ。
 ふわふわのホイップとバターの甘みが引き立つ。
 食感と舌触りが優しい。
「きっと大丈夫だと思うよ。真剣に悩んでるから楽しませようって」
「勇気をもらったから」
 チカフミはクレープを齧った。
 ヒウタは続ける。
「ぼったくりからアキトヨさんが助けてくれて。それも格好いいって思ったけど。一番は、『私は私の恋活に期待してる』って言って。俺もそれくらい強い意志を持ちたいって思ったから。その思いに応えられるデートを本気で用意したい」
「格好つけ過ぎじゃないか?」
 ヒウタはクレープを丸呑みするように一気に口に含んで喉を鳴らす。
「背伸びくらいしないと、あまりにも釣り合わないぞ」
 チカフミは快然と鼻で笑って。
 ヒウタは顔を赤くして頭を掻いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...