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5章 期末テスト大戦が絶望すぎる!33~47話
その4 ヒウタとコウミ
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社会科目の講義後。
成績の勝負を持ちかけた少女がヒウタの元までやって来た。
体育の講義でも、大学の構内で出会ったときもよく絡まれていた。
「君は順調? ヒウタだっけ」
「ヒウタだが。順調かどうかと聞かれても厳しいとしか」
「私の名前は小海。コウミゴッド、コウミエンジェル、コウミデビル、コウミ様。好きに呼ぶといい愚民ども」
「じゃあ、コウミデビルで」
「ふはははは、愚かな人間。このコウミデビルによくぞ、勝負を持ち掛けた」
勝負をしたいと言ったのはコウミだが。
どんなテンションで話しているんだ?
コウミデビルを選んだヒウタも悪そうだ。
「厳しい? ようやく立たされた状況を理解したか、だがもう遅い。ただそれでは面白くない。貴様が勉強できない時間は私もしないと誓おう。それが公平だろう」
コウミが思う悪魔の口調らしい。
ヒウタの勉強できる時間があまりにも少ない場合、共倒れになる気がする。
それ以上に感じる余裕。
「既に過去問や出題される範囲を三周終えている。つまりもうどう足掻いても」
「過去問あるのか?」
「ないの?」
コウミの口調が素に戻った。
驚きのあまりなのか演出に割く時間が惜しいのか。
「だからきつくて。単位も取れるか怪しくて勝負どころじゃないかも」
「ん、分かった。ねえねえに聞いてみる。ねえねえは同じ大学。ボッチな私とは異なり仲間いっぱい」
コウミ、姉がいたのか。
その伝手で過去問を。
「ん」
コウミはスマホを出す。
「フェアな勝負。連絡先寄越せ。ヒウタが負けてショッピングに召喚するときにも使うから、今交換しても変わらない」
前までなら、勝つ気でいるのか? と反応したところ。
しかし、過去問があるコウミと、全くないヒウタ。
期末テストにおける圧倒的な情報格差。
強気になれない。
「助けてくだせえ」
ヒウタは有難くスマホを出す。
スマホを一瞥したコウミが口をパクパクさせていた。
ヒウタには聞き取れなかった。
「会話アプリの連絡先ゲット。あとは結果のみ。覚悟」
ドヤ顔のコウミ。
でもショッピングに荷物持ちとして呼ばれるだけだよな。
このまま行くと夏休みはバイトとマッチングアプリと、もしかしたら車の免許取るかも。
負けた方が充実した夏休みになるのでは?
「勝負、勝負」
勝負するために過去問を渡そうとしてくれるコウミを思えば、まさか手抜きはできない。
ってか、さっきボッチなコウミと違って姉は友人が多いみたいな話をしてたな。
ヒウタはコウミをじっと見る。
コウミは気づくが首を傾げた。
「友人とショッピングのときに呼ばれるのであって、二人きりではないよな」
コウミはぷるぷると震えだす。
瞳に涙を溜めた。
「いや、その、そういうわけじゃ」
言い訳する方がおかしいか。
そういうわけじゃないってどういうことだよ。
「僕は二人だったら緊張しちゃうな、なんて」
「え、そんなにも嫌?」
あ、駄目だ。
女の子を泣かしている構図。
どうする?
「二人きりなの、うれ」
待て。
嬉しい、と言いかけて留まる。
二人きりが嬉しいのもそれはそれで。
二人きりが嫌だと思われても傷つけてしまうし。
もしかして詰んだか?
「異性と二人きりだったら慣れてなくて。ごめん、二人きりになれると期待して気持ち悪かったよな?」
上出来では?
これならヒウタが変態だっただけだ。
「分かった。夏休みまでに友達作るから問題ない。サークルには入ったからたくさん作れる、余裕」
涙を拭く。
友人がいないなんて言ってるけど、同じ学科の人とは一通り勝負したって。
本当に友人がいないのか?
どこか引っ掛かるような。
似たような話をどこかで。
……、もう少しで出てきそう。
ヒウタは頭をコンコンと軽く叩く。
思い出せ、思い出せ。
あ、あれだ。
……、分からない。またいつか思い出すはず。
「ヒウタ?」
「ごめん、考え事してた。連絡先交換ありがと、過去問とか頼らせてもらうよ」
コウミは固まった。
そして荷物を抱えて。
「ドキッとさせるなんて卑怯」
コウミは跳びながら駆けて行った。
速いっ。
「卑怯? ドキッとさせる?」
ドキッとする要素がヒウタにあるということか。
いや、無いだろ。
ヒウタ自身が超絶イケメンアイドルや俳優だったとして。
それでもドキドキ要素や卑怯要素はないはず。
「というか、コウミっていう名前なのか。優しくて小柄そうな名前で、ぴったりだな」
会話アプリの新しいフレンドの追加を確認する。
背景はイラストレーターが描いた夜景のイラスト。
対して、アイコンは写真のおでん。
コメントは大学の始めにありがちな、『これからよろしく』。
名前は、琴春小海というらしい。
「って、この通知量。もう来てるの、これ過去問じゃないか、コウミデビルすげえ」
スマホに届く電子ファイルの数々。
しかも先輩のコメント付き。
驚くだろうな、友人のハクも。
成績の勝負を持ちかけた少女がヒウタの元までやって来た。
体育の講義でも、大学の構内で出会ったときもよく絡まれていた。
「君は順調? ヒウタだっけ」
「ヒウタだが。順調かどうかと聞かれても厳しいとしか」
「私の名前は小海。コウミゴッド、コウミエンジェル、コウミデビル、コウミ様。好きに呼ぶといい愚民ども」
「じゃあ、コウミデビルで」
「ふはははは、愚かな人間。このコウミデビルによくぞ、勝負を持ち掛けた」
勝負をしたいと言ったのはコウミだが。
どんなテンションで話しているんだ?
コウミデビルを選んだヒウタも悪そうだ。
「厳しい? ようやく立たされた状況を理解したか、だがもう遅い。ただそれでは面白くない。貴様が勉強できない時間は私もしないと誓おう。それが公平だろう」
コウミが思う悪魔の口調らしい。
ヒウタの勉強できる時間があまりにも少ない場合、共倒れになる気がする。
それ以上に感じる余裕。
「既に過去問や出題される範囲を三周終えている。つまりもうどう足掻いても」
「過去問あるのか?」
「ないの?」
コウミの口調が素に戻った。
驚きのあまりなのか演出に割く時間が惜しいのか。
「だからきつくて。単位も取れるか怪しくて勝負どころじゃないかも」
「ん、分かった。ねえねえに聞いてみる。ねえねえは同じ大学。ボッチな私とは異なり仲間いっぱい」
コウミ、姉がいたのか。
その伝手で過去問を。
「ん」
コウミはスマホを出す。
「フェアな勝負。連絡先寄越せ。ヒウタが負けてショッピングに召喚するときにも使うから、今交換しても変わらない」
前までなら、勝つ気でいるのか? と反応したところ。
しかし、過去問があるコウミと、全くないヒウタ。
期末テストにおける圧倒的な情報格差。
強気になれない。
「助けてくだせえ」
ヒウタは有難くスマホを出す。
スマホを一瞥したコウミが口をパクパクさせていた。
ヒウタには聞き取れなかった。
「会話アプリの連絡先ゲット。あとは結果のみ。覚悟」
ドヤ顔のコウミ。
でもショッピングに荷物持ちとして呼ばれるだけだよな。
このまま行くと夏休みはバイトとマッチングアプリと、もしかしたら車の免許取るかも。
負けた方が充実した夏休みになるのでは?
「勝負、勝負」
勝負するために過去問を渡そうとしてくれるコウミを思えば、まさか手抜きはできない。
ってか、さっきボッチなコウミと違って姉は友人が多いみたいな話をしてたな。
ヒウタはコウミをじっと見る。
コウミは気づくが首を傾げた。
「友人とショッピングのときに呼ばれるのであって、二人きりではないよな」
コウミはぷるぷると震えだす。
瞳に涙を溜めた。
「いや、その、そういうわけじゃ」
言い訳する方がおかしいか。
そういうわけじゃないってどういうことだよ。
「僕は二人だったら緊張しちゃうな、なんて」
「え、そんなにも嫌?」
あ、駄目だ。
女の子を泣かしている構図。
どうする?
「二人きりなの、うれ」
待て。
嬉しい、と言いかけて留まる。
二人きりが嬉しいのもそれはそれで。
二人きりが嫌だと思われても傷つけてしまうし。
もしかして詰んだか?
「異性と二人きりだったら慣れてなくて。ごめん、二人きりになれると期待して気持ち悪かったよな?」
上出来では?
これならヒウタが変態だっただけだ。
「分かった。夏休みまでに友達作るから問題ない。サークルには入ったからたくさん作れる、余裕」
涙を拭く。
友人がいないなんて言ってるけど、同じ学科の人とは一通り勝負したって。
本当に友人がいないのか?
どこか引っ掛かるような。
似たような話をどこかで。
……、もう少しで出てきそう。
ヒウタは頭をコンコンと軽く叩く。
思い出せ、思い出せ。
あ、あれだ。
……、分からない。またいつか思い出すはず。
「ヒウタ?」
「ごめん、考え事してた。連絡先交換ありがと、過去問とか頼らせてもらうよ」
コウミは固まった。
そして荷物を抱えて。
「ドキッとさせるなんて卑怯」
コウミは跳びながら駆けて行った。
速いっ。
「卑怯? ドキッとさせる?」
ドキッとする要素がヒウタにあるということか。
いや、無いだろ。
ヒウタ自身が超絶イケメンアイドルや俳優だったとして。
それでもドキドキ要素や卑怯要素はないはず。
「というか、コウミっていう名前なのか。優しくて小柄そうな名前で、ぴったりだな」
会話アプリの新しいフレンドの追加を確認する。
背景はイラストレーターが描いた夜景のイラスト。
対して、アイコンは写真のおでん。
コメントは大学の始めにありがちな、『これからよろしく』。
名前は、琴春小海というらしい。
「って、この通知量。もう来てるの、これ過去問じゃないか、コウミデビルすげえ」
スマホに届く電子ファイルの数々。
しかも先輩のコメント付き。
驚くだろうな、友人のハクも。
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