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4章 怒り少女が乱暴すぎる!24~32話
その7 ヒウタとアキトヨ
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「っということがありました。もう怖いです、トラウマですぅ」
『ヒウタ、また女々しくなってないか?』
ぼったくり店に入ってから。
寝る度にぼったくられる悪夢を見て十分に眠られない。
ヒウタはぼったくりに遭った話をして慰めてもらっていた。
既に友人であるチカフミには伝えてある。
『でもよく無事だったな』
よく話が回ってきた、と言わんばかりに食いつく。
「それが! なんとなんと丁度デートしていた女性がめちゃくちゃ強くて次々と」
シュイロは笑う。
「笑い事じゃないんですけど?」
『いやいや。どうやら楽しかったみたいだな。わくわくして話すものだから』
「すっきりはしましたけど。果たして何者なんでしょうか?」
シュイロは黙った。
「シュイロさん?」
『あー、それはだな。アキトヨちゃんだ』
「どうして分かるんですか」
言ってからヒウタは気づく。
あの日、確かにアキトヨはシュイロの名を口にした。
知り合いだったのは間違いないのだ。
『ヒウタに仕事を始めてもらう前に、特に何とかしてほしい人がいると話しただろ?』
「七つの大罪って大げさに言っていた」
『まあ、そう言わずにな。その中の『憤怒』にふさわしい少女こそ、アキトヨちゃんだな。つい最近まで高校生なのにアカウント作ってて、普通に規約違反だったんだ』
報告しなければと思っていたが、シュイロは知っていたらしい。
「初めて会ったときはよく怒る怖い人でしたけど、助けてくれたときはまさにヒーローでした。ぼったくりに遭って台無しになってしまったのでまたお出掛けすることになりました」
『そっか、あのアキトヨちゃんが。いいこと聞いたな』
ヒウタはシュイロの反応がよく分からない。
ヒウタが知らない二人の話があるのだろう。
そう思うと、ヒウタの恐怖も落ち着く。
「どうして高校生でアカウント登録できたのですか?」
『アキトヨちゃんは気づいていないが、たくさんの人に尊敬されていて愛されていて。本当の大学生を使って潜り込んでたみたいだ。もちろん規約違反だが』
そこまでして恋活をしようとしたのはなぜだろう?
デートのときはシュイロに恋愛をしてみたらと言われたと言っていた。
シュイロなら言いそうだ。
シュイロのマッチングアプリを使って探すという意味では無さそう。
アキトヨは何を思っていたか。
二人の仲を知らないヒウタには考察する限界が早い。
「アキトヨさんが周りから好かれる理由、分かる気がします」
『それでも周りの愛に気づけないのは本当に鈍感だ。アキトヨちゃんは会社を経営しててな。その腕はなかなかだ。私も助けてもらったことがある。それに優しいから人が付いていく。人に好かれることも経営の腕だろうけど。大きめの会社というかグループ会社だから本当にすごいんだ』
「強い人でした。強いに執着している人でした」
『アキトヨちゃんの会社は父がその座を降りて母が継いだときに経営が傾いて、助けを求めた人にすべてを奪われて倒産しかけた。それを再建したのはアキトヨちゃん。そのときから人間不信になっているらしい』
「ずっと辛かったから。誰も彼も信じたくなかったから、もう傷つきたくなかったから。シュイロさんに会って、その温かさが嬉しかったと思います」
電話が切られた。
一通のメッセージが。
『恥ずかしいこと言うな、雇用主に対して』
容易に真っ赤な顔のシュイロが想像できる。
普段は賢くて何でもできてしまうような人ではある。
しかし、時折見せる素直な照れ方。
きっとそういうところがアキトヨは気に入ったのだろう。
「それにしても」
今年の夏は長そうだ。
既に暑い。
その前に期末テストを何とかしなければ。
でも何とかなる気がするのは、周りに賢い人たちがいたからだ。
……、なら生身じゃん。行けそうな気がするの完全に幻じゃん。
持ち込み可資料としてシュイロとかアキトヨとか使えないだろうか。
ヒウタは頭を抱えた。
いや、大学生なのだ。
どこかに過去問や先輩の情報があるはず。
今年の夏休みは長い。
彼女の一人や二人できるはずだ。
こうして、期末テスト大戦が始まるのだった。
『ヒウタ、また女々しくなってないか?』
ぼったくり店に入ってから。
寝る度にぼったくられる悪夢を見て十分に眠られない。
ヒウタはぼったくりに遭った話をして慰めてもらっていた。
既に友人であるチカフミには伝えてある。
『でもよく無事だったな』
よく話が回ってきた、と言わんばかりに食いつく。
「それが! なんとなんと丁度デートしていた女性がめちゃくちゃ強くて次々と」
シュイロは笑う。
「笑い事じゃないんですけど?」
『いやいや。どうやら楽しかったみたいだな。わくわくして話すものだから』
「すっきりはしましたけど。果たして何者なんでしょうか?」
シュイロは黙った。
「シュイロさん?」
『あー、それはだな。アキトヨちゃんだ』
「どうして分かるんですか」
言ってからヒウタは気づく。
あの日、確かにアキトヨはシュイロの名を口にした。
知り合いだったのは間違いないのだ。
『ヒウタに仕事を始めてもらう前に、特に何とかしてほしい人がいると話しただろ?』
「七つの大罪って大げさに言っていた」
『まあ、そう言わずにな。その中の『憤怒』にふさわしい少女こそ、アキトヨちゃんだな。つい最近まで高校生なのにアカウント作ってて、普通に規約違反だったんだ』
報告しなければと思っていたが、シュイロは知っていたらしい。
「初めて会ったときはよく怒る怖い人でしたけど、助けてくれたときはまさにヒーローでした。ぼったくりに遭って台無しになってしまったのでまたお出掛けすることになりました」
『そっか、あのアキトヨちゃんが。いいこと聞いたな』
ヒウタはシュイロの反応がよく分からない。
ヒウタが知らない二人の話があるのだろう。
そう思うと、ヒウタの恐怖も落ち着く。
「どうして高校生でアカウント登録できたのですか?」
『アキトヨちゃんは気づいていないが、たくさんの人に尊敬されていて愛されていて。本当の大学生を使って潜り込んでたみたいだ。もちろん規約違反だが』
そこまでして恋活をしようとしたのはなぜだろう?
デートのときはシュイロに恋愛をしてみたらと言われたと言っていた。
シュイロなら言いそうだ。
シュイロのマッチングアプリを使って探すという意味では無さそう。
アキトヨは何を思っていたか。
二人の仲を知らないヒウタには考察する限界が早い。
「アキトヨさんが周りから好かれる理由、分かる気がします」
『それでも周りの愛に気づけないのは本当に鈍感だ。アキトヨちゃんは会社を経営しててな。その腕はなかなかだ。私も助けてもらったことがある。それに優しいから人が付いていく。人に好かれることも経営の腕だろうけど。大きめの会社というかグループ会社だから本当にすごいんだ』
「強い人でした。強いに執着している人でした」
『アキトヨちゃんの会社は父がその座を降りて母が継いだときに経営が傾いて、助けを求めた人にすべてを奪われて倒産しかけた。それを再建したのはアキトヨちゃん。そのときから人間不信になっているらしい』
「ずっと辛かったから。誰も彼も信じたくなかったから、もう傷つきたくなかったから。シュイロさんに会って、その温かさが嬉しかったと思います」
電話が切られた。
一通のメッセージが。
『恥ずかしいこと言うな、雇用主に対して』
容易に真っ赤な顔のシュイロが想像できる。
普段は賢くて何でもできてしまうような人ではある。
しかし、時折見せる素直な照れ方。
きっとそういうところがアキトヨは気に入ったのだろう。
「それにしても」
今年の夏は長そうだ。
既に暑い。
その前に期末テストを何とかしなければ。
でも何とかなる気がするのは、周りに賢い人たちがいたからだ。
……、なら生身じゃん。行けそうな気がするの完全に幻じゃん。
持ち込み可資料としてシュイロとかアキトヨとか使えないだろうか。
ヒウタは頭を抱えた。
いや、大学生なのだ。
どこかに過去問や先輩の情報があるはず。
今年の夏休みは長い。
彼女の一人や二人できるはずだ。
こうして、期末テスト大戦が始まるのだった。
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