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4章 怒り少女が乱暴すぎる!24~32話
その4 ヒウタと理不尽少女
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ぬるい風が吹いていた。
黄金色の空、影を浮かべる雲。
それは天に浮かぶ木目調のように思われた。
駅近くの広場でヒウタは待つ。
靴が石のタイルに当たってコツコツと音を奏でる。
スーツを着たサラリーマンは足早に改札へ。
制服を着た学生は駅構内を見渡して。
ただヒウタだけが広場で時間を垂れ流している気がする。
少なくとも広場に一人でいるのはヒウタだけだった。
「痛っ」
ヒウタは大げさに言う。
虫が来たのかと驚いたが、広場の木の葉が風で飛んできただけだ。
相手の女性は既に三十分以上遅刻している。
でも女性にも学校がある。
ヒウタはやることがない。
飲食店でも探すことにした。
それから。
「土日忙しくて。明日学校休みなら会えるだろうって」
声がした。
顔を上げると、髪の長い大人っぽい女性が立っていた。
「あなたが、アキトヨさんですか?」
「そりゃそうでしょ? まさか君みたいな地味な人に逆ナンする人がいると」
その女性の名前は巣桃秋豊。
肌の露出が少なく華奢にも見える。
その外見とは裏腹に口調は強かった。
「友人にはスモモやモモ、アキトヨやトヨで呼ばれているから好きに呼んで。私は、そうだな」
整ったまつ毛。それは長かった。
瞳は茶色がかっていて見る者を瞳の中に閉じ込める。
ようやく檻から出たとしても、妖艶な香りに意識は持って行かれる。
アキトヨという女性には、足早に動く時間を止めてしまうような魔力があった。
「私はあなたを、ヒウ君とでも呼ぼう。私にとって久しぶりのデート、絶対退屈にさせるなよ?」
子供っぽいというか、我が儘っぽいというか。
見た目は大人、中身は子ども。
「行くよ、時間はないから。取り敢えずご飯探すから」
駅近くの料理屋は基本的に三十分待ち。
金曜日は単なる平日ではなく、休日と一心同体だった。
ヒウタは待てばいいと思っていたが。
「はあ、お腹減ったな。急に人間減らないかな。こんなにいても大変だし、資源の無駄だと思うんだ」
アキトヨは頭を掻く。
背を伸ばしたアキトヨはヒウタよりも高い。
何というか。
『目つきも足取りも口調も、怖いんですけどぉ』
とは、ヒウタの恋活を手伝ってくれる幼馴染チカフミへのメッセージである。
「ん? スマホ見ているのか。今は私とのデートのはずだが」
殺気?
目には見えないがアキトヨから黒いオーラが見える気がする。
少なくとも体全体が一斉に警報を鳴らす。
「アキトヨさん、どこも混んでいるみたいですね」
会う前のマッチングアプリのメッセージによれば、ヒウタとアキトヨは同じ大学一年生らしい。
「ああ、調べてくれてたの。私は気が短いから。怖がらせたいわけではないけど」
もうチカフミに頼るのはやめよう、決心したヒウタだった。
駅から何本か道路を越えて。
道が急に狭くなった気がする。
肉の美味しそうな香りがする。
「うーん、なにか違う。肉の気分ではないから」
注文の多い女性である。
綺麗な人だし自分勝手でも許されてきたのだろうか?
なんて嫌な考えは閉まっておこう。
「ここガチャガチャなのか」
アキトヨは手動扉を進んで細い通路を抜けてしまった。
「アキトヨさんっ!」
ヒウタは慌てて付いていく。
扉の向こうには数えきれないほどのガチャガチャが積んであった。
「よし、くじガチャ引こうか」
アキトヨが立ち止まったのは、一回五百円もするガチャだった。
しかも、一等から三等まであって三等のストラップと一等のミニフィギュアでは格差がある。
「本当にやるんですか?」
ヒウタも見たことがある人気アニメのくじガチャ。
ただヒウタからすれば金額が高すぎた。
「さっさと一等出すか」
アキトヨが千円札を次々と両替して五百円を用意する。
そして、ガチャに戻ると、重みがあるハンドルを回して戦いの火蓋が切られたのだった。
二十分後。
「次の店舗。少し歩くけどいいかな、ヒウ君?」
アキトヨは髪を揺らして言った。
徒歩二十分。
少なくとも近い距離ではないし、ヒウタとしてはまず食糧調達をしたかった。
「ん?」
「行きましょう。でも、その、まだ回したいですか?」
ヒウタは敗者の証を抱えて言う。
「持てないか?」
「カプセルは回収ボックスに入れて商品はバッグに入れれば」
「少しだけ待ってやる、急いで準備しろ。あまり私を待たせるな」
君の商品だが?
ヒウタには言ってやりたいことが山ほどあるが、デートの経験値的にどこまで踏み込んでいいいか分からない。
アキトヨの言う通りにするしかなかった。
結局、いくつか店舗を回ったが、そもそも希望のガチャがなかったり売り切れたりした。
ガチャを引くことさえできなかった。
「あの、アキトヨさん」
「今日楽しくなかった。デート、もっと楽しいものだと思ってた」
「僕が悪いっ!?」
アキトヨの目がヒウタを捉える。
「楽しくなくてごめん」
ガチャのことで機嫌を悪くしたとはいえ、モテ男なら楽しい雰囲気にしてしまうのだろうか?
ヒウタにこの空気を楽しくする力はない。
謝るしかないのだ。
「はあ、疲れた。コンビニで何か買って近くの公園で食べよう」
「そうですね」
チカフミならどうしたのか?
もっと準備してデートに挑むべきだった。
せっかく会ってくれたのに、アキトヨさんを楽しませることができなかった。
「ヒウ君、お気に入りの弁当売ってない。もう少し歩く」
アキトヨは機嫌が悪い。
それに、ヒウタにも何度も怒っている。
デートが楽しくないらしい。
「一緒に食べなくても解散でいいのに」
アキトヨに聞こえない声で言う。
どんどん進んでいくアキトヨになんとか付いていく。
その高い背中を見るとより分からなくなった。
意外と夜は汗をかく。
黄金色の空、影を浮かべる雲。
それは天に浮かぶ木目調のように思われた。
駅近くの広場でヒウタは待つ。
靴が石のタイルに当たってコツコツと音を奏でる。
スーツを着たサラリーマンは足早に改札へ。
制服を着た学生は駅構内を見渡して。
ただヒウタだけが広場で時間を垂れ流している気がする。
少なくとも広場に一人でいるのはヒウタだけだった。
「痛っ」
ヒウタは大げさに言う。
虫が来たのかと驚いたが、広場の木の葉が風で飛んできただけだ。
相手の女性は既に三十分以上遅刻している。
でも女性にも学校がある。
ヒウタはやることがない。
飲食店でも探すことにした。
それから。
「土日忙しくて。明日学校休みなら会えるだろうって」
声がした。
顔を上げると、髪の長い大人っぽい女性が立っていた。
「あなたが、アキトヨさんですか?」
「そりゃそうでしょ? まさか君みたいな地味な人に逆ナンする人がいると」
その女性の名前は巣桃秋豊。
肌の露出が少なく華奢にも見える。
その外見とは裏腹に口調は強かった。
「友人にはスモモやモモ、アキトヨやトヨで呼ばれているから好きに呼んで。私は、そうだな」
整ったまつ毛。それは長かった。
瞳は茶色がかっていて見る者を瞳の中に閉じ込める。
ようやく檻から出たとしても、妖艶な香りに意識は持って行かれる。
アキトヨという女性には、足早に動く時間を止めてしまうような魔力があった。
「私はあなたを、ヒウ君とでも呼ぼう。私にとって久しぶりのデート、絶対退屈にさせるなよ?」
子供っぽいというか、我が儘っぽいというか。
見た目は大人、中身は子ども。
「行くよ、時間はないから。取り敢えずご飯探すから」
駅近くの料理屋は基本的に三十分待ち。
金曜日は単なる平日ではなく、休日と一心同体だった。
ヒウタは待てばいいと思っていたが。
「はあ、お腹減ったな。急に人間減らないかな。こんなにいても大変だし、資源の無駄だと思うんだ」
アキトヨは頭を掻く。
背を伸ばしたアキトヨはヒウタよりも高い。
何というか。
『目つきも足取りも口調も、怖いんですけどぉ』
とは、ヒウタの恋活を手伝ってくれる幼馴染チカフミへのメッセージである。
「ん? スマホ見ているのか。今は私とのデートのはずだが」
殺気?
目には見えないがアキトヨから黒いオーラが見える気がする。
少なくとも体全体が一斉に警報を鳴らす。
「アキトヨさん、どこも混んでいるみたいですね」
会う前のマッチングアプリのメッセージによれば、ヒウタとアキトヨは同じ大学一年生らしい。
「ああ、調べてくれてたの。私は気が短いから。怖がらせたいわけではないけど」
もうチカフミに頼るのはやめよう、決心したヒウタだった。
駅から何本か道路を越えて。
道が急に狭くなった気がする。
肉の美味しそうな香りがする。
「うーん、なにか違う。肉の気分ではないから」
注文の多い女性である。
綺麗な人だし自分勝手でも許されてきたのだろうか?
なんて嫌な考えは閉まっておこう。
「ここガチャガチャなのか」
アキトヨは手動扉を進んで細い通路を抜けてしまった。
「アキトヨさんっ!」
ヒウタは慌てて付いていく。
扉の向こうには数えきれないほどのガチャガチャが積んであった。
「よし、くじガチャ引こうか」
アキトヨが立ち止まったのは、一回五百円もするガチャだった。
しかも、一等から三等まであって三等のストラップと一等のミニフィギュアでは格差がある。
「本当にやるんですか?」
ヒウタも見たことがある人気アニメのくじガチャ。
ただヒウタからすれば金額が高すぎた。
「さっさと一等出すか」
アキトヨが千円札を次々と両替して五百円を用意する。
そして、ガチャに戻ると、重みがあるハンドルを回して戦いの火蓋が切られたのだった。
二十分後。
「次の店舗。少し歩くけどいいかな、ヒウ君?」
アキトヨは髪を揺らして言った。
徒歩二十分。
少なくとも近い距離ではないし、ヒウタとしてはまず食糧調達をしたかった。
「ん?」
「行きましょう。でも、その、まだ回したいですか?」
ヒウタは敗者の証を抱えて言う。
「持てないか?」
「カプセルは回収ボックスに入れて商品はバッグに入れれば」
「少しだけ待ってやる、急いで準備しろ。あまり私を待たせるな」
君の商品だが?
ヒウタには言ってやりたいことが山ほどあるが、デートの経験値的にどこまで踏み込んでいいいか分からない。
アキトヨの言う通りにするしかなかった。
結局、いくつか店舗を回ったが、そもそも希望のガチャがなかったり売り切れたりした。
ガチャを引くことさえできなかった。
「あの、アキトヨさん」
「今日楽しくなかった。デート、もっと楽しいものだと思ってた」
「僕が悪いっ!?」
アキトヨの目がヒウタを捉える。
「楽しくなくてごめん」
ガチャのことで機嫌を悪くしたとはいえ、モテ男なら楽しい雰囲気にしてしまうのだろうか?
ヒウタにこの空気を楽しくする力はない。
謝るしかないのだ。
「はあ、疲れた。コンビニで何か買って近くの公園で食べよう」
「そうですね」
チカフミならどうしたのか?
もっと準備してデートに挑むべきだった。
せっかく会ってくれたのに、アキトヨさんを楽しませることができなかった。
「ヒウ君、お気に入りの弁当売ってない。もう少し歩く」
アキトヨは機嫌が悪い。
それに、ヒウタにも何度も怒っている。
デートが楽しくないらしい。
「一緒に食べなくても解散でいいのに」
アキトヨに聞こえない声で言う。
どんどん進んでいくアキトヨになんとか付いていく。
その高い背中を見るとより分からなくなった。
意外と夜は汗をかく。
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