規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

文字の大きさ
上 下
25 / 162
4章 怒り少女が乱暴すぎる!24~32話

その2 ヒウタと恋活パターン

しおりを挟む
 カズサの件を解決したのち、ヒウタはマッチングアプリを活用した。
 持ち前の優しさによって、マッチング界を無双して数々の相手から魅力的な女性を選びたい放題。になるはずもなく。
 むしろ、いい人止まりで、アプリ内のメッセージのやり取り経験値だけを我がものとしていた。
 さて。
 ここら辺で一度、振り返りをするべきだ。
「そんなこと言われても僕はアプリ使ったことないよ」
 ヒウタの部屋で肉を焼いていた。
 正確にはヒウタの圧により半ば強制的に焼かされていた。
 名前は、澪目みおめ近文ちかふみ
 チカフミはヒウタの小学校からの友人である。
 焼肉をヒウタの全額負担でやると言われたが、なるほど相談事があるからか。
 少しはお金を出したり、買い物を手伝ったりしようとしたが、その度に血眼で阻止してくるのである。
 その必死さは恐怖でもあったが。
 幼馴染の友人が頼った以上、無下にはできなかったのだ。
「小学校から大学まで彼女いたことあるチカフミならって。御助言を是非ともお受けさせていただきたく思いまするので」
「ヒウ君、もしかして壊れちゃった? 合コンでも組もうか? 彼女の友達とか、彼氏ほしいみたいな話聞かされてたし」
「それは駄目だ。俺は誇り高きアルバイトとして、何がなんでもシュイロさんのアプリで勝ち組になり最強の生きる宣伝にならなくてはならん。もし合コンで彼女ができても、シュイロさんのアプリは使えない証拠にしかならんのだよ」
 ヒウタは偉そうに言う。
 変な抑揚と無理やり出したような高い声は不気味さを醸し出していた。
「面倒な⁉ ヒウ君の助けになれるかな」
 肉をひとつ口にした以上、何も助言できなかったら罪悪感しかない。
 辛そうに唇を髪ながら、冷蔵庫からステーキ用の肉を取り出したのを見て、チカフミはついに逃げようかと。
「ふふふふふ、その肉美味しいよな」
「んん?」
 ヒウタ、慈悲深そうな笑顔。
 目が細くなり過ぎていて、何も見えていないだろう。きっと。
「その肉、脂が綺麗で、実際には食べたことはないけど。……。その肉美味しいよな」
 笑顔で話すヒウタ。
 ヒウタがどれだけ言葉を紡いでも表情筋はピクリとも動いていない。
「はあ、その必死さが女の子にとって怖いんじゃない?」
「いつだって俺は優しいんだ。シュイロさんも、愛しの妹も言っていた。話は変わるが、……。その肉、美味しいよな」
「うう、怖いよ。悪夢見そうなんだけど⁉ ヒウ君ってどうやって表情動かさずに話してるの? その特技発揮しないでよ」
「まあ、冗談はさておき」
「よく急にテンション変えられるね。お肉美味しいけどさ」
 チカフミは焼いたステーキを一口大に切って、味わいながら食べ進めていた。
「アプリで成功するしかない。そのためにはなんでもするし、幼馴染に肉を献上する。この覚悟、受け取ってくれるか?」
「頑張ってるのは分かる。今までどんな感じだったか教えてくれる? アプリは詳しくないけどさ」
「いいね、合計二十三。マッチング、五人」
「マッチングってなに?」
「気になる、って登録が相互状態になるとマッチングになる。メッセージが続いたのは、同じく五人。しかも、実際に四人会った。で、四人とも優しいけど何か違うって」
「メッセージやり取りした人全員と会えるのはすごいと思うけど」
「その肉美味しいよな」
「ええ、またまた何の圧⁉」
「今のはつい楽しくなって。もう女の子になろう、チカフミ。俺の想い受け取ってくれ」
「僕が性転換したら愛せるのか、それでいいのか?」
「良くないです、本当の女の子がいいです。助けてください」
「調子狂うよ。どんな助言がほしいの?」
 チカフミは遊び人というわけではないが、彼女がいない期間が長いことはなかった。
 数か月すれば当然のように彼女持ちに変わる。
 表立ってモテるタイプではなく、密かに人気になるタイプだった。
 女性との交流は多く異性に関しても壁がない。
 したがって、チカフミはヒウタとって頼るには最適の人物だ。
「話の繋ぎ方とか。すぐに話すことなくなって、微妙な時間が流れて。つまらないって思われる」
「ずっと話すのはもちろん難しいよ。それに、大体の人は聞いた言葉よりも話した言葉が印象に残るから。必死に話してても楽しくないって思われるよ」
「そ、そうなのか! 続きをよろしくお願いいます、師匠」
「他には、いやヒウ君のタイプからすると」
 チカフミは腕を組んで考える。
 その頃、ヒウタは血管が浮き出そうなくらい顔に力が入っていた。
「はよ、はよ。はよ、はよ。その肉、美味しいよな。はよ、はよ。はよ、はよ。その肉、美味しいよな。はよ、はよ。……」
「うう、圧が怖いよ」
「分かった。今、気になってる人いるの?」
「ゼロですが?」
「どや顔されても困るけど、じゃあ初めから恋活プロデュースするよ。いい肉も食べたから、美味しかった分頑張る」
 チカフミはそこまで必死になるならと、ヒウタの恋愛を手伝うらしい。
 そもそも普段のヒウタはもっと余裕があって気遣いができるはずで、少なくともこんなにも怖くないし圧力もかけてこない。
「始めからだと、この、ぐらぁ! 俺はここまで頑張って進んできたんだ、それを初めからって、彼女持ちが正義か、ヤリ○ンが正義か、○貞でもな、これでも頑張って来てるんだよ、それを、……」
 暴れるヒウタ。
「恋活プロデュース、やめようかな」
 チカフミが言う。
「はあぁっ⁉ 二言はないよな、やんのかおらぁ」
 荒れている幼馴染を見て、チカフミは後悔したのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...