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4章 怒り少女が乱暴すぎる!24~32話
その2 ヒウタと恋活パターン
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カズサの件を解決したのち、ヒウタはマッチングアプリを活用した。
持ち前の優しさによって、マッチング界を無双して数々の相手から魅力的な女性を選びたい放題。になるはずもなく。
むしろ、いい人止まりで、アプリ内のメッセージのやり取り経験値だけを我がものとしていた。
さて。
ここら辺で一度、振り返りをするべきだ。
「そんなこと言われても僕はアプリ使ったことないよ」
ヒウタの部屋で肉を焼いていた。
正確にはヒウタの圧により半ば強制的に焼かされていた。
名前は、澪目近文。
チカフミはヒウタの小学校からの友人である。
焼肉をヒウタの全額負担でやると言われたが、なるほど相談事があるからか。
少しはお金を出したり、買い物を手伝ったりしようとしたが、その度に血眼で阻止してくるのである。
その必死さは恐怖でもあったが。
幼馴染の友人が頼った以上、無下にはできなかったのだ。
「小学校から大学まで彼女いたことあるチカフミならって。御助言を是非ともお受けさせていただきたく思いまするので」
「ヒウ君、もしかして壊れちゃった? 合コンでも組もうか? 彼女の友達とか、彼氏ほしいみたいな話聞かされてたし」
「それは駄目だ。俺は誇り高きアルバイトとして、何がなんでもシュイロさんのアプリで勝ち組になり最強の生きる宣伝にならなくてはならん。もし合コンで彼女ができても、シュイロさんのアプリは使えない証拠にしかならんのだよ」
ヒウタは偉そうに言う。
変な抑揚と無理やり出したような高い声は不気味さを醸し出していた。
「面倒な⁉ ヒウ君の助けになれるかな」
肉をひとつ口にした以上、何も助言できなかったら罪悪感しかない。
辛そうに唇を髪ながら、冷蔵庫からステーキ用の肉を取り出したのを見て、チカフミはついに逃げようかと。
「ふふふふふ、その肉美味しいよな」
「んん?」
ヒウタ、慈悲深そうな笑顔。
目が細くなり過ぎていて、何も見えていないだろう。きっと。
「その肉、脂が綺麗で、実際には食べたことはないけど。……。その肉美味しいよな」
笑顔で話すヒウタ。
ヒウタがどれだけ言葉を紡いでも表情筋はピクリとも動いていない。
「はあ、その必死さが女の子にとって怖いんじゃない?」
「いつだって俺は優しいんだ。シュイロさんも、愛しの妹も言っていた。話は変わるが、……。その肉、美味しいよな」
「うう、怖いよ。悪夢見そうなんだけど⁉ ヒウ君ってどうやって表情動かさずに話してるの? その特技発揮しないでよ」
「まあ、冗談はさておき」
「よく急にテンション変えられるね。お肉美味しいけどさ」
チカフミは焼いたステーキを一口大に切って、味わいながら食べ進めていた。
「アプリで成功するしかない。そのためにはなんでもするし、幼馴染に肉を献上する。この覚悟、受け取ってくれるか?」
「頑張ってるのは分かる。今までどんな感じだったか教えてくれる? アプリは詳しくないけどさ」
「いいね、合計二十三。マッチング、五人」
「マッチングってなに?」
「気になる、って登録が相互状態になるとマッチングになる。メッセージが続いたのは、同じく五人。しかも、実際に四人会った。で、四人とも優しいけど何か違うって」
「メッセージやり取りした人全員と会えるのはすごいと思うけど」
「その肉美味しいよな」
「ええ、またまた何の圧⁉」
「今のはつい楽しくなって。もう女の子になろう、チカフミ。俺の想い受け取ってくれ」
「僕が性転換したら愛せるのか、それでいいのか?」
「良くないです、本当の女の子がいいです。助けてください」
「調子狂うよ。どんな助言がほしいの?」
チカフミは遊び人というわけではないが、彼女がいない期間が長いことはなかった。
数か月すれば当然のように彼女持ちに変わる。
表立ってモテるタイプではなく、密かに人気になるタイプだった。
女性との交流は多く異性に関しても壁がない。
したがって、チカフミはヒウタとって頼るには最適の人物だ。
「話の繋ぎ方とか。すぐに話すことなくなって、微妙な時間が流れて。つまらないって思われる」
「ずっと話すのはもちろん難しいよ。それに、大体の人は聞いた言葉よりも話した言葉が印象に残るから。必死に話してても楽しくないって思われるよ」
「そ、そうなのか! 続きをよろしくお願いいます、師匠」
「他には、いやヒウ君のタイプからすると」
チカフミは腕を組んで考える。
その頃、ヒウタは血管が浮き出そうなくらい顔に力が入っていた。
「はよ、はよ。はよ、はよ。その肉、美味しいよな。はよ、はよ。はよ、はよ。その肉、美味しいよな。はよ、はよ。……」
「うう、圧が怖いよ」
「分かった。今、気になってる人いるの?」
「ゼロですが?」
「どや顔されても困るけど、じゃあ初めから恋活プロデュースするよ。いい肉も食べたから、美味しかった分頑張る」
チカフミはそこまで必死になるならと、ヒウタの恋愛を手伝うらしい。
そもそも普段のヒウタはもっと余裕があって気遣いができるはずで、少なくともこんなにも怖くないし圧力もかけてこない。
「始めからだと、この、ぐらぁ! 俺はここまで頑張って進んできたんだ、それを初めからって、彼女持ちが正義か、ヤリ○ンが正義か、○貞でもな、これでも頑張って来てるんだよ、それを、……」
暴れるヒウタ。
「恋活プロデュース、やめようかな」
チカフミが言う。
「はあぁっ⁉ 二言はないよな、やんのかおらぁ」
荒れている幼馴染を見て、チカフミは後悔したのだった。
持ち前の優しさによって、マッチング界を無双して数々の相手から魅力的な女性を選びたい放題。になるはずもなく。
むしろ、いい人止まりで、アプリ内のメッセージのやり取り経験値だけを我がものとしていた。
さて。
ここら辺で一度、振り返りをするべきだ。
「そんなこと言われても僕はアプリ使ったことないよ」
ヒウタの部屋で肉を焼いていた。
正確にはヒウタの圧により半ば強制的に焼かされていた。
名前は、澪目近文。
チカフミはヒウタの小学校からの友人である。
焼肉をヒウタの全額負担でやると言われたが、なるほど相談事があるからか。
少しはお金を出したり、買い物を手伝ったりしようとしたが、その度に血眼で阻止してくるのである。
その必死さは恐怖でもあったが。
幼馴染の友人が頼った以上、無下にはできなかったのだ。
「小学校から大学まで彼女いたことあるチカフミならって。御助言を是非ともお受けさせていただきたく思いまするので」
「ヒウ君、もしかして壊れちゃった? 合コンでも組もうか? 彼女の友達とか、彼氏ほしいみたいな話聞かされてたし」
「それは駄目だ。俺は誇り高きアルバイトとして、何がなんでもシュイロさんのアプリで勝ち組になり最強の生きる宣伝にならなくてはならん。もし合コンで彼女ができても、シュイロさんのアプリは使えない証拠にしかならんのだよ」
ヒウタは偉そうに言う。
変な抑揚と無理やり出したような高い声は不気味さを醸し出していた。
「面倒な⁉ ヒウ君の助けになれるかな」
肉をひとつ口にした以上、何も助言できなかったら罪悪感しかない。
辛そうに唇を髪ながら、冷蔵庫からステーキ用の肉を取り出したのを見て、チカフミはついに逃げようかと。
「ふふふふふ、その肉美味しいよな」
「んん?」
ヒウタ、慈悲深そうな笑顔。
目が細くなり過ぎていて、何も見えていないだろう。きっと。
「その肉、脂が綺麗で、実際には食べたことはないけど。……。その肉美味しいよな」
笑顔で話すヒウタ。
ヒウタがどれだけ言葉を紡いでも表情筋はピクリとも動いていない。
「はあ、その必死さが女の子にとって怖いんじゃない?」
「いつだって俺は優しいんだ。シュイロさんも、愛しの妹も言っていた。話は変わるが、……。その肉、美味しいよな」
「うう、怖いよ。悪夢見そうなんだけど⁉ ヒウ君ってどうやって表情動かさずに話してるの? その特技発揮しないでよ」
「まあ、冗談はさておき」
「よく急にテンション変えられるね。お肉美味しいけどさ」
チカフミは焼いたステーキを一口大に切って、味わいながら食べ進めていた。
「アプリで成功するしかない。そのためにはなんでもするし、幼馴染に肉を献上する。この覚悟、受け取ってくれるか?」
「頑張ってるのは分かる。今までどんな感じだったか教えてくれる? アプリは詳しくないけどさ」
「いいね、合計二十三。マッチング、五人」
「マッチングってなに?」
「気になる、って登録が相互状態になるとマッチングになる。メッセージが続いたのは、同じく五人。しかも、実際に四人会った。で、四人とも優しいけど何か違うって」
「メッセージやり取りした人全員と会えるのはすごいと思うけど」
「その肉美味しいよな」
「ええ、またまた何の圧⁉」
「今のはつい楽しくなって。もう女の子になろう、チカフミ。俺の想い受け取ってくれ」
「僕が性転換したら愛せるのか、それでいいのか?」
「良くないです、本当の女の子がいいです。助けてください」
「調子狂うよ。どんな助言がほしいの?」
チカフミは遊び人というわけではないが、彼女がいない期間が長いことはなかった。
数か月すれば当然のように彼女持ちに変わる。
表立ってモテるタイプではなく、密かに人気になるタイプだった。
女性との交流は多く異性に関しても壁がない。
したがって、チカフミはヒウタとって頼るには最適の人物だ。
「話の繋ぎ方とか。すぐに話すことなくなって、微妙な時間が流れて。つまらないって思われる」
「ずっと話すのはもちろん難しいよ。それに、大体の人は聞いた言葉よりも話した言葉が印象に残るから。必死に話してても楽しくないって思われるよ」
「そ、そうなのか! 続きをよろしくお願いいます、師匠」
「他には、いやヒウ君のタイプからすると」
チカフミは腕を組んで考える。
その頃、ヒウタは血管が浮き出そうなくらい顔に力が入っていた。
「はよ、はよ。はよ、はよ。その肉、美味しいよな。はよ、はよ。はよ、はよ。その肉、美味しいよな。はよ、はよ。……」
「うう、圧が怖いよ」
「分かった。今、気になってる人いるの?」
「ゼロですが?」
「どや顔されても困るけど、じゃあ初めから恋活プロデュースするよ。いい肉も食べたから、美味しかった分頑張る」
チカフミはそこまで必死になるならと、ヒウタの恋愛を手伝うらしい。
そもそも普段のヒウタはもっと余裕があって気遣いができるはずで、少なくともこんなにも怖くないし圧力もかけてこない。
「始めからだと、この、ぐらぁ! 俺はここまで頑張って進んできたんだ、それを初めからって、彼女持ちが正義か、ヤリ○ンが正義か、○貞でもな、これでも頑張って来てるんだよ、それを、……」
暴れるヒウタ。
「恋活プロデュース、やめようかな」
チカフミが言う。
「はあぁっ⁉ 二言はないよな、やんのかおらぁ」
荒れている幼馴染を見て、チカフミは後悔したのだった。
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