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4章 怒り少女が乱暴すぎる!24~32話
その1 ヒウタと生活力チェック
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ヒウタの一人暮らしの部屋に、父親と妹のアメユキがやって来た。
「にいに、生活力チェックです。もし問題があったら怒ります。というわけで、お父ちゃんチェックも抜かりなくお願いします」
「今日はお父様もいるからな。ということでヒウタ、昼飯をくれ。自炊できるというのはどうしても外せない。このお父様の舌を満足させることができるかな?」
「でも父さん、鶏肉と豚肉すら間違えて、母さんに呆れられてなかった?」
「な、な、精神攻撃か! 味に関してはアメユキがいるんじゃい」
頼りない父親である。
アメユキの後ろに隠れて子供っぽく騒ぐ。
ただその声は小さめで。
「でも、アイロンしたら布が焼けて母さんに説教されてなかった?」
母のお気に入りのロングスカートを破いてしまったのである。
それも値打ちのあるもので、言い訳を考えて誤魔化す姿は、事情を知っているヒウタの胸が痛んだ。
母がいつも丁寧に着ていて欠かさず洗濯ネットに入れて洗っていたことを知っていたはずだ。
そのとき、初めて父のことをクズ男かもしれないと思った。
「それは言わない約束だろ、ヒウタ。ほぼアメユキが見るからいいんだ。父さんの仕事は大事な家族を守り抜くこと、つまりアメユキの付き添いさえすれば立派な父親なんだよ、文句あるのか!」
「そうなのか、悲しくならない? 自分で言ってて」
「ふふふ、しかし強気でいられるのも今のうち。父さんに所々似てしまったヒウタがどう乗り切るか見ものだな、フハハハハハ」
一人暮らしを始めたときは家事力の無さを痛感していた。
あれから、シュイロとカズサに生活力チェックの相談をしたときに地獄の特訓をしてくれた。
家事ができない父の血が流れているとはいえ、努力は裏切らないはず。
「パパの言うように、にいは私たちの昼飯を用意してもらうから。まず、テーブルの上をテーブルクロスで拭いてもらいます。アルコール消毒も要求する。私がテーブルをぺろってしていいようにね」
アメユキは舌を控えめに出して、すぐに戻す。
顔が赤くなっていて、照れてしまっているようだ。
アメユキどうしたんだ?
暴走しているような、……。
ヒウタはテーブルを拭いた後、アルコールスプレーを使って消毒をした。
それからずるいかもしれないが、特訓の成果であるコンソメスープと肉みそパスタを披露する。
面倒な工程を踏んでいるのは自炊アピールのためである。
普段は野菜炒めとご飯のような手抜き料理が占めていて、時間がないとスーパーの惣菜や袋麺・カップ麺、冷凍食品に頼る。
一人暮らしだからこそ、母と惣菜に対する感謝が芽生えた。
それと電子レンジは強力な助っ人である。
作り置きを温かい食事に変えられる点が嬉しい。
「うーん、いつもより拘ってる?」
アメユキはスマホでスープとパスタの写真を撮りながら言う。
料理に関しては厳しくチェックされるらしい。
「そりゃ、アメユキが来るから張り切ったよ」
「いつもの水準がいいのに。生活力見るんだよ」
「普段から自炊はしているから。美味しそうだろ?」
「合格です、部屋の綺麗さを見ます。もっと厳しくします。パパ、早く食べてください。ここからが本番です」
アメユキは深呼吸をする。
気合を入れたらしい、ヒウタとしては頑張らないでほしいが。
「あまり物は多くないけど」
「整理整頓だけでなく、埃も見ます。私は厳しいので」
アメユキは部屋の中を見る。
そして一瞬諦めたようにテーブルまで引き返そうとしたが、窓を見て固まった。
「窓枠の黒カビチェックも、ガラスの綺麗さも見ます」
アメユキは人差し指を出して窓枠の上を滑らせた。
白い毛糸のような埃が付く。
アメユキの表情が曇った。
「にいには毎日忙しいはずです。こんなに綺麗なんて。黒カビが風呂場も含めてなかった。怪しい、これはむしろ」
アメユキの瞼がピクピクと震えている。
怒っている、それは分かるが。
「お父様気づきませんか?」
父は寛いでいた。
アメユキの声で咄嗟に背筋を伸ばす。
「気づいちゃうもんね。流石は親子ってところか。不合格になるかもな、フハハハハハ」
父はヒウタの肩に手を置いた。
「ほんとに残念だ。一人暮らし、まだまだ早いようだな」
父は楽しそうに言う。
しかし、アメユキが一言も発さないことで、父は異変を感じた。
「アメユキ? どうしたんだ」
「そうなの? 父さんも女の人連れ込んでいるの?」
「へ?」
父は困惑していた。
アメユキが何に気づいたか理解できないまま、ヒウタをからかっただけである。
「そんなモテるように見えるか?」
「そう。父さんが女性を連れ込むなら、浮気よりも性犯罪を疑うべき」
アメユキの殺気に気づいたのはヒウタだった。
父はへこへこと情けない態度だ。
「アメユキ?」
「にいに、部屋に女の子連れ込んでるの?」
ヒウタは冷たい汗を流した。
シュイロやカズサに掃除や家事の特訓を手伝ってもらった。
女性を部屋に招いた点では間違いではない。
ただ肯定するだけでは、この殺気を止めることはできない。
すなわち、ヒウタは終わってしまう。
でも今ここで料理したのも、部屋を掃除したのもヒウタ自身であることには違いない。
「俺自身で綺麗にしたからな。この部屋に来て物は少なかったし掃除もしてあったから。その綺麗な状態をアメユキたちに見せたかったし、アルバイトも忙しくないし、背伸びはもちろんしてるけど、これじゃだめか?」
ヒウタはアメユキをじっと見た。
すると、アメユキは目線を反らす。
「にいに、また遊びに来るから。美味しいご飯楽しみにするね」
どうやら認めてくれるらしい。
父は終始ぼけっとしていたが。
「今度はバイト代で欲しいもの買ってやるし食べさせてやるし、何よりいい彼女を紹介したい」
「家に連れ込むのはまだ早いと思う。また私と作戦考えるから、それからだから」
暴走しているとはいえ、優しい妹なのだ。
ヒウタのことを心配している。
いつかはアメユキにシュイロを会わせたい。
再び一人になった部屋で天井を見上げながら、ヒウタは思う。
「にいに、生活力チェックです。もし問題があったら怒ります。というわけで、お父ちゃんチェックも抜かりなくお願いします」
「今日はお父様もいるからな。ということでヒウタ、昼飯をくれ。自炊できるというのはどうしても外せない。このお父様の舌を満足させることができるかな?」
「でも父さん、鶏肉と豚肉すら間違えて、母さんに呆れられてなかった?」
「な、な、精神攻撃か! 味に関してはアメユキがいるんじゃい」
頼りない父親である。
アメユキの後ろに隠れて子供っぽく騒ぐ。
ただその声は小さめで。
「でも、アイロンしたら布が焼けて母さんに説教されてなかった?」
母のお気に入りのロングスカートを破いてしまったのである。
それも値打ちのあるもので、言い訳を考えて誤魔化す姿は、事情を知っているヒウタの胸が痛んだ。
母がいつも丁寧に着ていて欠かさず洗濯ネットに入れて洗っていたことを知っていたはずだ。
そのとき、初めて父のことをクズ男かもしれないと思った。
「それは言わない約束だろ、ヒウタ。ほぼアメユキが見るからいいんだ。父さんの仕事は大事な家族を守り抜くこと、つまりアメユキの付き添いさえすれば立派な父親なんだよ、文句あるのか!」
「そうなのか、悲しくならない? 自分で言ってて」
「ふふふ、しかし強気でいられるのも今のうち。父さんに所々似てしまったヒウタがどう乗り切るか見ものだな、フハハハハハ」
一人暮らしを始めたときは家事力の無さを痛感していた。
あれから、シュイロとカズサに生活力チェックの相談をしたときに地獄の特訓をしてくれた。
家事ができない父の血が流れているとはいえ、努力は裏切らないはず。
「パパの言うように、にいは私たちの昼飯を用意してもらうから。まず、テーブルの上をテーブルクロスで拭いてもらいます。アルコール消毒も要求する。私がテーブルをぺろってしていいようにね」
アメユキは舌を控えめに出して、すぐに戻す。
顔が赤くなっていて、照れてしまっているようだ。
アメユキどうしたんだ?
暴走しているような、……。
ヒウタはテーブルを拭いた後、アルコールスプレーを使って消毒をした。
それからずるいかもしれないが、特訓の成果であるコンソメスープと肉みそパスタを披露する。
面倒な工程を踏んでいるのは自炊アピールのためである。
普段は野菜炒めとご飯のような手抜き料理が占めていて、時間がないとスーパーの惣菜や袋麺・カップ麺、冷凍食品に頼る。
一人暮らしだからこそ、母と惣菜に対する感謝が芽生えた。
それと電子レンジは強力な助っ人である。
作り置きを温かい食事に変えられる点が嬉しい。
「うーん、いつもより拘ってる?」
アメユキはスマホでスープとパスタの写真を撮りながら言う。
料理に関しては厳しくチェックされるらしい。
「そりゃ、アメユキが来るから張り切ったよ」
「いつもの水準がいいのに。生活力見るんだよ」
「普段から自炊はしているから。美味しそうだろ?」
「合格です、部屋の綺麗さを見ます。もっと厳しくします。パパ、早く食べてください。ここからが本番です」
アメユキは深呼吸をする。
気合を入れたらしい、ヒウタとしては頑張らないでほしいが。
「あまり物は多くないけど」
「整理整頓だけでなく、埃も見ます。私は厳しいので」
アメユキは部屋の中を見る。
そして一瞬諦めたようにテーブルまで引き返そうとしたが、窓を見て固まった。
「窓枠の黒カビチェックも、ガラスの綺麗さも見ます」
アメユキは人差し指を出して窓枠の上を滑らせた。
白い毛糸のような埃が付く。
アメユキの表情が曇った。
「にいには毎日忙しいはずです。こんなに綺麗なんて。黒カビが風呂場も含めてなかった。怪しい、これはむしろ」
アメユキの瞼がピクピクと震えている。
怒っている、それは分かるが。
「お父様気づきませんか?」
父は寛いでいた。
アメユキの声で咄嗟に背筋を伸ばす。
「気づいちゃうもんね。流石は親子ってところか。不合格になるかもな、フハハハハハ」
父はヒウタの肩に手を置いた。
「ほんとに残念だ。一人暮らし、まだまだ早いようだな」
父は楽しそうに言う。
しかし、アメユキが一言も発さないことで、父は異変を感じた。
「アメユキ? どうしたんだ」
「そうなの? 父さんも女の人連れ込んでいるの?」
「へ?」
父は困惑していた。
アメユキが何に気づいたか理解できないまま、ヒウタをからかっただけである。
「そんなモテるように見えるか?」
「そう。父さんが女性を連れ込むなら、浮気よりも性犯罪を疑うべき」
アメユキの殺気に気づいたのはヒウタだった。
父はへこへこと情けない態度だ。
「アメユキ?」
「にいに、部屋に女の子連れ込んでるの?」
ヒウタは冷たい汗を流した。
シュイロやカズサに掃除や家事の特訓を手伝ってもらった。
女性を部屋に招いた点では間違いではない。
ただ肯定するだけでは、この殺気を止めることはできない。
すなわち、ヒウタは終わってしまう。
でも今ここで料理したのも、部屋を掃除したのもヒウタ自身であることには違いない。
「俺自身で綺麗にしたからな。この部屋に来て物は少なかったし掃除もしてあったから。その綺麗な状態をアメユキたちに見せたかったし、アルバイトも忙しくないし、背伸びはもちろんしてるけど、これじゃだめか?」
ヒウタはアメユキをじっと見た。
すると、アメユキは目線を反らす。
「にいに、また遊びに来るから。美味しいご飯楽しみにするね」
どうやら認めてくれるらしい。
父は終始ぼけっとしていたが。
「今度はバイト代で欲しいもの買ってやるし食べさせてやるし、何よりいい彼女を紹介したい」
「家に連れ込むのはまだ早いと思う。また私と作戦考えるから、それからだから」
暴走しているとはいえ、優しい妹なのだ。
ヒウタのことを心配している。
いつかはアメユキにシュイロを会わせたい。
再び一人になった部屋で天井を見上げながら、ヒウタは思う。
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