規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

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3章 任された仕事が難題すぎる!12~23話

その8 ヒウタとカズサⅢ

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 高校生姿のシュイロ、ラフな格好のヒウタとカズサで集まっていた。
 ヒウタの部屋に三人いても狭いとは感じない。
 シュイロからいくつか報告があるらしい。
 突然の集まりだったため、よく冷えた麦茶とスーパーで買ったチョコクッキーしか用意できなかった。
「ヒウタ、初仕事よく頑張ったな」
 シュイロはヒウタの頭をポンと触れる。
 手の平からの熱が伝わって、ヒウタは照れる。
「任されたので」
「カズサさんのことも、スイーツパーティも。七つの大罪は大げさではなかっただろ?」
「え?」
 一瞬時が止まった。
 面倒な人と言えば、スイーツを買い尽くそうとしていた女性しかいない。
「七つの大罪、暴食が一人。また会うことになるだろうが」
「シュイロさんのこと知ってるって言ってたので、普通のお客様とは違うと思ってました」
「あいつが客と呼ばれるのは面白いな」
「あとシュイロさんに気に入られてて、大ファンでもあるって聞きました」
「あいつはすぐテキトーなこと言うからな。私がアイツの大ファンとか気に入っているとか何を言ってるんだか」
 シュイロはクッキーを口にした。
 そして、麦茶で喉を鳴らすのをじっと見てしまう。
「どうした、ヒウタ?」
「ぼうっとしてました。大学では小テストもあって疲れていたので」
「そうなのか、わざわざ時間取って申し訳ない」
 落ち込むシュイロ。
 小テストに関しては嘘ではないが、ぼうっとしていたのは偽りである。
 シュイロとカズサという異性二人が部屋に上がっている状況では、思考停止なんてできない。
 むしろ緊張のあまり、どうでもいいことまで気になって考えてしまいそうだ。
 掃除機はかけたが粘着シートで仕上げまでした方が良かったのか、とか。
 例えば、水回りはもっと時間をかけて綺麗にするべきだったのか、とか。
「ヒウタさん、私は今楽しいです。新しい恋を始めて。アプリは登録します、シュイロさんには許可を得たので報告ですが」
 カズサは朗らかな笑顔をする人だった。
 シュイロがマッチングアプリの利用を保留にしたのは正しかったらしい。
 カズサは初めて会ったときよりも豊かな表情の人で、きっとその明るさが元々のカズサだったのだろう。
「スイーツ本当に美味しかったです。今度、マッチングした人とスイーツ巡りするので楽しみ。等身大の恋って感じで、自分の歩幅で、安心するしわくわくする恋です」
 カズサの笑顔はシュイロとヒウタで作ったものだ。
 頑張って良かった。
 それでも少し寂しいのは、きっとヒウタが素直になれないからだ。
 つまりは、
「悔しいというか羨ましいというか。カズサさんが楽しそうで嬉しいですけど、僕自身は何も進んでなくてマッチングできてなくて。これから活動しますけど」
「焦らなくていいと思う。ヒウタさんは誰かに熱くなれる人だから、いい人いると思う」
「そうだな、それともう一つ伝えることがある。カズサさんにもアルバイトしてもらうことになった。とはいえ、イベントとか人手が足りない時期に日雇いではあるが」
「ヒウタさんがアルバイトするのもそういうことでしょ?」
「そういうこと?」
 カズサはヒウタに近づいて言う。
「あの人、放っておけないし。頑張ってるから手を貸してあげたいし。結構無茶する人で危うい感じ」
 シュイロには聞こえないように。
「僕も誘われたときはそんな感じでしたけど、今はカズサさんの笑顔見て嬉しいなって思ったので。アルバイト頑張るにはそれで十分過ぎるので」
「そういうところがシュイロさんに似てるんだよね、ヒウタさんって。世話焼きなところ」
 カズサはクッキーを丸ごと口に入れて数回噛むと飲み込んだ。
 ヒウタは麦茶を飲むと噎せたのか咳をする。
「どうした?」
 シュイロの心配する声。
 まさか普段寝ている賃貸に綺麗な女性を二人も上げてしまうとは。
 緊張して頭がオーバーヒート気味なのだ。
「あの、シュイロさん。この部屋って誰か呼んでいいですか?」
 この賃貸はシュイロが借りてヒウタが住む形である。
「周りに迷惑をかけずに、部屋を傷つけたりしないなら、わざわざ私に聞かなくてもいいぞ?」
「妹と父親が生活力チェックに来るそうで。不合格だとここに住むのは許してもらえないと思いますし、おそらくアルバイトも許してもらえないです」
 ヒウタが言った瞬間。
「あっ、本当か! それはピンチだ、どうしたらいいんだ、ヒウタがアルバイトをやめると苦しくなってしまうし、いやそれよりもヒウタにはいい出会いをしてほしいと思っているのに、……」
 シュイロは息継ぎもせずに、激しい様子で言う。
 ただ後半についてはより早口で全く聞こえないが。
 それでもシュイロがヒウタを必要としているのは分かるし、心配してくれるのも分かる。
「いつ? 私も部屋の掃除とか手伝った方がいいか。あとはいかに家事ができているかをアピールする策を考えなければ」
「でも家では家事に関して厳しいとは思いませんし、たぶん大丈夫ですよ?」
「ヒウタさん、家事出来ているんですか? ここでアルバイト辞職になったら、シュイロさんはイベントを企画したりする時間が無くなってしまいます。私、スイーツパーティ楽しかったので何とかしてほしい。それに、管理アルバイトをしているヒウタさんは充実してて楽しそうです、続けてほしいです」
 カズサにも強く言われてしまえば。
 最悪のケースを避けるために準備した方がいいのだろう、ヒウタは気合を入れた。
 こうして、ヒウタは初めての難題は無事に解決したのだった。

 
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