22 / 162
3章 任された仕事が難題すぎる!12~23話
その8 ヒウタとカズサⅢ
しおりを挟む
高校生姿のシュイロ、ラフな格好のヒウタとカズサで集まっていた。
ヒウタの部屋に三人いても狭いとは感じない。
シュイロからいくつか報告があるらしい。
突然の集まりだったため、よく冷えた麦茶とスーパーで買ったチョコクッキーしか用意できなかった。
「ヒウタ、初仕事よく頑張ったな」
シュイロはヒウタの頭をポンと触れる。
手の平からの熱が伝わって、ヒウタは照れる。
「任されたので」
「カズサさんのことも、スイーツパーティも。七つの大罪は大げさではなかっただろ?」
「え?」
一瞬時が止まった。
面倒な人と言えば、スイーツを買い尽くそうとしていた女性しかいない。
「七つの大罪、暴食が一人。また会うことになるだろうが」
「シュイロさんのこと知ってるって言ってたので、普通のお客様とは違うと思ってました」
「あいつが客と呼ばれるのは面白いな」
「あとシュイロさんに気に入られてて、大ファンでもあるって聞きました」
「あいつはすぐテキトーなこと言うからな。私がアイツの大ファンとか気に入っているとか何を言ってるんだか」
シュイロはクッキーを口にした。
そして、麦茶で喉を鳴らすのをじっと見てしまう。
「どうした、ヒウタ?」
「ぼうっとしてました。大学では小テストもあって疲れていたので」
「そうなのか、わざわざ時間取って申し訳ない」
落ち込むシュイロ。
小テストに関しては嘘ではないが、ぼうっとしていたのは偽りである。
シュイロとカズサという異性二人が部屋に上がっている状況では、思考停止なんてできない。
むしろ緊張のあまり、どうでもいいことまで気になって考えてしまいそうだ。
掃除機はかけたが粘着シートで仕上げまでした方が良かったのか、とか。
例えば、水回りはもっと時間をかけて綺麗にするべきだったのか、とか。
「ヒウタさん、私は今楽しいです。新しい恋を始めて。アプリは登録します、シュイロさんには許可を得たので報告ですが」
カズサは朗らかな笑顔をする人だった。
シュイロがマッチングアプリの利用を保留にしたのは正しかったらしい。
カズサは初めて会ったときよりも豊かな表情の人で、きっとその明るさが元々のカズサだったのだろう。
「スイーツ本当に美味しかったです。今度、マッチングした人とスイーツ巡りするので楽しみ。等身大の恋って感じで、自分の歩幅で、安心するしわくわくする恋です」
カズサの笑顔はシュイロとヒウタで作ったものだ。
頑張って良かった。
それでも少し寂しいのは、きっとヒウタが素直になれないからだ。
つまりは、
「悔しいというか羨ましいというか。カズサさんが楽しそうで嬉しいですけど、僕自身は何も進んでなくてマッチングできてなくて。これから活動しますけど」
「焦らなくていいと思う。ヒウタさんは誰かに熱くなれる人だから、いい人いると思う」
「そうだな、それともう一つ伝えることがある。カズサさんにもアルバイトしてもらうことになった。とはいえ、イベントとか人手が足りない時期に日雇いではあるが」
「ヒウタさんがアルバイトするのもそういうことでしょ?」
「そういうこと?」
カズサはヒウタに近づいて言う。
「あの人、放っておけないし。頑張ってるから手を貸してあげたいし。結構無茶する人で危うい感じ」
シュイロには聞こえないように。
「僕も誘われたときはそんな感じでしたけど、今はカズサさんの笑顔見て嬉しいなって思ったので。アルバイト頑張るにはそれで十分過ぎるので」
「そういうところがシュイロさんに似てるんだよね、ヒウタさんって。世話焼きなところ」
カズサはクッキーを丸ごと口に入れて数回噛むと飲み込んだ。
ヒウタは麦茶を飲むと噎せたのか咳をする。
「どうした?」
シュイロの心配する声。
まさか普段寝ている賃貸に綺麗な女性を二人も上げてしまうとは。
緊張して頭がオーバーヒート気味なのだ。
「あの、シュイロさん。この部屋って誰か呼んでいいですか?」
この賃貸はシュイロが借りてヒウタが住む形である。
「周りに迷惑をかけずに、部屋を傷つけたりしないなら、わざわざ私に聞かなくてもいいぞ?」
「妹と父親が生活力チェックに来るそうで。不合格だとここに住むのは許してもらえないと思いますし、おそらくアルバイトも許してもらえないです」
ヒウタが言った瞬間。
「あっ、本当か! それはピンチだ、どうしたらいいんだ、ヒウタがアルバイトをやめると苦しくなってしまうし、いやそれよりもヒウタにはいい出会いをしてほしいと思っているのに、……」
シュイロは息継ぎもせずに、激しい様子で言う。
ただ後半についてはより早口で全く聞こえないが。
それでもシュイロがヒウタを必要としているのは分かるし、心配してくれるのも分かる。
「いつ? 私も部屋の掃除とか手伝った方がいいか。あとはいかに家事ができているかをアピールする策を考えなければ」
「でも家では家事に関して厳しいとは思いませんし、たぶん大丈夫ですよ?」
「ヒウタさん、家事出来ているんですか? ここでアルバイト辞職になったら、シュイロさんはイベントを企画したりする時間が無くなってしまいます。私、スイーツパーティ楽しかったので何とかしてほしい。それに、管理アルバイトをしているヒウタさんは充実してて楽しそうです、続けてほしいです」
カズサにも強く言われてしまえば。
最悪のケースを避けるために準備した方がいいのだろう、ヒウタは気合を入れた。
こうして、ヒウタは初めての難題は無事に解決したのだった。
ヒウタの部屋に三人いても狭いとは感じない。
シュイロからいくつか報告があるらしい。
突然の集まりだったため、よく冷えた麦茶とスーパーで買ったチョコクッキーしか用意できなかった。
「ヒウタ、初仕事よく頑張ったな」
シュイロはヒウタの頭をポンと触れる。
手の平からの熱が伝わって、ヒウタは照れる。
「任されたので」
「カズサさんのことも、スイーツパーティも。七つの大罪は大げさではなかっただろ?」
「え?」
一瞬時が止まった。
面倒な人と言えば、スイーツを買い尽くそうとしていた女性しかいない。
「七つの大罪、暴食が一人。また会うことになるだろうが」
「シュイロさんのこと知ってるって言ってたので、普通のお客様とは違うと思ってました」
「あいつが客と呼ばれるのは面白いな」
「あとシュイロさんに気に入られてて、大ファンでもあるって聞きました」
「あいつはすぐテキトーなこと言うからな。私がアイツの大ファンとか気に入っているとか何を言ってるんだか」
シュイロはクッキーを口にした。
そして、麦茶で喉を鳴らすのをじっと見てしまう。
「どうした、ヒウタ?」
「ぼうっとしてました。大学では小テストもあって疲れていたので」
「そうなのか、わざわざ時間取って申し訳ない」
落ち込むシュイロ。
小テストに関しては嘘ではないが、ぼうっとしていたのは偽りである。
シュイロとカズサという異性二人が部屋に上がっている状況では、思考停止なんてできない。
むしろ緊張のあまり、どうでもいいことまで気になって考えてしまいそうだ。
掃除機はかけたが粘着シートで仕上げまでした方が良かったのか、とか。
例えば、水回りはもっと時間をかけて綺麗にするべきだったのか、とか。
「ヒウタさん、私は今楽しいです。新しい恋を始めて。アプリは登録します、シュイロさんには許可を得たので報告ですが」
カズサは朗らかな笑顔をする人だった。
シュイロがマッチングアプリの利用を保留にしたのは正しかったらしい。
カズサは初めて会ったときよりも豊かな表情の人で、きっとその明るさが元々のカズサだったのだろう。
「スイーツ本当に美味しかったです。今度、マッチングした人とスイーツ巡りするので楽しみ。等身大の恋って感じで、自分の歩幅で、安心するしわくわくする恋です」
カズサの笑顔はシュイロとヒウタで作ったものだ。
頑張って良かった。
それでも少し寂しいのは、きっとヒウタが素直になれないからだ。
つまりは、
「悔しいというか羨ましいというか。カズサさんが楽しそうで嬉しいですけど、僕自身は何も進んでなくてマッチングできてなくて。これから活動しますけど」
「焦らなくていいと思う。ヒウタさんは誰かに熱くなれる人だから、いい人いると思う」
「そうだな、それともう一つ伝えることがある。カズサさんにもアルバイトしてもらうことになった。とはいえ、イベントとか人手が足りない時期に日雇いではあるが」
「ヒウタさんがアルバイトするのもそういうことでしょ?」
「そういうこと?」
カズサはヒウタに近づいて言う。
「あの人、放っておけないし。頑張ってるから手を貸してあげたいし。結構無茶する人で危うい感じ」
シュイロには聞こえないように。
「僕も誘われたときはそんな感じでしたけど、今はカズサさんの笑顔見て嬉しいなって思ったので。アルバイト頑張るにはそれで十分過ぎるので」
「そういうところがシュイロさんに似てるんだよね、ヒウタさんって。世話焼きなところ」
カズサはクッキーを丸ごと口に入れて数回噛むと飲み込んだ。
ヒウタは麦茶を飲むと噎せたのか咳をする。
「どうした?」
シュイロの心配する声。
まさか普段寝ている賃貸に綺麗な女性を二人も上げてしまうとは。
緊張して頭がオーバーヒート気味なのだ。
「あの、シュイロさん。この部屋って誰か呼んでいいですか?」
この賃貸はシュイロが借りてヒウタが住む形である。
「周りに迷惑をかけずに、部屋を傷つけたりしないなら、わざわざ私に聞かなくてもいいぞ?」
「妹と父親が生活力チェックに来るそうで。不合格だとここに住むのは許してもらえないと思いますし、おそらくアルバイトも許してもらえないです」
ヒウタが言った瞬間。
「あっ、本当か! それはピンチだ、どうしたらいいんだ、ヒウタがアルバイトをやめると苦しくなってしまうし、いやそれよりもヒウタにはいい出会いをしてほしいと思っているのに、……」
シュイロは息継ぎもせずに、激しい様子で言う。
ただ後半についてはより早口で全く聞こえないが。
それでもシュイロがヒウタを必要としているのは分かるし、心配してくれるのも分かる。
「いつ? 私も部屋の掃除とか手伝った方がいいか。あとはいかに家事ができているかをアピールする策を考えなければ」
「でも家では家事に関して厳しいとは思いませんし、たぶん大丈夫ですよ?」
「ヒウタさん、家事出来ているんですか? ここでアルバイト辞職になったら、シュイロさんはイベントを企画したりする時間が無くなってしまいます。私、スイーツパーティ楽しかったので何とかしてほしい。それに、管理アルバイトをしているヒウタさんは充実してて楽しそうです、続けてほしいです」
カズサにも強く言われてしまえば。
最悪のケースを避けるために準備した方がいいのだろう、ヒウタは気合を入れた。
こうして、ヒウタは初めての難題は無事に解決したのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。


冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】


貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる