規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

文字の大きさ
上 下
19 / 162
3章 任された仕事が難題すぎる!12~23話

その6 ヒウタと準備

しおりを挟む
 建物内の広い会場にて。
 十数人でアプリのイベントのための準備をしている。
「ということでスイーツパーティだ」
 ヒウタはシュイロと高めのテーブルを配置していた。
「少しはカズサさんにも働いてもらう。大赤字だからな」
 ヒウタはカズサを見て笑う。
 ヒウタがカズサのためにお試し期間を設けるよう説得したところ、シュイロたちの監視が弱い状況で会員ではないカズサがいるのは良くないらしい。
 ヒウタとカズサはシュイロのお手伝いだ。
「カズサさんのことでヒウタがあまりにも熱心だったから」
 つまり、監視さえできればいいという判断だ。
 そこで、スイーツパーティという出会いの場を設けることで、お試しの役割を果たそうという考えである。
 結果的に大赤字であるのがシュイロらしさだ。
「まさかここまでしてくれるなんて。驚きます」
「カズサさんのことは所詮きっかけだ。定期的にイベントを打っていたからな。期間に関して、イベント自体は二週間、会場は一週間だな。平日は夕方以降のみで入場料無し、土日は入場料が必要、みたいな感じ」
 シュイロの経営戦略は謎が多いが、利用者に優しくしているからか、黒字であることがあるのか心配だった。
 給料を減らしてほしいというのは、シュイロに失礼だろうが。
「普段はスペースを貸してるからな。私たちの建物だから費用は抑えられてるぞ」
 表情を変えずに言う、シュイロ。
「「何者?」」
 ヒウタとカズサの言葉が丁度重なるのだった。
「イベントにはたまに顔を出そうと思うのだが。ヒウタには、案内やパトロールを頼んでいる人たちと仲良くしてほしい。ヒウタにはクレーム対応や面倒な客を頼みたいんだが……」
 シュイロは申し訳なさそうにヒウタを見る。
「一週間ですか?」
「土日だな。平日なら人手が足りるだろうから」
「分かりました。そんなに大変ですか?」
「なにも起きなければ必要ないがな」
「大げさに七つの大罪って言っていた人たちですか?」
「それもあるが、イベントというものはいろいろあるからな」
 シュイロの表情には苦労が見えた。
 テーブルの配置を終えると、ごみ箱等も準備していく。
 配置が終わると掃除機を使って掃除し、床を雑巾がけしたりテーブルを拭いたりする。
 ようやく終わると、ヒウタは配置した椅子に座った。
「なかなか疲れた」
「ありがと、ヒウタ。それともう疲れ果ててしまったのか?」
「こんなアナログな方法とは思わなかった。ハイテクロボットは?」
「開発者とまだ仲直りできてないからな」
 どこか遠くを見るシュイロ。
 そんなどうでもいい決め顔はいいから、さっさと仲直りしてもらいたいものだ。
「シュイロさんって今までもこんなに働いていたんですか?」
 カズサが聞く。
「現場で動かないと分からないことだらけだからな。忙しいから人手増やして、その結果ヒウタを雇用することにしたんだ。私、高校を中退してたから、今年から女子高生なるものになって。さらに忙しくなったんだが」
「友人もシュイロさんのアプリを評価していて。どうして私が保留にされたのか分かりました。でも、こんな私にここまでしてくれるのは分かりません」
「悩んでいるのが分かったからな。なんていうか、カズサさんは幸せになったらいいと思うんだ。勝手にこんな私が、なんて言ってるが、恋をして悩んでるだけだ。いろんな人に会えばきっと幸せを探せる」
「まだ失恋を諦められない気がして。今まで仲良かったしよく話してて。魅力をたくさん知ってて。今の彼女といろいろあって付き合ってるのは分かるけど、彼女さんにいろんな魅力があったと思うけど、私の方が仲良しの期間が長くて、なのに彼女の力であの人との連絡までできなくされて。急に何もできなくなってたから、自暴自棄になってた」
 カズサの表情は澄んでいた気がした。
 ヒウタもシュイロも、カズサの言葉を一言も溢さないように慎重に聞いていた。
「私のこと、助けてほしい。この痛みを誰かに分けてでも助けてほしくて、そのためにはなんでもしたくて、忘れるために数をこなせばいいと思ってた。けど、なんだかな」
 カズサは瞳に涙を浮かべて笑う。
「なんか救われてたみたい、ヒウタさんとシュイロさんに。こんなにいい人と出会えたなら、楽しい恋がここにはある気がするから」
「私のマッチングアプリは楽しい恋愛のための場所だ。そのために私が頑張っているからな」
「大赤字でイベントして楽しい恋愛の場所とやらは維持できるんですか?」
「な? ちょっとくらい大丈夫だが?」
 シュイロはひどく動揺する。
 ヒウタのような雇われた身としては、目の前で経営者があたふたしているのは心配になってしまう。
「変な人たち」
 カズサはシュイロとヒウタがからかい合って互いに動揺するやり取りを見守っていた。
 その様子が微笑ましい。
「まだ悩んでいるけど、ホッとしたかも」
 カズサが言う。
 この広い会場にゆっくりとした、しかし騒がしい時間が流れるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...