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3章 任された仕事が難題すぎる!12~23話
エピソード2 忘れたくて
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カズサはアプリをインストールして手続きを進める。
名前、日夜和佐。
生年月日、年齢。八月七日、二十歳。
身分。大学三年生。
登録した理由。出会いを求めて。
趣味。
「ないかも。私って、つまらない人?」
無記入では進めない。
読書? は受けがいいのか。
就活ならまだしも恋活では退屈だろうか。
ドラマは見る方、歌は聞くに入るだろうか、‥‥‥話題になればチェックはする。
「映画は見ないかというよりは見る、……けど」
スイーツとか、たくさん食べたときは運動する。
スイーツとランニング?
趣味にランニングはストイックな人とマッチングしてしまうかも。
「趣味は、スイーツ、ドラマ鑑賞にしよう」
平日の過ごし方。勉強、アルバイト。
休日の過ごし方。勉強、アルバイト、友人と一緒か一人でスイーツをたくさん食べる。
一言。
「自由に書くって難しいな。一緒にドラマを語ったり、スイーツ食べたりしたいです。ケーキとか饅頭とかいろいろ好きです。うーん、これでいいか」
手続きを済ませるとメールが届いた。
友人の言っていたマッチングアプリの面接らしい。
面接に呼ばれて向かう。
おしゃれなビルの一角にある怪しげな場所。
その店に入る。
指示された場所は店内にある扉の向こうだった。
アニメ調の人物がモニタに映る。
スピーカーから聞こえる声は、優しい印象だが。
声の主はシュイロというらしい。
アピールポイントや求める相手の特徴、アプリを始める意味を聞かれた。
安全のためらしいが煩わしい。
これで終わりか、とカズサが疲れと気持ちの緩みを見せた。
「アプリの使用を保留にさせてもらう。もし許可できない場合、契約料金は電子マネーの形で返金する」
期待外れの言葉が聞こえると、息苦しさが胸や喉を覆う。
一人でも多く安全に出会いたい、というカズサの気持ちに嘘はない。
どうして保留なのかはよく分からなかった。
面接を終えて、面接があったビル内のスイーツの店へ。
『なんか面接の結果、保留らしい。私はダメみたい』
会話アプリで紹介してくれたキリに連絡する。
店で買ったココアにストローを挿す。
スマホから音がした。
『他にも出会いの場はあるから』
キリの心配そうな表情が浮かぶ。
目の前にあるココアとチーズケーキを撮って送ることにした。
『せっかく来たから美味しいもの食べないと。自棄食いだよ』
『私と合コン行く? カズサならモテモテ。けど私のタイプの人には手を出さないでね』
ホッとしてつい口角が上がる。
『また競い合う? あのときみたいに。引き分けみたいな二人とも負けみたいな結果になったから』
キリからの返信に時間が掛かった。
スマホを開いたまま、ケーキを食べ進める。
周りはカップルや夫婦、友達で来ている。
目が熱いのはきっと。
「私、なんでこんなことで泣きそうになって」
溜め息をひとつ。
『大丈夫、運命の人きっといる!』
キリからの返信が遅いのは、困っていたからだ。
いつまでも失恋を引きずっている。
面倒な人、それは相手にされなくて当然だ。
いや。
相手にはされてたと思いたい。
少しは意識してくれていたと思いたい。
「君が運命の人でいて欲しかった。君の笑い方も、優しいところも、友達とからかい合う姿も覚えちゃってるよ」
忘れたい。
どうにかして忘れたい。
想い人に彼女がいて。
その彼女よりも先に仲良くなって。
友人とアピール合戦して。
後から来た人に負けた。
まだどこかで彼女になれるチャンスがあったかもしれないと思ってしまう。
無意味な期待がずっしりと存在感を出す。
より忘れられない、なのに。
「君をたくさん知っている異性のただの一人にしないと、なのに。面接も通らなくて、どうしたらいいのかな」
スイーツの店を出た。
冷房の効いたビルから出る。
外は想像以上に暑い。
これから夏が来るらしい。
こんなにもボロボロな状態で、夏を迎えたくないのだ。
名前、日夜和佐。
生年月日、年齢。八月七日、二十歳。
身分。大学三年生。
登録した理由。出会いを求めて。
趣味。
「ないかも。私って、つまらない人?」
無記入では進めない。
読書? は受けがいいのか。
就活ならまだしも恋活では退屈だろうか。
ドラマは見る方、歌は聞くに入るだろうか、‥‥‥話題になればチェックはする。
「映画は見ないかというよりは見る、……けど」
スイーツとか、たくさん食べたときは運動する。
スイーツとランニング?
趣味にランニングはストイックな人とマッチングしてしまうかも。
「趣味は、スイーツ、ドラマ鑑賞にしよう」
平日の過ごし方。勉強、アルバイト。
休日の過ごし方。勉強、アルバイト、友人と一緒か一人でスイーツをたくさん食べる。
一言。
「自由に書くって難しいな。一緒にドラマを語ったり、スイーツ食べたりしたいです。ケーキとか饅頭とかいろいろ好きです。うーん、これでいいか」
手続きを済ませるとメールが届いた。
友人の言っていたマッチングアプリの面接らしい。
面接に呼ばれて向かう。
おしゃれなビルの一角にある怪しげな場所。
その店に入る。
指示された場所は店内にある扉の向こうだった。
アニメ調の人物がモニタに映る。
スピーカーから聞こえる声は、優しい印象だが。
声の主はシュイロというらしい。
アピールポイントや求める相手の特徴、アプリを始める意味を聞かれた。
安全のためらしいが煩わしい。
これで終わりか、とカズサが疲れと気持ちの緩みを見せた。
「アプリの使用を保留にさせてもらう。もし許可できない場合、契約料金は電子マネーの形で返金する」
期待外れの言葉が聞こえると、息苦しさが胸や喉を覆う。
一人でも多く安全に出会いたい、というカズサの気持ちに嘘はない。
どうして保留なのかはよく分からなかった。
面接を終えて、面接があったビル内のスイーツの店へ。
『なんか面接の結果、保留らしい。私はダメみたい』
会話アプリで紹介してくれたキリに連絡する。
店で買ったココアにストローを挿す。
スマホから音がした。
『他にも出会いの場はあるから』
キリの心配そうな表情が浮かぶ。
目の前にあるココアとチーズケーキを撮って送ることにした。
『せっかく来たから美味しいもの食べないと。自棄食いだよ』
『私と合コン行く? カズサならモテモテ。けど私のタイプの人には手を出さないでね』
ホッとしてつい口角が上がる。
『また競い合う? あのときみたいに。引き分けみたいな二人とも負けみたいな結果になったから』
キリからの返信に時間が掛かった。
スマホを開いたまま、ケーキを食べ進める。
周りはカップルや夫婦、友達で来ている。
目が熱いのはきっと。
「私、なんでこんなことで泣きそうになって」
溜め息をひとつ。
『大丈夫、運命の人きっといる!』
キリからの返信が遅いのは、困っていたからだ。
いつまでも失恋を引きずっている。
面倒な人、それは相手にされなくて当然だ。
いや。
相手にはされてたと思いたい。
少しは意識してくれていたと思いたい。
「君が運命の人でいて欲しかった。君の笑い方も、優しいところも、友達とからかい合う姿も覚えちゃってるよ」
忘れたい。
どうにかして忘れたい。
想い人に彼女がいて。
その彼女よりも先に仲良くなって。
友人とアピール合戦して。
後から来た人に負けた。
まだどこかで彼女になれるチャンスがあったかもしれないと思ってしまう。
無意味な期待がずっしりと存在感を出す。
より忘れられない、なのに。
「君をたくさん知っている異性のただの一人にしないと、なのに。面接も通らなくて、どうしたらいいのかな」
スイーツの店を出た。
冷房の効いたビルから出る。
外は想像以上に暑い。
これから夏が来るらしい。
こんなにもボロボロな状態で、夏を迎えたくないのだ。
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