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3章 任された仕事が難題すぎる!12~23話
エピソード1 誠実とは?
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誠実とは?
その女性は自問する。
彼女持ちの男性に恋をするのは不誠実だ。
それは、略奪は盗みの対象が人に、人生になっているだけで、窃盗と変わらない気がする。
しかし、好きな男性に彼女ができた場合はどうだろう?
それも間違いなく彼女よりも先に恋したときは。
それも仲良くなったのはとっくの昔で、突如現れた女性に負けてしまったときは。
女性は迷った。
迷うことは難問に取り組むのなら仕方ない。
ただ残酷なことに世の理は容赦がなかった。
好きな人との繋がりだった会話アプリが送信できなくなったのだ。
彼女の手によって連絡先を消された、なんて情報だけは人づてに伝わって。
彼女の権利を行使したと捉えるべきだ。
重い彼女の暴挙だとするのは、真剣な男性の意見ではないはず。
「諦められないのにどうしよう」
居酒屋でビールを一口。
女性の名前は、日夜和佐。
ウェーブを効かせた髪がよく跳ねている。
二重で綺麗な瞳の瞼が震えていた。
高校からの友人と飲んで失恋を乗り越える計画だ。
第一に、飲んでいるアルコールは普段は絶対頼まないビール。
麦の苦味が泡からも感じて辛味を偽装した炭酸が喉を焼く。
美味しくはない、女性は思う。
スプレーから出る細かい消毒液の霧をつい吸ったような感覚が苦手だと。
頭が重くてそれでも飛べそうな。
「キリちゃんも好きだったじゃん?」
「うーん、好きからは外れたよ。けど告白されたらコロッと行っちゃうし、都合のいい関係でもいいかなって思うかも。流石に彼氏できたら断るけど」
彼女は、花宮希理。
ボブカットに赤色のインナーカラー。
耳に引っ掛けた髪がその魅力を引き立たせている。
カズサもキリも体の輪郭が定まらない伸び切った印象の単色の服で。
それは二人の空間だからこそ油断しているのだ。
「けどさ。彼氏できる予定ある?」
「合コン行った。意外と楽しくて、サラダ盛りつけてたら結構モテたから」
「キリちゃんだったら負けたで済んだのに。仕方なかったのに」
キリは胸が鳴ってぎゅっと詰まるように感じた。
窮屈にも感じる思いを解放したくて、キリはカズサの頭をわしゃわしゃと触った。
「よしよしするよ。今日はいくらでも付き合うから」
キリはカズサにとって高校進学後で初めてできた友人だった。
一緒にアプローチして一喜一憂して。
牽制し合って慰め合って。
二人でいることで騒がしい青春を越えてきた。
「応援されない恋だったのかな。釣り合わない恋で。絶対好きばれしてたよね」
カズサはビールを一気に。
しかし刺激がきつかったのかあまり減らない。
誠実に執着するのは、周りから認められない恋は馬鹿にされるからだ。
不誠実な恋はださいらしい、なんなら汚いらしい。
集団に似合わない認定される恋は、叶っていないなら摘み取られ、付き合っているなら剥がされる。負け一色の恋なのだ。
「私含めて二人、もしくは三人以上に積極的なアプローチ受けて。選ぶ側って人生楽しそう。選ばれる人よりも恋人になったとき偉いんだと思うし。もしかしたら付き合っても気を遣って私は魅力的だってアピールしなきゃいけないのかなって思ったら、その恋やめて合コンしようって」
「優しくて誠実なあの人が偉ぶるなんてないと思うの。私もキリちゃんみたいに諦めたい」
カズサは軟骨の唐揚げを頬張る。
その様子を一度見て、キリも食べる。
塩が効いた衣がしっかりした食感とよく合う。
軟骨周りに控えめに感じる肉の脂がビールを薦める。
「いろんな男を知るとか。合コンかマッチングアプリ?」
「私は合コンですら怖いのに」
枝豆を頼んで。
「安くて安心で楽しいマッチングアプリ知ってる? 入会するときに面接があって面倒だけど。しかも建物まで行かなきゃで」
「安心できるなら考えてみたい」
カズサはキリといることで安心感を覚えていた。
高校に、あの頃の青春に戻った感覚。
好きな人との繋がりがなくなってしまったことが、進んでしまった時間を突き付ける。
「私たち、これからも会う?」
キリがビールを飲み切る。
「そういえば、大学生になってから会ってなかった? 意外だし少し怖い。仲良かったのにね」
カズサもビールを飲み切った。
もう一杯頼んで。
居酒屋の香ばしい煙みたいな、ふわふわした意識で帰路へ。
カズサは家に着くと、酔った感覚が怖くなって水をコップ一杯。
それからアプリをインストールする。
「私、課金するの初めてだ」
知らない人とプライベートも。
男性を求めて行動するのも。
今更になって怖気づく理由が次々と。
酔い潰れなかった。辛い感情が胸の中に沈んでいる。
「私、進まなきゃ」
カズサは繋がりが脱線してしまった恋を忘れるべく出会いを求めることにした。
その女性は自問する。
彼女持ちの男性に恋をするのは不誠実だ。
それは、略奪は盗みの対象が人に、人生になっているだけで、窃盗と変わらない気がする。
しかし、好きな男性に彼女ができた場合はどうだろう?
それも間違いなく彼女よりも先に恋したときは。
それも仲良くなったのはとっくの昔で、突如現れた女性に負けてしまったときは。
女性は迷った。
迷うことは難問に取り組むのなら仕方ない。
ただ残酷なことに世の理は容赦がなかった。
好きな人との繋がりだった会話アプリが送信できなくなったのだ。
彼女の手によって連絡先を消された、なんて情報だけは人づてに伝わって。
彼女の権利を行使したと捉えるべきだ。
重い彼女の暴挙だとするのは、真剣な男性の意見ではないはず。
「諦められないのにどうしよう」
居酒屋でビールを一口。
女性の名前は、日夜和佐。
ウェーブを効かせた髪がよく跳ねている。
二重で綺麗な瞳の瞼が震えていた。
高校からの友人と飲んで失恋を乗り越える計画だ。
第一に、飲んでいるアルコールは普段は絶対頼まないビール。
麦の苦味が泡からも感じて辛味を偽装した炭酸が喉を焼く。
美味しくはない、女性は思う。
スプレーから出る細かい消毒液の霧をつい吸ったような感覚が苦手だと。
頭が重くてそれでも飛べそうな。
「キリちゃんも好きだったじゃん?」
「うーん、好きからは外れたよ。けど告白されたらコロッと行っちゃうし、都合のいい関係でもいいかなって思うかも。流石に彼氏できたら断るけど」
彼女は、花宮希理。
ボブカットに赤色のインナーカラー。
耳に引っ掛けた髪がその魅力を引き立たせている。
カズサもキリも体の輪郭が定まらない伸び切った印象の単色の服で。
それは二人の空間だからこそ油断しているのだ。
「けどさ。彼氏できる予定ある?」
「合コン行った。意外と楽しくて、サラダ盛りつけてたら結構モテたから」
「キリちゃんだったら負けたで済んだのに。仕方なかったのに」
キリは胸が鳴ってぎゅっと詰まるように感じた。
窮屈にも感じる思いを解放したくて、キリはカズサの頭をわしゃわしゃと触った。
「よしよしするよ。今日はいくらでも付き合うから」
キリはカズサにとって高校進学後で初めてできた友人だった。
一緒にアプローチして一喜一憂して。
牽制し合って慰め合って。
二人でいることで騒がしい青春を越えてきた。
「応援されない恋だったのかな。釣り合わない恋で。絶対好きばれしてたよね」
カズサはビールを一気に。
しかし刺激がきつかったのかあまり減らない。
誠実に執着するのは、周りから認められない恋は馬鹿にされるからだ。
不誠実な恋はださいらしい、なんなら汚いらしい。
集団に似合わない認定される恋は、叶っていないなら摘み取られ、付き合っているなら剥がされる。負け一色の恋なのだ。
「私含めて二人、もしくは三人以上に積極的なアプローチ受けて。選ぶ側って人生楽しそう。選ばれる人よりも恋人になったとき偉いんだと思うし。もしかしたら付き合っても気を遣って私は魅力的だってアピールしなきゃいけないのかなって思ったら、その恋やめて合コンしようって」
「優しくて誠実なあの人が偉ぶるなんてないと思うの。私もキリちゃんみたいに諦めたい」
カズサは軟骨の唐揚げを頬張る。
その様子を一度見て、キリも食べる。
塩が効いた衣がしっかりした食感とよく合う。
軟骨周りに控えめに感じる肉の脂がビールを薦める。
「いろんな男を知るとか。合コンかマッチングアプリ?」
「私は合コンですら怖いのに」
枝豆を頼んで。
「安くて安心で楽しいマッチングアプリ知ってる? 入会するときに面接があって面倒だけど。しかも建物まで行かなきゃで」
「安心できるなら考えてみたい」
カズサはキリといることで安心感を覚えていた。
高校に、あの頃の青春に戻った感覚。
好きな人との繋がりがなくなってしまったことが、進んでしまった時間を突き付ける。
「私たち、これからも会う?」
キリがビールを飲み切る。
「そういえば、大学生になってから会ってなかった? 意外だし少し怖い。仲良かったのにね」
カズサもビールを飲み切った。
もう一杯頼んで。
居酒屋の香ばしい煙みたいな、ふわふわした意識で帰路へ。
カズサは家に着くと、酔った感覚が怖くなって水をコップ一杯。
それからアプリをインストールする。
「私、課金するの初めてだ」
知らない人とプライベートも。
男性を求めて行動するのも。
今更になって怖気づく理由が次々と。
酔い潰れなかった。辛い感情が胸の中に沈んでいる。
「私、進まなきゃ」
カズサは繋がりが脱線してしまった恋を忘れるべく出会いを求めることにした。
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