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2章 初めてのマッチングが無謀すぎる!6~11話
その5 ヒウタと試食会
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十分もしないうちに料理屋に着いた。
車の運転手が店主らしい。
店に入ると、可憐で上品な女性が待つ。
ヒウタとシュイロは堀こたつ式の座敷に案内された。
完全個室らしく、壁に飾られた絵画が高級感を演出している。
「綺麗で格好いい絵だ」
ヒウタが言うと、案内の女性が自分の顔を手で隠す。
「それ、私のです」
「すご」
ヒウタはつい。
女性は照れた様子。
「失礼します!」
女性は去り際に幼げのある焦りを見せて。
「意外と人たらしかもしれないな」
「すごいいい絵だったので」
「素直だな、ほんと」
テーブルに温かいお茶が運ばれた。
厨房服に整えた店主だ。
「シュイロさん、本日は打ち合わせに来てくださりありがとうございます。今日は女性二人と聞いていましたが……」
「あー、ちょっと間に合わなくてな。ヒウタの女体化が」
「え?」
「せめて女装くらいはしてもいいと思った」
「そうなんですか?」
「冗談だぞ? まあ最近忙しいみたいだからな」
シュイロは湯呑みに口を付ける。
すると、急いで離して舌を少し出していた。
どうして女性の舌はあまり見てはいけない気がするのか?
ヒウタは視線を反らした。
「失礼しました、大変熱いです。冷たい水をお持ちします」
店主は一度去った。
「なんて、本当は来る女性とは喧嘩してて。まあ全部というか十二割くらい向こうのせいなんだが」
「だから僕を誘って、一連の手伝いですか?」
「ヒウタとメッセージのやり取りをしてきっといい奴だって思った。規約違反してる女が言うことではないが」
手伝ってくれる人が必要だったから呼んだのは全く理解できないわけではないが、わざわざマッチングアプリで探す必要はないし男である必要はない。
それでもシュイロの説明が嘘だと思えない。
「水と、学生用と子ども食堂用のメニューです。どちらもドリンク飲み放題が付いてて、学生用はご飯大盛無料です。今回ドリンクはウーロン茶、ご飯は普通盛りです」
ヒウタはシュイロの目つきが変わるのを感じた。
気迫が違う。これがシュイロの本気の目だと。
「ハンバーグ、唐揚げ、キャベツ盛り、味噌汁、ご飯。学生では量が多めで、子ども食堂ではひじき煮か枝豆サラダが選べる。何食出せる?」
「子ども食堂は平日十食、休日は十五食が限界。学生も同程度」
「そうか。学生はもう少し値段も調整して出せる数増やしてもいいだろうな。子ども食堂は他の料理屋にも働きかけているからそのままで」
店主はメモを取っている。
「シュイロさん、学生は学生証見せると頼めるメニューですよね? 子ども食堂はなんですか?」
「小学生まではタダで出す。今日はそのときのメニューを試食をしてもらおうと思ってな」
「シュイロさん何者ですか?」
「まだ内緒だ。食べるぞ、ヒウタ」
和風ソースでさっぱり食べられるハンバーグ。噛むほど肉汁が伝る唐揚げ。
ご飯につい箸が伸びる。
味噌汁は、鰹だしが優しい旨味を演出するだけでなく、長ねぎの酸味と油揚げの存在感が一品としての完成度を高める。
「美味しい!」
「ということだ、店主よ。彼の笑顔を見ると私たちが作りたいものが明確になるし、この時点で達成感もあるだろ?」
「もちろん」
食事を終えて。
駅まで店主に送ってもらった。
車に乗る前に絵画を手掛けたという女性が手を振っていたので、ヒウタとシュイロは応えた。
車にて。
「店主はなかなか世話焼きで。絵画を買ったときにお金に困っていることを知ってバイトとして雇い、毎回賄いを出している」
「子ども食堂のために寄付する方もなかなかですが?」
「なにこっち見てるヒウタ。寄付して悪いか? 実質昼飯は私の奢りみたいなものだぞ、感謝しろ!」
「シュイロさんって優しすぎますね。いい人って分かって良かったです。今日、シュイロさんといて楽しくて新鮮で」
「まだまだ手伝ってもらうし、働いてもらうぞ!」
「楽しみです」
車は次の目的地へと。
「この先も私の手伝いをしてくれるといいな」
シュイロの言葉は、外の景色ばかり眺めるヒウタには届かない。
駐車を終えて。
「って、休業中の猫カフェじゃないですか! 今日来る予定だった」
「だから来てるが?」
「スマホで調べても休業だって」
「休業だから猫ちゃんに会いに行けないって決めつけてたのか」
「……どういうことですか?」
「知らない、てきとう言った」
シュイロは笑う。
ヒウタはシュイロに合わせて隣を歩いた。
車の運転手が店主らしい。
店に入ると、可憐で上品な女性が待つ。
ヒウタとシュイロは堀こたつ式の座敷に案内された。
完全個室らしく、壁に飾られた絵画が高級感を演出している。
「綺麗で格好いい絵だ」
ヒウタが言うと、案内の女性が自分の顔を手で隠す。
「それ、私のです」
「すご」
ヒウタはつい。
女性は照れた様子。
「失礼します!」
女性は去り際に幼げのある焦りを見せて。
「意外と人たらしかもしれないな」
「すごいいい絵だったので」
「素直だな、ほんと」
テーブルに温かいお茶が運ばれた。
厨房服に整えた店主だ。
「シュイロさん、本日は打ち合わせに来てくださりありがとうございます。今日は女性二人と聞いていましたが……」
「あー、ちょっと間に合わなくてな。ヒウタの女体化が」
「え?」
「せめて女装くらいはしてもいいと思った」
「そうなんですか?」
「冗談だぞ? まあ最近忙しいみたいだからな」
シュイロは湯呑みに口を付ける。
すると、急いで離して舌を少し出していた。
どうして女性の舌はあまり見てはいけない気がするのか?
ヒウタは視線を反らした。
「失礼しました、大変熱いです。冷たい水をお持ちします」
店主は一度去った。
「なんて、本当は来る女性とは喧嘩してて。まあ全部というか十二割くらい向こうのせいなんだが」
「だから僕を誘って、一連の手伝いですか?」
「ヒウタとメッセージのやり取りをしてきっといい奴だって思った。規約違反してる女が言うことではないが」
手伝ってくれる人が必要だったから呼んだのは全く理解できないわけではないが、わざわざマッチングアプリで探す必要はないし男である必要はない。
それでもシュイロの説明が嘘だと思えない。
「水と、学生用と子ども食堂用のメニューです。どちらもドリンク飲み放題が付いてて、学生用はご飯大盛無料です。今回ドリンクはウーロン茶、ご飯は普通盛りです」
ヒウタはシュイロの目つきが変わるのを感じた。
気迫が違う。これがシュイロの本気の目だと。
「ハンバーグ、唐揚げ、キャベツ盛り、味噌汁、ご飯。学生では量が多めで、子ども食堂ではひじき煮か枝豆サラダが選べる。何食出せる?」
「子ども食堂は平日十食、休日は十五食が限界。学生も同程度」
「そうか。学生はもう少し値段も調整して出せる数増やしてもいいだろうな。子ども食堂は他の料理屋にも働きかけているからそのままで」
店主はメモを取っている。
「シュイロさん、学生は学生証見せると頼めるメニューですよね? 子ども食堂はなんですか?」
「小学生まではタダで出す。今日はそのときのメニューを試食をしてもらおうと思ってな」
「シュイロさん何者ですか?」
「まだ内緒だ。食べるぞ、ヒウタ」
和風ソースでさっぱり食べられるハンバーグ。噛むほど肉汁が伝る唐揚げ。
ご飯につい箸が伸びる。
味噌汁は、鰹だしが優しい旨味を演出するだけでなく、長ねぎの酸味と油揚げの存在感が一品としての完成度を高める。
「美味しい!」
「ということだ、店主よ。彼の笑顔を見ると私たちが作りたいものが明確になるし、この時点で達成感もあるだろ?」
「もちろん」
食事を終えて。
駅まで店主に送ってもらった。
車に乗る前に絵画を手掛けたという女性が手を振っていたので、ヒウタとシュイロは応えた。
車にて。
「店主はなかなか世話焼きで。絵画を買ったときにお金に困っていることを知ってバイトとして雇い、毎回賄いを出している」
「子ども食堂のために寄付する方もなかなかですが?」
「なにこっち見てるヒウタ。寄付して悪いか? 実質昼飯は私の奢りみたいなものだぞ、感謝しろ!」
「シュイロさんって優しすぎますね。いい人って分かって良かったです。今日、シュイロさんといて楽しくて新鮮で」
「まだまだ手伝ってもらうし、働いてもらうぞ!」
「楽しみです」
車は次の目的地へと。
「この先も私の手伝いをしてくれるといいな」
シュイロの言葉は、外の景色ばかり眺めるヒウタには届かない。
駐車を終えて。
「って、休業中の猫カフェじゃないですか! 今日来る予定だった」
「だから来てるが?」
「スマホで調べても休業だって」
「休業だから猫ちゃんに会いに行けないって決めつけてたのか」
「……どういうことですか?」
「知らない、てきとう言った」
シュイロは笑う。
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