9 / 162
2章 初めてのマッチングが無謀すぎる!6~11話
その4 ヒウタとお手伝い
しおりを挟む
デートと言えば、体験させてもらう立場になるだろう。
なんて考え方は古いのだろうか?
ヒウタは扇風機が回る個人経営の本屋で、子どもたちに向けて読み聞かせをしていた。
ここへ連れてきたシュイロに関しては、少し離れた場所で本の紹介をしている。
本の内容に関する紹介だけでなく、本の作り方なども説明している。
空間的な販売形態は、電子書籍を購入するときには味わえないし、いろんなジャンルの本を眺めることで更なる興味にも繋がる。
ヒウタが本を読み終えると、一人の男の子を除いて親のもとへ駆けていった。
「ねえねえおじさん。みんなハッピーなハッピーエンド?」
小さな男の子が足を揃えて絨毯に座り込む。飴を舐めながら、興味深そうにヒウタを見つめる。
おじさん呼びはそれなりにダメージが残るが、小学校に入学していない子どもからすれば大学生はおじさんだろう。
さん付けであるだけまし、……だろうか?
ヒウタは諦めて飲み込んだ。この場ではおじさん、その通りだと。
「ハッピーエンドだよ、大丈夫」
「やったー。僕もヒーローになるの」
男の子は立ち上がって、父親と母親がいるブースへ。
シュイロと男の子の両親の話しは盛り上がっていた。
何の内容かは聞こえない。
男の子とその親が本屋から帰って。
本屋の店長が缶コーヒーと大きめのクッキーを持ってきた。
「シュイロさんお疲れ様です。これ、最近できたフランス菓子の店で買ったものです。もちろん、彼の分も」
「いいんですか?」
「もちろんです。シュイロさんにはいつも助けられているので」
「温かい人情に触れられる本屋を助けないわけにはいかないだろ。ヒウタ、どうだ?」
「どう、とは?」
「デートでお手伝いさせてしまって」
経験としては面白いかもしれないが、初対面のデートで子どもたちに読み聞かせとはなかなか攻めている。
それでも文句が零れないのは、シュイロが持つ何とも言えない雰囲気からか。
「僕は楽しかったと思いますよ。なかなか経験できないので」
ヒウタは缶コーヒーを啜る。
熱くて驚いた。
「あ、なかなか美味しいな」
シュイロが頬張るクッキーの香ばしさは、インパクトの割りには優しい。
「そうですよね? 私も初めて食べた時は驚きまして。あの、今日は一人もしくは女性の方がもう一人と聞いていたのですが」
「はは、そーか。ちょっと変わったデートなんだ」
店長は一瞬固まった。
「え、いや、わざわざデートの最中に来てくださったのですか? そんな申し訳ないですよ」
店長は焦ったようだ。
「デートとしても面白い体験だと思ってな。なかなかないだろ?」
「僕も貴重な体験できて良かったですし。店長さんが申し訳なさそうにしなくても」
「本当にありがとうございます。シュイロさんにはたくさん面倒見ていただいて」
店長に頭を下げられると、少し恥ずかしい。
「シュイロさん、何者なんですか。ほんとに」
ヒウタの声は誰の耳にも届かない。
クッキーと缶コーヒーを片付けて。
店長と別れた。
お昼ごはんを食べたくなるような時間帯だ。
「よし、約束の時間だ」
「約束?」
「行くぞヒウタ。次も力を貸してもらう」
「え?」
「どうした?」
「またなにか手伝うんですか?」
「お腹空いただろ?」
「先ほどクッキー食べましたけど」
「たくさん声出してまだまだ食べたいだろ?」
「確かに」
「ふふふ。そうだろ、そうだろ。喜べ、ご馳走してもらえるぞ!」
「ご馳走?」
「昼食代タダだぞ?」
怪しい言葉である。
しかし、今さら行かないとは。
「行きます」
「ヒウタ、君はなかなか魅力的だな」
どこを見て感じたのかは分からないが。
かわいらしく微笑むシュイロに、ヒウタは見惚れていた。
が、それを悟られるのは照れくさい。
「ありがとうございます」
「どうした、ぎこちない感じだな」
「いえいえ。行きましょうご飯」
「そっか。楽しみにしていろ、なかなかうまいぞ」
シュイロに付いていくと車が一台。
「え、僕ら?」
「ははは、面白い反応だな。乗れ、私たちの目指すところはこの先だ」
シュイロが物語にあるような台詞を真似る。
ヒウタはシュイロの隣に。
なんて考え方は古いのだろうか?
ヒウタは扇風機が回る個人経営の本屋で、子どもたちに向けて読み聞かせをしていた。
ここへ連れてきたシュイロに関しては、少し離れた場所で本の紹介をしている。
本の内容に関する紹介だけでなく、本の作り方なども説明している。
空間的な販売形態は、電子書籍を購入するときには味わえないし、いろんなジャンルの本を眺めることで更なる興味にも繋がる。
ヒウタが本を読み終えると、一人の男の子を除いて親のもとへ駆けていった。
「ねえねえおじさん。みんなハッピーなハッピーエンド?」
小さな男の子が足を揃えて絨毯に座り込む。飴を舐めながら、興味深そうにヒウタを見つめる。
おじさん呼びはそれなりにダメージが残るが、小学校に入学していない子どもからすれば大学生はおじさんだろう。
さん付けであるだけまし、……だろうか?
ヒウタは諦めて飲み込んだ。この場ではおじさん、その通りだと。
「ハッピーエンドだよ、大丈夫」
「やったー。僕もヒーローになるの」
男の子は立ち上がって、父親と母親がいるブースへ。
シュイロと男の子の両親の話しは盛り上がっていた。
何の内容かは聞こえない。
男の子とその親が本屋から帰って。
本屋の店長が缶コーヒーと大きめのクッキーを持ってきた。
「シュイロさんお疲れ様です。これ、最近できたフランス菓子の店で買ったものです。もちろん、彼の分も」
「いいんですか?」
「もちろんです。シュイロさんにはいつも助けられているので」
「温かい人情に触れられる本屋を助けないわけにはいかないだろ。ヒウタ、どうだ?」
「どう、とは?」
「デートでお手伝いさせてしまって」
経験としては面白いかもしれないが、初対面のデートで子どもたちに読み聞かせとはなかなか攻めている。
それでも文句が零れないのは、シュイロが持つ何とも言えない雰囲気からか。
「僕は楽しかったと思いますよ。なかなか経験できないので」
ヒウタは缶コーヒーを啜る。
熱くて驚いた。
「あ、なかなか美味しいな」
シュイロが頬張るクッキーの香ばしさは、インパクトの割りには優しい。
「そうですよね? 私も初めて食べた時は驚きまして。あの、今日は一人もしくは女性の方がもう一人と聞いていたのですが」
「はは、そーか。ちょっと変わったデートなんだ」
店長は一瞬固まった。
「え、いや、わざわざデートの最中に来てくださったのですか? そんな申し訳ないですよ」
店長は焦ったようだ。
「デートとしても面白い体験だと思ってな。なかなかないだろ?」
「僕も貴重な体験できて良かったですし。店長さんが申し訳なさそうにしなくても」
「本当にありがとうございます。シュイロさんにはたくさん面倒見ていただいて」
店長に頭を下げられると、少し恥ずかしい。
「シュイロさん、何者なんですか。ほんとに」
ヒウタの声は誰の耳にも届かない。
クッキーと缶コーヒーを片付けて。
店長と別れた。
お昼ごはんを食べたくなるような時間帯だ。
「よし、約束の時間だ」
「約束?」
「行くぞヒウタ。次も力を貸してもらう」
「え?」
「どうした?」
「またなにか手伝うんですか?」
「お腹空いただろ?」
「先ほどクッキー食べましたけど」
「たくさん声出してまだまだ食べたいだろ?」
「確かに」
「ふふふ。そうだろ、そうだろ。喜べ、ご馳走してもらえるぞ!」
「ご馳走?」
「昼食代タダだぞ?」
怪しい言葉である。
しかし、今さら行かないとは。
「行きます」
「ヒウタ、君はなかなか魅力的だな」
どこを見て感じたのかは分からないが。
かわいらしく微笑むシュイロに、ヒウタは見惚れていた。
が、それを悟られるのは照れくさい。
「ありがとうございます」
「どうした、ぎこちない感じだな」
「いえいえ。行きましょうご飯」
「そっか。楽しみにしていろ、なかなかうまいぞ」
シュイロに付いていくと車が一台。
「え、僕ら?」
「ははは、面白い反応だな。乗れ、私たちの目指すところはこの先だ」
シュイロが物語にあるような台詞を真似る。
ヒウタはシュイロの隣に。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる