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2章 初めてのマッチングが無謀すぎる!6~11話
その3 ヒウタとシュイロ
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ヒウタは朝食を食べてから待ち合わせ場所にやって来たが、シュイロはそうではないらしい。
駅近くのファーストフード店まで歩いた。
ヒウタはコーヒーと玉ねぎが香るドレッシングがかかったサラダを頼んだ。
シュイロはハンバーガーとフライドポテト、期間限定の炭酸のイチゴジュースを頼んだ。
ヒウタは財布を出そうとするが、シュイロに止められる。
「せめて自分の分は払う。これからも恋人探しをするならお金は温存した方がいい」
「確かに僕はもっとアルバイトして稼がないとって思いますけど。シュイロさんにお金出させるなんて」
「気持ちだけ受け取る。まだ一日は長い。ヒウタと行かなければならないところがたくさんある」
会計を終えて、商品受け取り番号を渡される。
ヒウタとシュイロは外が見える窓側のカウンター席へ。
「今日のコンセプトは体験型だ。どう? わくわくしないか」
ヒウタは外を眺める。
信号待ちのスーツ姿。
ふと反射して映るシュイロを見て、ヒウタは罪悪感と込み上げる熱気を感じて立ち上がる。
「トイレ行ってきます」
「そうか。サラダ私に食われたらどうする?」
「怒ります。……いや、落ち込みます? たぶん諦めるか緊張して、むしろどうでもいいかも」
ヒウタは用を足して手を洗う。濡れた手をハンカチで。
それだけでも一応落ち着く。
カウンター席に戻る。
「ひとつ食べるか? ポテト好きじゃない?」
テーブルにトレイが置かれていた。
イチゴシロップの香りに魅せられる。
「一回目のデートで間接キスはできないぞ?」
「いや、いい香りだったので。また今度頼もうかなと」
ヒウタは席に座る。
「うわあ、それは店に宣伝費もらわないとな。ポテトやる。思ったより多そうだ」
ヒウタはフライドポテトひとつを口に放る。
「なあ、ヒウタ」
シュイロはテーブルに肘を置いて言う。
シュイロの瞳がよく見える。
目を反らそうか、なんて男らしくない。
「目がバキバキというか、血眼だぞ。私を目に焼き付けようと必死か?」
「え、いや、えと。……そう見えますか?」
シュイロはいたずらっぽくヒウタの頭を撫でる。
「見えないが?」
「シュイロさん! どうして撫でるんですか」
「つい、かわいくて。ヒウタは今女子高生とデートしているって感覚かスーパー上品で清楚で頼りになるお姉さんとデートしている感覚かどっちだ?」
「清楚で年上の、女子高生が付与された綺麗な女性といる気分です。ドキドキします」
シュイロの頭から湯気が出る。
顔全体を赤らめた。
が、ヒウタは気づいていないようである。
「よくもそんな恥ずかしいことを」
「駄目でしたか?」
「いや、ヒウタを選んで間違っていなかった。なんて、私も恥ずかしいこと言ってしまったな」
シュイロは誤魔化すようにハンバーガーを齧る。
ヒウタもサラダを貪る。
心地いい。そして静かな時間はゆっくりと過ぎていった。
って、もう食べ終わってる。
ヒウタがコーヒーを半分ほど飲んだ時点で、シュイロは食べ終わっていた。
スマホを操作するシュイロを見てどこか罪悪感を覚えるのはどうしてか。
「しまった」
ヒウタが頭で思ったことをつい口にしてしまう。
『食べるペースは女性に合わせる。どんなに美味しくてもちゃんと女性を見ることです』
ヒウタは妹のアメユキとの作戦会議でそんな話をした。
しかし最初の食事で女性が先に完食してしまった。
「何か思い出したのか?」
シュイロはスマホを置いて心配そうに言う。
「シュイロさんを待たせることになってしまって」
ププッ。
シュイロはつい吹き出しそうだ。
「ええ?」
「真面目過ぎる。規約違反の私に、わざわざ考えてきた作戦を遂行してくれるのは嬉しいが」
シュイロはヒウタの顔を手で押さえた。
ヒウタは高鳴る心臓のせいで脳の処理速度が落ち、抵抗できずにシュイロの目を見る。
「ゲームではないからミッションよりも目の前の女性をよく観察して対話して考えることだな」
「ごめんなさい」
「口調が強かったか? 怒ってないぞ。ただ年上の要らぬ節介ってやつだ」
シュイロの笑顔を見ると、ヒウタはどうしてか調子が狂う。
心地は悪くない、むしろ自分らしさが飛び出してる気すらある。
でも違和感。
シュイロとどうしてマッチングしたのか?
目的が分からない。どうしても恋人を探しているようには。
否、ヒウタが恋愛対象外だったから?
第一印象か外見がシュイロの好みに合わなかった。
ならどうしてデートを続けるのか。
それに距離が近い?
なんて異性との関わりが少ないヒウタが判断できるものではない。
「ヒウタ、ついて来い」
ヒウタはシュイロが悪い人ではないだろうという第一印象を信じて、デートを続けることにした。
駅近くのファーストフード店まで歩いた。
ヒウタはコーヒーと玉ねぎが香るドレッシングがかかったサラダを頼んだ。
シュイロはハンバーガーとフライドポテト、期間限定の炭酸のイチゴジュースを頼んだ。
ヒウタは財布を出そうとするが、シュイロに止められる。
「せめて自分の分は払う。これからも恋人探しをするならお金は温存した方がいい」
「確かに僕はもっとアルバイトして稼がないとって思いますけど。シュイロさんにお金出させるなんて」
「気持ちだけ受け取る。まだ一日は長い。ヒウタと行かなければならないところがたくさんある」
会計を終えて、商品受け取り番号を渡される。
ヒウタとシュイロは外が見える窓側のカウンター席へ。
「今日のコンセプトは体験型だ。どう? わくわくしないか」
ヒウタは外を眺める。
信号待ちのスーツ姿。
ふと反射して映るシュイロを見て、ヒウタは罪悪感と込み上げる熱気を感じて立ち上がる。
「トイレ行ってきます」
「そうか。サラダ私に食われたらどうする?」
「怒ります。……いや、落ち込みます? たぶん諦めるか緊張して、むしろどうでもいいかも」
ヒウタは用を足して手を洗う。濡れた手をハンカチで。
それだけでも一応落ち着く。
カウンター席に戻る。
「ひとつ食べるか? ポテト好きじゃない?」
テーブルにトレイが置かれていた。
イチゴシロップの香りに魅せられる。
「一回目のデートで間接キスはできないぞ?」
「いや、いい香りだったので。また今度頼もうかなと」
ヒウタは席に座る。
「うわあ、それは店に宣伝費もらわないとな。ポテトやる。思ったより多そうだ」
ヒウタはフライドポテトひとつを口に放る。
「なあ、ヒウタ」
シュイロはテーブルに肘を置いて言う。
シュイロの瞳がよく見える。
目を反らそうか、なんて男らしくない。
「目がバキバキというか、血眼だぞ。私を目に焼き付けようと必死か?」
「え、いや、えと。……そう見えますか?」
シュイロはいたずらっぽくヒウタの頭を撫でる。
「見えないが?」
「シュイロさん! どうして撫でるんですか」
「つい、かわいくて。ヒウタは今女子高生とデートしているって感覚かスーパー上品で清楚で頼りになるお姉さんとデートしている感覚かどっちだ?」
「清楚で年上の、女子高生が付与された綺麗な女性といる気分です。ドキドキします」
シュイロの頭から湯気が出る。
顔全体を赤らめた。
が、ヒウタは気づいていないようである。
「よくもそんな恥ずかしいことを」
「駄目でしたか?」
「いや、ヒウタを選んで間違っていなかった。なんて、私も恥ずかしいこと言ってしまったな」
シュイロは誤魔化すようにハンバーガーを齧る。
ヒウタもサラダを貪る。
心地いい。そして静かな時間はゆっくりと過ぎていった。
って、もう食べ終わってる。
ヒウタがコーヒーを半分ほど飲んだ時点で、シュイロは食べ終わっていた。
スマホを操作するシュイロを見てどこか罪悪感を覚えるのはどうしてか。
「しまった」
ヒウタが頭で思ったことをつい口にしてしまう。
『食べるペースは女性に合わせる。どんなに美味しくてもちゃんと女性を見ることです』
ヒウタは妹のアメユキとの作戦会議でそんな話をした。
しかし最初の食事で女性が先に完食してしまった。
「何か思い出したのか?」
シュイロはスマホを置いて心配そうに言う。
「シュイロさんを待たせることになってしまって」
ププッ。
シュイロはつい吹き出しそうだ。
「ええ?」
「真面目過ぎる。規約違反の私に、わざわざ考えてきた作戦を遂行してくれるのは嬉しいが」
シュイロはヒウタの顔を手で押さえた。
ヒウタは高鳴る心臓のせいで脳の処理速度が落ち、抵抗できずにシュイロの目を見る。
「ゲームではないからミッションよりも目の前の女性をよく観察して対話して考えることだな」
「ごめんなさい」
「口調が強かったか? 怒ってないぞ。ただ年上の要らぬ節介ってやつだ」
シュイロの笑顔を見ると、ヒウタはどうしてか調子が狂う。
心地は悪くない、むしろ自分らしさが飛び出してる気すらある。
でも違和感。
シュイロとどうしてマッチングしたのか?
目的が分からない。どうしても恋人を探しているようには。
否、ヒウタが恋愛対象外だったから?
第一印象か外見がシュイロの好みに合わなかった。
ならどうしてデートを続けるのか。
それに距離が近い?
なんて異性との関わりが少ないヒウタが判断できるものではない。
「ヒウタ、ついて来い」
ヒウタはシュイロが悪い人ではないだろうという第一印象を信じて、デートを続けることにした。
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