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2章 初めてのマッチングが無謀すぎる!6~11話
その2 ヒウタと初マッチング
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猫カフェが臨時休業。
店の改装とか猫のケアとかサービスの考案とかで、結局一か月くらい休むらしい。
そこで、シュイロさんが行きたい料理屋に行くことになった。
朝八時半に集合して帰りは夜になるそう。
この話が出たときに、集合時間が早すぎることとか食事以外の予定を聞いた方が良かったし、始めの顔合わせにしては長時間のデートすぎることに疑問を持つべきだった。
ヒウタは親には友達に会うと、アメユキにはマッチングした女性に会うと言っておいた。
「なかなか暑い。タオルも水筒も持ってきて良かった」
駅の改札口近くで集合。
ヒウタはアメユキと共に作戦を練ってきた。
朝も励ましてもらった。
集合の駅は料理屋も最寄り駅らしい。
「ってか三十分前に着いてしまうなんて。でも女性に待たせるわけにはいかないし、まあ仕方ないというか」
早く着きすぎるのも気持ち悪いのでは?
ヒウタは暑さと緊張で汗が噴き出していた。
必死にタオルで汗を。
冷たい缶ジュースを購入して後は待つのみ。
「第一印象が大事だからな。話題とか考えた方がいいのか」
手が滑って缶の蓋が開かない。
蓋を少しだけ持って指を挟み、なんとかして開けた。
シュワッと細かい泡が増えて、いつの間にか弾ける。
「ヒウタ、お待たせ。私がヒウタの大好物、性別は女性、名前は朱色」
「大好物?」
「違うのか? 女の子を求めてマッチングアプリをしてないとなると、情報商材とか怪しい商売の業者か?」
ヒウタには気になった点が二つある。
一つはメッセージのやり取りと口調が違う、印象が違う。これはミスマッチではないだろうか? 女性との経験が乏しいし、そのための失敗の可能性がある。
問題は二つ目だ。外見である。いや、タイプではなかったとかではない。誰が見ても美人で、肌が綺麗で、服も皺ひとつない。気になる点があるとすれば、いやいや、これが一番問題だが、その女性は制服を着ていた。
「制服のコスプレ。……」
「んにゃ、違う。私が今実際に使っている高校用の制服だ」
「高校生? って規約違反では。大学専用って書いてあったし、専門学校とか同じくらいの年齢層はいいって書いてあったけど」
「私が高校生であることは本当だ。気になるなら一旦私服に変える」
「確かに、制服だと目立つ気はする」
ヒウタはジュースどころではなくなり、一気に飲み干す。
「あと私の実年齢は二十七才だから、間を取ったら大学生みたいなものだ」
「え、見えない。若いっていうか、何なら高校生に見える」
「高校生も年齢も本当だからな。ただ規約違反といえばその通りだ。恋愛対象にならないにしても女性に慣れるためにデートしないか?」
ヒウタは悩んだ。もちろん、はっきりと年齢で恋愛対象を絞っているわけではないし、シュイロさんのような美人は恋愛対象になるだろう。
ただ問題は年齢や身分を偽ってた人と関係を続けていいのかということだ。
ここで関係を断つのはどこか勿体ない気がしたし、妹のアメユキに手間をかけさせて、この程度のことで帰ってしまったら。アメユキを悲しませる。
「運営にバンされないのかな、俺」
「きっと何とかなる。ところで制服は好きじゃないのか? 制服姿に萌える男たちがいると聞いて着てきたのだが?」
「かわいらしいというか、綺麗というか、似合っていると思いましたけど、目立つので。荷物になるなら僕が持つので私服にしてください」
「どうしても私が脱いだばかりの制服を持って歩きたいと?」
「そんな変態みたいな発言はしてませんけど?」
「まあまあ。ちょっと着替えてくる」
シュイロさんが化粧室に行った。
その隙に缶をゴミ箱へ。
「規約違反っていってもシュイロさんが悪い人に見えない」
でも本当に高校生なのか?
だったらどうしてアプリを?
聞きたいことが山のようにある。その全てが不可侵のように思えた。
「夢の高校生になったはいいけど、流石に全日制は行けなくて。夜間か迷ったが、結局通信制にした」
青色のロングスカートに、白いシャツに羽織る黄緑色のカーディガン。
片手に大きな紙袋。中身は言うまでもなく制服だ。
「どうだ、夏だろ?」
ヒウタは戸惑った。
「ヒウタ?」
シュイロの瞳がヒウタの目を吸い込む。
ヒウタは金縛りにあったように止まって。
「夏っぽいデスね」
粗い紙にシャーペンで文字を書くような引っ掛かりを覚える声。
「かわいいやつめ。女性を前にして照れたのか?」
「驚いただけというか、制服もだけど何着ても似合うなって」
シュイロは耳を赤くする。
ヒウタよりも年上だからか、髪をばらして表情やうなじ、耳や目を隠した。
「行くぞ、ヒウタ。今日は私の特別メニューだ」
こうしてヒウタの初マッチングが始まった。
店の改装とか猫のケアとかサービスの考案とかで、結局一か月くらい休むらしい。
そこで、シュイロさんが行きたい料理屋に行くことになった。
朝八時半に集合して帰りは夜になるそう。
この話が出たときに、集合時間が早すぎることとか食事以外の予定を聞いた方が良かったし、始めの顔合わせにしては長時間のデートすぎることに疑問を持つべきだった。
ヒウタは親には友達に会うと、アメユキにはマッチングした女性に会うと言っておいた。
「なかなか暑い。タオルも水筒も持ってきて良かった」
駅の改札口近くで集合。
ヒウタはアメユキと共に作戦を練ってきた。
朝も励ましてもらった。
集合の駅は料理屋も最寄り駅らしい。
「ってか三十分前に着いてしまうなんて。でも女性に待たせるわけにはいかないし、まあ仕方ないというか」
早く着きすぎるのも気持ち悪いのでは?
ヒウタは暑さと緊張で汗が噴き出していた。
必死にタオルで汗を。
冷たい缶ジュースを購入して後は待つのみ。
「第一印象が大事だからな。話題とか考えた方がいいのか」
手が滑って缶の蓋が開かない。
蓋を少しだけ持って指を挟み、なんとかして開けた。
シュワッと細かい泡が増えて、いつの間にか弾ける。
「ヒウタ、お待たせ。私がヒウタの大好物、性別は女性、名前は朱色」
「大好物?」
「違うのか? 女の子を求めてマッチングアプリをしてないとなると、情報商材とか怪しい商売の業者か?」
ヒウタには気になった点が二つある。
一つはメッセージのやり取りと口調が違う、印象が違う。これはミスマッチではないだろうか? 女性との経験が乏しいし、そのための失敗の可能性がある。
問題は二つ目だ。外見である。いや、タイプではなかったとかではない。誰が見ても美人で、肌が綺麗で、服も皺ひとつない。気になる点があるとすれば、いやいや、これが一番問題だが、その女性は制服を着ていた。
「制服のコスプレ。……」
「んにゃ、違う。私が今実際に使っている高校用の制服だ」
「高校生? って規約違反では。大学専用って書いてあったし、専門学校とか同じくらいの年齢層はいいって書いてあったけど」
「私が高校生であることは本当だ。気になるなら一旦私服に変える」
「確かに、制服だと目立つ気はする」
ヒウタはジュースどころではなくなり、一気に飲み干す。
「あと私の実年齢は二十七才だから、間を取ったら大学生みたいなものだ」
「え、見えない。若いっていうか、何なら高校生に見える」
「高校生も年齢も本当だからな。ただ規約違反といえばその通りだ。恋愛対象にならないにしても女性に慣れるためにデートしないか?」
ヒウタは悩んだ。もちろん、はっきりと年齢で恋愛対象を絞っているわけではないし、シュイロさんのような美人は恋愛対象になるだろう。
ただ問題は年齢や身分を偽ってた人と関係を続けていいのかということだ。
ここで関係を断つのはどこか勿体ない気がしたし、妹のアメユキに手間をかけさせて、この程度のことで帰ってしまったら。アメユキを悲しませる。
「運営にバンされないのかな、俺」
「きっと何とかなる。ところで制服は好きじゃないのか? 制服姿に萌える男たちがいると聞いて着てきたのだが?」
「かわいらしいというか、綺麗というか、似合っていると思いましたけど、目立つので。荷物になるなら僕が持つので私服にしてください」
「どうしても私が脱いだばかりの制服を持って歩きたいと?」
「そんな変態みたいな発言はしてませんけど?」
「まあまあ。ちょっと着替えてくる」
シュイロさんが化粧室に行った。
その隙に缶をゴミ箱へ。
「規約違反っていってもシュイロさんが悪い人に見えない」
でも本当に高校生なのか?
だったらどうしてアプリを?
聞きたいことが山のようにある。その全てが不可侵のように思えた。
「夢の高校生になったはいいけど、流石に全日制は行けなくて。夜間か迷ったが、結局通信制にした」
青色のロングスカートに、白いシャツに羽織る黄緑色のカーディガン。
片手に大きな紙袋。中身は言うまでもなく制服だ。
「どうだ、夏だろ?」
ヒウタは戸惑った。
「ヒウタ?」
シュイロの瞳がヒウタの目を吸い込む。
ヒウタは金縛りにあったように止まって。
「夏っぽいデスね」
粗い紙にシャーペンで文字を書くような引っ掛かりを覚える声。
「かわいいやつめ。女性を前にして照れたのか?」
「驚いただけというか、制服もだけど何着ても似合うなって」
シュイロは耳を赤くする。
ヒウタよりも年上だからか、髪をばらして表情やうなじ、耳や目を隠した。
「行くぞ、ヒウタ。今日は私の特別メニューだ」
こうしてヒウタの初マッチングが始まった。
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