規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

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1章 アプリまでの道のりが不気味すぎる!1~5話

その5 ヒウタと不審者

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 面接を終えてアメユキが待つ本屋に戻ってきた。
 入り口を抜けると、冷や汗と走ったときの汗が一気に冷える。

「アメユキどこだ?」

 小説や漫画ゾーンにいると思っていたが、見渡してもアメユキの姿がない。
 まさか、とファッション雑誌やアイドル雑誌の辺りを探すが。

「あとは、……。あいつが好きそうなもの。考えても分からん!」

 ヒウタは本屋を網羅的に探そうとした。
 そして、ようやく。

「にいに、私は悪いやつ全部やっつけます。弁護士になりたい!」

 重そうな本を両手に持って見つかった。
 弁護士になりたいというアピールだろうが、会社法に関する本は何か違うのではないか?

 ただ専門でないものに下手に突っ込んではならない。

「まさか法律のとこにいるなんてな」

 アメユキの持っていた本を棚に戻した。
 値段はそれなりにする。きっと家に帰ったら必要ないだろう。
 ヒウタはアメユキの手を引いた。

「ボクはアメユが願うことならなんでもしたいって思うけどな」

 ヒウタの後ろからショートカットの女性が現れた。
 ロングスカートにしたたかさを感じる。
 アメユキを撫でる指がすらっと長くて綺麗だ。

「アメユ?」
「きらきらお姉さんがそう呼んでくれたの!」
「マジか」

 愛しの妹が不審者に懐いてしまった。
 ヒウタは面接で盛り上がり過ぎたことを後悔した。

 それにしても。
 この不審者の目的は?

 迷子とか寂しい思いをしている子どもの面倒を見ている優しい女性に写る。
 少なくともヒウタ以外には。

「きらきらかぎらぎらか知らないが、俺の妹から離れろ」
「それは馬鹿にしてる。まさかこんなところでかわいらしい妹を放置するわけない。キミは誰だ?」

 お姉さんがヒウタに詰め寄る。
 圧倒的存在感の胸と目力を前にして、ヒウタは一歩下がった。

「あのね、ヒウタって言うの。私のにいにだよ。間違いなく私の家族、安心して」

 なんて優しい妹だ、と思う一方。
 不審者を説得して兄と認めさせるっていう状況は、ヒウタにとって悲しすぎた。

「ボクはね、美しい人と男らしい人が好きなんだ。アメユちゃんはきっと美しい女性に成長する。その意味が分かるかい? 恋されたことなんて無さそうな自称お兄ちゃん?」
「なんだこいつ。誘拐未遂でなんとかできないか?」
「ボクはそろそろ去ることにする」
「そうしてくれ」

 ヒウタは不審者を睨む。
 アメユキは心配そうな表情でヒウタを見る。

「キミはエゴイストの器じゃないし、美しさや男らしさはない。だけど、キミはまたボクを見つけることになる」
「何言って」
「ボクからすれば出会いではない。キミがボクを見つけても、ボクからすればプレーンな味のモブだ。気に留めないことを許してくれ」
「いや、何を言ってるんだ?」
「ビル。ひと際目立つ不気味な彫刻、縫い物、賽銭箱。ほら、肩に特徴的な糸くず」

 ヒウタは咄嗟に肩を手で払う。
 エゴイストは笑った。

「糸くずなんて冗談だ。けど、キミは今日から新参者なんだろ? ようこそ、マッチングの世界へ。すぐ周りの人に勝てば良かった世界から、強者と争わなければならない世界に来るとは」
「そんな酷いこと、言うのやめ!」

 アメユキがヒウタとエゴイストの間に入る。

「アメユキ?」
「にいは本気で相手を探してる。妹の私にすごい優しい。これからもっと頑張って魅力増し増し、それから会いたいって思ったってこっちから願い下げだから」
「ふふ。アメユちゃん、成長に期待してる。言いすぎた、ボクは嫌われちゃったかな。楽しかった、そろそろ行こうか」
「ふん。べえだ」

 アメユキは舌を少しだけ出す。

「アメユキ?」
「今度会ったときは私ともっと遊んでほしいし、にいにの彼女候補にしちゃうから。話しかけてくれて本当に嬉しかった」
「甘くて素直でやっぱり魅力的な女の子だ。だが、不審者に気をつけろ」

 背を向けて手を振る。その去っていく姿は美しさを語るだけあった。
 アメユキの面倒を見てくれた不審者はきっといい人なんだろう、ヒウタは思う。

「俺にとっては嫌なやつだったが」





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