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2章 初めてのマッチングが無謀すぎる!6~11話
その1 ヒウタと大学の友人
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月曜日の一時間目、二時間目を終えて。
ヒウタは昼休憩に友人と学生食堂、通称学食へ。
トレイ、コップ、箸を準備して注文口に並ぶ。
混雑する時間を避けるために遅めに来た。
三時間目が空き時間の者にのみ許された戦術だ。
「おお、あの子かわいい。ここはかわいい天国だな、彼女になってくれ」
かろうじて相手の女性までは声が届いていない。
山吹刃玖、お調子者。
「いや、向こうからしたらきっと地獄だと思うぞ」
「なんでヒウタは余裕なんだ。はっ、妹という名の女の子がずっと一緒だからか!」
「何言ってるんだ?」
「アメユキちゃん、素直で優しくていい子なんだろ。紹介しろ」
「おいおい、中二だぞ」
「中二? 若すぎる。だがそれがいい、最高だ」
「俺からすれば最悪だよ」
なんて俯瞰したような態度のヒウタだが、一度も彼女がいないことを心配する妹の影響で、マッチングアプリを始めていた。
そんなことをハクに言ったら何言われるか想像もしたくない。
「鶏炙り丼だな、味噌汁付いてるし」
「迷う。ここまで来るとカレーのいい香りするから。けど、きつねうどんにするか」
会計の準備をすると、うどんが完成した。
トレイにうどんが乗ると、その重量の弾みで箸やコップが跳ねる。
「零すなよ」
「何とかな」
ヒウタたちは席についた。
「ヒウタ、俺たちはどうして月曜日の朝から実験があって、レポート課題が課せられるんだろうな。悔しいよ、こんな頑張ってるのに独り身なんて。ヒウタ、助けてくれ。俺を一人にしないでくれ。ヒウタは彼女作らないよな」
「出会いはないし、作れないな。どんな人がいい?」
「この際誰でもいい、俺のことを愛してくれ。どんなに束縛されてもいい、大切にするし目移りもしない、くそ、せめて俺を女体化してくれ」
「なんだよその願いは。麺が伸びるしそろそろ食べていいか?」
「そんなこと言ったらおいらの鶏炙りのライスたちも時間が経つと水っぽくなるんだが?」
「なら食べるぞ」
ヒウタはうどんを頬張る。
つるっとしたのど越し、後から来る優しい出汁の香り。
学食だからか、一般的な料理屋よりも麺が多い。
きつねうどんは混ぜれば、油揚げのしっかりした甘い旨味がつゆ全体に広がって味を変えることもできる。
「鶏の表面の焦げが美味い。学食は本当に俺たちに寄り添ってくれるよな。ああ、学食がモテない男たちの彼女だったとは」
「流石に意味が分からないが?」
ヒウタはハクを気にしないで食べ進める。
ヒウタは空腹感が落ち着いて食欲が治まると、スマホを開いた。
マッチングアプリを開く。
昨日お気に入り登録してくれたらしい女性から、会話の続きが送られてきた。
『ヒウタさん、私たち住んでるとこ遠くなさそうです。気になっている猫カフェがあるんですが一緒に行きませんか?』
その言葉を聞いて心臓が鳴った。
初めての嬉しい感覚と、ハクに隠れてマッチングアプリをしているという罪悪感。
本当は恥ずかしさ、からかわれたくないなんて感情に振り回されないで、マッチングアプリの話をしたらいいだけだ。
会話の女性はシュイロというらしい。本名だろうか、ヒウタは拘らないが。
『気になります。行きたいです』
ヒウタは勇気を出して返す。
そしてマッチングアプリを閉じて、スマホをスリープ状態に。
「ヒウタ? 妹ちゃんから連絡来たか」
「学校内ではスマホ開けない。アメユキから連絡こないぞ」
「まさか女性から?」
瞬間、冷汗が流れる。
ハクの言葉を返せない方が怪しい? なんて考えてしまって反応が遅れる。
「嘘だろヒウタ。一人嫌だから」
「考え事してた。どうかしたか?」
「なんだ。そういうことか」
ハクにアプリのことを言うのはまた今度に。
ヒウタは麺を食べ終えて、つゆを飲む。
ハクはご飯をかきこむ。味噌汁はいつの間にか飲み終わっていた。
「空きコマどうする? 図書館にレポート資料探しに行くか。自分で探すのきつすぎだろ」
「きっと調べることに慣れておけってことだよ」
ヒウタとハクはトレイと食器を返却し、食堂を離れた。
ヒウタは昼休憩に友人と学生食堂、通称学食へ。
トレイ、コップ、箸を準備して注文口に並ぶ。
混雑する時間を避けるために遅めに来た。
三時間目が空き時間の者にのみ許された戦術だ。
「おお、あの子かわいい。ここはかわいい天国だな、彼女になってくれ」
かろうじて相手の女性までは声が届いていない。
山吹刃玖、お調子者。
「いや、向こうからしたらきっと地獄だと思うぞ」
「なんでヒウタは余裕なんだ。はっ、妹という名の女の子がずっと一緒だからか!」
「何言ってるんだ?」
「アメユキちゃん、素直で優しくていい子なんだろ。紹介しろ」
「おいおい、中二だぞ」
「中二? 若すぎる。だがそれがいい、最高だ」
「俺からすれば最悪だよ」
なんて俯瞰したような態度のヒウタだが、一度も彼女がいないことを心配する妹の影響で、マッチングアプリを始めていた。
そんなことをハクに言ったら何言われるか想像もしたくない。
「鶏炙り丼だな、味噌汁付いてるし」
「迷う。ここまで来るとカレーのいい香りするから。けど、きつねうどんにするか」
会計の準備をすると、うどんが完成した。
トレイにうどんが乗ると、その重量の弾みで箸やコップが跳ねる。
「零すなよ」
「何とかな」
ヒウタたちは席についた。
「ヒウタ、俺たちはどうして月曜日の朝から実験があって、レポート課題が課せられるんだろうな。悔しいよ、こんな頑張ってるのに独り身なんて。ヒウタ、助けてくれ。俺を一人にしないでくれ。ヒウタは彼女作らないよな」
「出会いはないし、作れないな。どんな人がいい?」
「この際誰でもいい、俺のことを愛してくれ。どんなに束縛されてもいい、大切にするし目移りもしない、くそ、せめて俺を女体化してくれ」
「なんだよその願いは。麺が伸びるしそろそろ食べていいか?」
「そんなこと言ったらおいらの鶏炙りのライスたちも時間が経つと水っぽくなるんだが?」
「なら食べるぞ」
ヒウタはうどんを頬張る。
つるっとしたのど越し、後から来る優しい出汁の香り。
学食だからか、一般的な料理屋よりも麺が多い。
きつねうどんは混ぜれば、油揚げのしっかりした甘い旨味がつゆ全体に広がって味を変えることもできる。
「鶏の表面の焦げが美味い。学食は本当に俺たちに寄り添ってくれるよな。ああ、学食がモテない男たちの彼女だったとは」
「流石に意味が分からないが?」
ヒウタはハクを気にしないで食べ進める。
ヒウタは空腹感が落ち着いて食欲が治まると、スマホを開いた。
マッチングアプリを開く。
昨日お気に入り登録してくれたらしい女性から、会話の続きが送られてきた。
『ヒウタさん、私たち住んでるとこ遠くなさそうです。気になっている猫カフェがあるんですが一緒に行きませんか?』
その言葉を聞いて心臓が鳴った。
初めての嬉しい感覚と、ハクに隠れてマッチングアプリをしているという罪悪感。
本当は恥ずかしさ、からかわれたくないなんて感情に振り回されないで、マッチングアプリの話をしたらいいだけだ。
会話の女性はシュイロというらしい。本名だろうか、ヒウタは拘らないが。
『気になります。行きたいです』
ヒウタは勇気を出して返す。
そしてマッチングアプリを閉じて、スマホをスリープ状態に。
「ヒウタ? 妹ちゃんから連絡来たか」
「学校内ではスマホ開けない。アメユキから連絡こないぞ」
「まさか女性から?」
瞬間、冷汗が流れる。
ハクの言葉を返せない方が怪しい? なんて考えてしまって反応が遅れる。
「嘘だろヒウタ。一人嫌だから」
「考え事してた。どうかしたか?」
「なんだ。そういうことか」
ハクにアプリのことを言うのはまた今度に。
ヒウタは麺を食べ終えて、つゆを飲む。
ハクはご飯をかきこむ。味噌汁はいつの間にか飲み終わっていた。
「空きコマどうする? 図書館にレポート資料探しに行くか。自分で探すのきつすぎだろ」
「きっと調べることに慣れておけってことだよ」
ヒウタとハクはトレイと食器を返却し、食堂を離れた。
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