規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

文字の大きさ
上 下
6 / 162
2章 初めてのマッチングが無謀すぎる!6~11話

その1 ヒウタと大学の友人

しおりを挟む
 月曜日の一時間目、二時間目を終えて。
 ヒウタは昼休憩に友人と学生食堂、通称学食へ。

 トレイ、コップ、箸を準備して注文口に並ぶ。
 混雑する時間を避けるために遅めに来た。

 三時間目が空き時間の者にのみ許された戦術だ。

「おお、あの子かわいい。ここはかわいい天国だな、彼女になってくれ」

 かろうじて相手の女性までは声が届いていない。
 山吹やまぶき刃玖はく、お調子者。

「いや、向こうからしたらきっと地獄だと思うぞ」
「なんでヒウタは余裕なんだ。はっ、妹という名の女の子がずっと一緒だからか!」
「何言ってるんだ?」

「アメユキちゃん、素直で優しくていい子なんだろ。紹介しろ」
「おいおい、中二だぞ」

「中二? 若すぎる。だがそれがいい、最高だ」
「俺からすれば最悪だよ」

 なんて俯瞰したような態度のヒウタだが、一度も彼女がいないことを心配する妹の影響で、マッチングアプリを始めていた。

 そんなことをハクに言ったら何言われるか想像もしたくない。

「鶏炙り丼だな、味噌汁付いてるし」
「迷う。ここまで来るとカレーのいい香りするから。けど、きつねうどんにするか」

 会計の準備をすると、うどんが完成した。
 トレイにうどんが乗ると、その重量の弾みで箸やコップが跳ねる。

「零すなよ」
「何とかな」

 ヒウタたちは席についた。

「ヒウタ、俺たちはどうして月曜日の朝から実験があって、レポート課題が課せられるんだろうな。悔しいよ、こんな頑張ってるのに独り身なんて。ヒウタ、助けてくれ。俺を一人にしないでくれ。ヒウタは彼女作らないよな」
「出会いはないし、作れないな。どんな人がいい?」

「この際誰でもいい、俺のことを愛してくれ。どんなに束縛されてもいい、大切にするし目移りもしない、くそ、せめて俺を女体化してくれ」
「なんだよその願いは。麺が伸びるしそろそろ食べていいか?」

「そんなこと言ったらおいらの鶏炙りのライスたちも時間が経つと水っぽくなるんだが?」
「なら食べるぞ」

 ヒウタはうどんを頬張る。
 つるっとしたのど越し、後から来る優しい出汁の香り。
 学食だからか、一般的な料理屋よりも麺が多い。
 きつねうどんは混ぜれば、油揚げのしっかりした甘い旨味がつゆ全体に広がって味を変えることもできる。

「鶏の表面の焦げが美味い。学食は本当に俺たちに寄り添ってくれるよな。ああ、学食がモテない男たちの彼女だったとは」
「流石に意味が分からないが?」

 ヒウタはハクを気にしないで食べ進める。
 ヒウタは空腹感が落ち着いて食欲が治まると、スマホを開いた。
 マッチングアプリを開く。

 昨日お気に入り登録してくれたらしい女性から、会話の続きが送られてきた。

『ヒウタさん、私たち住んでるとこ遠くなさそうです。気になっている猫カフェがあるんですが一緒に行きませんか?』

 その言葉を聞いて心臓が鳴った。
 初めての嬉しい感覚と、ハクに隠れてマッチングアプリをしているという罪悪感。

 本当は恥ずかしさ、からかわれたくないなんて感情に振り回されないで、マッチングアプリの話をしたらいいだけだ。
 会話の女性はシュイロというらしい。本名だろうか、ヒウタは拘らないが。

『気になります。行きたいです』

 ヒウタは勇気を出して返す。
 そしてマッチングアプリを閉じて、スマホをスリープ状態に。

「ヒウタ? 妹ちゃんから連絡来たか」
「学校内ではスマホ開けない。アメユキから連絡こないぞ」
「まさか女性から?」

 瞬間、冷汗が流れる。
 ハクの言葉を返せない方が怪しい? なんて考えてしまって反応が遅れる。

「嘘だろヒウタ。一人嫌だから」
「考え事してた。どうかしたか?」
「なんだ。そういうことか」

 ハクにアプリのことを言うのはまた今度に。
 ヒウタは麺を食べ終えて、つゆを飲む。
 ハクはご飯をかきこむ。味噌汁はいつの間にか飲み終わっていた。

「空きコマどうする? 図書館にレポート資料探しに行くか。自分で探すのきつすぎだろ」
「きっと調べることに慣れておけってことだよ」

 ヒウタとハクはトレイと食器を返却し、食堂を離れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...