規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

文字の大きさ
上 下
1 / 162
1章 アプリまでの道のりが不気味すぎる!1~5話

その1 ヒウタとアメユキ

しおりを挟む
 大型連休を無駄に潰したからか、五月病というなかなか薬が効かない大病を患ってしまった。

 連休明けの土曜日、青年はソファに寝転がってテレビを眺め続けた。

 ただ救いがあるとすれば、大学生にしては単発バイトしか働かず、有り余った時間でレポートを返り討ちにできたことだ。

 青年の悩みは別にあった。

「はは、本気で言ってるのか?」
 
 青年の名前はヒウタ。本名、估志世こしよ陽唄ひうた

 高校で学業と部活に打ち込み、恋愛にかすりもしなかった青年は、相変わらず女性と縁がないのだ。

「二十代の若者は結婚したくない、彼女要らない人が急増? 十年前と比較して?」

 溜息ひとつ。

「俺みたいな人間は一度も取材されてないけどな。そもそも商店街で取材してるし。俺みたいな人間が通るわけないところで取材して、まるで一般論みたいに語るなよ」

 画面が切り替わって、タレントやら芸人やら専門家が議論を始める。
 なんて滑稽な、と思う。

 しかし、女性と縁がなく商店街に用がない人間の意見は、若者の結婚離れには必要ないだろう。

 そう思うと泣きそうだ。

「ったく、すごい綺麗な。すげえかわいい彼女ほしいなあ」

 呟く。

 まさか明るく華やかな印象がある大学生活、ここまで出会いがないとは。

 微分と積分を繰り返す日々。
 もはや二次元キャラを積分して彼女を生成するしかない、なんて友人の言葉が理解できてしまう。

「出会いがほしい、なんてどうしたら」
「ふふふ、いいこと教えてあげよっか?」

 高い女性の声。
 その長く光沢のある髪がヒウタの頭に被さる。

 覗き込まれるように見下されるのは、家族でなければ許したくない。
 とはいえ、ヒウタは他人の方が嬉しかった気もする。

「うわあ!」
「にい、妹のことをまるで化け物みたいに。私がすごい綺麗な女性紹介してあげる」
「いや、お前、中学生のお前が誰にどなたを紹介するんだ?」

 ヒウタの妹、アメユキは棒の部分を持って、アイスを舐めて言う。
 アイスが融けて、雫がアイスの表面を走る。

 ヒウタは雫から目が離せないでいた。

「チッチッチ、私を崇めた方がいい。私は今塾に行ってます」
「で?」

 雫がヒウタの頭の頂上へ。
 ヒヤッと冷たさがヒウタを襲うが、取り敢えず諦めるのが兄である。

「彼氏いなくて綺麗なバイトの人がいて、……周りには内緒だよ。大学生ってばれないようにしてるらしいから」
「びっくりした。まさか同級生の中学生を紹介されるのかと思った」
「あ、その手があったか。ごめんね、にいに」

 アメユキは素直でいい妹だ、とヒウタ。

「中学二年生を大学一年生に紹介するのは、法律とか倫理とか世間の目とかあるからな」
「倫理って? 世間ってお母さんとかママ友とか、近所の人のこと?」
「そうそう。倫理は心の正しさみたいなものだ」
「ふうん、難しい。でも、私の同級生みんな彼氏とかいい感じの人がいて紹介できないや」

 中学二年で? と聞き返してしまいそうになるが、最近の中学生事情を知らない大学生が下手に突っ込んではならない、と留まる。

「私まだ恋とか分かんないけど。にいに、もうすぐ二十歳なのに。友達、彼氏二人とか三人とかいる人いるよ」
「妹よ、そっちの世界には行かないでくれ」
 ヒウタは祈った。
「で、会いますか会いませんか」
「ええ、会ってどうするんだ? そもそも会ってくれるのか?」
「にいの写真見せたときには、嫌いではない顔だって」
「いつの間に見せたんだ。って、好きでもないってことだろ? いやいや、顔に自信がある人生ではないし、顔が好きなんて期待していないが」

 冷たい雫がどんどん流れてくる。
 おそらく相手の女性は消極的だろう、間違いない。
 ヒウタ自身も積極的になれるかと思えばそうではない。

 しかし、ノリノリの妹の誘いを断れる兄ではなく。

「分かった」

 会うことに決めた。

「やった。初めての彼女頑張って、にいに」

 アメユキはにこにこしてアイスを齧る。
 崩れたアイスの大きな破片が頭の上から降ってきた。

「マジか。……」
    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...