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第421話 死亡確認

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 俺とシルビアは今迷宮の地下70階層にいる。
 理由はこの階層に挑んだ冒険者の未帰還が増えているからだ。
 その原因調査と救出が目的である。
 ただ、救出とは建前で、冒険者ギルドも既に生存は諦めており、遺品や遺髪の回収ができたらいいなくらいの考えだ。

 そして、目の前には冒険者が行方になった原因がある。
 いや、いるというべきだろうな。

「お姉ちゃんたち、今までの冒険者の中じゃ一番強いね」

 原因であるゴスロリ幼女がシルビアの斬撃を紙一重で躱して笑う。
 見た目は、か◯ほ◯さ◯る原作のアニメに出てきそうな感じだが、バンパイアロードという存在が萌えを感じさせない。
 立ち位置を間違えば死が迎えにくる。
 そう、他の冒険者は皆目の前の幼女風バンパイアロードに殺されてしまったのだ。

【ホーリー・プロテクション】

 俺の支援魔法でシルビアに聖属性を付与する。
 これでアンデッドモンスターの攻撃は無効化できる。
 俺の魔法にバンパイアロードは舌打ちをした。

「お兄ちゃん、プリースト?にしては聖印も持ってないようだけど」

「いや、ただの品管さ」

「なにそれ?」

 流石のバンパイアロードも品管というジョブは知らないようだ。
 というか、知っていたらびっくりだな。

「ハアアアアア!!!」

 そんな会話で油断が生じたのか、裂帛の気合いがこもった雄叫びをあげるシルビアの一撃が、バンパイアロードの胸を穿つ。
 そして、そのまま仰向けに倒れた。

「やった」

 白い歯を見せるシルビア。
 しかし、

「お姉ちゃん、それはフラグってやつだよ」

 バンパイアロードは何事もなかったかのように立ち上がった。

「シルビア、今の台詞はないよ」

 俺もシルビアを諫めた。

「なによ、アルトまで。知っているなら先に教えてよ。フラグになる台詞なんて、『この戦いが終わったら故郷へ帰って結婚するんだ』くらいしか知らないわよ!」

 シルビアは口をへの字に曲げる。

「いや、フラグの話じゃないよ。品質管理の話だから」

「品質管理?」

「そう。作業員と検査員は同一人物じゃいけないって事だよ。今回であれば、作業員はバンパイアロードに攻撃をしたシルビアだ。だとすれば、相手の生死を確認する検査員は俺がやるべきなんだ。作業員は自分の作業に甘い判定をしがちだからね」

 俺は工程の基本をシルビアに説明した。
 基本中の基本、作業員と検査員は別の人にする。
 甘いジャッジを防ぐためのルールなのですが、どこの工場でも意外と守られていない。
 人員不足によるところが大きいんでしょうけどね。

 今回のシルビアも自分の当てた一撃が、致命傷になったと思い込んで誤判定をしてしまったわけだ。
 自分の渾身の一撃なら、相手は致命傷なはずという思い込みが招いた流出不良だ。

「それって、第三者による判定を受けるべきってことよね。周大人みたいな」

「いや、それをいうなら王大人だろ。死亡確認ならなおさらだ」

 シルビアのボケに突っ込みを入れる。

「何言ってるのよ。王大人の死亡確認なんて、毎回誤判定じゃないの。死亡確認した人たちがその後何度男塾の門を再びくぐったかわかってる?」

 あれ、ボケじゃない?

「じゃあ周大人ならいいのかよ」

「そうよ。回鍋肉の時も公正なジャッジをしたし、チャーハンの時だって、実際に王さんのチャーハンは火の通りが悪かったじゃない。検査員としては最適よ」

「言われてみれば」

 確かに王大人は死亡確認と言いながら、後になるとみんな実は生きてましたってパターンが多いよな。
 検査工程の中島さん(仮名)くらいの誤判定っプリである。
 あんたのせいで客から「検査費用払ってたの意味なかったね」と何度言われたことか。
 最後の不良は聞き取りしようと思ったら、オーバーステイで警察に身柄拘束されてて不可能だったし。
 なにもかもが辛い……

「まあ、アルトの言いたいことはわかったわ。でも、世の中にはソロの冒険者が沢山いるのよ。彼らはどうすればいいの?」

「それについては解決策が用意してあるんだ。ファンタジーの定番、マジックアイテムの収納鞄を使えばいい。これなら、生きてる相手は収納出来ないし、アンデッドモンスターにも対応している」

「でも高いわよ。駆け出しの冒険者なんてとてもじゃないけど買えないわ。キ◯エンスや◯MRONの商品みたいなものよ」

「冒険者ギルドでレンタルにしようか」

「それ目当ての冒険者を襲う賊が出るわよ。それに、始業点検で毎回死体を回収するのもどうするの?OKマスターは使い回せるけど、瀕死のNGマスターなんて何度も作れないわよ」

「まさかシルビアにそんな事を言われる日がくるとはね。俺もうっかり見落としていたよ」

 マジックアイテムが毎回きちんと動作するなんて決まりはこの世界にはない。
 使う前の点検は必須だ。
 OKマスターはモンスターの死体でいい。
 これが収納できるかどうかを確認する。
 そして、NGマスターは瀕死のモンスターを使う。
 ギリギリ死んでないモンスターを収納してしまったら誤作動ということになる。
 ただまあ、モンスターを生きていても収納出来るなら、それはそれでクエストとしては成功なんだろうけど。
 そんな瀕死のモンスターを毎回用意して動作確認をするのは現実的ではないな。
 現実的ではない動作確認方法なんて腐るほどあって、適当に合格判定しちゃうから本当の誤動作を検知できないんだけど。
 具体的な事例は差し控えますが、室温に影響を受ける検査設備は夏と冬で閾値が全く変わる。
 変わるんだけどそんなものはコントロールプランには織り込まれていない。
 なにせ現場で室温に合わせてOKが出るところを探しているから。
 とかいう都市伝説を聞いたことがあります。
 都市伝説です!

「なによ!二人とも!私を無視しないで!!!」

 ゴスロリバンパイアロードが切れた。

「うるさいわね。いま大事な話をしているの。そんな今どき〇次元ドリ〇ムマガジンでしか見ないようなアイデンティティーで、品質の話を邪魔しないで!」

 シルビアが言い返す。
 が、その切り返しはいかがなものか。
 この後の展開はR18指定になるので、気が向いたら同人誌即売会で。



※作者の独り言
手直しなんかだと特に、作業員が検査をして手直し不足の製品が流出しちゃいますよね。
というか、客に内緒で手直ししていたのが流出しちゃってどうしようか悩んでいます。
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