422 / 439
第421話 死亡確認
しおりを挟む
俺とシルビアは今迷宮の地下70階層にいる。
理由はこの階層に挑んだ冒険者の未帰還が増えているからだ。
その原因調査と救出が目的である。
ただ、救出とは建前で、冒険者ギルドも既に生存は諦めており、遺品や遺髪の回収ができたらいいなくらいの考えだ。
そして、目の前には冒険者が行方になった原因がある。
いや、いるというべきだろうな。
「お姉ちゃんたち、今までの冒険者の中じゃ一番強いね」
原因であるゴスロリ幼女がシルビアの斬撃を紙一重で躱して笑う。
見た目は、か◯ほ◯さ◯る原作のアニメに出てきそうな感じだが、バンパイアロードという存在が萌えを感じさせない。
立ち位置を間違えば死が迎えにくる。
そう、他の冒険者は皆目の前の幼女風バンパイアロードに殺されてしまったのだ。
【ホーリー・プロテクション】
俺の支援魔法でシルビアに聖属性を付与する。
これでアンデッドモンスターの攻撃は無効化できる。
俺の魔法にバンパイアロードは舌打ちをした。
「お兄ちゃん、プリースト?にしては聖印も持ってないようだけど」
「いや、ただの品管さ」
「なにそれ?」
流石のバンパイアロードも品管というジョブは知らないようだ。
というか、知っていたらびっくりだな。
「ハアアアアア!!!」
そんな会話で油断が生じたのか、裂帛の気合いがこもった雄叫びをあげるシルビアの一撃が、バンパイアロードの胸を穿つ。
そして、そのまま仰向けに倒れた。
「やった」
白い歯を見せるシルビア。
しかし、
「お姉ちゃん、それはフラグってやつだよ」
バンパイアロードは何事もなかったかのように立ち上がった。
「シルビア、今の台詞はないよ」
俺もシルビアを諫めた。
「なによ、アルトまで。知っているなら先に教えてよ。フラグになる台詞なんて、『この戦いが終わったら故郷へ帰って結婚するんだ』くらいしか知らないわよ!」
シルビアは口をへの字に曲げる。
「いや、フラグの話じゃないよ。品質管理の話だから」
「品質管理?」
「そう。作業員と検査員は同一人物じゃいけないって事だよ。今回であれば、作業員はバンパイアロードに攻撃をしたシルビアだ。だとすれば、相手の生死を確認する検査員は俺がやるべきなんだ。作業員は自分の作業に甘い判定をしがちだからね」
俺は工程の基本をシルビアに説明した。
基本中の基本、作業員と検査員は別の人にする。
甘いジャッジを防ぐためのルールなのですが、どこの工場でも意外と守られていない。
人員不足によるところが大きいんでしょうけどね。
今回のシルビアも自分の当てた一撃が、致命傷になったと思い込んで誤判定をしてしまったわけだ。
自分の渾身の一撃なら、相手は致命傷なはずという思い込みが招いた流出不良だ。
「それって、第三者による判定を受けるべきってことよね。周大人みたいな」
「いや、それをいうなら王大人だろ。死亡確認ならなおさらだ」
シルビアのボケに突っ込みを入れる。
「何言ってるのよ。王大人の死亡確認なんて、毎回誤判定じゃないの。死亡確認した人たちがその後何度男塾の門を再びくぐったかわかってる?」
あれ、ボケじゃない?
「じゃあ周大人ならいいのかよ」
「そうよ。回鍋肉の時も公正なジャッジをしたし、チャーハンの時だって、実際に王さんのチャーハンは火の通りが悪かったじゃない。検査員としては最適よ」
「言われてみれば」
確かに王大人は死亡確認と言いながら、後になるとみんな実は生きてましたってパターンが多いよな。
検査工程の中島さん(仮名)くらいの誤判定っプリである。
あんたのせいで客から「検査費用払ってたの意味なかったね」と何度言われたことか。
最後の不良は聞き取りしようと思ったら、オーバーステイで警察に身柄拘束されてて不可能だったし。
なにもかもが辛い……
「まあ、アルトの言いたいことはわかったわ。でも、世の中にはソロの冒険者が沢山いるのよ。彼らはどうすればいいの?」
「それについては解決策が用意してあるんだ。ファンタジーの定番、マジックアイテムの収納鞄を使えばいい。これなら、生きてる相手は収納出来ないし、アンデッドモンスターにも対応している」
「でも高いわよ。駆け出しの冒険者なんてとてもじゃないけど買えないわ。キ◯エンスや◯MRONの商品みたいなものよ」
「冒険者ギルドでレンタルにしようか」
「それ目当ての冒険者を襲う賊が出るわよ。それに、始業点検で毎回死体を回収するのもどうするの?OKマスターは使い回せるけど、瀕死のNGマスターなんて何度も作れないわよ」
「まさかシルビアにそんな事を言われる日がくるとはね。俺もうっかり見落としていたよ」
マジックアイテムが毎回きちんと動作するなんて決まりはこの世界にはない。
使う前の点検は必須だ。
OKマスターはモンスターの死体でいい。
これが収納できるかどうかを確認する。
そして、NGマスターは瀕死のモンスターを使う。
ギリギリ死んでないモンスターを収納してしまったら誤作動ということになる。
ただまあ、モンスターを生きていても収納出来るなら、それはそれでクエストとしては成功なんだろうけど。
そんな瀕死のモンスターを毎回用意して動作確認をするのは現実的ではないな。
現実的ではない動作確認方法なんて腐るほどあって、適当に合格判定しちゃうから本当の誤動作を検知できないんだけど。
具体的な事例は差し控えますが、室温に影響を受ける検査設備は夏と冬で閾値が全く変わる。
変わるんだけどそんなものはコントロールプランには織り込まれていない。
なにせ現場で室温に合わせてOKが出るところを探しているから。
とかいう都市伝説を聞いたことがあります。
都市伝説です!
「なによ!二人とも!私を無視しないで!!!」
ゴスロリバンパイアロードが切れた。
「うるさいわね。いま大事な話をしているの。そんな今どき〇次元ドリ〇ムマガジンでしか見ないようなアイデンティティーで、品質の話を邪魔しないで!」
シルビアが言い返す。
が、その切り返しはいかがなものか。
この後の展開はR18指定になるので、気が向いたら同人誌即売会で。
※作者の独り言
手直しなんかだと特に、作業員が検査をして手直し不足の製品が流出しちゃいますよね。
というか、客に内緒で手直ししていたのが流出しちゃってどうしようか悩んでいます。
理由はこの階層に挑んだ冒険者の未帰還が増えているからだ。
その原因調査と救出が目的である。
ただ、救出とは建前で、冒険者ギルドも既に生存は諦めており、遺品や遺髪の回収ができたらいいなくらいの考えだ。
そして、目の前には冒険者が行方になった原因がある。
いや、いるというべきだろうな。
「お姉ちゃんたち、今までの冒険者の中じゃ一番強いね」
原因であるゴスロリ幼女がシルビアの斬撃を紙一重で躱して笑う。
見た目は、か◯ほ◯さ◯る原作のアニメに出てきそうな感じだが、バンパイアロードという存在が萌えを感じさせない。
立ち位置を間違えば死が迎えにくる。
そう、他の冒険者は皆目の前の幼女風バンパイアロードに殺されてしまったのだ。
【ホーリー・プロテクション】
俺の支援魔法でシルビアに聖属性を付与する。
これでアンデッドモンスターの攻撃は無効化できる。
俺の魔法にバンパイアロードは舌打ちをした。
「お兄ちゃん、プリースト?にしては聖印も持ってないようだけど」
「いや、ただの品管さ」
「なにそれ?」
流石のバンパイアロードも品管というジョブは知らないようだ。
というか、知っていたらびっくりだな。
「ハアアアアア!!!」
そんな会話で油断が生じたのか、裂帛の気合いがこもった雄叫びをあげるシルビアの一撃が、バンパイアロードの胸を穿つ。
そして、そのまま仰向けに倒れた。
「やった」
白い歯を見せるシルビア。
しかし、
「お姉ちゃん、それはフラグってやつだよ」
バンパイアロードは何事もなかったかのように立ち上がった。
「シルビア、今の台詞はないよ」
俺もシルビアを諫めた。
「なによ、アルトまで。知っているなら先に教えてよ。フラグになる台詞なんて、『この戦いが終わったら故郷へ帰って結婚するんだ』くらいしか知らないわよ!」
シルビアは口をへの字に曲げる。
「いや、フラグの話じゃないよ。品質管理の話だから」
「品質管理?」
「そう。作業員と検査員は同一人物じゃいけないって事だよ。今回であれば、作業員はバンパイアロードに攻撃をしたシルビアだ。だとすれば、相手の生死を確認する検査員は俺がやるべきなんだ。作業員は自分の作業に甘い判定をしがちだからね」
俺は工程の基本をシルビアに説明した。
基本中の基本、作業員と検査員は別の人にする。
甘いジャッジを防ぐためのルールなのですが、どこの工場でも意外と守られていない。
人員不足によるところが大きいんでしょうけどね。
今回のシルビアも自分の当てた一撃が、致命傷になったと思い込んで誤判定をしてしまったわけだ。
自分の渾身の一撃なら、相手は致命傷なはずという思い込みが招いた流出不良だ。
「それって、第三者による判定を受けるべきってことよね。周大人みたいな」
「いや、それをいうなら王大人だろ。死亡確認ならなおさらだ」
シルビアのボケに突っ込みを入れる。
「何言ってるのよ。王大人の死亡確認なんて、毎回誤判定じゃないの。死亡確認した人たちがその後何度男塾の門を再びくぐったかわかってる?」
あれ、ボケじゃない?
「じゃあ周大人ならいいのかよ」
「そうよ。回鍋肉の時も公正なジャッジをしたし、チャーハンの時だって、実際に王さんのチャーハンは火の通りが悪かったじゃない。検査員としては最適よ」
「言われてみれば」
確かに王大人は死亡確認と言いながら、後になるとみんな実は生きてましたってパターンが多いよな。
検査工程の中島さん(仮名)くらいの誤判定っプリである。
あんたのせいで客から「検査費用払ってたの意味なかったね」と何度言われたことか。
最後の不良は聞き取りしようと思ったら、オーバーステイで警察に身柄拘束されてて不可能だったし。
なにもかもが辛い……
「まあ、アルトの言いたいことはわかったわ。でも、世の中にはソロの冒険者が沢山いるのよ。彼らはどうすればいいの?」
「それについては解決策が用意してあるんだ。ファンタジーの定番、マジックアイテムの収納鞄を使えばいい。これなら、生きてる相手は収納出来ないし、アンデッドモンスターにも対応している」
「でも高いわよ。駆け出しの冒険者なんてとてもじゃないけど買えないわ。キ◯エンスや◯MRONの商品みたいなものよ」
「冒険者ギルドでレンタルにしようか」
「それ目当ての冒険者を襲う賊が出るわよ。それに、始業点検で毎回死体を回収するのもどうするの?OKマスターは使い回せるけど、瀕死のNGマスターなんて何度も作れないわよ」
「まさかシルビアにそんな事を言われる日がくるとはね。俺もうっかり見落としていたよ」
マジックアイテムが毎回きちんと動作するなんて決まりはこの世界にはない。
使う前の点検は必須だ。
OKマスターはモンスターの死体でいい。
これが収納できるかどうかを確認する。
そして、NGマスターは瀕死のモンスターを使う。
ギリギリ死んでないモンスターを収納してしまったら誤作動ということになる。
ただまあ、モンスターを生きていても収納出来るなら、それはそれでクエストとしては成功なんだろうけど。
そんな瀕死のモンスターを毎回用意して動作確認をするのは現実的ではないな。
現実的ではない動作確認方法なんて腐るほどあって、適当に合格判定しちゃうから本当の誤動作を検知できないんだけど。
具体的な事例は差し控えますが、室温に影響を受ける検査設備は夏と冬で閾値が全く変わる。
変わるんだけどそんなものはコントロールプランには織り込まれていない。
なにせ現場で室温に合わせてOKが出るところを探しているから。
とかいう都市伝説を聞いたことがあります。
都市伝説です!
「なによ!二人とも!私を無視しないで!!!」
ゴスロリバンパイアロードが切れた。
「うるさいわね。いま大事な話をしているの。そんな今どき〇次元ドリ〇ムマガジンでしか見ないようなアイデンティティーで、品質の話を邪魔しないで!」
シルビアが言い返す。
が、その切り返しはいかがなものか。
この後の展開はR18指定になるので、気が向いたら同人誌即売会で。
※作者の独り言
手直しなんかだと特に、作業員が検査をして手直し不足の製品が流出しちゃいますよね。
というか、客に内緒で手直ししていたのが流出しちゃってどうしようか悩んでいます。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
冒険者ギルド品質管理部 ~異世界の品質管理は遅れている~
犬野純
ファンタジー
レアジョブにも程がある。10歳になって判明した俺の役職はなんと「品質管理」。産業革命すら起こっていない世界で、品質管理として日々冒険者ギルドで、新人の相談にのる人生。現代の品質管理手法で、ゆるーく冒険者のお手伝い。
前回の拙著が愚痴とメタ発言が多すぎたのでリメイクしました。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる