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第388話 プルタブとプルトップは別物
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本日はエッセの工房にスターレットとシルビアと一緒に来ている。
その目的はというと。
「スターレット、この米を口の中で30回噛んでから俺の手に吐き出して欲しい」
「は?」
俺は炊き上がった米をスターレットに渡した。
スターレットにはお酒を造るとしか言ってないので、突然の要求に面食らったようである。
差し出した米を手に取るが、俺の顔を見たまま思考が停止している。
「口噛み酒っていって、口の中の発酵の精霊を米にくっつけるんだ」
俺はそう説明した。
「いやよ、恥ずかしいじゃない。そんなのオーリスに頼めばいいじゃない」
「オーリスがそんなことしてくれるわけないだろ。それに、口が駄目なら腋か股間か足に擦り付けることになるけど?」
恥ずかしがるスターレットにもっと酷い条件になることを伝えると、顔を真っ赤にして更に大きな声を出す。
「なんでそんな恥ずかしいところばっかりなの!」
「発酵の精霊が宿っているのがそういう場所なんだからしかたないだろ」
「それならシルビアだっていいじゃない。それにアルトが自分でやってもいいでしょ?」
「残念ながら、発酵の精霊は男には宿らないんだ。よく似た腐敗の精霊は宿るけど、腐敗しちゃうから食べたり飲んだりしたらお腹を壊す。それに、発酵の精霊は若い女性に宿っている方がその力は強くなる」
と言ったところでシルビアに後頭部を殴られた。
痛い。
前世であれば腐敗も発酵も菌が作用しているのだが、ここは剣と魔法の異世界。
ものが腐ったり発酵したりするのは精霊の力によるものだ。
発酵の精霊はユニコーンみたいな存在で、何故だか知らないが女性にしか宿らないし、その宿る部位も口の中、腋、股間、足と限定されている。
更にたちのわるいことに、若い女性に宿っている発酵の精霊程、発酵させる力が強いという性質を持っている。
コンプライアンス的に大問題な存在だ。
ただ、人々もそんな精霊の力も利用しており、各地で作られるワインの仕込みでは、裸足になった若い女性がブドウを踏みつけて、発酵の精霊をブドウに擦り付けているのだ。
それを知ったので、今回スターレットに声をかけたわけだ。
オーリスは絶対に協力してくれないだろうし、シルビアは年齢的に精霊の力が弱まっている。
ただ、シルビアは面白そうだからといってついて来てしまったのだ。
その後突き付けられる残酷な事実があるとも知らずに。
そして、先ほどのように怒って俺の後頭部を殴ってきた訳だ。
俺は悪くないのに……
「わかった、協力するけど咀嚼するところは絶対に見ないでね」
スターレットは別室で一人になると、渡された米を咀嚼して戻ってきた。
これをエッセとホーマーが作った一斗樽に入れて他の米を発酵させる。
若いスターレットに憑いていた発酵の精霊ならば、二週間程度で美味しいお酒になるだろう。
あ、すいません。
18リットル樽ですね。
検査報告書に使えない単位で表現してしまいました。
「アルト」
「なんだい、ホーマー?」
樽詰めが終わったところで、ホーマーが俺に話しかけてきた。
「発酵と腐敗ってどう違うの?」
「ああ、それなら発酵は食べても大丈夫で、腐敗は食べたらお腹を壊すっていう違いだな。似たような精霊の働きだから見た目にもわからない。精霊使いだったら目で見えるんだろうけどな」
「じゃあ、その腐敗の精霊を除去したら、食べ物はいつまでも腐らないの?」
「そうだよ……」
とこたえたところで、俺は閃いた。
「缶詰があるじゃないか!」
「缶詰め?」
缶詰めの元は瓶詰めであるのだが、作り方は同じで料理を湯煎して密封するのだ。
19世紀には既に確立された工法で、瓶詰めから缶詰めに進化して、缶を開けるための缶切りが発明される流れとなる。
最近じゃあ缶切り不要のイージーオープンふたが主流なのかな。
JIS規格にもちゃんと定義されているぞ。
JIS Z 1571:2016の「食品缶詰用金属缶の仕様」じゃなくて、JIS Z 0108:2012「包装-用語」の方だけどな。
指をかける部位をプルタブと呼んではいるが、実際にはステイオンタブだ。
差は取れるか取れないか。
さらに勘違いされるのはプルトップ。
こちらは開ける行為であって、部位の名称はプルタブだ。
うん、ややこしい。
で、その作り方は加熱による殺菌であり、日本酒についても60度程度のお湯をくぐらせる低温殺菌を行っている。
こちらは先ほども言ったように細菌が影響しているのではなく、精霊の力が影響しているのでちょっと違うが、発酵と腐敗の精霊も火の精霊に弱いのは一緒だ。
お湯を使うのではなく、火を直接使って精霊を排除する。
精霊使いのスキルでもいいのだが、それだとどこでも作ることが出来る訳ではなくなる。
まあ、精霊使いがいるなら火を使わずに、ずっと腐敗の精霊が近寄ってくるのを防いでいればいいのだが、冒険者や軍でそれをやるとなると無駄が多い。
そんな感じでエッセとホーマーに瓶詰めと缶詰めについて簡単に説明をする。
ステイオンタブについては今の技術では作る事が出来ないので、初期の缶詰めのように蓋を後からハンダかなにかで付けて密封するか、瓶を使った瓶詰めをつくるかになるな。
ガラス瓶を作る技術は既に世界中にあるので、それについては問題は無い。
ただ、持ち運びが不便だというだけだ。
「アルトには収納魔法があるじゃない」
とシルビアが身も蓋もないことを言う。
そんなことしたら、現代知識を異世界で使うっていう作品のアイデンティティーが無くなっちゃうじゃないか。
無双もしていなくて、単なる異世界スローライフになっちゃうぞ。
「そうじゃないんだ。世界中の人達が食料を美味しいまま運ぶことが出来たらいいなって思っているんだよ」
「でも、お金は取るんでしょ?」
「それは必要経費だから」
瓶詰めを発明したアペールは特許を取得しなかったんだよね。
この世界に特許なんてものは存在しないが、あれば申請しても良かったかな?
建前は先ほど言ったものだが、本音ではお金が欲しい。
今回は缶切りも同時発売して、道具の売り上げでも稼ぐ予定だ。
勿論適正価格で販売して、ぼったくるつもりはない。
なにせ、簡単に真似ができるので、あんまりあくどくやっていると、他の業者に客が流れてしまう。
というか、あんまりあくどい商売したこと無いぞ。
缶詰めと瓶詰めの商売について、エッセたちと話していると、スターレットの肩をトントンと叩かれた。
「ところで、アルトはどうしてお酒を作る気になったの?」
「それはね、オーリスと食事をしているときに、ワインの作り方の話になって、足で踏んで作るワインがあれだけ美味しいのだけど、別の作り方でもっと美味しいものが出来るんじゃないかって言われたから、『じゃあ二週間後に究極のお酒を飲ませてやる』って約束しちゃったんだよ」
「は?」
「つまりこれが究極のメニュー、乙女の口噛み酒ってわけだ。他に乙女の伝手が無かったから、スターレットが協力してくれて良かったよ」
スターレットが真っ赤になって下を向いた。
その代わりに、シルビアがまたしても俺の後頭部を殴る。
パワハラよ。
そして二週間後、乙女の口噛み酒が完成したのでオーリスに飲ませた。
「美味しいですわね。是非とも作っているところをみたいものですわ」
「止めておいた方がいいと思うよ……」
「あら、何故?」
口で説明しづらいので、うまく説得できずに結局オーリスと一緒にエッセの工房に行くことになってしまった。
あの日以来、スターレットは毎日のように口で米を噛んでは発酵の精霊を米に宿し、酒づくりに協力している。
エッセとホーマーはドワーフの例に漏れず、酒が大好きなのだが売り物には手を出さずにせっせと缶や瓶に詰めている。
それをシャレードに売り捌いてもらう契約となっていた。
精霊力を強化するための魔法陣を使い、発酵の速度は倍になっているので、一週間で出荷出来るのだ。
種類も口噛み酒、腋挟み酒、足踏み酒と三種類ある。
流石に陰部のワカメ酒はスターレットが乙女の尊厳がと拒否したので、生産はされていない。
そんな製造現場を見てしまったオーリスは絶句する。
「アルト、まさか先ほど飲んだお酒は……」
「そう、スターレットに憑いた発酵の精霊を酒米にも憑依させて発酵させたものだ。種類は口嚙み酒だったけど、腋挟み酒の方がよかった?足踏み酒はワインと作り方は一緒だから、この前話した条件に合致しないので見送ったけど」
目の前でスターレットが咀嚼した酒米を口から出す姿を見ると、流石に生理的にキツイものがあるのはわかる。
しかし、他の食べ物だって動物を捌いたりして、残酷でグロテスクだぞ。
寧ろ乙女の尊厳を削って腋で酒米挟んだり、ドワーフの目の前で口から米を出している姿を晒しているスターレットの方がきついんじゃないかな?
「これって発酵の精霊さえいればいいのですよね?」
オーリスが何かを思いついたらしい。
俺は頷く。
「わかりました。精霊使いを雇ってお酒を作りましょう。口噛みとか腋挟みとかしなくて、純粋に召喚した精霊を使役すればいいのです」
そうすると付加価値がなあと思ったが、口にはしなかった。
尚、その付加価値のお陰なのか、純粋に味のお陰なのかはわからないけど、お酒の売り上げは順調に伸びていった。
そのせいでスターレットが冒険者としての仕事が出来なくなったという弊害はあったが。
※作者の独り言
プルタブとプルトップの違いを書くはずが、何故かお酒の話になってしまいました。
JIS規格があると知った時はこんな予定じゃなかったのになあ。
ファンタジー世界の発酵の仕組みを考えているうちに楽しくなっちゃったのが原因か。
お酒を造る描写とか長くなったので削ってます。
余談の余談ですが、業界で缶の材料を「キャン材」って言うのがいまだに慣れません。
響きが面白すぎて笑っちゃう。
その目的はというと。
「スターレット、この米を口の中で30回噛んでから俺の手に吐き出して欲しい」
「は?」
俺は炊き上がった米をスターレットに渡した。
スターレットにはお酒を造るとしか言ってないので、突然の要求に面食らったようである。
差し出した米を手に取るが、俺の顔を見たまま思考が停止している。
「口噛み酒っていって、口の中の発酵の精霊を米にくっつけるんだ」
俺はそう説明した。
「いやよ、恥ずかしいじゃない。そんなのオーリスに頼めばいいじゃない」
「オーリスがそんなことしてくれるわけないだろ。それに、口が駄目なら腋か股間か足に擦り付けることになるけど?」
恥ずかしがるスターレットにもっと酷い条件になることを伝えると、顔を真っ赤にして更に大きな声を出す。
「なんでそんな恥ずかしいところばっかりなの!」
「発酵の精霊が宿っているのがそういう場所なんだからしかたないだろ」
「それならシルビアだっていいじゃない。それにアルトが自分でやってもいいでしょ?」
「残念ながら、発酵の精霊は男には宿らないんだ。よく似た腐敗の精霊は宿るけど、腐敗しちゃうから食べたり飲んだりしたらお腹を壊す。それに、発酵の精霊は若い女性に宿っている方がその力は強くなる」
と言ったところでシルビアに後頭部を殴られた。
痛い。
前世であれば腐敗も発酵も菌が作用しているのだが、ここは剣と魔法の異世界。
ものが腐ったり発酵したりするのは精霊の力によるものだ。
発酵の精霊はユニコーンみたいな存在で、何故だか知らないが女性にしか宿らないし、その宿る部位も口の中、腋、股間、足と限定されている。
更にたちのわるいことに、若い女性に宿っている発酵の精霊程、発酵させる力が強いという性質を持っている。
コンプライアンス的に大問題な存在だ。
ただ、人々もそんな精霊の力も利用しており、各地で作られるワインの仕込みでは、裸足になった若い女性がブドウを踏みつけて、発酵の精霊をブドウに擦り付けているのだ。
それを知ったので、今回スターレットに声をかけたわけだ。
オーリスは絶対に協力してくれないだろうし、シルビアは年齢的に精霊の力が弱まっている。
ただ、シルビアは面白そうだからといってついて来てしまったのだ。
その後突き付けられる残酷な事実があるとも知らずに。
そして、先ほどのように怒って俺の後頭部を殴ってきた訳だ。
俺は悪くないのに……
「わかった、協力するけど咀嚼するところは絶対に見ないでね」
スターレットは別室で一人になると、渡された米を咀嚼して戻ってきた。
これをエッセとホーマーが作った一斗樽に入れて他の米を発酵させる。
若いスターレットに憑いていた発酵の精霊ならば、二週間程度で美味しいお酒になるだろう。
あ、すいません。
18リットル樽ですね。
検査報告書に使えない単位で表現してしまいました。
「アルト」
「なんだい、ホーマー?」
樽詰めが終わったところで、ホーマーが俺に話しかけてきた。
「発酵と腐敗ってどう違うの?」
「ああ、それなら発酵は食べても大丈夫で、腐敗は食べたらお腹を壊すっていう違いだな。似たような精霊の働きだから見た目にもわからない。精霊使いだったら目で見えるんだろうけどな」
「じゃあ、その腐敗の精霊を除去したら、食べ物はいつまでも腐らないの?」
「そうだよ……」
とこたえたところで、俺は閃いた。
「缶詰があるじゃないか!」
「缶詰め?」
缶詰めの元は瓶詰めであるのだが、作り方は同じで料理を湯煎して密封するのだ。
19世紀には既に確立された工法で、瓶詰めから缶詰めに進化して、缶を開けるための缶切りが発明される流れとなる。
最近じゃあ缶切り不要のイージーオープンふたが主流なのかな。
JIS規格にもちゃんと定義されているぞ。
JIS Z 1571:2016の「食品缶詰用金属缶の仕様」じゃなくて、JIS Z 0108:2012「包装-用語」の方だけどな。
指をかける部位をプルタブと呼んではいるが、実際にはステイオンタブだ。
差は取れるか取れないか。
さらに勘違いされるのはプルトップ。
こちらは開ける行為であって、部位の名称はプルタブだ。
うん、ややこしい。
で、その作り方は加熱による殺菌であり、日本酒についても60度程度のお湯をくぐらせる低温殺菌を行っている。
こちらは先ほども言ったように細菌が影響しているのではなく、精霊の力が影響しているのでちょっと違うが、発酵と腐敗の精霊も火の精霊に弱いのは一緒だ。
お湯を使うのではなく、火を直接使って精霊を排除する。
精霊使いのスキルでもいいのだが、それだとどこでも作ることが出来る訳ではなくなる。
まあ、精霊使いがいるなら火を使わずに、ずっと腐敗の精霊が近寄ってくるのを防いでいればいいのだが、冒険者や軍でそれをやるとなると無駄が多い。
そんな感じでエッセとホーマーに瓶詰めと缶詰めについて簡単に説明をする。
ステイオンタブについては今の技術では作る事が出来ないので、初期の缶詰めのように蓋を後からハンダかなにかで付けて密封するか、瓶を使った瓶詰めをつくるかになるな。
ガラス瓶を作る技術は既に世界中にあるので、それについては問題は無い。
ただ、持ち運びが不便だというだけだ。
「アルトには収納魔法があるじゃない」
とシルビアが身も蓋もないことを言う。
そんなことしたら、現代知識を異世界で使うっていう作品のアイデンティティーが無くなっちゃうじゃないか。
無双もしていなくて、単なる異世界スローライフになっちゃうぞ。
「そうじゃないんだ。世界中の人達が食料を美味しいまま運ぶことが出来たらいいなって思っているんだよ」
「でも、お金は取るんでしょ?」
「それは必要経費だから」
瓶詰めを発明したアペールは特許を取得しなかったんだよね。
この世界に特許なんてものは存在しないが、あれば申請しても良かったかな?
建前は先ほど言ったものだが、本音ではお金が欲しい。
今回は缶切りも同時発売して、道具の売り上げでも稼ぐ予定だ。
勿論適正価格で販売して、ぼったくるつもりはない。
なにせ、簡単に真似ができるので、あんまりあくどくやっていると、他の業者に客が流れてしまう。
というか、あんまりあくどい商売したこと無いぞ。
缶詰めと瓶詰めの商売について、エッセたちと話していると、スターレットの肩をトントンと叩かれた。
「ところで、アルトはどうしてお酒を作る気になったの?」
「それはね、オーリスと食事をしているときに、ワインの作り方の話になって、足で踏んで作るワインがあれだけ美味しいのだけど、別の作り方でもっと美味しいものが出来るんじゃないかって言われたから、『じゃあ二週間後に究極のお酒を飲ませてやる』って約束しちゃったんだよ」
「は?」
「つまりこれが究極のメニュー、乙女の口噛み酒ってわけだ。他に乙女の伝手が無かったから、スターレットが協力してくれて良かったよ」
スターレットが真っ赤になって下を向いた。
その代わりに、シルビアがまたしても俺の後頭部を殴る。
パワハラよ。
そして二週間後、乙女の口噛み酒が完成したのでオーリスに飲ませた。
「美味しいですわね。是非とも作っているところをみたいものですわ」
「止めておいた方がいいと思うよ……」
「あら、何故?」
口で説明しづらいので、うまく説得できずに結局オーリスと一緒にエッセの工房に行くことになってしまった。
あの日以来、スターレットは毎日のように口で米を噛んでは発酵の精霊を米に宿し、酒づくりに協力している。
エッセとホーマーはドワーフの例に漏れず、酒が大好きなのだが売り物には手を出さずにせっせと缶や瓶に詰めている。
それをシャレードに売り捌いてもらう契約となっていた。
精霊力を強化するための魔法陣を使い、発酵の速度は倍になっているので、一週間で出荷出来るのだ。
種類も口噛み酒、腋挟み酒、足踏み酒と三種類ある。
流石に陰部のワカメ酒はスターレットが乙女の尊厳がと拒否したので、生産はされていない。
そんな製造現場を見てしまったオーリスは絶句する。
「アルト、まさか先ほど飲んだお酒は……」
「そう、スターレットに憑いた発酵の精霊を酒米にも憑依させて発酵させたものだ。種類は口嚙み酒だったけど、腋挟み酒の方がよかった?足踏み酒はワインと作り方は一緒だから、この前話した条件に合致しないので見送ったけど」
目の前でスターレットが咀嚼した酒米を口から出す姿を見ると、流石に生理的にキツイものがあるのはわかる。
しかし、他の食べ物だって動物を捌いたりして、残酷でグロテスクだぞ。
寧ろ乙女の尊厳を削って腋で酒米挟んだり、ドワーフの目の前で口から米を出している姿を晒しているスターレットの方がきついんじゃないかな?
「これって発酵の精霊さえいればいいのですよね?」
オーリスが何かを思いついたらしい。
俺は頷く。
「わかりました。精霊使いを雇ってお酒を作りましょう。口噛みとか腋挟みとかしなくて、純粋に召喚した精霊を使役すればいいのです」
そうすると付加価値がなあと思ったが、口にはしなかった。
尚、その付加価値のお陰なのか、純粋に味のお陰なのかはわからないけど、お酒の売り上げは順調に伸びていった。
そのせいでスターレットが冒険者としての仕事が出来なくなったという弊害はあったが。
※作者の独り言
プルタブとプルトップの違いを書くはずが、何故かお酒の話になってしまいました。
JIS規格があると知った時はこんな予定じゃなかったのになあ。
ファンタジー世界の発酵の仕組みを考えているうちに楽しくなっちゃったのが原因か。
お酒を造る描写とか長くなったので削ってます。
余談の余談ですが、業界で缶の材料を「キャン材」って言うのがいまだに慣れません。
響きが面白すぎて笑っちゃう。
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