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第373話 スキル【工程FMEA】

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工程FMEAの説明がRPN位しか無かったので。
それと、ネットで工程FMEAを検索すると、最上位に出てくるページにRPMって出てくるのですが、正しくはRPNです。
RPMは製造業だと回転数の事ですね、ブルンブルン。
それでは本編いってみましょう。



「アルト、思いっきり打ち込んでみてくれ」

「わかった」

 俺はオッティに向かって木刀を一閃する。
 刀を模した木がオッティの腕を捉えた。
 普通なら腕の骨が骨折している速度だが、オッティは苦痛を表情にあらわさない。
 それもそのはずで、苦痛などないのだから。
 といっても、オッティが痛みが快楽になるように改造されたネギみたいな名前の忍者だからではない。

「やはり痛みはないか」

 オッティは木刀の当たった場所を確認して、傷や腫れがないことが判ったようだ。

「これが工程FMEA(異世界ヴァージョン)のスキルか」

 俺は半信半疑で、木刀の当たった個所を指で押す。
 オッティがやせ我慢していないとも限らないからだ。
 だが、残念な事にやせ我慢などしていなかった。

 そう、工程FMEA(異世界ヴァージョン)とは、生産技術のジョブで得られるスキルであり、自分または相手の攻撃に対してRPN評価を任意に設定できるのだ。
 今の攻撃は影響度が最低の1なので、当たっても体に影響が出ない。
 発生頻度を低くすれば連続攻撃は出来ないし、検出率を低くすれば不意打ちは出来ない。
 とんでもなくチートなスキルだ。

「何故いままでこのスキルが活躍出来なかったのか……」

 自問自答するオッティ。
 そんな彼の肩に俺は手を置いた。

「それは、ビルマの竪琴のシーンを再現したいがためのキャラだからだよ」

 オッティは膝を折り、両手を地についた。
 orzのポーズをする人をリアルで見たのは初めてだ。

 本当は色々とライバルとして戦わせたかったんだけど、それを考えているうちにも、毎日愚痴を吐露しないと辛かったので、わりとあっさり片付けたのが真相だ。
 別の世界線ではチートスキルを使って暴れまわってほしい。

「まあ、それは置いといて、工程FMEAは強いな」 

「置いとくな!」

 オッティの抗議は無視する。
 以前にも説明したと思うが、工程FMEAはリスク評価の手法である。
 ここではそれが評価ではなく設定出来るのだから、使用者はファミコン版六三四の剣でカセットに衝撃を与えた時みたいなもんですわ。
 40代以上じゃないと伝わらない例えだけど。

「故障モードの設定やら原因の設定が大変だけどな」

 オッティは前世と同じ愚痴を言う。
 故障モードとはJIS規格でも定義されている言葉で、アイテムにおける故障の様子、故障状態の形式による分類となっている。
 例えば、今の俺の攻撃は工程が相手からの攻撃、故障モードが怪我、原因が斬擊、打撃等になる。
 原因には射撃、関節技なども入ってくるだろうが、それらを設定していないとダメージの無効化は出来ない。
 工場での工程FMEAも同じだ。
 なので、各部署からそれなりの経験者を募って作成する。
 そして、不良が流出した場合には当然見直しだ。
 工程FMEAの評価に間違いがあるから、流出してしまうのだから。
 提出するのが対策書だけじゃないから大変だぞ。
 そして、工程FMEAの改訂に人が集まらなくて、俺一人で再評価してるのは何故なんだ。
 やる気あるのか?
 ご時世的に会議室に集まるのはやめようとか、尤もらしい言い訳しやがって。
 おっと、意識が異世界から現実世界に飛んでしまいましたね。

「この力があれば今からでも世界征服出来そうだな」

「オッティ、本当は300話くらい前にそうしようと思ってたんだよね。だけど、金鍍金とビルマの竪琴で役目は終ったんだ」

 そう言ったら、オッティに首を絞められた。
 割りと本気で。

「水蒸気爆発で死にかけるわ、活躍の場は無いわで、こっちの世界に来てからいいこと無いぞ!」

「大丈夫、前世でも不良が出るのは生産技術の設備が悪いからと言われ、パラレルワールドでも主役にはなれないから」

「全くもって良いことが無い!」

「美人のダークエルフの秘書が付いたじゃないか」

「そんな描写が全く無い!!」

 無かったか……


※作者の独り言
 品管も大概だが、生産技術も不良が出ると製造から言い訳の道具にされるよね。
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