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第312話 空調のアレ
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なんとなく話題のネタにのってみた。
それでは本編いってみましょう。
俺は今オッティに呼ばれて、グレイス領のとある施設にいた。
そこは前回来た時は賢者の学院だったのだが、今は違う。
といっても、やっていることは一緒だ。
「ようこそ、国家技術センターへ」
得意満面の笑みでオッティが迎えてくれた。
「名前変わったんだ」
俺の言葉にオッティは頷いた。
「いかにも。独立した研究機関から、国の予算で動く組織へと変わったのだよ。他の地域の賢者の学院はそのままだがね。ここは国家技術センターなので、ナショナル・テクニカル・センターの略でNTCと呼んでくれ」
「どこかで聞いたような――」
「気のせいだ!」
「でも、異世界はアルファベット通用しないから、通じるのは俺とオッティとグレイスくらいなもんだぞ」
「むう……」
オッティとしては気に入っていた略称なのだろうが、他の職員たちには意味不明だろう。
他の異世界転生は、よくアルファベット通じているな。
「ちなみに、NTCで作られる各種の規格はグレイス・インダストリアル・スタンダードと命名する。それで、GISと略してくれ」
「それなら、マニュファクチャー・インダストリアル・スタンダードでMISって呼ぶのはどうかな?今なら空いてるし」
オッティの下らない話にのってやった。
馬と鷹の話なんだろうな。
多分。
「それについては一考の余地ありだな。まあいい、ついてきてくれ」
オッティはクルリと身を翻すと、俺についてこいと手招きする。
俺は後にしたがい、廊下を歩くこと数分。
案内された場所は大きな部屋だった。
部屋といっても、体育館位の大きさである。
中には馬車が一台置いてあり、グレイスがその脇に立って俺たちを待ち構えていた。
「やっと来たわね。じゃあ、早速確認するわよ」
グレイスの口調はやや強い。
怒っている感じだ。
「何を確認するんだ?」
俺がそう訊ねると、グレイスは答える。
「馬車に取り付けたエアコンが、送風口によって温度がバラバラなのよ。オッティに直すように言ったら、『仕様です』って言うもんだから、言い訳だって怒ったのよ。そうしたら『アルトも同じことを言えば言い訳じゃないってわかって貰えますよね』って言い返してきたのよ。本当にそれって仕様なの?」
ふむ、送風口から吹き出す風の温度の違いか。
考えたこともなかったが、言われてみれば同じになるわけがない。
さて、それをどうやって説明したらいいものだろうか。
「グレイス、熱は高いところから低いところに逃げるのは知っているよな?」
「馬鹿にしないでよ。そんなの学校で習ったわ」
「それじゃあ、前提の知識は大丈夫ってことだな。馬車に取り付けたエアコンユニットから伸びている配管は、送風口までの距離が均等じゃない。つまりは、エアコンユニットから送風口にたどりつくまでに変化する熱量が違うんだ。こいつを等距離にすれば同じ温度になってくると思う。まあ、実際には馬車が走っていることで風がどう当たるのかとか、そういった条件も加わってくるんだろうけどな」
俺の説明が理解できたか確認すると、グレイスは頷いた。
だが、納得したわけではないようだ。
「それなら、送風口から出る風の温度の差がどれくらいまでが良品の範囲なのよ。せめてそれくらいは教えてよ」
「グレイス、その規格はないんだ。規格が無い以上は温度差がどれだけあったとしても、それは不良とは呼べないんだ」
オッティがそう説明した。
これは前世でも経験したことだが、客先やエンドユーザーからのクレームを受けて、はじめて管理規定・規格がない事に気づくことがあるのだ。
クレームを言いたい気持ちはわかるが、じゃあそれで修理しろって言われても、どうにもならない。
なにせ、修理したところで良品がどこまでの範囲なのかがわからないからだ。
例えばだが、クリームの色は白のイメージだと思うが、これが緑のクリームだったとしよう。
乳等省令はクリームを「生乳、牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分を18.0%以上にしたもの」と定めている。
つまり色の規定はここにはないのだ。
白ってどこまでが白なのってなってしまう。
ただ、添加物を入れるわけにはいかないので、乳牛から緑の牛乳が出た場合に限ってこの問題が出るわけだが。
そんなわけで、クリームを購入したときに、色が緑だったとしても、何も添加してないのであれば、それは返品は出来ないわけだ。
何故か、製造業は客との力関係で無理やり修正させられることが多いのだが。
図面通り作っていて何が悪いんだよ。
図面に記載しなかったそちらに非があるだろ。
ということで、対策書は絶対に書かないが。
まあ、そうはいっても中々納得できないのはよくわかる。
改善のヒントでも得られたらと、グレイスにもう少し話を聞くことにした。
「温度がバラバラって言ったけど、どれくらいの差異があったか調べたのか?」
「ええ。温度計で調べたら最大で11度の差があったわ。温度計はオッティに作ってもらったやつだから、測定結果は間違いないはずよ」
そうだな。
水銀の温度計だとメモリがずれている可能性があるからな。
なにせこの世界の技術水準だ。
「送風口の設定を変更して、室内温度が設定温度に到達する時間に変化はあった?」
「それはやってないわよ」
「そうか……」
エアコンユニットにはドアが取り付けられていて、どこの送風口を使うかを設定できるのだ。
カーエアコンの足元と正面の切り替えみたいなもんだな。
まんまそれなんだけど。
これで低い温度が出てくる方の送風口を閉じれば、温度の変化が速くなるとかわかれば、今後の改善につながったんだけどなー。
「で、オッティこの後どうするんだ?」
「規格がないのはまずいな。GISに追加しよう。NTCのスタッフと相談するから、直ぐにとはいかないけどな」
こうしてエアコンの送風口から吹き出す風の温度さの規格が作られることとなった。
※作者の独り言
似た名前の何かがあったとしても、それは偶然です。
対策として、HVAC2個積んじゃう?
それでは本編いってみましょう。
俺は今オッティに呼ばれて、グレイス領のとある施設にいた。
そこは前回来た時は賢者の学院だったのだが、今は違う。
といっても、やっていることは一緒だ。
「ようこそ、国家技術センターへ」
得意満面の笑みでオッティが迎えてくれた。
「名前変わったんだ」
俺の言葉にオッティは頷いた。
「いかにも。独立した研究機関から、国の予算で動く組織へと変わったのだよ。他の地域の賢者の学院はそのままだがね。ここは国家技術センターなので、ナショナル・テクニカル・センターの略でNTCと呼んでくれ」
「どこかで聞いたような――」
「気のせいだ!」
「でも、異世界はアルファベット通用しないから、通じるのは俺とオッティとグレイスくらいなもんだぞ」
「むう……」
オッティとしては気に入っていた略称なのだろうが、他の職員たちには意味不明だろう。
他の異世界転生は、よくアルファベット通じているな。
「ちなみに、NTCで作られる各種の規格はグレイス・インダストリアル・スタンダードと命名する。それで、GISと略してくれ」
「それなら、マニュファクチャー・インダストリアル・スタンダードでMISって呼ぶのはどうかな?今なら空いてるし」
オッティの下らない話にのってやった。
馬と鷹の話なんだろうな。
多分。
「それについては一考の余地ありだな。まあいい、ついてきてくれ」
オッティはクルリと身を翻すと、俺についてこいと手招きする。
俺は後にしたがい、廊下を歩くこと数分。
案内された場所は大きな部屋だった。
部屋といっても、体育館位の大きさである。
中には馬車が一台置いてあり、グレイスがその脇に立って俺たちを待ち構えていた。
「やっと来たわね。じゃあ、早速確認するわよ」
グレイスの口調はやや強い。
怒っている感じだ。
「何を確認するんだ?」
俺がそう訊ねると、グレイスは答える。
「馬車に取り付けたエアコンが、送風口によって温度がバラバラなのよ。オッティに直すように言ったら、『仕様です』って言うもんだから、言い訳だって怒ったのよ。そうしたら『アルトも同じことを言えば言い訳じゃないってわかって貰えますよね』って言い返してきたのよ。本当にそれって仕様なの?」
ふむ、送風口から吹き出す風の温度の違いか。
考えたこともなかったが、言われてみれば同じになるわけがない。
さて、それをどうやって説明したらいいものだろうか。
「グレイス、熱は高いところから低いところに逃げるのは知っているよな?」
「馬鹿にしないでよ。そんなの学校で習ったわ」
「それじゃあ、前提の知識は大丈夫ってことだな。馬車に取り付けたエアコンユニットから伸びている配管は、送風口までの距離が均等じゃない。つまりは、エアコンユニットから送風口にたどりつくまでに変化する熱量が違うんだ。こいつを等距離にすれば同じ温度になってくると思う。まあ、実際には馬車が走っていることで風がどう当たるのかとか、そういった条件も加わってくるんだろうけどな」
俺の説明が理解できたか確認すると、グレイスは頷いた。
だが、納得したわけではないようだ。
「それなら、送風口から出る風の温度の差がどれくらいまでが良品の範囲なのよ。せめてそれくらいは教えてよ」
「グレイス、その規格はないんだ。規格が無い以上は温度差がどれだけあったとしても、それは不良とは呼べないんだ」
オッティがそう説明した。
これは前世でも経験したことだが、客先やエンドユーザーからのクレームを受けて、はじめて管理規定・規格がない事に気づくことがあるのだ。
クレームを言いたい気持ちはわかるが、じゃあそれで修理しろって言われても、どうにもならない。
なにせ、修理したところで良品がどこまでの範囲なのかがわからないからだ。
例えばだが、クリームの色は白のイメージだと思うが、これが緑のクリームだったとしよう。
乳等省令はクリームを「生乳、牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分を18.0%以上にしたもの」と定めている。
つまり色の規定はここにはないのだ。
白ってどこまでが白なのってなってしまう。
ただ、添加物を入れるわけにはいかないので、乳牛から緑の牛乳が出た場合に限ってこの問題が出るわけだが。
そんなわけで、クリームを購入したときに、色が緑だったとしても、何も添加してないのであれば、それは返品は出来ないわけだ。
何故か、製造業は客との力関係で無理やり修正させられることが多いのだが。
図面通り作っていて何が悪いんだよ。
図面に記載しなかったそちらに非があるだろ。
ということで、対策書は絶対に書かないが。
まあ、そうはいっても中々納得できないのはよくわかる。
改善のヒントでも得られたらと、グレイスにもう少し話を聞くことにした。
「温度がバラバラって言ったけど、どれくらいの差異があったか調べたのか?」
「ええ。温度計で調べたら最大で11度の差があったわ。温度計はオッティに作ってもらったやつだから、測定結果は間違いないはずよ」
そうだな。
水銀の温度計だとメモリがずれている可能性があるからな。
なにせこの世界の技術水準だ。
「送風口の設定を変更して、室内温度が設定温度に到達する時間に変化はあった?」
「それはやってないわよ」
「そうか……」
エアコンユニットにはドアが取り付けられていて、どこの送風口を使うかを設定できるのだ。
カーエアコンの足元と正面の切り替えみたいなもんだな。
まんまそれなんだけど。
これで低い温度が出てくる方の送風口を閉じれば、温度の変化が速くなるとかわかれば、今後の改善につながったんだけどなー。
「で、オッティこの後どうするんだ?」
「規格がないのはまずいな。GISに追加しよう。NTCのスタッフと相談するから、直ぐにとはいかないけどな」
こうしてエアコンの送風口から吹き出す風の温度さの規格が作られることとなった。
※作者の独り言
似た名前の何かがあったとしても、それは偶然です。
対策として、HVAC2個積んじゃう?
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