304 / 439
第303話 メジャーレポートの互換性なんで無いの?
しおりを挟む
「公差院測定子、王太子の婚約者という立場を利用して行ってきた数々の悪事の証拠はここに揃っているんだぞ」
私はそう言われて頭痛で瞑っていた目を開いた。
すると、目の前には絶世の美男子が立っていた。
おかしい。
記憶が戻る直前には会社の測定室で徹夜の仕事をしていたはずだ。
それなのに、乙女ゲームの学園のような景色、そして私を取り囲む人たち。
この繋がりが理解できない。
でも、私は目の前の人物をはじめ、周囲の人たちを知っている。
「島津様?」
私がそういうと、目の前の美男子はムッとしていた表情から、呆れたへと変わった。
「普段は島津と呼び捨てにしていたのに、いざ断罪させられる立場になると途端にへりくだるのか」
そう吐き捨てるように言われたが、なにもへりくだったわけではない。
ここは自分がプレイしていた乙女ゲーム『恋のメジャーレポート』の世界だ。
目の前の美男子は攻略対象キャラの島津。
ついつい様付けで呼んでいた記憶から、同じように言ってしまったのだ。
「お嬢様、観念なさったほうがよろしいのでは」
「黒田……」
私の後ろに付き従うように立つのは、これまた攻略対象キャラの黒田。
陰のあるキャラで、一定の需要はありそうだ。
私は全然攻略する気にならなかったけど。
「もうすぐ王太子が到着される。そこで申し開きがあればするんだな」
そういったのはこれまた美形攻略対象の武田。
この乙女ゲーム『恋メジャ』は記号化された乙女ゲームの要素が盛りだくさんなのにヒットしなかった。
何故ならば、開発者が狙ったのは品管女子だったから、そもそもの需要が無かったのだ。
島津、黒田、武田と聞けば、歴女なら戦国大名を思い出すだろう。
いや、歴女に限らず一般的にはそうだろう。
だけど、このゲームのキャラはみんな測定機メーカーの名前が元ネタになっているのだ。
そしてそれは当然王太子も。
「光豊様、それに弟君の東成様もご一緒ですか」
王太子とその弟。
当然どちらも攻略対象だ。
それが揃って登場する。
これがこのゲームのラストの見せ場。
悪役令嬢の断罪イベントだ。
まさか自分が断罪される立場になるとは思ってもいなかったけど。
「今までお前が婚約者だった事が消せない過去で残念だよ」
王太子の光豊は蔑むような目でこちらを見る。
そこで、ゲームとは違った、測定子の記憶が流れ込んでくる。
あれ、光豊の罪を私に擦り付けようとしている?
そう、光豊はヒロインと遊ぶための金欲しさに、軍事転用可能な製品を隣国へ密輸していたのだ。
その事に気付いた私に罪を擦り付けて、自分は新しい女と楽しく暮らすつもりらしい。
そんな男はこちらから願い下げだが、罪人にされるのは納得いかない。
「何よこれ」
目の前のグレイスは、俺の書いた原稿から目を離してこちらを見た。
「悪役令嬢の話が読みたいっていうから、こうして書いてみたんだけど」
そう、グレイスが前世で読んでいた、悪役令嬢転生小説が読みたいっていうから、こうして書き下ろししたのだ。
「それはわかっているわよ。私が言いたいのは、どうして品質管理から離れられないのかっていうことと、企業の不祥事を絡めないと物語が進まないのかっていうことよ」
「あちら側の国に測定機を密輸した話をよくご存じで」
「社長が逮捕されたニュースを見たわよ」
そんな事件もありましたね。
事件はさておき、グレイス本人が転生悪役令嬢なのだから、本人と設定が被らないように気を遣ったのだが、どうもそれが気に入らなかったようだ。
この導入部分の受けがよければ、続きを書こうと思ったのだが、この様子だとお蔵入りだな。
また別の話を考えなければ。
※作者の独り言
思い付いたので、勿体ないから書きました。
メジャーレポートがバージョンによっては互換性が無いの、本当に困るんですけど。
私はそう言われて頭痛で瞑っていた目を開いた。
すると、目の前には絶世の美男子が立っていた。
おかしい。
記憶が戻る直前には会社の測定室で徹夜の仕事をしていたはずだ。
それなのに、乙女ゲームの学園のような景色、そして私を取り囲む人たち。
この繋がりが理解できない。
でも、私は目の前の人物をはじめ、周囲の人たちを知っている。
「島津様?」
私がそういうと、目の前の美男子はムッとしていた表情から、呆れたへと変わった。
「普段は島津と呼び捨てにしていたのに、いざ断罪させられる立場になると途端にへりくだるのか」
そう吐き捨てるように言われたが、なにもへりくだったわけではない。
ここは自分がプレイしていた乙女ゲーム『恋のメジャーレポート』の世界だ。
目の前の美男子は攻略対象キャラの島津。
ついつい様付けで呼んでいた記憶から、同じように言ってしまったのだ。
「お嬢様、観念なさったほうがよろしいのでは」
「黒田……」
私の後ろに付き従うように立つのは、これまた攻略対象キャラの黒田。
陰のあるキャラで、一定の需要はありそうだ。
私は全然攻略する気にならなかったけど。
「もうすぐ王太子が到着される。そこで申し開きがあればするんだな」
そういったのはこれまた美形攻略対象の武田。
この乙女ゲーム『恋メジャ』は記号化された乙女ゲームの要素が盛りだくさんなのにヒットしなかった。
何故ならば、開発者が狙ったのは品管女子だったから、そもそもの需要が無かったのだ。
島津、黒田、武田と聞けば、歴女なら戦国大名を思い出すだろう。
いや、歴女に限らず一般的にはそうだろう。
だけど、このゲームのキャラはみんな測定機メーカーの名前が元ネタになっているのだ。
そしてそれは当然王太子も。
「光豊様、それに弟君の東成様もご一緒ですか」
王太子とその弟。
当然どちらも攻略対象だ。
それが揃って登場する。
これがこのゲームのラストの見せ場。
悪役令嬢の断罪イベントだ。
まさか自分が断罪される立場になるとは思ってもいなかったけど。
「今までお前が婚約者だった事が消せない過去で残念だよ」
王太子の光豊は蔑むような目でこちらを見る。
そこで、ゲームとは違った、測定子の記憶が流れ込んでくる。
あれ、光豊の罪を私に擦り付けようとしている?
そう、光豊はヒロインと遊ぶための金欲しさに、軍事転用可能な製品を隣国へ密輸していたのだ。
その事に気付いた私に罪を擦り付けて、自分は新しい女と楽しく暮らすつもりらしい。
そんな男はこちらから願い下げだが、罪人にされるのは納得いかない。
「何よこれ」
目の前のグレイスは、俺の書いた原稿から目を離してこちらを見た。
「悪役令嬢の話が読みたいっていうから、こうして書いてみたんだけど」
そう、グレイスが前世で読んでいた、悪役令嬢転生小説が読みたいっていうから、こうして書き下ろししたのだ。
「それはわかっているわよ。私が言いたいのは、どうして品質管理から離れられないのかっていうことと、企業の不祥事を絡めないと物語が進まないのかっていうことよ」
「あちら側の国に測定機を密輸した話をよくご存じで」
「社長が逮捕されたニュースを見たわよ」
そんな事件もありましたね。
事件はさておき、グレイス本人が転生悪役令嬢なのだから、本人と設定が被らないように気を遣ったのだが、どうもそれが気に入らなかったようだ。
この導入部分の受けがよければ、続きを書こうと思ったのだが、この様子だとお蔵入りだな。
また別の話を考えなければ。
※作者の独り言
思い付いたので、勿体ないから書きました。
メジャーレポートがバージョンによっては互換性が無いの、本当に困るんですけど。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
冒険者ギルド品質管理部 ~異世界の品質管理は遅れている~
犬野純
ファンタジー
レアジョブにも程がある。10歳になって判明した俺の役職はなんと「品質管理」。産業革命すら起こっていない世界で、品質管理として日々冒険者ギルドで、新人の相談にのる人生。現代の品質管理手法で、ゆるーく冒険者のお手伝い。
前回の拙著が愚痴とメタ発言が多すぎたのでリメイクしました。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる