196 / 439
第195話 黄色と赤は不良の印、24時間働けますか?
しおりを挟む
会議はまだまだ続く。
まずは鉄道という名の通り、鉄を大量に使うことになる。
ドワーフ代表のマイラーが挙手して発言する。
「鉄の生産が間に合わんぞ」
「それは鉄の加工ですか?」
技官が聞き返した。
「いや、鉄鉱石から製鉄する工程だ。レン炉を増産するにもレンガも足りない。それに薪が沢山必要だから、木も切らにゃあならんぞ」
そうだ、ここでは生産効率の悪いレン炉を使って鉄を取り出している。
そこから生産される鉄は質も悪く、どうするつもりなのか。
「そこでアルトの出番だ。俺でもいいけどな」
オッティがニヤつく。
そういや、オッティはフォルテ公爵の元でトロッコ作っていたな。
高炉をスキルで作り出せるのかな。
俺の方はゲージを作り出して、それを溶かせばいい。
特殊鋼だと溶かすために、2000度くらいまで上昇させるんだっけ?
電気炉が必要ですね。
確か、レール用の材質は鋼鐵だったよな。
圧延仕上げだったはずだ。
ダイスで成形したら楽なのだろうけど、耐磨耗はどうなんだろうな。
初期の鉄道もレールについては試行錯誤していたと聞くしな。
鋳鉄だったり、木だったりで作っていたのだとか。
そんなもん、磨耗するに決まっている。
長さや厚みに加えて、炭素量の管理も必要になる。
レールひとつとっても、管理すべき項目は沢山ありそうだ。
「で、どれだけの鋼鐵が必要なんだ?」
「本来は複線化したいのだが、アルトと俺のスキル頼りでは、精々が単線だな。全ての路線が出来たら、徐々に複線化していくそうだ」
運行本数見ながら、複線化の優先順位を決めていくのかな。
二人でどんなに頑張っても、魔力切れで一日にそんなに多くの鋼鐵はできないから、最初から複線にするのは諦めたのだとか。
「ところで、国家機密の鉄道員がここにいないようだけど、打ち合わせに参加しないで何をやっているんだ?」
それが不思議だった。
なんで、そんな中心人物になりそうなのがここにいないのだろうか。
サプライズゲストとして登場するんじゃないかと、俺は辺りをキョロキョロと見回した。
しかし、どこにも隠れているような気配がない。
「なんでも、運行ダイヤを別室で描いているらしいぞ」
「あー、確かにあれはベテランの職員じゃないと難しいって謂うものな」
臨時の運行ダイヤはベテランの職員が手書きで作ると聞いたぞ。
過密ダイヤになると、コンピューターよりも人の手で描いた方が正確なんだとか。
うーむ、奥が深い。
ちなみに、運行ダイヤはダイヤに見えるからダイヤと呼ばれるというのは間違いだそうだ。
ダイヤグラムの略でダイヤが正式だそうで。
「あれ?」
「どうした?」
俺はあることに気がつき首を捻った。
オッティがそんな俺を見る。
「鉄道員のジョブが見つかったから鉄道を敷くのだろ。蒸気機関車はそいつのスキルで作るんじゃなかったのか?」
オッティは先ほどそう言ったと思ったが。
「言われてみればそうだよな」
って、今気がついたんかい!!
「はい!」
俺は挙手して発言の許可を求めた。
技官は直ぐに許可をしてくれたので、俺は疑問をぶつけてみた。
「車両の製造はどうするのですか?」
「いい質問ですね」
池◯彰か!
いや、技官が池◯彰を知っているわけがない。
これは偶然の一致だな。
まてよ、ここには転生者が二人いる。
グレイスを入れたら三人だ。
もう一人増えないという保証はどこにもない。
もしかしたら本人かもしれない。
そんな池◯彰はオッティを指差す。
「オッティのスキルで蒸気機関車を作り出して、それを分解してリバースエンジニアリングで図面を製図する予定です」
なるほどね。
見本があればそれを模倣すればいいというわけか。
火縄銃が日本に伝わったときみたいだな。
「なんだ、オッティのスキルで車両を作り出せるんじゃないか」
「それは正確ではないな」
難しい顔で否定されてしまった。
「俺のスキルはそこまで解放されていない。これからレベルあげをして、レベルが上がったら作り出せるようになるんだ。今はまだ作ることは出来ない」
「ということは……」
「この前の製麺ラインみたいに、レベルあげを手伝ってもらうということだ。どのみち、車両製造はレールを敷いてからになる。鉄道は工場にレールが伸ばす必要がだろ。あんな重量物をトラックやクレーン車もないここでは納品できないからな」
オッティの説明を聞いて納得する。
列車の納入って、どうするのか気になっていたんだよね。
確か、前世でも工場にレールが伸びていた気もする。
「聞いていて思ったのだが、この鉄道計画って、俺とオッティのスキル前提だよな。参加拒否したらどうするつもりだったのかね?」
「そんなもん、相手は国家だぞ。脅迫でも冤罪で牢屋にぶちこんででも俺達を従わせる方法なんてあるだろ。そんな手段に出られる前に、ここで大人しく従っていた方が利口というものだよ。どんなに強いスキルを持っていても、生身の人間は不眠不休で戦うことはできない。最後は数で押しきられるだけさ」
最初から参加するしかなかったわけか。
不眠不休で動くのも48時間が限界だったな。
あのときは、車両メーカーのラインが止まるか止まらないかの瀬戸際で、異常な興奮状態だから起きていられただけだったが、三日目の朝、日の出を見てからの記憶がない。
その時書いていた対策書は、あとで読み返したら意味不明だったな。
暫定対策が出来た時点で寝るべきだった。
「24時間戦えますか?」なんてCMがあったけど、炎上したラインではそれでは甘い。
その倍は戦えないとね。
そんなお薬は国から認可がおりないか。
その後は駅や踏切の話をして、会議が終わった。
踏切はゴーレムが上げ下げをすることになった。
昔の踏切みたいだな。
踏切を動かす人がいたんじゃよ。
昭和の時代なんだけどな。
まずは鉄道という名の通り、鉄を大量に使うことになる。
ドワーフ代表のマイラーが挙手して発言する。
「鉄の生産が間に合わんぞ」
「それは鉄の加工ですか?」
技官が聞き返した。
「いや、鉄鉱石から製鉄する工程だ。レン炉を増産するにもレンガも足りない。それに薪が沢山必要だから、木も切らにゃあならんぞ」
そうだ、ここでは生産効率の悪いレン炉を使って鉄を取り出している。
そこから生産される鉄は質も悪く、どうするつもりなのか。
「そこでアルトの出番だ。俺でもいいけどな」
オッティがニヤつく。
そういや、オッティはフォルテ公爵の元でトロッコ作っていたな。
高炉をスキルで作り出せるのかな。
俺の方はゲージを作り出して、それを溶かせばいい。
特殊鋼だと溶かすために、2000度くらいまで上昇させるんだっけ?
電気炉が必要ですね。
確か、レール用の材質は鋼鐵だったよな。
圧延仕上げだったはずだ。
ダイスで成形したら楽なのだろうけど、耐磨耗はどうなんだろうな。
初期の鉄道もレールについては試行錯誤していたと聞くしな。
鋳鉄だったり、木だったりで作っていたのだとか。
そんなもん、磨耗するに決まっている。
長さや厚みに加えて、炭素量の管理も必要になる。
レールひとつとっても、管理すべき項目は沢山ありそうだ。
「で、どれだけの鋼鐵が必要なんだ?」
「本来は複線化したいのだが、アルトと俺のスキル頼りでは、精々が単線だな。全ての路線が出来たら、徐々に複線化していくそうだ」
運行本数見ながら、複線化の優先順位を決めていくのかな。
二人でどんなに頑張っても、魔力切れで一日にそんなに多くの鋼鐵はできないから、最初から複線にするのは諦めたのだとか。
「ところで、国家機密の鉄道員がここにいないようだけど、打ち合わせに参加しないで何をやっているんだ?」
それが不思議だった。
なんで、そんな中心人物になりそうなのがここにいないのだろうか。
サプライズゲストとして登場するんじゃないかと、俺は辺りをキョロキョロと見回した。
しかし、どこにも隠れているような気配がない。
「なんでも、運行ダイヤを別室で描いているらしいぞ」
「あー、確かにあれはベテランの職員じゃないと難しいって謂うものな」
臨時の運行ダイヤはベテランの職員が手書きで作ると聞いたぞ。
過密ダイヤになると、コンピューターよりも人の手で描いた方が正確なんだとか。
うーむ、奥が深い。
ちなみに、運行ダイヤはダイヤに見えるからダイヤと呼ばれるというのは間違いだそうだ。
ダイヤグラムの略でダイヤが正式だそうで。
「あれ?」
「どうした?」
俺はあることに気がつき首を捻った。
オッティがそんな俺を見る。
「鉄道員のジョブが見つかったから鉄道を敷くのだろ。蒸気機関車はそいつのスキルで作るんじゃなかったのか?」
オッティは先ほどそう言ったと思ったが。
「言われてみればそうだよな」
って、今気がついたんかい!!
「はい!」
俺は挙手して発言の許可を求めた。
技官は直ぐに許可をしてくれたので、俺は疑問をぶつけてみた。
「車両の製造はどうするのですか?」
「いい質問ですね」
池◯彰か!
いや、技官が池◯彰を知っているわけがない。
これは偶然の一致だな。
まてよ、ここには転生者が二人いる。
グレイスを入れたら三人だ。
もう一人増えないという保証はどこにもない。
もしかしたら本人かもしれない。
そんな池◯彰はオッティを指差す。
「オッティのスキルで蒸気機関車を作り出して、それを分解してリバースエンジニアリングで図面を製図する予定です」
なるほどね。
見本があればそれを模倣すればいいというわけか。
火縄銃が日本に伝わったときみたいだな。
「なんだ、オッティのスキルで車両を作り出せるんじゃないか」
「それは正確ではないな」
難しい顔で否定されてしまった。
「俺のスキルはそこまで解放されていない。これからレベルあげをして、レベルが上がったら作り出せるようになるんだ。今はまだ作ることは出来ない」
「ということは……」
「この前の製麺ラインみたいに、レベルあげを手伝ってもらうということだ。どのみち、車両製造はレールを敷いてからになる。鉄道は工場にレールが伸ばす必要がだろ。あんな重量物をトラックやクレーン車もないここでは納品できないからな」
オッティの説明を聞いて納得する。
列車の納入って、どうするのか気になっていたんだよね。
確か、前世でも工場にレールが伸びていた気もする。
「聞いていて思ったのだが、この鉄道計画って、俺とオッティのスキル前提だよな。参加拒否したらどうするつもりだったのかね?」
「そんなもん、相手は国家だぞ。脅迫でも冤罪で牢屋にぶちこんででも俺達を従わせる方法なんてあるだろ。そんな手段に出られる前に、ここで大人しく従っていた方が利口というものだよ。どんなに強いスキルを持っていても、生身の人間は不眠不休で戦うことはできない。最後は数で押しきられるだけさ」
最初から参加するしかなかったわけか。
不眠不休で動くのも48時間が限界だったな。
あのときは、車両メーカーのラインが止まるか止まらないかの瀬戸際で、異常な興奮状態だから起きていられただけだったが、三日目の朝、日の出を見てからの記憶がない。
その時書いていた対策書は、あとで読み返したら意味不明だったな。
暫定対策が出来た時点で寝るべきだった。
「24時間戦えますか?」なんてCMがあったけど、炎上したラインではそれでは甘い。
その倍は戦えないとね。
そんなお薬は国から認可がおりないか。
その後は駅や踏切の話をして、会議が終わった。
踏切はゴーレムが上げ下げをすることになった。
昔の踏切みたいだな。
踏切を動かす人がいたんじゃよ。
昭和の時代なんだけどな。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
冒険者ギルド品質管理部 ~異世界の品質管理は遅れている~
犬野純
ファンタジー
レアジョブにも程がある。10歳になって判明した俺の役職はなんと「品質管理」。産業革命すら起こっていない世界で、品質管理として日々冒険者ギルドで、新人の相談にのる人生。現代の品質管理手法で、ゆるーく冒険者のお手伝い。
前回の拙著が愚痴とメタ発言が多すぎたのでリメイクしました。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる