32 / 439
第31話 PPM管理
しおりを挟む
こんにちは、栗田でもゆう子でもないアルトです。
今日は文化部のみんな……
じゃなかった、冒険者ギルドの仲間と迷宮にマンドラゴラを採取しにやってきました。
どうしてこうなったかというと……
「最近冒険者のクエスト失敗が多くて、ポーションの原料になるマンドラゴラが不足していてなぁ」
ポーション製造工程の親方が困った顔をして相談をしに来ていた。
来ていたといっても、ギルド長の執務室にであり、俺とシルビアが後から呼ばれたのだ。
「マンドラゴラってなんでしょうか?」
俺はマンドラゴラを見たことが無い。
ポーションの原材料は何度か見させてもらったが、既に原型を留めていなかったので、それがマンドラゴラだったのか知らない。
前世の知っている知識で言うと、人間の欲望を使って遠くに種子を運ぶダイヤが生る木だ。
目、鼻、耳と呼ばれる冒険者と、よくしゃべる「口」の俺が一緒にその原木を探しに行くというのか?
「薬草だね。土の中にある根の部分が人間のような形をしているんだ」
そっちか。
俺の考えていたのはマンドラドだな。
「抜くときに叫び声を聞くと死にますか?」
「それは100本に1本くらいだね」
1%の確率で死んじゃうとか怖い。
今どきはPPM管理だぞ。
PPMとはパーツ・パー・ミリオンの略で1/1,000,000の事だ。
現在の製造業ではそれくらいの不良率が求められている。
それでも死にたくはないので、確率は0がいいけど。
「そういうわけで、シルビアとアルトは仲間を募ってマンドラゴラを採取してきて欲しいんだ」
「わかったわ、行きましょうアルト」
「う、うん」
そういう理由で俺とシルビア、コルベット、カビーネ、スターレット、コンパーノの六人でマンドラゴラを採取することになったのだ。
「ここがマンドラゴラの群生地の地下15階層でーす」
先頭を行くコルベットが教えてくれた。
この階層になると、強敵も多いので、採取しに来られる冒険者も限られる。
加えて、実力不足でトレインを作ってしまう冒険者が多かったので、ベテランが敬遠していたのだ。
「周囲は警戒しておくから、さっさと抜いちゃって」
「抜いたら死ぬかも知れないじゃないか」
俺はシルビアに抗議した。
安全衛生委員会があったら大変なことになっているぞ。
そんなものは無いけど。
※安全衛生委員会は労働安全衛生法で定められた委員会です。
「そんなの偶にあるかないかよ」
駄目だ、説得する方法を変えよう。
「マンドラゴラは土から抜けば死ぬんです、板山社長」
「板山社長って誰よ?」
「ニューギンザデパートの社長だよ」
「は?」
だめだ、板山社長が伝わらない。
いや、土がついたままを強調したかったんだ。
板山社長は関係なかった。
「周りの土ごともって帰って、安全なところで引っこ抜こう。その方が新鮮なマンドラゴラを確保できる」
「それもそうね」
シルビアがやっと納得してくれた。
土ごと地面から掘り出したマンドラゴラは、鳴くことはなかったが、その分重量があった。
運搬人のコンパーノでも20個持つのが限界である。
「もっともって帰りたいわね」
「すいません、俺がアイテムボックスのスキルを取得していれば」
コンパーノが申し訳無さそうにする。
「いや、後は俺も少し持つよ」
俺も5個マンドラゴラを持ったところで限界が来た。
これでどれくらいのポーションが作れるのか判らないが、これ以上は持てないので諦めて帰る事にした。
群生地にはまだまだマンドラゴラが生えているので、足りなければもう一度来ればいいか。
街に戻りギルドでマンドラゴラを買い取ってもらう。
職員だけど、これを給料のうちでやる気にはならないからな。
因みにマンドラゴラだが、水洗いをして泥を落とせば鳴かない事が判明した。
その後数度迷宮に潜ってはマンドラゴラを土が付いたまま持ち帰ってきて確認をしたが、何百と耳栓をしながら水洗いをしたが、マンドラゴラが鳴くことは無かったのである。
どんなに確率が低くても、死ぬ可能性がある作業はやりたくないからね。
品質管理的には-6σを越える確率は仕方がないのだが、じゃあその低確率で死んでもいいかと言われたら、そうですねと言う人はいないのだ。
だからこそ無理と判っていても、「不良ゼロ」を目標として掲げているのである。
「アルトのお陰で、色々なパーティーから引っ張りだこで、休む暇がないよ」
今日もマンドラゴラを迷宮から持ち帰ったコンパーノが俺に声を掛けてきた。
マンドラゴラの水洗いが広まった結果、重量があるけど土を付けたまま持ち帰るのが主流となり、運搬人の需要が跳ね上がったのである。
アイテムボックスのスキルをまだ取得出来ていないコンパーノですら、通常の冒険者よりも持ち運べる重量が多いということで、色々なところから声がかかっているのである。
アルトのステータス
品質管理レベル17
スキル
作業標準書
作業標準書(改)
ノギス測定
三次元測定
マクロ試験
振動試験
電子顕微鏡
塩水噴霧試験
引張試験
硬度測定
蛍光X線分析
シックネスゲージ作成
ブロックゲージ作成
ピンゲージ作成
品質偽装
リコール
今日は文化部のみんな……
じゃなかった、冒険者ギルドの仲間と迷宮にマンドラゴラを採取しにやってきました。
どうしてこうなったかというと……
「最近冒険者のクエスト失敗が多くて、ポーションの原料になるマンドラゴラが不足していてなぁ」
ポーション製造工程の親方が困った顔をして相談をしに来ていた。
来ていたといっても、ギルド長の執務室にであり、俺とシルビアが後から呼ばれたのだ。
「マンドラゴラってなんでしょうか?」
俺はマンドラゴラを見たことが無い。
ポーションの原材料は何度か見させてもらったが、既に原型を留めていなかったので、それがマンドラゴラだったのか知らない。
前世の知っている知識で言うと、人間の欲望を使って遠くに種子を運ぶダイヤが生る木だ。
目、鼻、耳と呼ばれる冒険者と、よくしゃべる「口」の俺が一緒にその原木を探しに行くというのか?
「薬草だね。土の中にある根の部分が人間のような形をしているんだ」
そっちか。
俺の考えていたのはマンドラドだな。
「抜くときに叫び声を聞くと死にますか?」
「それは100本に1本くらいだね」
1%の確率で死んじゃうとか怖い。
今どきはPPM管理だぞ。
PPMとはパーツ・パー・ミリオンの略で1/1,000,000の事だ。
現在の製造業ではそれくらいの不良率が求められている。
それでも死にたくはないので、確率は0がいいけど。
「そういうわけで、シルビアとアルトは仲間を募ってマンドラゴラを採取してきて欲しいんだ」
「わかったわ、行きましょうアルト」
「う、うん」
そういう理由で俺とシルビア、コルベット、カビーネ、スターレット、コンパーノの六人でマンドラゴラを採取することになったのだ。
「ここがマンドラゴラの群生地の地下15階層でーす」
先頭を行くコルベットが教えてくれた。
この階層になると、強敵も多いので、採取しに来られる冒険者も限られる。
加えて、実力不足でトレインを作ってしまう冒険者が多かったので、ベテランが敬遠していたのだ。
「周囲は警戒しておくから、さっさと抜いちゃって」
「抜いたら死ぬかも知れないじゃないか」
俺はシルビアに抗議した。
安全衛生委員会があったら大変なことになっているぞ。
そんなものは無いけど。
※安全衛生委員会は労働安全衛生法で定められた委員会です。
「そんなの偶にあるかないかよ」
駄目だ、説得する方法を変えよう。
「マンドラゴラは土から抜けば死ぬんです、板山社長」
「板山社長って誰よ?」
「ニューギンザデパートの社長だよ」
「は?」
だめだ、板山社長が伝わらない。
いや、土がついたままを強調したかったんだ。
板山社長は関係なかった。
「周りの土ごともって帰って、安全なところで引っこ抜こう。その方が新鮮なマンドラゴラを確保できる」
「それもそうね」
シルビアがやっと納得してくれた。
土ごと地面から掘り出したマンドラゴラは、鳴くことはなかったが、その分重量があった。
運搬人のコンパーノでも20個持つのが限界である。
「もっともって帰りたいわね」
「すいません、俺がアイテムボックスのスキルを取得していれば」
コンパーノが申し訳無さそうにする。
「いや、後は俺も少し持つよ」
俺も5個マンドラゴラを持ったところで限界が来た。
これでどれくらいのポーションが作れるのか判らないが、これ以上は持てないので諦めて帰る事にした。
群生地にはまだまだマンドラゴラが生えているので、足りなければもう一度来ればいいか。
街に戻りギルドでマンドラゴラを買い取ってもらう。
職員だけど、これを給料のうちでやる気にはならないからな。
因みにマンドラゴラだが、水洗いをして泥を落とせば鳴かない事が判明した。
その後数度迷宮に潜ってはマンドラゴラを土が付いたまま持ち帰ってきて確認をしたが、何百と耳栓をしながら水洗いをしたが、マンドラゴラが鳴くことは無かったのである。
どんなに確率が低くても、死ぬ可能性がある作業はやりたくないからね。
品質管理的には-6σを越える確率は仕方がないのだが、じゃあその低確率で死んでもいいかと言われたら、そうですねと言う人はいないのだ。
だからこそ無理と判っていても、「不良ゼロ」を目標として掲げているのである。
「アルトのお陰で、色々なパーティーから引っ張りだこで、休む暇がないよ」
今日もマンドラゴラを迷宮から持ち帰ったコンパーノが俺に声を掛けてきた。
マンドラゴラの水洗いが広まった結果、重量があるけど土を付けたまま持ち帰るのが主流となり、運搬人の需要が跳ね上がったのである。
アイテムボックスのスキルをまだ取得出来ていないコンパーノですら、通常の冒険者よりも持ち運べる重量が多いということで、色々なところから声がかかっているのである。
アルトのステータス
品質管理レベル17
スキル
作業標準書
作業標準書(改)
ノギス測定
三次元測定
マクロ試験
振動試験
電子顕微鏡
塩水噴霧試験
引張試験
硬度測定
蛍光X線分析
シックネスゲージ作成
ブロックゲージ作成
ピンゲージ作成
品質偽装
リコール
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
冒険者ギルド品質管理部 ~異世界の品質管理は遅れている~
犬野純
ファンタジー
レアジョブにも程がある。10歳になって判明した俺の役職はなんと「品質管理」。産業革命すら起こっていない世界で、品質管理として日々冒険者ギルドで、新人の相談にのる人生。現代の品質管理手法で、ゆるーく冒険者のお手伝い。
前回の拙著が愚痴とメタ発言が多すぎたのでリメイクしました。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる