これくしょんブック

シャオえる

文字の大きさ
上 下
68 / 85

68.涙のあとには、微笑みを

しおりを挟む
「それじゃまたね」
 家の玄関先で、ユイ達を見送るアカリとルカ。そのそばで余ったアップルパイを貰ってご機嫌なリリとモナカが早く帰りたそうにしている
「本当にこんなに貰って良いんですか?」
「うん。お父さんとお兄ちゃんの分は残してあるし。私達だと食べきれないから」
 申し訳なさそうに話すモナカに、アカリが返事をしていると、モナカがミナモの腕をグイッと引っ張った
「じゃあ、早速夕御飯のおやつにしましょ」
「えっ?夕御飯も食べるの?」
 ミナモがリリ達の食欲に驚いているそばで、ルナがルカを抱きしめ別れを惜しんでいた

「ルカ……ゴメンね。もう行かなきゃ」
 悲しむルナに、心配かけまいとルカが笑って返事をする
「ううん。またすぐ来てね。連絡もたくさんしてね」
「もちろん。ルカも今以上にたくさん頂戴ね」
 二人が話をしている隣でも、ヒナタもアカリに微笑み話しかけていた
「アカリ、ヒカリちゃんと仲良くね。喧嘩はダメよ」
 と、アカリの肩に座っているヒカリの頭を撫でて、ヒカリにも微笑む
「うん。大丈夫。ありがとう、お母さん」
 アカリが返事をすると、ヒカリもヒナタの手をとり、握手をして微笑む

「ヒナタ、そろそろ帰りましょ」
 ユラの声に、そっとヒカリの手を離すヒナタ。しょんぼりするアカリの頭を撫でて微笑み、ぎゅっと抱きしめる
「それじゃあ、またね。アカリ」
「うん。またね。お母さん」

 ユイ達を見送り、家の中に入り玄関の鍵を閉めると、扉を背に座り込むアカリ。うつ向いてグスグスと泣いている音が聞こえてきた
「アカリちゃん……」
 そっと背中をさするルカ。ヒカリもルカの肩に乗って、アカリの様子を心配そうに見ている
「お母さん……知ってたんだね。ヒカリのこと……」
「うん、そうだね……」
「ルカちゃんのお母さんも……」
 顔をあげ、ルカの顔を見るアカリ。二人一緒に泣いていると、ガチャと鍵の開いた音が響いた。慌ててルカの背中に隠れるヒカリ。隠れてすぐ扉が開いて、背持たれていたアカリが、そのままコロンと倒れてしまった

「……二人とも、こんなところで何してんだ?」
 足元に倒れてきたアカリと、玄関で座っているルカを見て、ため息混じりで話しかける
「お兄ちゃん……おかえり」
 ゆっくりと起き上がろうとするアカリに、手を差し出して助けるミツキが、アカリの目が赤く腫れているに気づいた
「なんだ?泣くほど会えて嬉しかったのか?」
「それは……そうだけど……」

 ミツキから目を背けて、頬を触るアカリ。ちょっと腫れている目元に、慌ててゴシゴシと目元を拭いた。余計に腫れた目に慌ててルカがアカリの手を止めると、二人とも目が赤くしているのに気づいて、見つめあって笑ってしまう
「ルカちゃん、泣いちゃだめだよ」
「アカリちゃんこそ、泣きすぎだよ」
 クスッと笑い話す二人に、その様子を見ていたミツキが二人に声をかける 
「……父さんもう帰ってくるって言ってたから、心配するから泣くなら部屋で泣いてこい」
「うん。お風呂入って気持ち落ち着かせてくる……。ルカちゃん一緒に入ろう」
 手を繋いで部屋に戻る二人の間から、一緒に部屋に戻っていくヒカリが一瞬見えて、ミツキがまたはぁ。と大きくため息ついた
「やっぱり二人に話すのは良くなかった気がするが、仕方ないのか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

〈本編完結〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編として出来るだけ端折って早々に完結予定でしたが、予想外に多くの方に読んでいただき、書いてるうちにエピソードも増えてしまった為長編に変更致しましたm(_ _)m ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいです💦 *主人公視点完結致しました。 *他者視点準備中です。 *思いがけず沢山の感想をいただき、返信が滞っております。随時させていただく予定ですが、返信のしようがないコメント/ご指摘等にはお礼のみとさせていただきます。 *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・* 顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。 周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。 見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。 脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。 「マリーローズ?」 そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。 目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。 だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。 日本で私は社畜だった。 暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。 あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。 「ふざけんな___!!!」 と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。

勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~

時野洋輔
ファンタジー
英雄のパーティ、『炎の竜牙』をリストラされたクルトは、実は戦闘以外は神の域に達している適正ランクSSSの持ち主だった。 そんなことを知らないクルトは、自分の実力がわからないまま周囲の人間を驚かせていく。 結果、多くの冒険者を纏める工房主(アトリエマイスター)となり、国や世界の危機を気付かないうちに救うことになる。 果たして、クルトは自分の実力を正確に把握して、勘違いを正すことができるのか? 「え? 山を適当に掘ったらミスリルが見つかるのってよくある話ですよね?」 ……無理かもしれない。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※令和元年12月より、コミカライズスタート(毎月第三火曜日更新) ※1~5巻好評発売中(コミカライズ1巻発売中)2020年11月時点 ※第11回ファンタジー小説大賞受賞しました(2018年10月31日) ※お気に入り数1万件突破しました(2018年9月27日) ※週間小説ランキング1位をいただきました(2018年9月3日時点) ※24h小説ランキング1位をいただきました(2018年8月26日時点)

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

勘とノリでやってたら、七戦士に選ばれた

札神 八鬼
ファンタジー
俺の名前はオルティス・ハワード。 モルダバイト学園の二期生だ。 今までその場の勘とノリだけで 生きてきたつもりだが、は?七戦士? 何それ美味しいの? 俺の信者(×2)と親友、その他諸々を巻き込んで、 俺の忙しない学園生活が始まった。 謎の多い傍観者、神殺しを企む男、 やたらと距離感が近い二柱。 頼むから俺を面倒事に巻き込まないでくれ… 学園わちゃわちゃシリアスコメディです。(情報の渋滞) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※この物語はいとこから送られた 設定を元に作られた物語です なるべく設定に沿って書く予定ですが、 元の設定にいくつか追加しています いとこが勘ノリのifを書いています 良ければそちらも読んで下さると嬉しいです

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...