81 / 98
81. 大切な人が寂しくないように
しおりを挟む
その頃、レアスは真新しい本棚がたくさん並び、たくさんの本が床に散らばっている場所にいる若い女の人に見入っていた。少し分厚い本を持ち、険しい顔をして読んでいるその人は、レアスがいることに気づいていないのか、レアスと本棚の周りをウロウロと動き回る
「うーん、困ったわね。この魔術じゃないのかしら……」
そう言うと、バタンと音をたてて本を閉じると、床に落ちていた本に重ねるように置き、近くにある本棚からまた本を取り出して、険しい顔をしてまた読みはじめた
。その女の人に手を伸ばし声をかけようか、レアスが悩んでいると、コンコンと扉を叩く音が聞こえ、すぐ側から誰かが通り過ぎていった
「ヒカリ、何をしている?」
突然名前を呼ばれて、顔を上げると足の踏み場もない部屋に少し呆れた顔をした、今よりほんの少し若いリンとミナモがヒカリという女の人の側に歩いてきた
「本を書いてるの。今日でもう何冊目かしら……」
「また本を?」
「ええ、新しい本が上手く書けなくて……」
「もう書いても本も本棚も置くスペースはないですよ」
そう言いながら、床に落ちていた本を一冊取りページをめくるリンの側で、小さなメルガとクロウがバタバタと騒がしく追いかけっこをしている
「家に本棚を置くわ。それならもっと書けるでしょ?」
「なんでそこまでして本を書くのです?」
メルガとクロウの元気な姿を見て微笑むヒカリにミナモが問いかけると、ヒカリ達を部屋な片隅で呆然と見ていたレアスに向かってニコッと微笑んだ
「いつか、私の大切な人が寂しい思いをしない為に書くの。その為には、もっともっと素敵な本を書かないとね」
「あれ?レアスいないの?」
一方、リンとミナモの魔術により、本の中に戻ったツムギ。レアスの家の本棚のある部屋に着いたことを確認すると、メルガから降りて部屋の中を見渡していた
「あの本じゃなかったのかな?」
部屋から出て、リビングやキッチン、レアスの部屋を見て周るが、レアスの姿は見当たらない。仕方なくまた本棚のある部屋に戻ると、どうしたら良いか分からず、はぁ。と大きなため息をついた
「ララ、レアス近くにいそう?」
ルトと一緒にメルガの背中に乗り座っていたララに問いかけると、困った顔をして首を横に振って、しょんぼりとうつ向いてしまった。その姿にルトがララの頭を撫でて励ましていると、ツムギが抱きしめ持っていた、レアスから預かってた本がツムギの腕から離れ、部屋にある窓の方へと、ふわふわ浮かんで向かっていく。それを見て、ツムギがメルガに振り向いて頷くとルトとララを肩に乗せると、メルガの背中に乗り、まだ窓付近で浮かぶ本の方へと向かっていく
「あの本ならレアスのいる場所が分かるかもしれない。早くレアスに会って、本を渡さなきゃ……」
「うーん、困ったわね。この魔術じゃないのかしら……」
そう言うと、バタンと音をたてて本を閉じると、床に落ちていた本に重ねるように置き、近くにある本棚からまた本を取り出して、険しい顔をしてまた読みはじめた
。その女の人に手を伸ばし声をかけようか、レアスが悩んでいると、コンコンと扉を叩く音が聞こえ、すぐ側から誰かが通り過ぎていった
「ヒカリ、何をしている?」
突然名前を呼ばれて、顔を上げると足の踏み場もない部屋に少し呆れた顔をした、今よりほんの少し若いリンとミナモがヒカリという女の人の側に歩いてきた
「本を書いてるの。今日でもう何冊目かしら……」
「また本を?」
「ええ、新しい本が上手く書けなくて……」
「もう書いても本も本棚も置くスペースはないですよ」
そう言いながら、床に落ちていた本を一冊取りページをめくるリンの側で、小さなメルガとクロウがバタバタと騒がしく追いかけっこをしている
「家に本棚を置くわ。それならもっと書けるでしょ?」
「なんでそこまでして本を書くのです?」
メルガとクロウの元気な姿を見て微笑むヒカリにミナモが問いかけると、ヒカリ達を部屋な片隅で呆然と見ていたレアスに向かってニコッと微笑んだ
「いつか、私の大切な人が寂しい思いをしない為に書くの。その為には、もっともっと素敵な本を書かないとね」
「あれ?レアスいないの?」
一方、リンとミナモの魔術により、本の中に戻ったツムギ。レアスの家の本棚のある部屋に着いたことを確認すると、メルガから降りて部屋の中を見渡していた
「あの本じゃなかったのかな?」
部屋から出て、リビングやキッチン、レアスの部屋を見て周るが、レアスの姿は見当たらない。仕方なくまた本棚のある部屋に戻ると、どうしたら良いか分からず、はぁ。と大きなため息をついた
「ララ、レアス近くにいそう?」
ルトと一緒にメルガの背中に乗り座っていたララに問いかけると、困った顔をして首を横に振って、しょんぼりとうつ向いてしまった。その姿にルトがララの頭を撫でて励ましていると、ツムギが抱きしめ持っていた、レアスから預かってた本がツムギの腕から離れ、部屋にある窓の方へと、ふわふわ浮かんで向かっていく。それを見て、ツムギがメルガに振り向いて頷くとルトとララを肩に乗せると、メルガの背中に乗り、まだ窓付近で浮かぶ本の方へと向かっていく
「あの本ならレアスのいる場所が分かるかもしれない。早くレアスに会って、本を渡さなきゃ……」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる