シンフォニー・レイ

シャオえる

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72. 知ってしまったなら仕方ない

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「はぁ……」
 ツミキ達も眠った深夜。指令室では、パソコンの前でため息をついたノア隊員がいた
「どうしたの?ノア君。何かあったの?」
 音もなく現れ声をかけたのはルモカ。急に話しかけられて驚く
「あっ!ルモカさん!どうして?」
 慌ててモニターに出されていた資料を消そうとする
「ゼフドに用があって来たんだけど……何?」
 その慌てぶりに不審がるルモカ。顔にひきつらせ、どうにか誤魔化そうとする

「い、いえ……ゼフドさんは会議に出ていますよ。もう少ししたら戻ってくると思います」
「あらそう……」
 ちらりと見えたノア隊員のパソコンのモニターに釘つけになる
「ねえ、そのデータ……」
 椅子に座っているノア隊員をグイグイと押し横にずらし、パソコンの前に陣取る
「あっ、あの……その」
「これ、ツミキちゃんのデータでしょ?」
「ダメです!ちょっと……ルモカさん!」
 止めるノア隊員を横目に、見たことの無いデータを食い入るように見る
「これ……」
 ルモカに見られてしまって、ため息をつくノア隊員。カチカチと勝手にパソコンを触って、教えられてなかったデータを次々と見ていく
「ノア君、このデータはいつから?」
「そ、それは……」

「ルモカ、ノア君も……どうしたんだ?」
 二人が騒いでいると、いつの間にか指令室に帰ってきていたゼフドが二人に気づいて声をかける
「ゼフド、これは何?このデータは……」
 パソコンに指を指す。ちらりとモニターを見るとルモカには厳守と言っていたはずの、ツミキのデータが写っていた
「すみません……見られてしまいました……」
 申し訳ないとノア隊員が謝ると、はぁ。とため息をついた
「そうか……それは仕方ない」
「どういうこと?ツミキちゃんのデータは元々ここには無いはず……なのになぜ?」
 入り口付近にいたゼフドに、詰め寄ってくルモカ。三人の様子に指令室にいた人達も気づいて、仕事をしていた手を止めて、三人の様子を見ている

「だからこそだ。むしろ無いというのは納得する。いつかのために消しておいたんだろう」
 ゼフドの話で静かになっていく指令室。ゼフドが話終えると、コツコツとルモカの歩く音が響く
「三人には言っているの?」
 ゼフドから離れて、ノア隊員のパソコンをまた見いってく。その隣にゼフドも来て、一緒にツミキのデータを見ていく
「いやまだ。皆には言わないよう命じている」
「そう……でも……」
 ゼフドに何か言いたげなルモカ。だが、言葉を噛み締めるようにグッと歯を食い縛る。データを見続けているルモカを残して、また指令室から出ていくゼフド。ノア隊員も後を追って部屋から出ていく。ゼフドに再び謝ろうとした時、突然、足を止めゼフドもまた何かを思い、グッと歯を食い縛っていた
「まだ不確かな事だ。急いで調べあげないといけない。ツミキ君や、あの子達のためにも」
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