17 / 110
17. たとえ、そうだとしても
しおりを挟む
「何をするんですか?」
話し合いをしていた部屋から移動して、トレーニング場へとやって来た。今度は集まった人は少なくカエデとミオリ、ゼフドとルモカとツミキの五人。始めて見る場所に辺りを見回しているツミキをよそに、カエデが何やら始める準備をしている
「まぁ、見てもらえれば分かるか。カエデ君、頼む」
「……はい」
ゼフドがカエデに合図を送り、それに返事をすると、四人から少し離れて、部屋の真ん中に一人立つ。しばらくすると、どこからか小さく聞こえてくる歌声。ツミキが、歌声のする方を探し始める
「カエデちゃんの、うた……」
か細く聞こえる歌声と共に、カエデの右手が部屋の柱を殴った。すると、ほんの少し割れていく柱。今度は大きく歌うカエデ。そして、同じく右手で地面をぶん殴ると大きくひび割れていた
「カエデ君、お疲れ。もう大丈夫だ」
ゼフドの声で歌うのを止めるとふぅ。とため息ついて、ツミキの方へと歩いてく。いつもと違ったカエデの様子に、ふと初めて会った時のことを思い出していた。カエデがちょっと苦笑いでツミキの隣に来ると、ツミキがカエデに抱きついた
「この歌の力で能力の加減が出来るのは、ここではミオリ君とカエデ君の二人だけだった。だが最近、新たに歌の力で我々を狙ってくる人物がいるんだ」
楽しそうなツミキ達を見つめ、淡々と話すゼフド。話の内容に、一気に真面目な顔になる二人
「あの子……」
ツミキがポツリ呟いた。思い出していたのは、何度も会い狙ってくる女の子
「そう、シキと言う少女とシンクという女性の二人だな」
「シキちゃん……」
「主にツミキ君を狙っているのは確か。そして、我々の資料に……」
「ツミキ、帰るんだ」
またゼフドの話しに割り込むミオリ。ゼフドに睨み、再び語気を強めて話を続ける
「もし歌の力があったとして、ツミキに戦闘に入れるわけにはいきません。危険過ぎます。私は許可しません。ツミキは……時々私達に会って買い物したり遊んだりしてくれたら、それで良いのです」
「まあ、力があるかどうかも分からないし、すぐ頼るわけでもない。そう怒るな」
「ですが!」
ゼフドに対し怒るミオリの声を最後に、静かになるトレーニング場。先程と同じまた不穏な雰囲気に、戸惑うツミキ。恐る恐るゼフドに話しかける
「……あの、どうしてうたが力に変わるんですか?」
ツミキの質問に、今度はツミキを睨む
「知らずに帰るんだ。明朝、私が自宅へ送る」
「それはダメね。ミオリちゃん一人で帰ってこれるの?」
ルモカの言葉に顔を赤らめるミオリ。カエデがまた苦笑いをしたのを見たゼフドが、ため息ついたあとツミキに声をかける
「とりあえず、一旦話は終わろうか。ツミキ君、お疲れ。今日はゆっくり休んでくれ」
話し合いをしていた部屋から移動して、トレーニング場へとやって来た。今度は集まった人は少なくカエデとミオリ、ゼフドとルモカとツミキの五人。始めて見る場所に辺りを見回しているツミキをよそに、カエデが何やら始める準備をしている
「まぁ、見てもらえれば分かるか。カエデ君、頼む」
「……はい」
ゼフドがカエデに合図を送り、それに返事をすると、四人から少し離れて、部屋の真ん中に一人立つ。しばらくすると、どこからか小さく聞こえてくる歌声。ツミキが、歌声のする方を探し始める
「カエデちゃんの、うた……」
か細く聞こえる歌声と共に、カエデの右手が部屋の柱を殴った。すると、ほんの少し割れていく柱。今度は大きく歌うカエデ。そして、同じく右手で地面をぶん殴ると大きくひび割れていた
「カエデ君、お疲れ。もう大丈夫だ」
ゼフドの声で歌うのを止めるとふぅ。とため息ついて、ツミキの方へと歩いてく。いつもと違ったカエデの様子に、ふと初めて会った時のことを思い出していた。カエデがちょっと苦笑いでツミキの隣に来ると、ツミキがカエデに抱きついた
「この歌の力で能力の加減が出来るのは、ここではミオリ君とカエデ君の二人だけだった。だが最近、新たに歌の力で我々を狙ってくる人物がいるんだ」
楽しそうなツミキ達を見つめ、淡々と話すゼフド。話の内容に、一気に真面目な顔になる二人
「あの子……」
ツミキがポツリ呟いた。思い出していたのは、何度も会い狙ってくる女の子
「そう、シキと言う少女とシンクという女性の二人だな」
「シキちゃん……」
「主にツミキ君を狙っているのは確か。そして、我々の資料に……」
「ツミキ、帰るんだ」
またゼフドの話しに割り込むミオリ。ゼフドに睨み、再び語気を強めて話を続ける
「もし歌の力があったとして、ツミキに戦闘に入れるわけにはいきません。危険過ぎます。私は許可しません。ツミキは……時々私達に会って買い物したり遊んだりしてくれたら、それで良いのです」
「まあ、力があるかどうかも分からないし、すぐ頼るわけでもない。そう怒るな」
「ですが!」
ゼフドに対し怒るミオリの声を最後に、静かになるトレーニング場。先程と同じまた不穏な雰囲気に、戸惑うツミキ。恐る恐るゼフドに話しかける
「……あの、どうしてうたが力に変わるんですか?」
ツミキの質問に、今度はツミキを睨む
「知らずに帰るんだ。明朝、私が自宅へ送る」
「それはダメね。ミオリちゃん一人で帰ってこれるの?」
ルモカの言葉に顔を赤らめるミオリ。カエデがまた苦笑いをしたのを見たゼフドが、ため息ついたあとツミキに声をかける
「とりあえず、一旦話は終わろうか。ツミキ君、お疲れ。今日はゆっくり休んでくれ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~
桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。
そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。
頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります!
エメルロ一族には重大な秘密があり……。
そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
園芸店店長、ゲーム世界で生産にハマる!
緑牙
ファンタジー
植物が好きで園芸店の店長をしている 志田良太。
ゲーム世界に飛び込んで遊べるVRMMORPGのゲームを入手して、成り行きでおこなった生産に徐々にハマっていく。
製薬・鍛冶・料理・栽培などの生産を通じて、AI搭載のNPCや他のプレイヤーと交流していく。
時には他プレイヤーに絡まれたり、
時にはNPCを助けたり、
時には仲良くなったNPCや動物達と一緒に作業したり、
周囲に流されながらも、毎日を楽しく過ごしていきます。
その中で「生産者のリョウ」として徐々に名が知れていってしまうが、そんなことはお構いなしにマイペースに突き進んでいくお話です!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
本格的に生産を始めるのは二章からになります!
タイトルに※印が付いていたら、乱暴な表現や台詞があります。
話はかなりスローペースに進んでいきます!
体の不調が続いてるため、不定期更新になります。
投稿できそうな日は、近況にてご報告致します。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
竜の探索者 最大手のクラン、所属条件はクラン主のお眼鏡に叶うかどうかのみ。人種も身分も関係ない。僕らはみんな冒険者
あくの
ファンタジー
冒険者集団『竜の探索者』
冒険者の憧れるトップ集団 クラン『竜の探索者』
そこの頭目は、まだ少年であった。彼は冒険者登録をしてから最短でS級まで駆け上がり、『竜の探索者』と呼ばれる冒険者集団を作り上げたのだ。
その勢力は冒険者ギルドも無視はできない。
『竜の探索者』の目的はなんなのか、何を目指しているのか……
暴力的な表現があります。 ※印のついた話は暴力的なシーンを含みます。
無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。
きゅうとす
ファンタジー
化粧師の男は異世界に転移したことでスキルとして力を得てその特異な力を使って村人から商人、そして冒険者や傭兵となる。男を巡って女が集まり、様々な思惑が男を巻き込んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる