月夜、リコレクション

シャオえる

文字の大きさ
上 下
42 / 48

42. また月夜を見れるように

しおりを挟む
「ねえ、ちょっと起きてくれる?」
 本に囲まれたことに気づかないまま、スースー眠るアオイに声をかける。耳元で何度か話しかけてみても起きる気配のないアオイに少し困りつつ、隣に座った
「本に囲まれて眠るのは私がしたことだけど、そろそろ起きてくれないと困るんだよね」
 家の光を本で隠され少し暗くなっている二人の周りを見渡していると、二人を囲む本の表紙から魔方陣が次々と現れはじめた
「この魔術は確か……」
 近くにあった魔方陣に触れようと指先を伸ばしたその時、寝ていたアオイの体が動き、少し目を開けた
「覚えた?」
 そう問いかけられ、虚ろながらゆっくりと頷くと、二人の周りに現れている魔方陣達が微かに光った
「じゃあ、後はよろしく」
 そう言うと、アオイがまた目を閉じ、ふぅ。と一つ深呼吸をした瞬間、二人を囲っていた本が突然バサバサと音をたて崩れ落ちた

「えっ、なに……?」
 ちょうどベランダからリビングに戻っていたノエルが崩れ落ちた本の音に驚き駆け寄る。思っていたよりも沢山の本があり、呆然としていると、本の山が動きアオイが少しうつ向き加減で現れた
「本当に早く起きたね」
 本の山を踏まないように少し浮いて現れたアオイは、小さな体ではなくノエルと出会った頃と同じ背丈に戻っていた
「あの、私……」
 と、アオイがなにか言おうとした時、ノエルがそっと手を伸ばした。アオイが恐る恐るその手を掴むと、グイッと引っ張られノエルにぎゅっと抱きしめられた
「また会えるって言っていた?」
 ノエルの問いかけにアオイは答えることなくただうつ向き、二人の側で落ちていた本がユラユラと揺れはじめ、ノエルやアオイの体にコツンと当たった
「ちょっと気持ちを落ち着くために、なにか飲む?」
「……はい」
 アオイが小声で答えると、ノエルが抱きしめていた手を離した。本を踏まないようにしながら一人キッチンに向かうと、リビングに残ったアオイは、ふぅ。と一つ深呼吸をした
「まだ魔術も魔力も集まってないのに……」
 キッチン方からカタンと音が聞こえ、アオイも本を踏まないように、そーっと歩いてリビングにあるテーブルの方へと向かう。その頃ノエルも、温かい紅茶を用意しながら、気持ちを落ち着かせるためにふぅ。と一つ深呼吸をしていた
「まだもう少し一緒に夢見たかったけれど、仕方ないよね、アオイ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...